雑誌「建築ジャーナル」に掲載されていました”古川保のこんなもの要らない”。 本当に「こんなものいる?いらない?」そしてこんなものはいったい「誰のため?」真剣に考えてみましょう。
伐採した直後の木材は、多くの水分を含んでいる。木の繊維の重量が100gとすれば、含まれる水分の量は130-200gだ。その量を含水率130-200%と表現する。木材が乾燥して含水率が27%以下になると、収縮がはじまる。空気中の湿度と平衡になる15-17%まで乾燥は進む。板状の木材は反り、芯のある芯持ち木材にはヒビ割れが発生する。しかし、このヒビ割れは、ほとんど構造上の梁や柱の強度には影響を与えない。
ヒビ割れを嫌い、わざと前もって木材の縦方向に溝を切ったものを背割りと言う。一見、柱に柱の半分程の深い溝を入れる背割りは、木材の強度を大きく弱めるのではと思う人もいるが、これもヒビ割れと同じく、構造的強に影響は少ない。木材が乾燥収縮する時に、背割りの溝が開くことで、その他の部分にヒビ割れが発生しないようにするのだ。強制的な背割りより、自然のままのヒビ割れが木にとっては良いと私は思う。
ヒビ割れを防ぐために、人工乾燥すれば良いとの話がよくあるが、天然乾燥でも、人工乾燥でもヒビ割れは入るもの。人工乾燥のヒビ割れは木材の中心部に集中的に発生し、自然乾燥の場合は外周囲に発生する。見えない部分の中心部ヒビ割れより、外周ヒビ割れのほうが、ヒビ割れを確認してから加工が出来るのはむしろ利点ではないだろうか。また、人工乾燥は急速乾燥により、せっかくの防虫効果がある樹液成分が抜けてしまう。
背割りやヒビ割れは、材の構造強度には、ほとんど影響ないという、構造家の山辺豊彦氏の計算データがある。(ア)はヒビ割れの無い木材(イ)は半分に背割りやヒビ割れが発生した木材(ウ)は完全に割れた木材。それぞれの強度は(ア)28.8キロ(イ)28.7キロ(ウ)12.7キロとなっている。
(イ)の背割りやヒビ割れには、ほとんど強度低下がないということが解る。ヒビ割れは芯を越えて進まないため、(ウ)のような貫通割れとなることはありえない。ありうるのは、集成材の接着離れだ。最近集成材が普及してきた。集成材は新しい時は強度が出るのだが、接着製品だから、いずれ接着剤の強度が弱まり、あるいは木の伸び縮みの繰り返しで接着剤が剥がれる。集成材には(ウ)の状態になる危険性を含んでいる。常に乾燥している体育館などには良いが、台所や浴室があり乾燥・湿潤を繰り返す住宅に構造用として集成材を使用することは特に考えものだ。強度を期待しない家具や湿潤の少ない体育館などの使用にとどめておくべき。
しかし、集成材には初期強度があるため、コマーシャル掲載には都合が良く、土台・柱・梁全てに集成材を採用しましたと誇らしげに訴えるメーカーが増えてきた。接着剤の耐用年数がきて、急激に耐力が落ちることには言及しない。タダ同然の木材の端材を接着剤でつないだ集成材を柱や梁に使わなくても、本物の木が山に山のようにあるではないか。 木材を本でしか知らず、集成材の接着離れは木材のヒビ割れと同じだから心配ない、と力説している建材メーカーの御用学者がいるので要注意。
最近の住宅間取りをみると、一見よくまとまっているように見える。りっぱな玄関には、吹き抜けがついている。座敷にはきちんと床の間もある。寝室にはウォークインクロゼットはもちろんのこと、子供室にもクロゼットがついて、5DKで、総面積は28坪に納まっている。要素が、少しずつ含まれている。幕ノ内弁当みたい。 部屋毎にシリーズ化して紹介していきたい。玄関から考えてみよう。日本の民家の玄関は、単なる入り口ではない。接客場であり、雨の日は作業場でもあった。そのため広さは10~12畳ぐらいあった。その多機能な玄関を現代風にアレンジしたもの例をあげてみる。
1、 民家の玄関の構造はそのままにして、応接間として改造した。12畳の広さでお客を接待するのは、気持が良い。閑古鳥が棲みついている来客専用の二間続きの和室36M2は,他の用途に改造ができる。
2、 薪ストーブは薪の汚れや灰の落ち等でストーブ周りは結構汚れる。玄関に置くほうが良い。土間をあければ居間であり、ストーブの熱が家全体にひろがる。土間と床の段差の分ストーブを上げてやらないと、上り框だけを暖めることになるので注意。
3、 民家の玄関の上り框の下に物入れがあった。物入れ建具をつけると敷居・鴨居が必要となり、収納量の割にはコストが高い。土間部分を床下に少し延ばして、角木材の蓋を置いておくだけで建具の代用になる。床下の気温は低いので、その葢を開ければ床下の冷たい風が入ってくる。
4、 土間のことを三和土と書く。土と石灰と砂の三様を混ぜたことから漢字ではこう表現する。つくるときは、とにかく土と石灰と砂を混ぜたものを木鎚で数時間たたかなければならないので、ひらがなではタタキと呼ぶ。おもしろい日本語である。
この三和土の下はコンクリートであってはならない。地球の土とつながっていなければならない。土の湿度と地下の温度の影響をうけるようにしたがよい。夏期は適当な湿度があり、ひんやり感がある。猫が土間の三和土に頬をすりよせているので、、表面温度を計測したら、他の表面温度より2度が低かった。土間の三和土は地球につながっているので、水をまいても良し。ちなみにここの施主は乾燥を嫌い、冬期乾燥したとき、この土間の三和土に水撒きをする。湿度が10㌫上がるとのこと。
電気代の要らないローテク加湿装置でもある。
ベニア主体のフロアー材が、床仕上げの主流になって30年になる。30年経つと、ベニア積層の接着剤が剥がれ、床がブヨブヨになってくる。床下の湿気が原因で、床下の木が腐れ、床がブヨブヨになったと思い込んでいる人は多い。それで、床下湿度への関心は高い。夏期、室内温度より、床下温度が低いので、床下湿度は高くなる。相対湿度と絶対湿度の関係でそうなるのだが、理科離れが多くなった現在では、その現象を理解できない。訪問販売員のかっこうの餌食となる。販売員は、床下室内と床下湿度の比較表を見せる。床下湿度が高いのは当然なのに、床のブヨブヨが、床下湿度が原因と勝手に思い込む仕掛けである。そして、高額な、床下換気扇設置や床下ゼオライト敷き込みが行われる。 1、 床下換気扇 床下換気扇は、ほとんど効果がない。メーカーのカタログには、効能表が掲載されている。普通、床下空気の流れを遮断する間仕切り基礎の切り欠きは、換気扇の風の流れを意識せず、筋交いとの関係で、位置を決める。 又、外気は常に風速2Mぐらいの風が吹いているので、この風に床下換気扇の風は押される。無風状態での実験数値は、全く現実的ではない。床下換気扇の効果が無いことを証明した行政機関のデータがある。 熊本県林務水産部が、同じ間取り同じ条件に立地している県営住宅3棟で実験したデータである。みごとに床下換気扇の効果がゼロであることを証明している。「別表1」 2、 ゼオライト ゼオライトという吸湿材がある。床下乾燥を目的に売られている。訪問販売が主である。ある住宅の床下に敷きこんであった。100年前に建てられた石場立工法で、床下はスッポンポンに空いていた。そのゼオライトは外部からも確認できるほど床下は空いていた。アラレのようにパラリと撒いてあるだけで、ななんと、50万円ものお金を払ったとのこと。赤マムシドリンクと同じく、効能が全く無い訳ではない。除湿という効能は、新聞紙を床下に敷いたぐらいの効果はあるだろう。 3、炭 炭パワーがブームである。空気中の湿気を吸収したり、放出する機能だけでなく、電磁波を遮断したり、ごきぶり防除、防蟻効果、100年耐久、消臭効果、磁場発生、赤外線発生、マイナスイオン放出まであるという。この誇大広告には、赤マムシドリンクメーカーも真っ青。 炭には調湿効能だけを期待したい。活性炭や竹炭より、目詰まりが起きにくい杉・桧の針葉樹の炭がよい。しかも安い。10cm敷き込んで3000円/m2が正当な価格である。 「別表1」 熊本県林務水産部林業振興課による、熊本県立大矢野高校職員住宅での実験
グラフが不鮮明です。きちんとした資料が欲しい人は、建築ジャーナルを購入されるか、当事務所まで、連絡いただければ FAXで送ります。
8年前に設計した住宅のアルミサッシュの金物が壊れた。そのサッシュは、モデルチェンジをしており部品の在庫が無く、工場からの取り寄せとなった。部品代は百円だったが、配送料が千円もかかった。廃番になったら7年間は部品をそろえることができるが、その後の保証は無いとのことだった。アルミサッシュの部品の数が多いのは分かるが、消費者の立場からすると、サッシュの寿命まで部品は揃えておいて欲しい。アルミサッシュのカタログは、本棚の40~50センチ幅を占めるくらい多い。部品の数となれば天文学的数字になるだろう。更に、装飾サッシュともなれば、メーカー間競争のため、3年おきに新製品と廃番が繰り返される。施工業者の方は将来のアフターに、どう対処されるのだろうか。その点木製サッシュは、戸車や丁番の交換はたやすい。
木製サッシュファンとして、まず、アルミサッシュより木製サッシュが勝る点をのべたが、その他は、少々分が悪い。言い訳じみていると思うが聞いて欲しい。
木製サッシュは、雨に濡れても大丈夫ですかと、開口一番に質問攻めを受ける。百年以上外部に取り付けられた木製建具の建築は山程存在する。それらの建築の軒は長い。木製サッシュが傷む原因は、軒を短くするからである。木製建具は古くなると動きが悪い。戸車が錆付いて動かないのだ。木の腐れより、鉄の錆付きが早い。戸車を交換すれば、信じられないくらい滑らかになる。
木製サッシュは木なので、当然乾燥・湿潤で伸び縮みする。又、反る。そのため、建具間のクリアランスを3-5ミリとる。すると隙間風がはいる。シックハウス法では換気扇の吸気口設置の義務がある。建具の隙間はその吸気口の性能を充分満たすはずだが、しかし、建築基準法の性能規定は名ばかりで、仕様規定で指導を受け、部屋毎に吸気口を付ける。その吸気口を、ほとんど検査後塞いでいる。(高気密住宅以外)なんと資源の無駄使いが強いられていることか。
最近ペアガラスが増えている。5ミリのガラスが二枚ともなれば重くてしょうがない。 それで最近の窓は小さくなった。高温多湿の日本では窓は大きいほうが良いに決まっている。写真1・2
写真1
写真2
重いから窓も開けない。地球温暖化の先進国ニッポンの気温は上昇し、エアコンがフル活動となる。高気密高断熱の普及に比例して、エアコン設置が増え、民生のエネルギー消費量は増えつづけている。夏のことを考えれば、重いペアガラスは害である。内側にカーテンではなく障子をつければ良い。断熱効果はペアガラスより、内障子が上である。写真3
写真3
日本では網戸は必須である。ニッポン温暖化で、もうすぐマラリア蚊がやって来る。展示場や住宅雑誌の写真では網戸は外してある。オプション尽くめの展示場なのに、標準品の網戸が無い。アルミサッシュの網戸はぎこちない。その点木製建具の網戸は自由自在。二枚ガラス戸に二枚網戸も可能である。網戸の格子を付ければ、防犯性能もあり、夜は網戸のままで就寝が可能で、エアコン不要となる。
エアコンは部屋の中の空気は冷やしているが、屋外機は温風を出しているので、外気を温めている。外気温が上がれば、更にエアコンの能力を上げなければならない。電力会社は笑いがとまらない。設計者諸君、自然保護や環境問題を唱えるのであれば、エアコンを極力使わないよう、網戸の工夫をしましょう。写真4
写真4
「37やっぱり木の風呂」の続編である。木の風呂といっても、浴室の内装が木の仕上げの場合と浴槽が木製の仕上げの場合がある。それぞれについて、説明しよう。
浴室の内装が木の仕上げについて
浴室の内装壁仕上げに使われる木の種類として、青森ヒバ、米ヒバ、桧、米桧、槇、赤み杉、米杉がある。国内につくるのなら、国産の木を使うのが当然。赤み杉、青森ヒバ、桧が国産である。節はあってもよいが、死に節や埋め節は、浴室内湿潤と乾燥の繰り返しで、節が外れるので生き節が良い。浴室の壁に板を使ったら、カビが生えないかと良く聞かれる。温泉旅館の浴室でカビが生えている場所は水がかかる場所と、木材を横に使った場所である。木は横使いしてはならない。水切りの役目としては、縦張り板を下部タイルより6ミリ出せばよい。壁の木は熱貫流率が小さいため結露は発生しない。タイルは熱貫流率が大きいので結露が発生する。壁の木も、かかり湯で壁が濡れるとカビが生えるので、浴室の広さは1坪以上は欲しい。最近のユニットバスは狭い浴室に湿気を密閉して封じこめる仕組みなので、浴室内は湿度が常に100%である。ユニットバスの塗装には防腐剤が含まれていて、カビは発生しにくいが、洗面所に湿気が流れると、洗面所の壁にカビが生えやすくなる。よってユニットバスのドアは洗面所に湿気が流れないように、いつも閉めておくか、換気扇を廻すことになる。
逆に、板壁仕上げの浴室の設計は、浴室内の板だけに吸湿させるのではなく、洗面所の壁や天井材にも吸湿を負担してもらう。それには、出入口の上に欄間空気出入口を設けると良い。冬は浴室・洗面所の戸を開けっ放しにすれば、浴室の湿気が家中にまわり、格好の加湿装置になる。
外部の開口部は浴室の対角線上に、立面的には下部と上部に2ケ設けたら良い。洗面所に欄間があれば、外部の開口はグリル程度で良い。換気扇に頼らない、昔からの浴室設計の知恵を学んで欲しい。
桧の風呂について
材質価格は、高野槙・桧・青森ヒバの順に高い。高野槙はヒバの価格の2倍もするが、1.2倍ぐらいしか長持ちしないので得策ではない。高野槙・桧・青森ヒバの材質は芯材・辺材の区別がつきにくい。芯材は腐れに強いが、辺材は弱い。隠れた部分に辺材が使用されていないか調べた方が良い。桧の集成材の桧風呂があるが短命な商品である。
大きさFRPや人工大理石の浴槽は1400サイズが多いが、内部の形が逆富士になっているので容量は300L程度だ。桧風呂の内部は真四角なので、1100サイズでも300Lだ。手作りなので自由に大きさを注文できるが、大きすぎないように注意しなければならない。
