川尻六工匠

*川尻地区の設計事務所・工務店・大工・建具店・水道店・板金店・左官店・電気店で構成し、熊本自然のすまいづくりを目指す職人のグループだ。
熊本の山の木を使い、土壁、伝統構法、民家再生、自然素材、地域材、産直住宅、足固め、貫工法に特化している。

■■川尻六工匠の住宅設計7ヶ条■■

1. 木材は産地から購入

・木材の生産者である芦北の池松さん、吉井さんから直接購入し、芦北の岩本木材に製材を依頼する。
・芦北の杉材は赤身が多い。60~70年生の杉材を伐採する。
・山から切り出し、製材所に運び製材し、自然乾燥をおこない工務店に運搬する。2回しか運ばない。世間一般ルートは6回も運び、その分経費が掛かっている。
・代金は、直接、山の生産者と製材所に支払う。森林認証とか合法木材はない。直接購入することが最短のトレーサビリティである。

2. 大工で作る家を建てる

・最近の住宅はプレカットが主流である。安くて、早くて、合理的と絶賛するが、修理のことは考えられていない。民家再生が可能なのは、修繕を前提とした家づくりだからだ。
・最近の家の寿命は30年といわれている。せめて、山の木の生育年数と同じ60~70年は目指したい
・六工匠は大工が下駄箱を作り、階段を作り、厨房・洗面をつくる。ほとんどの部分を大工が作るので、修繕が可能で長く使える

3. 自然素材を使う

・石油製品の使用は最小限にする
・カタログ製品はあまり使わない。石油製品が多いからだ。
・木材は自然乾燥させる。人工乾燥が確実だが、重油を焚いて乾燥させるのに賛同できない。
・木材はおてんとう様で乾かすのが一番。木材の含水率は40%程度の一夜干し程度を大工が手刻みで加工するのがよい。
・木材を人工乾燥させ、プレカットで瞬時に建てる工法は採用しない。
・オール電化はなるべく採用しない。高価な電気はガス・石油から作られている。
・太陽光発電は昼発電するので、昼電気を使う人にはよい。蓄電池はコスト高になる。できれば太陽熱温水器の方が効率は良い。
・ウレタンフォーム断熱材は使わない。もし火災が起きたとき、有毒ガスが発生する。
・壁は少々コスト高になるが羊毛ウール断熱材をつかう。天井は鉋屑を断熱材として使用する。性能が落ちるので厚く使い性能アップを図る
・自然素材でも外材は使わない。輸送時に多量のエネルギーを使っては、本末転倒である。

4. 熊本の季節を考える

・できるだけエアコンの使用を少なくする家づくりを目指す。
・南の庇は1m以上出し、夏季に直射日光を家の中に入れないようにする
・風の出口のルートを確保し、家の中の風通しを良くする
・家の内装には吸湿する材をつかう。普通の家より10%湿度を下げる工夫をする
・畳は藁床にして吸湿性を上げる
・漆喰を使うが、ボード漆喰は吸湿性が低いので採用しない。土壁かプラスター塗りを下地にする
・どうして北海道の珪藻土を使うのか。土を使うなら、熊本の土で充分だ。厚く塗ればよい
・高気密・高断熱・24時間換気扇義務化の家にしない。自然の風通しを工夫する

5. 健康のことを考える

・最近の新建材は、何が入っているか分からない。防カビ剤、脱色剤、防腐剤、など。
・冬、過乾燥にならない建材を使う
・防蟻工事はしない。防蟻剤の効能は5年で、永遠に塗布しなければならない。石場立てで床下を解放し、白蟻が付きにくいような工法にする

6. 長寿住宅を考える

・サイデングを使わない。内部の木を密閉して蒸れてしまう
・屋根はいぶし瓦を使う。瓦には少しの重ね部があり、通気している
・野地板は無垢材をつかう。野地板合板の寿命は30年
・接合に金物は使わない。金物と木の接合では、30~40年で木が腐食している
・熊本での高気密・高断熱住宅は相当の施工技術が要る。ローコスト住宅はその技術がなく、30年が寿命である。
・新建材の寿命は30年、合理化屋根材は40年が寿命
・新工法より、90年耐久の日本の伝統構法は長寿命
・品確法で75年耐久というのは、構造だけの話で、内装材、外装材は30年毎に交換しなければならない材もある。
・総2階の家にはしない。雨ががり部が多くなり、家の寿命が短くなる。庇を付けるなどの工夫がいる。

7. 総合的に熊本でできるだけ完結させる

機器関係や瓦は仕方がないが、出来るだけ多くを熊本産の商品を使う。ローカル主義の経済活動だ。
・杉がよいのではなく、杉が取れるから使うのである。
・杉材は香り・艶・温かみ・粘りを考えると最高の材料である。うまく使うには大工の技術がいる。プレカット費用は全国の格差が少ないが、大工の賃金には差がある。熊本には職人がたくさんいるので、熊本の木で、熊本の職人の手で家をたてないと損である。