価格:青森ヒバの1100サイズで、商社を通して購入すれば40万円は下らない。生産者から直接購入するのがよい。オール芯材使用で、熊本市川尻の片岡風呂工業所価格で28万円だ。決して高くはない。一品手作り生産なので、一ケ注文しても百ケ注文しても価格は同じ。商社や問屋を経由する意義は無い。
手入れ 木の風呂は手入れが大変で長持ちしないという話をよく聞く。どの程度の手入れが必要か。長持ちさせるには、常に乾燥状態にしておくことだ。方法としては、お湯を熱いうちに抜く。洗濯に利用する場合は、夜のうちに洗濯機にいれておく。そうするだけで、耐久年は15年とは片岡風呂工業所の弁。木の風呂は乾燥し過ぎると木材が乾燥して木の継ぎ目から水漏れを起こす。一週間以上家を留守にする場合は、風呂の中に水を張ったバケツを置いて加湿する。
風呂の葢 桧風呂に蓋をすれば蓋とお湯の間が一番腐り易い。蓋をしない方が良いというがそれでは、お湯が冷めてしまう。問題は湿った空気層なので、桧風呂の内寸法に合わせた落とし蓋をすれば、湿った空気層が無くなる。落とし蓋は壁材の残りで作れば1万円ぐらいだ。
ドアの上の通気口 | 桧風呂 | 横使いの木は無い |
建築ジャーナル 2005 10月号掲載
日本の山林業活性化のために、たくさんの乾燥釜とプレカット工場が、国の補助金で出来た。プレカット工場をつくり、建築生産効率をあげれば、住宅着工棟数が伸び、日本の木材の消費が増えるという変な論理であった。乾燥釜とプレカット導入は、外材を輸入しやすくするための土壌つくりで、山が死に体になると批判した人もいたが、当時、だれも耳をかさなかった。しかし、その批判予想が当たった。国産の杉材は人工乾燥すれば材が変質するので、利用者が少なく、むしろ、乾燥業者は米松材の乾燥に多くを利用するようになった。日本の超大手の木材業者も国の補助金を活用して、九州に特大乾燥釜を設置し、主に外材を乾燥している。本来の補助金の目的通りに国産材しか乾燥しない釜は遊んでいる。石焼芋でも焼けばよいのにその知恵は無い。
全国に散らばっているプレカット工場の殆どは、補助金で作られているが、そのプレカット工場の生産材は米松が主体である。山林業者は政治が、山を救ってくれると思って、選挙では与党を応援する。しかし、与党はアメリカを向いており、外材輸入の政策を打つ。敵に塩を送っている行為だ。山の人たちは、自殺願望者と同じだ。自殺願望者の自殺行為をなだめるより、自殺願望を成就させるほうが、本人にとっては幸せなのかもしれない。国はインポート政策で外材輸入促進をしつつ、片方で、国産材使用のために、国産材使用のパンフレットを山ほど印刷している。そのパンフレッとの紙の原料が、国産材であれば少しは山のためになるのだが、ほとんど外材のパルプである。
いや、政府が応援しているのは、山側の為ではなく、建築業会のためという人がいる。建築職人がいないので、プレカットはしょうがないという意見である。建築職人がいないとは、東京の話で、日本の地方には職人が山程いる。日本中、建築職人は遊んでいる。仕事をくれという建築職人グループが立てた看板を、道端でいつも決まって春期に目にするが、プレカット工場の打ち壊し運動をした方が良いではないだろうか。道に向ってアピールして、効果があるのか。
木材加工業界は、プレカットの利点だけを強調する。木造住宅の80%以上が利用している現状は、本当にいいことなのだろうか。
「プレカットは手刻みより強度がある」?
プレカットそのものに強度があるわけではない。プレカットの加工材は金物で接合するので、その金物の強度が出るという意味。金物取り付けは新築時強度が出るのは確かだ。(その分木材の大きさを小さくしてある。こんな細い材料で大丈夫だろうかと疑問をもつ家が多い。計算上、大丈夫なのだが)しかし、20~30年経過したら、金物は結露で錆が発生し、金物接合が強度低下を起こす。手刻み強度は永遠に変わらない。民家再生を経験している人は認識していると思うが、金物接合部分は足で蹴っただけでパラリと外れる。長?コミ栓部分はキッチリ接合されている。手刻みの仕口・継手が長持ちしている証拠。
「プレカットは精度が高いので強い」?
プレカットの精度は+-0.5ミリと精度を自慢する。手刻みでは、大工は木材の仕口・継ぎ手の凸材は墨付けの外側に鋸を入れ、凹材は墨付けの内側に鋸をいれる。精度はあえて言えばー3ミリである。木材の弾力性を利用して、組み立てる時、ボンゴシで叩きこんで入れる。プレカットは金物接合で成りたっている。上棟時、早く金物で留めないと危なくて2階には上がれないと大工は言う。時間が経つと木材は乾燥収縮する。接合部の金物はゆるゆるになる。プレカットはほとんど大壁仕様なので、金物は壁の中で金物のゆるみは発見できない。バネ付の金物も発売されているが30年以上バネの効果は持続するのだろうか。精度が+-0ミリは利点ではない、むしろ欠点であろう。
「プレカットはコンピュータで制御され、合理的でトータルコストが安くなる。」?
コンピュータは人ができないような高度なことを行うものだ。大工は一人前になるまで5年かかる。プレカットはコンピュータだと言いつつ、加工できるのは、蟻継ぎ・鎌継ぎ・短ホゾ程度で、大工のレベルで言えば、修行一年目の大工程度。 プレカットは、大事な家づくりを修行一年大工に依頼するようなもの。 確かに、構造組み立ての費用は手刻み工事より30~40万円安くなる。しかし、プレカット木材は木材含水率20%を要求するので、天然乾燥程度では駄目。人工乾燥をしなければならない。人工乾燥費用が30~40万円かかる。結局、安くはならない。天然乾燥でプレカット工法を採用すればとんでもないことが起こる。家はガタガタにゆるみ、気が付く時は保証期限も切れ、30~40万円の金では済まない。
「プレカットは建築技術が途絶えるのでは」?
プレカットの組み立ては、墨付けが出来る大工が行っている。つまり、プレカットは大工の下請けに等しいので、現場ではプレカットの間違いを、大工は即座に判断して対応している。プレカットが多くなり、墨付け技能を持たない大工が増えてくる。日本の大工技術は途絶える。
「プレカットは工期が早い」?
大工で5週間必要な作業が1週間で終わるので約一月の工期短縮になる。立ち退き等で、本当に短工期が必要な人はユニットプレハブ住宅を家を建てるが良い。
「プレカットは手刻みより建築コストが安くなる」?
建築の一番大事なところは、木材の墨付けと刻みである。プレカット工場の機械に、木材を入れる作業は、主にパートのおばさんが行っているので、コストが安くなるのは当たり前。家づくりの急所を時給610円の人に依頼していることになる。 木には、裏・表・腹・背があり、加工方向を指定しなければならないが、パートのおばさんにその判断が出来るわけがない。非常に間違いが多い。専門家がいないので、その間違いにだれも気付かない。
40坪の家で総額40万円安くなるが、家の質は40万円以上安くなっている。家は大工さんが建てるものと消費者は信じている。プレカット住宅は住宅構造の一番大事な構造材の加工を、時給610円のおばさんが作っていると言って良い。
では、プレカットは悪いことばかりで良いことはないのですか?
あります、あります。下手な大工でも建築が可能。
総まとめ
プレカットは外材輸入促進行為。
プレカットは大型ショッピングセンターと同じ。
プレカットは日本の大工技能つぶし。 プレカットは住宅の質落とし。
プレカットはフランチャイズを促進し詐欺住宅が増える。
プレカットは日本の山をつぶし、外国の不法伐採促進の一翼を担っている。
プレカットは人工乾燥を促進し、重油を多量に使うため、地球温暖化行為だ。
プレカットは建築失業者を増やす行為。
プレカットは曲がり木には対応しない。木に従うべきで、機械に従うにはおかしい。
曲がり木も利用する手刻みが日本の大工技術を生んだ。
建築ジャーナル 2005 11・12月号掲載
技術は、はたして人間を幸せにするのだろうか。
技術が、建物の寿命を短くし、人の健康を蝕み、景観を悪くしてはいないだろうか。
クロルデンという薬剤は、薬効が長く続き、夢の防蟻薬剤であった。その長期薬効が地球上に残留し、食物連鎖に悪い影響を及ぼすということで、諸外国は早々に使用禁止となった。日本は遅れること10年、アメリカからの一声で使用禁止になった。
ホルマリンは、クロス糊、塗料、接着剤、化粧合板、フローリング、床塩ビシート等建築建材のほとんどに含まれていた。安くて防腐効果があり、夢の建材であった。ホルマリンから放出されるホルムアルデヒドが原因でシックハウス症候群なるものが発生し、社会問題となり諸外国に遅れること10年後ようやくシックハウス規制法ができ、使用が制限された。
フロンは冷蔵庫やエアコンの冷却ガスに使用されていた。地球温暖化を引き起こすという理由で使用禁止になり、冷蔵庫やエアコンからの吸引回収が義務づけられた。意外と知られていないのが、ウレタンフォームという断熱材にも含まれていることだ。その建材には冷蔵庫やエアコンと同じ量のフロンが使われていた。断熱材の中からフロンをどうやって取り除くのか、方法が解らないから回収の義務は無い。
焼き栗のごとく、夢の建材がまたまた弾けた。アスベストだ。上の三つとはちょっと訳が違う。アスベスト(石綿)の毒性は、S55年にはすでに認知されていたのだ。アスベスト(石綿)の危険性は周知されていたが,使い続けられた。
事務所に10年前のある建材サンプルがある。ノンアスベストと書いてある。しかし昨年、日本石綿協会が発表した石綿含有建材一覧表では2001年まで発売していたことになっている。
又、「アスノン」という防火板と「ノンアスエース」という左官混和材がある。この建材にも石綿が含まれていた。なんという商品命名だ。
石綿建材を使用していたある建設会社は、規客に「天井や壁などの断熱材として使用されているロックウールや、岩綿吸音板はアスベストを一切含んでおりません。岩綿は石綿と混同され易いのですが、アスベストとは全く異なり、身体への影響はありません。WHOではロックウールの発ガン性は認めていません」と説明している。日本石綿協会は、ロックウ-ル吸音板にもアスベストが含まれていたと発表したというのに、どうなっているのだろうか。
諸外国ではアスベスト(石綿)そのものの使用を制限したが、日本は吹き付け石綿しか制限しなかった。それで、日本は中国に次ぐ世界2位のアスベスト(石綿)輸入国となった。代替品が無いというのが理由だったが、アスベスト(石綿)が問題になったとたん、全メーカーが、代替品に切り替えた。なんというスピードの速さ。
外国では不燃の程度を、性能で規制する。つまり、木であっても厚ければ、防火性能があると判断する。日本では、建材の名前で指導する仕様規定である。日本の建築基準法も、H12年より性能での規定を加えたというが、申請費用が高いので新建材メーカーしか利用していない。新建材ひいきの建築基準法が、アスベスト使用を助長させたと言っても良い。 外壁材でよく使うモルタルは20mmの厚さを使わねばならないが、石綿板(アスベスト)だと3.2mmで良い。
これからの問題は、日本国内の石綿建材そのものの存在だ。現時点で、吹き付け材の除去費用は天井だけで2万円/M2必要。作業時間は一人2時間までしかできないし、作業服は全て焼却処分なので、高い除去費用になる。アスベスト(石綿)を地球上から無くすには、高温による熱処理にするという。燃えないのが利点のアスベスト(石綿)を熱処理と聞いただけで、費用の高さは想像できる。あまりにコスト高なので、アスベスト(石綿)封じ込めが行われている。今月の雑誌の広告で、解体費用より、コスト安になるというアスベスト封じ込めの新建材が発売になった。商魂のたくましさには頭が下がる。
耐用年数が来て、膨大なアスベスト処理をどうするのだろうか。問題解決の先送りは日本のお家芸である。 最近の合理化パタパタ住宅は、アスベストとフロンとダイオキシンの塊である。地球温暖化先進国日本は、国土温暖化で滅亡するのではなく、アスベストとフロンとダイオキシンのゴミ処理で滅亡するだろう。アスベストは明日ワーストと改名するのが良い。
建築ジャーナル 2006 1月号掲載
阪神淡路大震災時、瓦屋根は地震に弱いと悪者扱いされ、神戸の復興建築には瓦屋根の家はほとんど無く、石綿スレート瓦と鉄板屋根の家に変わったと聞く。地震のことだけ考えれば、屋根の軒は短くて、屋根材は軽い方が良い。一方、台風のことだけ考えれば、屋根は重いほうがよい。ハリケーン「リタ」や「カトリーナ」の映像を見れば軽い屋根の家は紙みたいに風で飛ばされていた。戦後、沖縄に米軍が2×4住宅を持ち込んだが、スレート屋根の家はことごとく台風に飛ばされ、2×4住宅は消え去りコンクリート造の家が普及した。
台風は1シーズンだが、地震の不安は毎日のことなので、軽い屋根の方に軍配を上げてしまう。瓦は台風で飛ぶので全部固定すべきだという意見がある。リフォーム詐欺メニューの一つに瓦コーキングがある。石油製品のコーキングは何年の耐久性があるだろうか。アントニオ猪木がTVの画面で薦めるので、消費者は信用してしまう。瓦屋根は一枚一枚が独自の動きをし、地震のエネルギーを吸収する役目もあるので、全部をコーキングで止めたら逆に地震には不利に働く。
瓦は台風の被害が際立ってみえる。8年前の台風で、瓦棒鉄板屋根瓦棒の家は、小さな傷を多数受けた。見るからには被害は少ないように見えた。40センチ×5メートルに一ヶ所でも傷があれば全部交換となる。結局その家の屋根は全部葺き替えることになった。工事が大変なので、修理が終わったのは、台風が去って半年後だった。1方、瓦屋根の家は200枚の瓦が破損した。外見ではものすごい被害のように見えた。しかし、瓦代は3万円。手間代を入れても10万円だった。被害金が少ないので保険は下りなかった。補修時間は2時間程度だった。瓦は基本的に建物とくっ付いていない。予想以上の地震や台風の外力がくれば、ずれて落ちる。そして建物本体の倒壊を防ぐ。
軽い屋根は遮熱性能が悪く、目玉焼きができるほど温度が上昇する。当然屋根裏には相当の断熱材が必要となる。最近では新工法による複雑な断熱工法が星の数ほどあるが、その原理を大工はほとんど理解していない。軽い屋根材ほど、温度差があるので結露が発生しカビが生える。しかし、防水のためのアスファルトルーフィングが黒色のためカビに気付かない。屋根下地にコンパネを使った家の屋根がブカブカするのは漏水のためではなく結露が原因の場合が多い。不具合が発覚するのは20年先の話。断熱性能があるイブシ瓦は結露の発生も無く、九州では凍害も無く、耐久性が他の屋根材に比べ長い。弊社の屋根に現存するイブシ瓦は100年間そのまま乗っている。
健康面でも、固形化したアスベスト屋根材は安全だというが、工事中も危険だし、除去時も粉塵が舞い上がり危険。役目が終わったときの処分は安定型埋め処分のため費用も高い。イブシ瓦は廃棄処分するとしても原料は粘土なので、やがて土に戻る。専門業者に処分を頼なくても、我が家の車庫の下にでも敷き詰めれば良い。
イブシ瓦は地震や台風後の修繕・耐久性・断熱性・処分等を総合的に判断すれば非常に優れている。しかし、利益追求の施工業者は石綿瓦やセメント瓦を採用し、建築家はデザイン性を一番に追及し、新鋭作家になりきって鉄板屋根を良く使う。
屋根にはイブシ瓦が一番よいと思うのだが。
建築ジャーナル 2006 2月号掲載
大工は金物を嫌う。設計者は金物が好きだ。この違いはなんだろう。
経済設計という言葉が、姉歯事件以来、話題に上がる。今年の流行語大賞になるかもしれない。例えば給湯の熱源で灯油・ガス・電気で何が経済設計ですかと問えば、ランニングコスト、燃費、耐久性、イニシャルコストを総合的に判断して答えを出す。しかし、設計業界では、とにかく新築時のコスト安を言う。安普請住宅と経済設計住宅の差を見つけるのはむつかしい。その安く安くの追求は木造の場合、木材の部材を細くすることである。ホテルやマンションの鉄筋量を減らすのと同じ理屈である。木造の場合、部材を細くしても、金物をたくさん付ければ初期強度は出る。むしろ、金物をたくさん付ければ、強くなると思っている人もいる。金物設置はほんとうに強度が出るのだろうか。
熊本県立大学で、長ホゾ込み栓と金物の実験をしてもらった。材料と加工は私たちの個人的なグループが行ったので、正式なデーターではないが、参考にはなると思う。
柱材:杉 | 土台:桧 | 込み栓 | 金物 | 最大強度 | 破壊部分 | 認定強度 1460号 |
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試験体1 | 120 | 120 | 樫18 | 16KN | 土台 | 6.5KN | |
試験体2 | 120 | 120 | 樫15 | 14KN | 込み栓 | 6.5KN | |
試験体3 | 120 | 120 | T字プレート | 16KN | 金物 | 10KN | |
試験体4 | 120 | 120 | 山形プレート | 6.5KN | 金物 | 10KN | |
試験体5 | 120 | 120 | 樫15 | 6.5KN | 込み栓 | 6.5KN |
* 認定強度とは国土交通省通達1460号による強度
* 試験体と表の数値には差がある。
考察1 試験体1・2は、認定強度が低すぎる。データーの元になる試験体の実験が、柱は米栂10.5㎝土台は桧10.5㎝の材料で行われているからだ。細い材料で実験をして、長ホゾ込み栓は弱いと言っているのである。金物は木材の大きさには関係がない。(表1)(試験体1.2)
考察2 新築の時の強度だけで評価するのはおかしい。数年たてば金物は錆びる。釘の頭が錆びれば金物は外れる。ワインは数年経ってから味の評価をする。家はワインより高いのだから、せめて金物を20年暴露した後、実験して欲しい。そしたら、釘でとめた金物より長ホゾ込み栓の方が優位であることが分る。
考察3 長ホゾ込み栓は手刻みのため精度に個人差がある。金物は施工が統一化され安心という意見がある。これは違う。金物だって同じこと。指定の釘を使うこととなっているが、工事現場をみると、金物接合には壁板を打つ釘を使っている。その釘の現し期間が短いので検査確認は見落としが多い。金物施工が安心というのは夢物語。(写真1)
考察4 補強金物には山形プレートとかど金物CP.・T字はある。試験体3と試験体4はその比較である。山形プレートは10KNの認定をもらっているのに実験では6.5KNしかない。材料が悪かったのか、普通釘だったのか、実験が悪かったのか良くわからない。所詮、金物はこんなもの。(表2・3)(試験体1.2。3)
考察5 試験体2より試験体1が強いので、試験体1のように18の込み栓が良いと判断するのは早合点すぎる。試験体2は母材は傷がつかず、込み栓が破壊する。試験体5は、破壊した仕口をもう一回接合して実験をしたものである。仕口の最高強度を14KNしか期待せず、想定外の地震がきたら、母材より込み栓が先に破壊するようにする。そして再度込み栓を入れ直して、再建築を可能にする。こんな場合にこそ補強金物を使う。補強金物は補強のために存在するのに、構造の主人になっている。修理のことを考えた仕口が、理に叶った経済設計だと思う。(表4)(試験体2・5) まあ、問題が発覚するのは、20年後だし、構造計算偽造と比べれば、釘の錆はたいしたことないと思うのはおっかないね。
建築ジャーナル 2006 3月号掲載
4月から施行の電気用品安全法で揺れている。6月からは、全住宅に火災警報器の設置義務が発生する。台所だけでなく階段・寝室全部にも付けよとの御達しである。家庭の中まで法律が入り込み、日本は親切な国である。どこが小さな国家を目指すのか。法律を作れば、当然、審査する業務、検査する業務が増える。関係者の増員も必要となる。 住宅火災警報器レベルの規制があるのであれば、次のような規制が作られると予想する。
- たばこを吸う人の部屋は、石綿等の不燃建材で仕上げた内装にしなければならない。タバコと石綿は、肺がん発生原因が重複するので、法律として、重複規制は望ましくない。よって、たばこを吸う人の家は石綿建材を使っても良い。又、灰皿は防火ダンパー付きのものにすること。
- 仏壇は、原発の活用とオール電化促進のため、電気式蝋燭が望ましい。燃焼蝋燭を使用する仏壇の内部仕上げは、木製の漆仕上げを使ってはならない。ただし、アスベストを吹き付けた仕上げであればその限りではない。
- ホカホカ懐炉は低温火傷の原因である。使用する場合は、使用する1週間前までに、所轄の消防に届けなければならない。
- 炭火焼や囲炉裏設置のレストランがある。不燃建材で仕上げなければならない。また、焼き鳥は電気オーブンで焼かなければならない。ただしアメリカ産の牛肉を使用する場合は規制をかけない(アメリカに怒られるため)。電気メーカーは鉄串式の電磁波囲炉裏の開発を促進する。補助金制度新設。
- 香取線香は日本消防検定協会認定の商品を使用しなければならない。認定機関は民営化の思想から民間に移譲する。民間の資格は、消防車に乗った経験の有る人か、大学教授の経験がある60歳以上であること(指定確認機関と同じ考え)。機関発足は2007年から。(人材確保のため)
- 石油ストーブは、延焼のおそれのある距離3メートル以上離さなければならない。ただし網入りガラス等遮熱板で周囲を囲えばその限りではない。
- ガスレンジを使用する場合は、防火管理者を指定しなければならない。防火管理者は年に1回以上の非難訓練をしなければならない。
- ゴルフのメタルクラブは落雷の恐れがある。メタルクラブは、室内での使用が望ましいが、屋外で使用する場合はクラブに5センチ以上の絶縁石綿断熱材で被うこと。
- 老眼鏡の凸レンズが集光して火災発生の原因になることがある。老眼鏡を窓側に置いた者は懲役1年に処す。
- 新建材の燃焼で発生する青酸ガス等で中毒死ぬ場合があるので、火災時は窓を開けたほうが良いという意見があるが、炎が上がるので決して窓を開けたらいけない。中毒死は厚生労働省の管轄である。火災時窓を開ける場合は、書面で厚生労働省の許可をとらなければならない。
- ライターやチャッカマンはBL認定品を使用すること。
- 火災発生が落雷によることもある。住宅・車庫・犬小屋・等全ての工作物に避雷針を設置しなければならない。当然、事前審査・使用開始届けが必要である。事前審査の簡略化のために、ピアレビュー制度を採用する。仕事が増えるので喜ばしいことである。書類は日本消防検定協会に提出のこと。
- 最近、東横イン方式を採用し、完了検査の後薪ストーブを設置する人がいる。薪ストーブの部屋は、天井を鋼板貼り。壁をコンクリートブロック。床はタイル貼りにしなければならない。既に、設置してしまった人は西田社長を見習って改修工事をすること。完了検査は終了しているので、シックハウス法による内装制限は受けないでよい。
建築基準法は国民の財産と安全を守ることが基本である。建築士は、香取線香の置き場や灰皿の置き場を図面に記載して、建築指導課と消防予防課に相談・指導を受けにどんどん行こうではありませんか。24時間換気扇や住宅火災警報器設置は、年金問題・役人定年失業対策・業務民営化問題が絡んでいるような気がしてならない。自殺者3万人と、火災死亡者1,000人と、どちらが問題が多いか計算出来ない日本。
建築ジャーナル 2006 4月号掲載
量産体制
需要と供給のバランスが取れていれば言うこと無いが、世の中うまくいかない。 需要に対して供給が少ない場合は、システム化して量産体制を図り、需要に応える。いわゆる工業化である。
逆に、供給に対して需要が少ない場合は、減反と同じく、供給を減らさなければならない。 しかし、バブル時の量産体勢体制の考えが、今も続いている。むしろ加速して供給過剰になっている。 量産は同じものを数多く造り、要望の少ない需要は抹殺され、要望が多い規格に合わせなければならない。昔の日本の軍隊さんは、軍服の量産が第一目的で、軍服の大きさの種類が少なく、軍服に体を合わせよと命令があったと聞く。
住宅は供給に対して需要が少なくなった時代なのに、今の住宅産業は、旧日本国軍と同じく量産品を押し売りする。住宅はゴムヒモではない。
量産は安くなるか
車は1台だけ作れば、片岡自動車みたいに1千万円ぐらいかかる。しかし、量産すれば十分の一にコストダウンになる。
木材は、流通を考えなければ、柱1本買っても百本買っても、価格は同じである。むしろ逆の現象が起こる場合もある。2面無節の柱を10本買えば1本1万円ぐらいだが、千本のオーダーが来たら大変になり、1本1,5万円になると木材関係者から聞いたことがある。木材は量産に向かない。 加工費用は、確かに量産(プレカット)すれば、家1軒で組み立て費用は50万円ぐらいコストダウンになる。そのコストダウンするために、人工乾燥・集成材加工をしなければならない。乾燥費用と加工費用は50万円ぐらいのコストアップになる。量産は決して建築主のためではない。
精度
工業化商品は精度が上がるという。住宅に精度が必要だろうか。家一軒に敷きこんである畳の寸法は全て違う。そのため畳の裏にはチョークで東南角とか場所を書いてあり、指定の場所に配置しないと、うまく収まらない。襖もしかり。畳や襖の寸法が全て同じに、なんの意味があるのだろうか。 量産建具や量産襖は、寸法統一のために、余分な調整部材がたくさん付いている。精度は、余計なお世話。
地域格差
アメリカと同じぐらい縦に長い日本国である。気候風土はあきらかに違う。なのに、雪が4メートル降ろうが、台風が来ようが、風向きに違いがあろうが、全国同じ基準で家が建つ。北海道や北陸で問題の結露は冬に発生する。南九州では夏結露が問題であるが、夏結露を研究している学者さんは少ないので、高気密・高断熱防湿シート包みの家が鹿児島に建つ。
機能機器
エアコンの普及で住宅設計者は居住性をエアコン頼りになっている。エアコンが無い時代は欄間や地窓があり、風の向き、風の通りを考え、工夫がもとめられた。しかし、エアコンの普及で工夫が無い。光触媒やマイナスイオンとか、オカルト商法に踊ろされている。ひどいのはマンションで、家の向きは東西南北を考えない。機能機器の出現で、いい家が少なくなった。
職能
裁判になったら、弁護士に相談する。病気になったら、医者に相談する。家づくりとなると、昨日までガソリンスタンドで働いていた住宅会社の営業マンに相談する。専門家には相談せず、いい家が出来ないと不満をいうのは依頼者のチョイスミスである。日本には一品生産の大工や設計者は腐るほどいる。そして、大工や設計者に頼んでも決して高くない。
いい家
「いい家が欲しい」という本がベストセラーになった。その本を読んで建てた人の本まで出た。「女房には読ませないことです。建ててしまった家が不満だらけになります」「感動的な物語。泣けました」と絶賛の手褒め記事を添えて、けっこう売れている。本の内容によると、外断熱が絶対的仕様で、他の断熱方法を徹底的に悪者扱いにしている。信者を増やし、住み心地ネットワークなる受注組織まで結成している。いい家になるための要素はたくさんある。 自分に合った家にする。 地域に合った家にする。 気候に合った家にする。 が基本であり、要素は100を超えるだろう。断熱方法の一つの選択は、小さなことで大勢には影響はない。
要素が多ければ種類が増える。種類が増えて、1品生産は工業化商品の場合、特注扱いになり高くなる。1品生産だからといって高くならないものが良い。「職人がつくる木の家」がそうだ。
建築ジャーナル 2006 5月号掲載
春になると、ダニ対策商品が頻繁にTV画面に映しだされる。ダニに対する正しい知識を熊本保険所にきいてみた。熊本保険所には、ダニに関する相談がかなり多く寄せられる。問答式でまとめてみた。
どんなダニが人に刺すのですか?
ダニはどこにでもいる。昔は新築の家の畳がまっ白になるくらいダニが多量発生していた。(最近は家が薬づけのため多量発生は無い)殆んどが0.3ミリ位」の目で確認できない大きさのチリダニである。正式な名称はコナヒョウダニ・ヤケヒョウダニというが、家にいるダニだからイエダニとかホコリダニという名前もつく。75%がこのダニで、人を刺すことはない。問題なのはこのダニを目当てに寄ってくるツメダニだ。全体の5%ぐらいの量である。ツメダニは人に噛みつく。このことで、ダニの存在を確認する。
ダニアレルギー、ハウスダストアレルギーとはなんですか?
日本人の3人に1人は、アレルギーがある。アレルギー性ぜんそく、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症、アレルギー性結膜炎などである。原因としてダニの死骸、ダニの糞、カビ、ほこり、花粉、食べ物(そばや卵)等がある。アレルギー疾患の8割はダニの糞に反応する。生きているダニに対してはアレルギー反応を起こさない。ツメダニがいない場合は、ダニの存在には気が付かない。
ダニの棲家はどこですか?
ダニはどこにでもいて、ダニ無しの家はゼロと言ってよい。空気があるところにはダニありである。 棲家は布団、カーペット、畳、カーテン、衣類等だ。ダニの餌は人間のフケ、アカ、カビである。いままでの調査では、ダニが一番多いのは布団である。畳ではない。 こまめに掃除をする家の畳には意外とダニは少ない。畳がダニの温床ということはない。
ダニが一番多い場所はどこですか?
布団に付着したダニは、湿度が高い押入れの中で繁殖する。押入れがダニ収納庫と言って良い。秋口は冬布団との入れ替えを行うので、この季節にアレルギー反応が多いのはこのためである。
ダニ対策はどうすれば良いですか?
ダニの生息環境は気温20~30度で、50度を超えないと死滅しない。布団や畳を天日干ししても、中まで50度になることはないので効果無し。布団乾燥機もしかり。布団タタキで100回たたいて100匹、1000回たたいて1000匹減る程度。ほとんど効果無し。一番良いのは掃除機である。ローラー式ふとんノズルでも内部のダニは取れない。たたきながら吸い取るのが良い。 布団に掃除機を1分間かけたら1万匹がとれる。 畳の場合は、掃除機を1畳当たり30秒かける。つまり6畳では3分、8畳では4分はかける。掃除機は500W以上の高性能が望ましい。掃除機でダニは取れても、掃除機の出口から細かいダニの糞が出てしまうので、窓を開けて行うことが大切。窓を開けなければ、室内に舞い上がるだけで解決しない。
ダニ退治シートは効果があるのですか?
ダニ退治シートなる商品がある。5日で500匹取れるというデータを売りにしている。ゴキブリホイホイと同じ仕組みである。10万匹の500匹の捕獲で効果があるや無しや。ガムテープを置いたほうがよっぽどコスト安である。200匹のうち1匹の効果はうそではない。マイナスイオン発生器やダニ吸着エアコン等と同じである。社会問題になるまで売られ続ける。
ダニ駆除剤は効果があるのですか?
ダニは布団に一番多いが、布団に薬剤散布をしましょうと言っては、消費者は薬剤を買わない。薬剤メーカーが、薬剤より掃除機が一番なんて広告するわけも無い。畳のせいにしたほうが薬剤は売れる。畳に注射針で、薬剤を刺す商品を売り出した。刺した注射針の近くにいるダニにのみ効果はあるだろう。効果はダニ退治シートと同じ。ロングセラーのバルサンも似たようなもの。ダニはカーペットや畳や布団の中にいて、潜り込んで存在する。潜りこめない弱ったダニにトドメを刺す程度の効果だろう。
高気密の家が増えてダニ問題が増えたと聞くが?
省エネブームで家が密閉化され、換気が悪くなっている。エアコンは空気をかき混ぜているだけ。温度が下がれば空気が爽やかに感じられ、空気がきれいになった気がする。エアコンにはフィルターがあるから大丈夫と思うのは間違い。生きたダニ本体は捕獲するが、ダニは死ぬと粉々に砕ける。そのダニの死骸と糞はフィルターを通り抜ける。エアコンを入れた時、焼けた臭いがするのは、ダニの死骸と糞が焼けた匂いである。ツメダニが発生していなければダニの存在に気づかない。エアコンのある高気密住宅は、ダニの死骸と糞が蔓延していると思って良い。アレルギー疾患の8割の人の家は高気密の家ではないだろうか。
ペットアレルギーなるものが増えたと聞くが?
ペットを家の中で飼うようになり、ペットアレルギーがふえている。ペットに存在する菌が原因である。気密性が高ければ換気を考えなければならない。24時間換気扇を付けたから大丈夫ということではない。換気扇に頼ると、床下の防蟻薬剤が吸引され、別の問題が発生する。自然換気を主体に、換気の流れ道を計画しなければならない。
まとめ
ダニはどこにでもいる。根絶は難しい。だいたい100匹/M2以下であれば被害は少ない。カーテンより障子が良く、布団や畳は掃除機による掃除を行う。特に布団。決してテレビのコマーシャルを信じて薬剤による手段をとらないこと。効果無しで、逆に薬剤でシックハウスになる恐れがある。アレルギー体質の人はシックハウス症候群にもなりやすい。 エアコンは空気をかき混ぜるだけで、空気がきれいにはならないし、フィルターでダニがとれると思うのはコマーシャルの世界だけ。むしろフィルターはダニの温床。風通しの良い家で、100匹/M2以下のダニと共存するのが良い家づくり。
建築ジャーナル 2006 6月号掲載
なぞなぞ。
いると困るが、いなくなっても困るものはなーに?答えはシロアリ 山の木はいずれ枯れる。又は台風や崖崩れで倒れる。その後始末はシロアリがやってくれる。腐朽菌もやってくれるが、腐朽菌は辺材は好きでも芯材は好まないので食べ残しが多い。シロアリは、辺材・芯材区別なく食べてくれる。シロアリは山の掃除屋さんである。松食い虫と違って生きている木には基本的に付かない。
山に木を植えて、切って、又植林しているので環境循環は良いというが、木を切るとき切り株までは除去しない。シロアリが最後の掃除までをしてくれるので環境循環は成り立つ。シロアリは山にとって都合の良い生物なのだ。しかし、人は嫌う。空気がある所に蚊がいるように、シロアリは土がある所にはどこにでもいる。撲滅させることは出来ない。 であれば、シロアリとの共存を考えなければならない。
一般的に住宅に薬剤を散布して防蟻工事をすることは、蚊対策で、四六時中、蚊取線香の煙を充満させた部屋に住んでいるのと同じことになる。 今の蚊取線香の成分は、除虫菊ではなく、有機リン系の農薬である。防蟻剤成分と同じである。現在は有機リン系の防蟻剤は使用禁止になっている。
防蟻剤
防蟻剤クロルホスピスが平成12年から使用禁止になった。現在認可されているプレスロイド系の防蟻剤は人間に被害が無いだろうか。防蟻剤の歴史を見てみよう。70年代防蟻剤はDDTだった。発売禁止になった。つぎに80年代にクロルデンが出現した。あまりの猛毒で使用禁止になった。80年後半には有機リン系クロルホスピスが使われるようになった。別名サリンがあまりにも有名になって、これ叉禁止になった。今はプレスロイド系の薬剤だ。常に薬の毒性が証明されるのに5~10年という歳月が費やされている。しかし、考えるとおかしいものだ。虫を殺す目的で商品化しているのに、その毒性が証明されると発売禁止になる。自然にやさしい防蟻剤なるものもある。ヒバオイルや木酢液等である。効能は2年程度。2年毎に出費が可能な金持ちは良いかもしれない。
防蟻剤を使わない方法
- 最近北欧からホワイトウッド材が多量輸入されている。シロアリが大好物の樹種だ。家の材料はシロアリが嫌いな日本の杉・桧が良い。桧には白蟻が来ないというのは嘘。桧しかなければ桧を食べる。お隣に輸入住宅があればそちらに行ってくれる。まずは床下材を桧材にする。
- 基礎をベタ基礎にして、床下からのシロアリの侵入をしにくくする。住宅金融公庫の仕様書ではベタ基礎が防蟻対策となっている。シロアリには目がない、鼻もない。目の前にコンクリートがあればコンクリートもかじる。
- 基礎断熱をしない。シロアリは地中生物である。皮膚はぶよぶよしているので、地上に出ればひなびてしまう。それで、地上に出るときは蟻道という甲羅を作って進行する。基礎の外か内に断熱材を貼り付ける基礎断熱工法は、シロアリにわざわざ蟻道を作ってやるようなもの。
- 床下を乾燥させる。湿度80%以上をシロアリは好むので、床下に10センチ程度の炭を全面敷き詰めて、床下の湿度を10%下げると良い。床下換気扇は効果なし。(熊本県林務課の実験) 叉、土台木材の含水率を下げるために基礎パッキンを設置する。湿気がある方向に優先して行くだけで、湿度が80%以下だから来ないわけではない。
- 新建材は表面をプラスチックで覆っているので、シロアリの被害が表面に出にくい。それで発見が遅く、発見した時には被害増大が多い。無垢材の被害は目に見える。特にシロアリが付きやすい洗面所や台所は杉・桧の無垢材を使用して発見を早くする。
- 土の中にいるシロアリが地表に出てこなければ良いこと。ぶよぶよシロアリの皮膚は乾燥に弱いので風があれば、地表に出てこない。床下の間仕切り基礎が少なく、床下換気がよければ、床下に風がおこりシロアリは地表に出にくい。伝統構法の石場建て構法はシロアリ対策構法でもある。布基礎はシロアリ誘引構法なのである。
- 基礎パッキンなる商品がある。この商品を使えば5年間のシロアリ被害保険をつけてくれる。ありがたい対策である。
シロアリを100%近づけないためには、防蟻剤散布しかないだろう。薬剤の効能は5年なので5年毎の床下散布が条件となる。防蟻剤を使わない方法は各項目とも80%ぐらいだろう。80%の項目を7ヶ採用すれば99%になるが100%ではない。 シロアリ被害は確かに避けたい。しかし、健康被害があるのは考えものだ。風邪をひかないために、毎日風邪薬を飲むのは良くない。早期発見・早期治療が良いように、シロアリが付きにくい条件の家にしておいて、発見を早くするのが良い。 日本には、防蟻性のある木があるのに、わざわざ遠い国から、輸入してシロアリのえさで家をつくる不思議な国、日本。
建築ジャーナル 2006 7月号掲載
地球環境に配慮した森林育成を、第三者が証明する森林認証がある。その認証機関はドイツに本部を置くFSC(森林管理協議会)である。その認証を受けた木材を使いましょうという世界的な運動がある。審査は厳しく、取得するのは狭き門で、日本での取得者は少ない。
そこで、日本では、手続きが簡単で、民間主導の林業関係者による、SGEC(緑の循環認証会議)ができた。生産地や生産者を明示すれば、材木が売れ、その結果、植林放棄が減り、森が守れるといって、日本全国に広める運動がある。
食品業界でいうトレイサビリティである。産地を明確にしたら、売れ行きが良くなったことを耳にして、木材業界も真似をして木材需要を拡大しようという魂胆である。
国産材の需要が伸びるだろうか。日本の産地間競争が激化するだけで、国産材総数の需要が伸びるものではないと思う。林業者の不満の矛先を書類作りに向けさせるだけではないか。外材輸入に関税を10%でも掛けてくれれば、直ぐ片付くものだが、外国に車を売りつけて木材に関税を掛ければ、アメリカに又怒られてしまう。
米軍グアム移転費に多額のお金を出すかわりに、木材に関税を掛けますと言えば良い。あるいは、グアムの軍人住宅に日本国の木を使えと言えば、少しは日本の納税者の理解も取れようというのに。千年一遇のチャンスを逃がしてしまうのか。
そのSGEC(認証)について述べる。例えば米の場合、コシヒカリは米の種類である。菊池産は産地の地名である。八代農協産は集荷農協の名前である。下関ふぐは集積地が下関であり、産地ではない。よって、下関ふぐは、下関で捕れたものではない。(宇治茶も同様)関サバは、サバの種類は同じであるが、荒波生育環境の違いで身のしまったサバとなる。 普通、木の取引の場合、木材は森林組合に集められる。杉出荷全国2位の大分の山と4位の熊本の山は続いている。同じ山の杉を、熊本の小国の森林組合に出荷すれば小国杉。大分の日田の森林組合に出荷すれば日田杉になる。今月は小国の市が高値で買うという情報があれば、一山も二山も越えた宮崎から小国に、木材は集まってくる。市に集まれば、3・4・6mの長さに仕分け、山積されたら、どこの産地かは、全く分らなくなってしまう。敢えて言えば、全部九州産で、SGEC(認証)の意味は無い。森林組合という集積地単位では、生産者の顔は見えない。
食品のように生産者認証をしたければ、直接生産者から買えばよいではないか。生産者の顔も見れるし、生産の場所も分る。これが本当のトレイサビリティ木材である。
日本の製材所は昔から自分の名前の印を押す習慣がある。だいたいの産地でよければ、いままでの習慣の焼き印で、充分認知できる。SGEC(認証)は要らない。
需要拡大ではなく、不法伐採を防ぐためとも政府は言う。不法伐採は外国が断然多い。国内の僅かな不法伐採を排除する意識があるなら、どうして外国の不法伐採対策に手を打たないのだろうか。日本に輸入されている木材の20%、ベニアの50%が不法伐採というのに。売春が悪いのであって、買春は悪くないという総合商社の理論を、日本政府は理解する。
SGEC(認証)という書類づくりには数百万円の費用がかかる。2007年定年問題解決の手段に思える。その書類づくりに、林業退職公務員の道が開けるという仕組み。
土建屋さんにISO4001を取れば仕事が増えるとガス抜き処方箋を薦めるのと同じ。認証制度が好きな国。日本。
産直木材による産直住宅
目の前に山が見える地方だったら、産直木材を使えば良い。
だいたいの間取りが出来たら、構造図を書き、山に行く。設計に合わせて切ってもらう。設計者がよく使う120×300なる木は使わない。理由は、そんな楕円の断面の木が山に無いからである。木は丸い。丸に近い240×240の断面の木にする。断面2次モーメントは同じである。材木の歩留まりも良い。
人工乾燥なんてとんでもない。山に放っておけば、お天とう様というタダの乾燥装置が自然に乾かしてくれる。製材所は賃挽きで、どのようにでも挽いてくれる。JISなんて関係ない。設計に合わせて、7Mでも8Mでも自由な寸法の木材が手にはいる。
書類作りと天下り人に給料を払うより、山に直接支払うほうが良い。山良し。建て主良し。製材所良し。これが、3方良しの産直住宅の仕組み。
建築ジャーナル 2006 8月号掲載
水平の風
中学生の教科書に、海風と陸風というのがある。昼は温まりやすい陸と、温まりにくい海とに温度差が発生し、海から陸に向かって風が起こると。
日本の地形は縦に長いので、夏の風向きは東か西である。建物は左右対称形で伝来したが、風向きの関係で、左右対称形を止め、雁行型のつくりになったと勝手に解釈をしている。しかし、最近の新鋭建築は、風向きを考慮せず、真四角のリカちゃん人形の家みたいな家が多くなった。 熊本は、西方に有明海があるので、夏の風は西風である。そして、西方に山がないので、西陽も入ってくる。 家の間取りつくりで、西の壁に窓を取るかどうか、いつも悩むところである。
西陽は遮断したいが、西風は入れたい。 西陽は少なく、西風は入れる手法を採用するのが良い。西の窓を低い位置に付ける。西陽が家に入り込む量は少なく、西風の量は変わらない。
垂直の風
風が無いときはどうするか。 空気は温度が上がれば軽くなり、上方へ向かう。東に高窓を付けて、暖かい空気を東の高窓から出し、負圧にすれば、西からの風が入りやすくなるということになる。西の低い窓から風を取り、東の高い窓から風を出す。 又、川や幅の広い道路があれば、流れは変わる。風向きは、近所に長く住んでいる人に聞くのが良いが、若い人は風向きを知らない。エアコン嫌いの年寄りに聞くのが良い。
先人の智恵
風が来る風上に樹木が多くあれば、風は冷たい。樹木の表面温度は33度を超えない。樹木は自然のラジエーターである。西方に、見える木が10本あれば、来る風の温度は33度以下である。
建物の日影、日向の差でも風は起こる。太陽が直接大地を温める南の地表と影の北の地表では、温度差が2~3度ある。風が無くても、この温度差で空気は動く。北と南の窓がつながっていれば、風は通る。
京都は内陸で風は起きにくいので、中庭を取り、道路面との温度差で風を発生させ、通風を確保している。 建築士は、昔からのローテク工法を採用せず、最近のナントカサーキットになぜ目が行くのだろうか。
軒の出
ある住宅メーカーのカタログに、直射日光が家に入らない軒の出が図解で掲載されていた。夏至時、太陽高度が角度31度で、軒の出が60センチだと大丈夫という内容だ。そのメーカーの標準仕様は60センチである。 暑いのは夏至の6月23日の12時とあるが、間違いである。大手メーカーのカタログといえど、あまり信用しないほうが良い。暑いのは、8月上旬の午後2時である。その時の太陽高度は角度40度となる。そうすれば軒の出は1.2メートル位出さなければならない。
日影と日向では温度差が13度もあることを知らない人は多い。1級建築士といえども知らない人がいる。 建築士の構造知識強化も良いけれど、中学校程度の知識強化を先にしてもらいたい。
新鋭建築作家の影響で、軒の無い家が多くなった。敷地が広い家でも軒が短い。建築士は自然から学ばないのだろうか。軒を短くすれば、ローコストになるというが、家の内の温度を13度も上昇させ、エアコンで冷やす馬鹿馬鹿しさを、建主に強いるのは社会悪である。
最近、通気外壁が流行っているが、1階に大きな窓を取れば、通気壁が無くなり、壁下から入れた外気が2階の壁まで行くはずがない。リカちゃん人形の家みたいに、一階と二階の窓と壁が縦に揃った、総二階の家だけに通用する話である。
通気外壁にするお金があれば、通気外壁を止め、屋根を大きくして軒を出すほうが、利口である。
風通しを良くし、軒を1.2メートル出し、室内を吸湿材で仕上げれば、エアコンの使用に日数は年に1~2週間。少し我慢すれば、エアコンは要らない。 太陽光発電を設置したり、全館冷暖房して、国の補助金をもらう申請の勉強をするより、日本の建築手法を勉強したまえ、建築士諸君。
建築ジャーナル 2006 9月号掲載
「国家の品格」という本がベストセラーになっています。日本人に品格が無くなってきているからでしょう。建築業界も品確法の浸透と共に、品格が薄らいできています。本の内容の一部を紹介しましょう。
私は、「卑怯を憎む心」をきちんと育てないといけないと思っています。法律のどこを見たって、「卑怯なことはいけない」なんて書いてありません。(中略)ある国の子供たちは、「万びきをしないのはそれが法律違反だから」と言います。こういうのを最低の国家の最低の子供たちと言います。「法律違反だから万引きはしない」などと言う子供は、だれも見ていなければ万引きをします。法律で罰せられませんから。大人になってから、法律に禁止されていなことなら何でもするようになる。
ライブドアの時間外取引やインサイダー取引だって、100人以上の賢い検察官が、法律違反であることを、やっと突き止めました。それまで彼らは、法律の範囲内とか、想定内などと言っていました。卑怯な行為と法律違反は紙一重で、賢い検察官が調べれば有罪。有能な弁護士が付けば無罪になります。法律違反をしなければ、何をしてもいいという風潮が、蔓延しています。建築業界も例外ではありません。
いくつか挙げてみましょう。
リフォーム詐欺
最初は、大手のサ○○クスという会社がやってたリフォームです。揺れ防止補強といって、建築には素人の社員が、千円程度の金物を1万円で取り付けていたのです。あまりにも儲かるというので○○団系の人が、真似たのがリフォーム詐欺です。老舗サ○○クスは、3店舗は法律違反で営業停止を受けましたが、同じ営業をしていた他店舗は、捜査官の違いで、お縄にはなりませんでした。千円程度のものを言葉巧みに高く売りつける行為は、卑怯なやり方ですが、恫喝しない限り法律違反にはならないのです。建築には素人の営業マンは、建築の耐震診断はできませんが、法律には「建築の素人は耐震診断をしてはいけない」とは書いてありませんので、法律違反ではないのです。
似たような業者は、まだたくさん存在します。我が家にも来るのですから。
マイナスイオン
森林や滝は、気温が低く水分があり、気持ちが良いものです。その快適性はマイナスイオンのためではありません。最初は、エアコンメーカーが言い出したのですが、あまりにも反響が大きかったので、エアコンメーカーは、嘘表示として告訴されないうちに、早々と表示をとりけしました。今、家電業界では、中国製の扇風機と空気清浄機とヘヤドライヤーに表示がしてあります。建築業界も、それに乗っかってマイナスイオン建材のオンパレードです。炭、床材、塗り壁材、畳下地材等です。赤マムシドリンクの効能表示と同じく、ナノグラム単位の効果があるかもしれない世界です。プールに目薬を1滴垂らして、「目薬入りプール」がプール業界信用復権で、出現するかも。
新月伐採の木
「木とつきあう知恵」という本がベストセラーになっています。「国家の品格」程ではないですけど。著者はエルヴィン・トーマという人です。新月に伐採し、葉枯らし乾燥すれば、木は腐りにくいし、虫も来ない、ひびも入らない、カビも生えない、という内容。
これまで木材の欠点解消は永遠のテーマでした。伐採を新月にすれば、今までの諸問題が解決するとは、ノーベル賞に匹敵します。学者先生も事実確認のために、実験をしているのですが、カビが生えにくいのは、葉枯らし乾燥の効果であると言っています。それも8ヶ月も葉枯らし乾燥した木材での実験です。伐採時期が、新月か満月かについては、もっと実証が必要とも言っています。山にほっておいて乾燥させると、3月には虫が入るので、前年の9月に伐採しても、実際葉枯らし乾燥は3~6ヶ月です。昔から行われていた葉枯らし乾燥の効果を解明するきっかけになったことは良いことですが、新月伐採を大々的に発表するのは、如何なものでしょう。本1冊の内容をよりどころにして、あらゆる集団が、新月伐採を、木が10倍長持ちする、というセールストークにしているのは、卑怯な表現です。自分だけが信じるのであれば「イワシの頭も信心から」というように、他人には迷惑をかけずに良いのですが。
壁倍率5
筋交いの接点にガムテープみたいなものを貼って、壁倍率5なる商品が出てきました。土壁の壁倍率が1.5であるので、壁倍率5といえば、素人はすごく丈夫な家で、地震でもびくともしないだろうと受け取ります。外周壁を強くして、内部間仕切りを減らせば、基礎も減り、原価が安くなるからくり。地震の力は耐震壁だけにかかるわけではありません。応力は全体にかかり、弱い部分から壊れるでしょう。硬い耐震壁は壊れませんが、家はつぶれるでしょう。医者の話で、ガン治療には成功したが、患者の体力が無くて死んでしまった、という話に似ていますね。
日本の建築業界は、最低の国家の品格無しの最低の人たちが多いような気がします。
建築ジャーナル 2006 10月号掲載
高気密・高断熱、健康住宅、自然素材、100年住宅、そろそろコピーにも飽きてきた。次なる新コピーはアメニティだ。 アメニティとは環境を考えて快適さを追求したものであるべきだが、日本の住宅会社の解釈では、他人や景観はどうでも良く、自分だけ快適で、楽が出来る家のことだ。その「アメニティ=快楽住宅」は、次のような要素からなる。
1多機能ユニットバス
浴室の中に換気乾燥温風暖房器が付いている。早々と22件の出火事故が起こった。高齢者の死亡事故は浴室の寒さが原因なので温風暖房器を付けたとのこと。寒いのは浴室より、服を脱ぐ洗面所だ。洗面所の暖房ならホームセンターに売ってある輻射式暖房ハロゲンヒーターで解決する。設置費用も5千円程度ですむし、ランニングコストも安い。しかし、これでは広告のコピーにならない。浴室を売りにしたほうが、絵になる。基本的に浴室は浴槽の温水で暖かくなる。浴室には暖房機器は要らない。お年寄りを一番風呂に入れるのが問題なのだ。そもそも、浴室に電気用品を入れるのは良くない。出火事故が起こる危険性は免れない。
多口シャワーなる商品もある。座った状態で、左右の6ヶのシャワー口からお湯が出る。水圧のバランスを取るために電気式ポンプが付いている。これまた、浴室の中の電気装置である。そして、シャワー口は6ヶもあるのに、口が横を向いているので頭は洗えない。
2自動的に蓋が開くトイレ
便器に近づいたら自動的に蓋が開く。用が済んで閉まるのは、センサーが人が居ないのを確認して、1分後だ。自動で閉まるのを確認するためにトイレの中にいたら、いつまでも閉まらない。確認するには、トイレを一旦出て、ドアを少し開いて、隙間から確認しなければならない。こんなことをするなら、最初から、蓋無しトイレが良いと思うのだが。
3知能トイレ
尿糖値を調べる装置がトイレに付いている。横から採尿器が出てくる。従来のウォッシュレットのシャワー棒でさえ、故障して動かなくなる。採尿器の誤作動や誤使用で、採便器と化するのではと思うと、笑ってしまう。病院にさえ無い装置を自宅に付けることが、次世代の家だろうか。
4大きなスイッチ
スイッチは、黒点が付いている方がオンで、逆がオフである、スイッチは大きい方が高齢者には良いからと、バリアフリーマニュアルには必ず登場する。 スイッチが大きければ、分かり易くて良いように思えるが、操作は混乱する。1回押せばオン、2回押せばオフになる。スイッチのオンとオフが同じ状態なので、見ただけでは、わからない。家の中にはスイッチはたくさんある。一つのプレートに2個のスイッチがある場合は悲惨である。スイッチの上下が分からないので、2回から3回プッシュする。黒点が付いている普通のスイッチの方が分かりやすい。大きなスイッチは大きなお世話。
5音声が出るIHヒーター
主婦は台所に関心が高いので、厨房セットは特別にグレードが高くなる。オール電化で快楽住宅まっしぐらの住宅メーカーの主力製品はIHヒーターである。更に、他社との差別化を打ち出すために音声ガイドの付いたIHヒーターまで登場する。購入前は安全といううたい文句だが、購入後は危険な注意点を、音声で説明するものだ。
6まな板殺菌装置
厨房セットに、米びつ収納や、電気釜収納が付いている。グレードアップは際限なく続き、まな板殺菌装置まで出現した。まな板は寿司屋さんが行っているように、水で洗えば済むことだ。家庭から一般細菌をなくしたら、人間は雑菌に弱い体になり、アレルギーが増えることになる。
パロマの事故は、着火不良のクレーム対策で、販売店員が逆流防止の電線をカットして、応急の修理を済ませたことにある。その後、逆流防止装置が作動せず、ガス中毒事故が起こってしまった。クレーム処理が別の大クレームを発生させたのだ。
電子機器がいっぱいの住宅は、当然クレームが発生する。そのほとんどは住宅メーカーのアフター社員が担当する。パロマ事故みたいな応急アフター処置は必ず起こる。新築後2年を過ぎれば、アフター処置は有料になるので、出張費が必要なメーカーを呼ぶことは少ない。住宅メーカーアフター担当者は、建築部位が精一杯で、電子部品の仕組みの知識はほとんど無い。
余計なお世話な電子機器がいっぱい付いている住宅が、次世代住宅である。
建築ジャーナル 2006 11月号掲載
熊本市川尻地区は、裏には鍛冶・刃物工場があり、中ほどに住宅があり、道路に面して店がある。ちょうど寅さんの家と同じである。ここは都市計画でいう用途地域は、一体何か。工業地域か、住居地域か、はたまた商業地域か。答えは商業地域である。火を使う鍛冶場はあってはならない地域である。大都市を基準に作られた都市計画は、小さな町や村にとって、非常に不都合である。小さな町の都市計画はこっけいことが多い。店が5軒並んでいるから商業地域。工場が1軒あるから工業地域と、ままごとみたいな都市計画が日本各地にある。昔の街並みは崩れていく。
都市計画に関して、今、熊本で大問題が起こっている。
大型商業施設のイオンモールが、熊本市郊外の調整区域に7万M2の広さのショッピングセンター出店の開発行為を申請して、熊本市は、不許可にしたのである。
まずはミニ知識。
「市街化調整区域とは、田園の市街化を抑制する意味を持った区域。山林地帯や農地などが中心で、人口及び産業の都市への急激な集中による無秩序、無計画な発展を防止しようとする役割を持つ。市街化調整区域には、基本的に、住居も含め建物は許可なく建てられない。ただ、次のような場合は例外。農林漁業用のある一定の建築物。国、都道府県、指定都市が建てる建造物。都市計画事業の施工として行う建造物。都市区画整理の一環として行う場合。非常災害の応急措置として行う建築物。」 熊本市長の判断は、計画的な街づくりに支障をきたし、「都市計画との整合性が取れない」から都市計画法の開発許可条件を満たしていないというもの。
普通の人は、調整区域に、住宅1軒も建てられないのに、どうしてショッピングセンターが、建てられるのだろうか。しかも、映画館まで付いている。「自衛隊が行くところは、戦場ではないので、戦争参加ではない」という解釈と同じで、日本国の法律は解釈次第で黒が白になる。
イオンモール側は「行政が一方的に審査したもので、到底受け入れられない」と反発している。法律に違反しているものに対する行政指導は、常に一方的である。あなたは殺人犯ですが、逮捕してもよろしいでしょうかと聞く警察官はいない。あきらめの悪いイオンモールは、利権のある地域住民と政治先生を集め「魅力ある熊本の街づくり推進協会」なる組織を立ち上げ、住民運動と言っている。そして、誘致のために市民31万人の署名を集めた。67万都市なので、赤ちゃんや寝たきり老人もカウントして、熊本市人口の半分の署名を集めたことになる。私の知り合い200人ぐらいに、尋ねてみたが、署名した人は一人もいない。イオンモールの調査に行った学生が無理矢理、署名させられたとは聞いた。インターネットによる署名というから、そこにからくりがあるのかもしれない。
誰だって我が家の近くは便利でありたいと願う。五木村の人だって、新幹線駅や、空港が欲しいと思う。家が建てられない市街化調整区域に指定されることを、自ら希望する人は誰もいない。そんなことにアンケートを取った運動を、住民運動とは言わない。
商店街をスーパーマーケットが飲み込み、スーパーマーケットを更に大型スーパーが飲み込み、今は郊外ショッピングセンターが大型スーパーを飲み込んでしまった。
7万㎡とはどんな広さだろうか。1店舗の広さを100㎡とすれば700店もある広さである。市街化調整区域に、700店規模の施設が来れば、ごみ処分場や交通対策や、上下水道問題が、後で発生することは明らか。また、周囲のどこかの商店街に700軒の空き店舗が出る。 新たな税金投入法が出来た。改正中心市街地活性化法だ。郊外でのショッピングセンター建設を抑えて、中心市街地に賑わいを戻そうとするものである。ショッピングセンターの郊外立地を規制する改正都市計画法も同時にスタート。
郊外での開発を封じ込めれば、中心部集約型のまちづくりが動き出すだろうと。もう遅い。中心市街地は傷めつけられ、もう死んでしまっている。シャッター通りと化した商店街に、再起能力はほとんど無い。唯一元気があるのは、賃貸マンション業界。改正中心市街地活性化法は中心地に、「共同住宅の建設費も補助する」変な話だ。賃貸マンションは中心市街地にしか建たないからお金をくれてやるようなもの。中心市街地の用途地域は商業地域のはず。商業地域に住宅や病院が増え、住居地域にコンビニやファーストフード店が増え、市街化調整区域にショッピングセンターや映画館が建つ変な日本の都市計画。
建築ジャーナル 2006 12月号掲載
意匠の建築設計者は、構造が苦手という人が多い。一般の人はとんでもないと思うかもしれないが、事実である。しかし、設計を依頼するとき、1級建築士に頼めば、構造は安心と思う人が多い。その1級建築士は、構造を別の構造専門家に外注する。構造専門家は、鉄筋コンクリートと鉄骨が中心で、木造の構造計算には関心が無い。木造の構造を勉強しても、お金にならないからだそうだ。
耐震偽装事件の後、建築専門家の間で、構造に関心が深まった。建築は構造で成り立っているので、当たり前のことではあるが。全国の建築士が構造に興味を持ち始めたのは、耐震偽装のおかげなので、姉歯氏に構造の学会賞を与えても良いのではないだろうか。
その中で問題になったひとつに、建築の構造計算には、いろんな方法があり、同じ建物を別々の計算法で計算すれば、安全になったり、危険になったりすることだった。熊本県の川辺川の水量も、計算方法の違いで5,500トンになったり、7,000トンだったりする。その違い、4000億円のダムを造るか、造らないかという問題が起こっている。どうしこんなことが起こるのだろうか。自然のものはコンピューターみたいにはいかない。余命はあと1~2ヶ月でしょうと医者から宣告された場合、30日と60日では2倍の誤差がある。構造計算も似たようなもの。材料は鉄やコンクリートだが、造るのは人間だから。
木造に限っての話をしよう。木造の構造計算方法には、許容応力度計算、壁量計算、限界耐力計算がある。その違いを説明しよう。
許容応力度計算
木造はピン構造と定義する。柱部材には、圧縮か引っ張りしか発生しないと決め付け、柱には、曲げは起こらないと定義する。柱をどんなに大きくしても、耐力には関係がない。30センチもの大きさの大黒柱を使うのは、建築に無知だと言いたそうな計算手法。地震と台風に対しては筋交いだけが負担する。神社の拝殿には筋交いが一本も無いので、震度1でも倒れる計算になる。実際は、震度6でも倒れないのに計算法がおかしいとは、専門家は思わない。ただひたすら計算を信じる。柱に曲げを負担させるのにラーメン構造があるが、柱脚をエポキシ接着剤で固定するか、ゴマ団子みたいにたくさんのボルトで柱脚金物に固定した計算法である。
壁量計算
現在の木造建築の99%は、壁量計算で行われている。家の延べ面積と壁面積にある係数を掛け、耐力壁量を決める。積雪量や地盤の強さや風の当たり具合の違いは、全く考慮しない。非常に簡単な計算法である。この略式を考えた人はすごいと思う。裏を返せば、日本の建築士は馬鹿だから、これくらい簡単にしないと理解出来ないだろうという位置付けである。筋交いと合板の耐力壁だけが、地震と台風に対抗する要素であり、柱は関係が無い。構造計算とは言えないほど簡単である。
あまりにも簡単なので、H12年に1460号なる補足基準を国は追加した。計算が出来ない人は、平屋であろうと、重い屋根であろうと、ホールダウン金物や山形プレート金物を付けよという内容だ。2次計算をすれば、長ほぞ込み栓で十分になり、金物は一切不要になることもある。(こんなもの要らない 号参照)金物をいっぱい付けたから地震や台風に強いのではない。柱に引っぱりが起こるか起こらないか分からないので、全部の箇所に付けさせるのだ。いつ風邪を引くか分からないからといって、毎日風邪薬を飲むのと同じである。薬には副作用が発生する。金物もそうである。
壁量計算は、筋交いと合板壁だけが計算要素なので、筋交いをたくさん入れれば強い家となる。筋交いは1本600円程度なので、1万円分の筋交いを追加すれば、計算上は安全率が上がる。「阪神淡路地震が来てもびくともしない家」と表現するメーカーが多い。筋交いは残るが、他が壊れる。
限界耐力計算法
実物の骨組みに加力して、算出した数値を元に計算する方法である。積雪量や地盤の強さや風の当たり具合の違いを考慮しなければならない。耐力は部材の大きさと部材の留め方(仕口)の種類毎に性能が違い、一つ一つ計算することになる。壁量計算の10倍くらい手間がかかるが、当然である。
小屋組みの剛性は火打ち梁に頼らなくても良いし、柱の下に土台を入れなくて、昔の石場建てみたいに柱優先の木組みにしても良い。基礎立ち上がり30センチ以上の規制も無く、床下換気の良い基礎も出来る。壁も、筋交いや合板ではなく、貫だけの壁耐力の証明も出来る。筋交いはある程度強度は出るが、限度を超えれば、一気に崩壊する。貫はとにかく粘る。なかなか倒壊まで至らない。このことは全国の大工さんが、昔から言っていたことだ。大工さんは、計算による証明が出来なかったので、建築基準法で認められなかった。貫、差し鴨居、長ほぞ込み栓は、限界耐力計算により、自由に使えるようになった。
1000年以上も歴史がある構法が、違法扱いされ、伝統木構造が絶滅危惧種になってやっと救いの手がのべられた。遅すぎる。
限界耐力計算法に対する注意
土壁実験で、熊本県立大学において、大橋先生が実験実証された時、京都の土は壁倍率3.8だった。 最低の土は1.5だった。壁倍率を発表したとき、京都の人からは、低すぎると批判が出た。壁量計算では、全国同率にしなければならないので、全国最低の値1.5に決まった。
限界耐力計算の基準は実験値である。実験した種類によって、部材の留め方(仕口)によって結果は異なる。現時点でデーターが少ないので、増やす必要があるだろう。
待ちに待った計算方法である。
強度が証明できれば、基礎の立ち上がりも要らない。火打ちも要らない。
建築ジャーナル 2007 1月号掲載
太陽光発電と拉致問題
「環境に配慮した住宅会社」は、というアンケートをとったら、○○ハイムが一番という結果がでるそうだ。太陽光発電を屋根に付けて、オール電化にすれば、快適生活のレベルを落とさずに、環境に配慮した生活ができるからとのこと。
原子力発電は、炭酸ガスの発生が少なく、CO2削減には欠かせない電力供給源で、あと12基設置しなければならないと日本政府は言う(欧州諸国では環境負荷がありすぎるからと閉鎖の方向にある)。日本の人口は減少しているというのに不思議だ。建設時と処分時に膨大なCO2を発生し、冷却水により海水温度を直接上昇させていることには言及しない。炭酸ガスを減らすのは地球温暖化を防止するのが目的だが、京都議定書はCO2削減なので、海水温度上昇は問題にしない。地球温暖化には原子力発電は最悪であるが、停電は1秒でもさせたらいけないと、総量は満足していても、最大使用時間帯に合わせての原子力発電所増設である。そうすると電気は夜余る。原子力発電は発電調整が出来ないので夜10時からの電気代を1/3に安売りする。温水だけは貯金が出来るので、温水器だけ薦めれば良いものを、電力会社はエネルギー源を一人占めしようと、オール電化を薦め、使えば使うほど料金が安くなるシステムをとる。夜型の生活を推奨するような、電化deナイトという料金形態もある。日本から夜がなくなる勢いだ。セブンイレブンは名前の通り夜の11時には閉店して欲しいが、電気代が安いから深夜も営業する。
どんどん電気を使うため、夏の昼の電力は原子力発電でも足らなくなった。渡りに船が、家庭の太陽光発電だ。太陽光発電の効率が上がるのは夏の昼である。一般人は売電が出来るという、広告に乗せられてしまう。夏の昼の家庭の電気代は売れる。売電の仕組みで、環境に配慮した気分になり300万円もする太陽光発電を設置する(生産時に家庭の5年分の電気代を使うのだが)。夏の昼の最大需要者は銀行とパチンコ屋だ。電力会社はその売電された電気をパチンコ屋に売る。パチンコ屋の利益金は北朝鮮に流れる。拉致問題の解決はさらに遠のく。
茹で蛙
茹で蛙現象というのがある。蛙を熱いお湯を入れた鍋の中に入れると、熱くてすぐ鍋から飛び出る。しかし、水の状態で鍋に蛙を入れて、加熱して序々に鍋の中の温度を上げると、鍋から出ることもなく、茹で蛙になって死んでしまう。
台所の汚れについて話そう。IHヒーターは炎が出ないので安全だという。主婦は台所の壁の汚れを気にする。 ガスより台所が汚れないというのは嘘である。今時ガスコンロから煤は出ない。汚れの原因はガスの燃焼煙ではなく,食用油や食材の燃焼煙である。だから、汚れの原因の総量は、ガスもIHヒーターも同じである。しかし、ガスの場合はガスの燃焼熱で上昇気流が発生し、汚れが上部のフードに捕獲される仕組みなので、フード周りや壁が特に汚れる。IHヒーターでは上昇気流が発生しないので、汚れは四方八方に分散し家全体が汚れる。更に、IHヒーターの台所には防炎たれ壁が基準法上不要なので、汚れた煙はリビングへと流れる。徐々に壁が汚れるので気付かない。最近珪藻土など吸湿性の建材が多くなったので、壁の吸着性は高まった。来客者は家の臭いに気付くがお宅の家は臭いとは教えてくれない。徐々に臭くなった家に住人は気付かない。これを「ゆで蛙現象」という。IHヒーターに珪藻土内装のお家の奥さん、同じ仕様のよその家の壁の臭いを嗅いでみては。
このことに気がついたメーカーはIH専用の換気扇を薦めている。要は強力換気扇である。気密住宅に強力換気扇を付けると、家の中に負圧がかかり、床下の防蟻剤を吸引してしまう現象が起きる。IHヒーターがシックハウスの原因の一つでもある。
IHヒーターは安全
IHヒーターは安全というが電線の向こうの発電源には、危険にさらされている人がいることは無視する。 では、使う人は安全かというとそうでもない。IHヒーターの底面は160度の部分と400度になる部分がある。400度の部分に油があると発火点360度の油は発火する。料理の鉄人の料理みたいな現象が起こる。家庭のガスの場合はまんべんなく300度なので発火することはない。そして、IHヒーターは温度むらがあるので、料理がうまく出来ない。野菜炒めは特に出来ない。電力会社の料理教室では有名料理人がIHヒーターを料理してみせる。料理がうまく出来ないのは、IHヒーターではなく、自分の腕の悪さと主婦は錯覚する。 高齢者には特に良いという。鉄鍋は高齢者には重い。そんな場合は、アルミも使えるオールメタル対応もあるという。電気代を3割高に消費することは言わない。又、底が平らで、アルミ鍋は軽くすぎて横スリップを起こす。
賢い欧米人は危険なIHヒーターを使わない。
建築ジャーナル 2006 8月号掲載
ステーキレストラン「フォルクス」は、形成肉を、ステーキと表現して、公正取引委員会から是正勧告をうけた。形成肉とは、くず肉を、接着剤で継ぎ合わせてステーキに見せた商品である。柔らかく食べ易いので、お客さんのことを考えて販売したと弁明していたが、決して仕入れ値が安いからとは言わなかった。その「フォルクス」は、是正勧告が世の中に知れ渡ると、売り上げが減った。今、看板を「ステーキのどん」と変えて、再起をねらっている。
形成肉は、木材でいえば集成材である。集成材は、木片を接着剤で固めて、一見木のように見せてある。本物より性能が良いと表現するところも似ている。
集成材は良く売れている。贋物好きの日本人に,ぴったり合ったのかもしれない。
集成材は無垢材の1.5倍の強度?
木材の強度はヤング率で示す。杉の無垢材のヤング率は50.70.90である。部材の設計強度は、普通最低数値を基準にする。よって、無垢材のヤング率は50となる。ヤング率は、木が大きくても小さくても、木片でも差は無いので、杉の木片を固めた集成材のヤング率は、50.70.90の平均である70となる。集成材の強度が高いという表現のからくり。家全体でみれば同じなのに。
集成材が日本の山を救う?
山の木を切り出して販売し、後で苗木を植えれば、補助金はもらえても、手出しになる。そこに目を付けた新たな商売が出現している。山ごと買取り、木を大小区別無く、丸ごと皆伐し、集成材メーカーに売れば、わずかだがお金になる。山は丸裸のまま放置され、後に苗木は植えない。
集成材が山を裸にすると言っても良い。集成材メーカーが皆伐木材は買わないといってくれれば良いが。
国産材での集成材なら良いのでは。
中国のオリンピック開催で、世界の木材が高騰している。よって、外材が値上がりして国産材のほうが安くなった。世界中で一番安い木材は日本の杉ということになる。大企業が目を付けない訳がない。木材生産者は、大企業が、日本の山のことを考え国産材に目を向けてくれたと喜んでいる。中国特需が終われば、元に戻る。
ハイブリットビームは高性能材?
ハイブリットビームは、中国木材が、開発したもの。日本の杉の木を使っている。日本の山を守るために開発したというが、今まで、外材を輸入して、日本の山を駄目にした張本人が言うことだろうか。
ハイブリットビームとは、集成材の一つである。梁の上下に米松を使い、中央部のアンコに杉を使う。梁の強度は上と下の材強度で決まるので、中央部分は何でも良い。寒天でも良い。杉材を馬鹿にしたような材である。米松よりヤング係数が低いのは事実である。ヤング率50の杉材とヤング率120の米松の収縮率は違う。その差による接着剥がれや、金物工法のドリフトピンのめり込み差も発生する。しかし、問題発覚は10年以上先である。
集成材の接着切れが寿命。
台所に置いていた輪ゴムは、1年するとブツブツ切れる。経年変化で弾力性が無くなるからだ。接着剤も同じ原理。集成材といえ木なので、湿度変化で伸び縮みする。接着剤は経年変化で弾力性を失い、30年も経つと接着剤硬化で、木片はバラバラになる。集成材の寿命は接着剤の寿命と言ってよいだろう。日本の家が平均26年しかもたないのは、集成材や合板を使うからだ。
集成材は加工が出来ない。
集成材はクズ木材と接着剤で構成しているので、大工の工具は使えない。無理して加工すれば切り口はズタズタになってしまう。込み栓や追っかけ大栓継ぎなどの加工が出来ないのだ。集成材の接合は金物が基本となる。外材は長く海水に漬けてある。木材に浸透した塩分が、金物を錆びさせる。
揃うことの利点というが。
日本に木材は山ほどあるが、多量注文すれば、材料は揃わない。クズ木片が原料である集成材はすぐ揃う。ふつうの人は1軒分しかオーダーしない。多量生産の住宅メーカーに限った話である。弱小工務店にとって、揃うことは利点ではないのに、利点といって使う人が多い。
接着離れは、無垢材の干割れと同じ?
「ヒビにびびるな」(06-1月号)で、貫通割れで無い限りヒビは構造耐力に影響が無いと書いた。集成材にヒビ割れが発生すれば、それは必ず貫通割れである。しかも梁の場合は横方向なので耐力は四分の一に落ちる。集成材の接着離れは、無垢材の乾燥ヒビと同じと暴言をいう御用学者も存在する。接着離れは命取りである。
屋外にさらした集成材。 木片の一つ一つの収縮が違う。
その差が接着剤離れを起こす。
建築ジャーナル 2007 2月号掲載
最近開きドアが多くなった。住宅を気密化するのに都合が良いからである。開き戸は閉めた状態が正常で、開いた状態はしまりがない。開いた状態にしておいても、風が吹けばパタンと閉まってしまう。
その点、引き戸は良い。閉めた状態でも良いし、開け放しでも良い。更に半開きでも様になる。風通しを基本に考えれば必然的に引き戸となる。日本の気候風土の適した装置である。
更に、建具溝を3本4本と多くすれば、開口幅が広く確保できる。外部と内部の一体感・部屋同士の連続感がでる。
引き戸をいくつか紹介しよう。
玄関戸
玄関戸は建具2枚の引き違い戸より、1枚の引き戸にして、1枚にコストをかけたが良い。片引き戸は鎌錠を採用するが、一般的ではないので、空き巣も鍵の操作が分からないという利点もある。
無双窓
連続した縦板を左右に動かして開閉する無双窓がある。間に網を入れれば網戸になるし、外部から進入出来ないので防犯性もある。建具工事ではなく、大工が木工事中製作するので、製作費は安い。気密性は無い。居室に向かないのが欠点。玄関や浴室に使うのが良い。
地窓
空気が温度の低い場所から高い場所に移動するとき起こるのが風である。寝苦しい夏の夜対策として、寝室に低い窓とその反対側に高い窓を設置すれば、風が発生する。その風道に枕元があれば、エアコンが要らないくらい涼しく感じる。窓には面格子を付けるのが良い。
ガラス戸の全開口
縁側は、家の外部又は内部なのか。この曖昧な空間が日本住宅の特徴である。アルミサッシュが普及し、密閉度が高まり、半分しか開かないために、縁側は家の内部になってしまった。木で作って全開にすれば、縁側の良さが演出できる。ガラスは重いペアガラスより、シングルガラスが良い。内側には気密性能アップと断熱性能や冷輻射防止のための内障子を付けること。
格子網戸
アルミサッシュの専用網戸は開口幅の半分しか開かない。そこで木製の全開口の網戸を建具店で造る。
その網戸に骨太の格子を付け、鍵をかければ防犯対策になる。夏の夜開け放しが可能となる。
浴室の引き戸
家族が少なければ、誰が風呂に入っているか判断できる。脱衣室と浴室の引き戸を透明ガラスにして、広々と感じるようにした。家族が少ない場合に採用する。
欄間
部屋間の遮断はしても、風が流れるような仕掛けが欄間である。欄間を障子にすれば、部屋間の明かりも確保できる。
引き込み襖
普通4枚建具は溝2本に建てるため、襖2枚分が開口となる。溝を4本にして各々の溝に建て込めば襖3枚分が開口となる。続き部屋が、更に密接になる。
建築ジャーナル 2007 3月号掲載
- 乱開発防止のために、市街化調整区域がある。市街化調整区域には1軒の住宅建築もできないが、5ヘクタール以上の大型住宅団地にすれば建築ができる。大型住宅団地ほど見苦しい日本の町。
- 行政は、大商店建設を推進し、中心市街地も応援する。その結果、残るのは廃墟とゴミだけ。
- 個人商店はスーパーに負け、スーパーは大型スーパー(ダイエーなど)に負け、大型スーパーは郊外ショッピングセンターに負けた。今は、郊外ショッピングセンター同士の戦いである。高校野球に似ている。勝つのは1チームだけ。あとはすべて敗者。
- 温泉の浴室に火災報知器が付いている。誰か浴室でタバコを吸うのかな。
- どうでもよい疑問。お茶はどうして茶色でないの。油は無いのにどうして醤油。コンクリートなのに枕木。日本レコード大賞受賞者は、レコードが一番売れた人、それともCDが売れた人?
- 次世代住宅とはどんな家だろう。50年先石油は無くなる。次世代住宅とは北朝鮮みたいな住宅のことかな。
- 3%効率の良いガソリンを使えばエコと、ENEOSのコマーシャルでイチローは言う。
- 建設業法では丸投げ禁止となっている。丸投げは横行しているのに、逮捕者は一人もいない。
- 元請けで、売り上げ計上。下請けで売り上げ計上。孫請けで売り上げ計上。日本の建設業界の業績は3倍に膨らむ。建設業界のGNPは泡。
- 森林法で、伐採後は苗木を植えることとなっている。禿げ山はたくさんあるのに、逮捕者は一人もいない。
- ドラッグストアは薬屋さんなのに、酒もタバコも売っている。
- 家族は減っているのに、どんどん大型化する冷蔵庫。だったら、もっと大きくして冷蔵庫に住めば良い。
- カラーベストの耐久性は30年とメーカーはいう。サイデングメーカーも概ね耐久性は30年という。カラーベストとサイデングで作ったミ○○ホームは100年住宅という。
- 建築確認は許可ではない、建築基準法に適合しているか確認する行為という。確認と許可の違いを何回聞いても理解できない馬鹿な私。
- 100年住宅とは、100年持つ条件を満たしていることであって、100年持つことではないとのこと。 何回聞いても理解できない馬鹿な私。
- 酸性雨によりコンクリートの耐久性が落ちるので、外断熱にすれば、耐久性が上がるという200年住宅の設計根拠。
- 木の切り旬は9月から2月までの5ヶ月間。そのうち新月は5回。新月伐採時期は新月前の3日間という。伐採適正日は1年で15日間。小原ショウスケさんよりも楽な新月伐採林業業界。
- 100年住宅はもう古い。200年住宅が出現し、な、なんと300年住宅もある。100年前とは夏目漱石がイギリスに留学した年。200年前とは、電気も車も無い時代、伊能忠敬が測量を開始した年。あるある大辞典もびっくり。表現の自由を謳歌する日本の住宅メーカー。
- 必要な道路はつくり続けるとのこと。我が町に、道路が川に沿って4本もある。必要な方に3本差し上げます。
建築ジャーナル 2007 4月号掲載
最近焼酎ブームである。鹿児島は火山灰で土地が痩せていて唐芋しか取れず、芋焼酎が産物となった。ブームで焼酎が売れることは喜ばしいのだが、売れすぎると別の問題が起こってくる。需要に追いつくため、鹿児島の焼酎メーカーは、工場の増設をしている。3倍とか5倍の工場増設である。各社増加分を我が社だけで、まかなおうという目論見なので、結果はすごい量になってしまう。
このブームに大手が黙っている訳がない。○○は、中国に工場を建て、安い労働力と中国の芋で焼酎を造り、日本に輸入するのだ。安い分だけ販売店にリベートを多くやれば販路拡大はたやすい。ブームはいずれ去る。増設した鹿児島の焼酎メーカーはその時、どうなるのだろうか。
日本の食糧自給率は40%しかなく食糧危機に一番弱い国と言われている。唯一自給率100%は、悲しいかな米だけである。米は作り過ぎないよう、税金を払って減反政策をとっている。又熊本市は、特別だが上水道の水源を地下水に頼っている。地下水確保のため、熊本市より上流にある農家に、これまた税金を払って農地に水張りをお願いしている。
酒の中で、日本酒のシェアはわずか10%である。酒なら何でもよいという方は、是非日本酒を飲んで欲しい。米の消費が増えれば、減反と水張りの税金負担が少し軽くなる。
日本酒は悪酔いするという理由。
日本酒は百薬の長であり、百毒の王と言われている。少量たしなめば、アルコール成分で血管が膨張し、血液のめぐりが良くなり、顔が赤くなる。リラックス感が出るので、ストレス解消になる。しかし、多量に飲めば、血管が収縮し、血液の流れは悪くなり、顔が青ざめる。飲み過ぎ状態になる。日本酒には、アルコールの他にアデノシンという成分が含まれ、血管の膨張・収縮を助長させる。同じアルコール濃度の酒ならば、日本酒の方が早く赤くなる。リラックス効果を求めて飲んでいるので、日本酒が、効果的である。焼酎は酔いにくいので体に良い酒と評価をするのは、おかしいと思う。酔うために酒を飲んでいるのだから。
日本酒はどうして地方で味が違うのか
米を蒸す時水を使う。又出来たての原酒は、アルコール濃度が19度と高いので、和水といって水で薄める。地方により、硬水・軟水の違いがある。人は日常飲んでいるその地方の水に慣れ親しんでいるため、その地方の同じ成分の水で作った酒をおいしく感じるのである。蒸留水で原酒を割ったら味が無く飲めたものではない。
酒は酵母菌がつくる。日本酒の酵母菌は種類が多く、また特性が強く、温度管理・湿度管理を必要とする。そのため、米の違いだけでなく、造る人や工場の違いでも味に差がでる。結果、200種類の成分の組み合わせとなる。ワインや焼酎は50種類程度。
猿でも作れるワインとは訳が違う所以である。
川尻の酒蔵まつり
我が町川尻には瑞鷹という造り酒屋がある。3月4日に酒蔵まつりを行った。主催が酒造会社ではなく地域住民であるところが良い。つまみは素人出店が15店。会場演出は私たち建築関係者が行う。1日4000名の来場で、道路は歩行者天国となる。我が社は、瑞鷹酒造の土蔵を借りて事務所にしている。
建築ジャーナル 2007 5月号掲載
日本人は文字を巧みに使いわける。1、2、3・一、二、三・壱、弐、参・Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ、いち、に、さん・イチ、ニ、サンと6種類も使い分けるのである。
熊本において、各大学の卒業設計を持ち寄るデザインレビューが開催された。みんな宇宙船建築家を目指している。気候風土とは光だけと理解している。最近の建築の学生さんは英語を話せるし、外国のことは良く知っている。しかし、日本のことをよく知らない。
まず、漢字から日本建築の真髄を学習してみよう。
和
- (日本という意味) 和室・大和・和風・和食・大和魂・和菓子・和紙・和歌・和式・和服・和裁・和牛・和三盆・昭和・和歌山・和尚(?)
- (合計の意味・足し算) 飽和・和気・和音・三和土・和算・唱和
- (平均する意味・足して2で割る) 和平・平和・和解・調和・違和感・中和・和合・協和・和やか・和む・和らぐ・親和・講和・和睦・緩和
風
- (物理的な風) 春風・東風・西風・北風・通風・風穴・台風・風力・風雨・風速・強風・風船・風圧・暴風雨・風向き・風鈴・風見鶏・風鈴・季節風・風神・突風・つむじ風・風葬・旋風・扇風機・痛風・風邪・風上・風前
- (傾向) 和風・風紀・風景・風味・風習・風物詩・風格・風貌・風化・風刺・風来・風光明媚・家風・花鳥風月・風情・風土・風合い・風流・風俗・役人風・風潮・作風・新風・古風・風当たり
目
- 見えるもの)目線・目尻・目頭・目前・目玉・目覚まし・目隠し
- (心で見るもの)大目・目的・目標・目撃・目印・目算・目当て・名目・目利き・落ち目
- (一つ一つが区切れた部分) 目地・目次・目録
- 一つ一つが連続したもの) 木目・切れ目・結び目
間
- (場所・スペース) 床(ゆか)の間・間取り・間隔・床の間・居間・広間・中間・間食・空間・間柱・土間・欄間・江戸間・人間・間柄
- (時間・タイム)床(とこ)の間・茶の間・手間・間合い・間一髪・間接・切れ間・絶え間・束の間
前
- (フロント) 目前・前進・前売り券・前線・前歯・前置き・前夜・備前・出前・錠前・空前
- (自然な姿) 手前・男前・名前・江戸前・腕前・板前
縁
- (エンと呼ぶ)縁側・縁談・縁起・絶縁・縁故・血縁・地縁・縁切り・縁結び・縁日・縁台・広縁・濡れ縁・無縁
- ○(フチと呼ぶ)縁・額縁・廻り縁・縁取り
輪と和=円と縁
縁はフチとエンは同じ意味である。アルミ額縁みたいに、細い場合はフチとは言わないと思う。絵の中にも接し、絵の外にも接する部分を言うので、ある程度の幅が必要だろう。その幅に意味がある。縁側みたいに。自分から地人を完全に排除するのではなく、共通性を持たせる部分がエンである。自然や他人を敬愛する日本独特の文化である。エンにはもう一つ円がある。丸い意味である。2006JIA奈良全国大会の表紙に、ナントカ和尚の掛け軸の書である○の1字が採用されていた。縁・円・○・和・輪・倭という漢字の意味は、日本人のこころそのものだろう。最近は円(ゼニ)に走る円者が多すぎる。困ったものだ。円(ゼニ)は、廻りものでいずれ逃げて行くのに。
建築ジャーナル 2007 6月号掲載
昨年9月に閣議決定された住生活基本法には「住宅の建設における伝統的な技術の継承及び向上を図るため、・・・・(中略)木造住宅に関する伝統的な技術の継承・発展、の整備等を推進する。」と、日本の建築文化を再認識したものでした。
技術的にも、12年基準法改正で、仕様規定から性能規定に変わり、限界耐力計算法により、貫・足固め構法等、伝統構法の家が合法的に建築可能となりました。しかし、限界耐力計算法は、計算が複雑なため構造専門事務所に依頼すれば高額になり、あまり普及しませんでした。そこで、国土交通省木造住宅推進室も、構造のデーターベースを増やし、構造計算の簡略化をはかれば、限界耐力計算法の費用も、現在40万円近くかかっているものが、半分ぐらいになればと、研究をつづけていました。
伝統構法を愛する大工職人にとって、かすかな光が見えてきたと喜んでいました。しかし、6月20日からの改正建築基準法は、これらの考えと全く逆行するものです。わずかな光はピカドン(原爆)の光でした。改正建築基準法により、限界耐力計算法を使って伝統的な木造住宅を建築することが非常に難しくなる理由は次の通りです。これで伝統構法の家は壊滅状態になるのではないでしょうか。
- 料金について
限界耐力計算で行う木造住宅は、大規模建築物と同等の「指定構造計算適合」の扱いになります。「指定構造計算適合」の料金が1000M2以下の基準がありません (ほんの一部の行政庁は1000M2以下をつくっている) 。1000M2程度の大規模建築物の工事費用は、概ね2億円、設計費用は2千万円。その内構造計算は300万円で、ピアチェック費用が22万円は妥当な金額でしょう。しかし、200M2程度の限界耐力計算で行う木造住宅が、この大規模建築物と同等扱いになるのです。更に、10000M2以上の建物と限界耐力計算で行う木造住宅は、地方の「指定構造計算適合」判定機関では審査を行わず、東京の日本建築センター送りです。又、中間検査も義務づけられました。中間検査の必要性を言うのであれば、筋交いや壁量計算の住宅はどうして中間検査が免除になるのでしょか。仕様規定だったら、仕様を検査する必要があるのではないでしょうか。限界耐力計算法による木造住宅の確認申請費用(ピアチェック費用22万円+追加中間検査3万円=25万円)があまりに高すぎるし、扱いも10000M2以上の建物と同じになるので、伝統的な木造住宅の建築は建てるなということと同じです。 - 安全限界について
限界耐力計算の中で「損傷限界」が1/120は理解ができます。木造の「安全限界」が、一律1/30と決ました。筋交いや合板の「安全限界」は1/30が妥当です。しかし、柔構造の貫や差し鴨居の「安全限界」は1/15ぐらいしか出ません。がんばっても「安全限界」は1/20です。これでは伝統木構造は建たないのです。 - 職人について
「住生活基本計画」に基づき、木造住宅の担い手である大工技能者の育成が推進していくものと思っていました。国家事業で行っている大工育成塾もその一環でしょう。日本の伝統木構造を継承しようと、補助金を3年間出して育成する事業です。卒業生は、水を得た魚のように生き生きと働いていると聞いています。でも、25万円も追加出費を出す建築主はほとんどいません。大工技能者を身につけても生かす仕事の場が無くなってしまいます。大工育成塾は全く遊びの世界になります。大工たちは、仕方なく簡易パタパタ組み立てハウスに従事することになるのです。 - 民家再生について
「住生活基本計画」(地域の自然、歴史、文化、の継承)により、民家再生が見直されようとしていました。民家は足固め、貫、指し鴨居で構成され、安全限界も1/15に近い構造です。この法律で民家再生はほとんど行われなくなります。
新種や外来種が日本に入る場合は、規制強化が取られます。しかし、建築業界は逆です。本来種の伝統木構造の住宅は、追加金25万円の追加出費がかかり、70日も審査期間を取られ、中間検査も厳しくチェック。その1方、外来種である筋交い工法は、中間検査もなくフリーパスです。
国宝クラスの建物は残りますが、民間の力による伝統構法の日本の家は、日本の地から消えてしまいます。現在行われている大工育成塾の卒業生は、腕のふるいようがなく、育成費用は無駄な税金の使い方です。又、構造のデーターベースも活用の場がありません。
日本の伝統木構造の住宅を消滅させ、アメリカによくあるリカちゃん人形みたいな家を増やし、アメリカの52番目の州として、ふさわしい美しい国づくりの法律改正だったのでしょうか。
建築ジャーナル 2007 7月号掲載
基準法改正と2007年問題
6月20日から大幅に建築基準法が改正される。構造の耐震偽装対策は理解できるが、偽装対策とかけ離れた改悪がこれほどあるとは思わなかった。
馬鹿な設計者と能無しの地方行政マンを管理するためには、どうしたら良いだろうかと、国土交通省の偉い方々は考えた。まずは書類の書き方の御指導である。
建築確認申請中の途中の差し替えを法律で禁止したのだ。許可したものを差し替えることを防止するのなら分かるが、審査の途中での差し替え禁止に、何の意味があるのか理解できない。他の許可申請等ではありえない指導だ。間違いがあれば、手数料を再度出費して、最初からやり直しだ。
また、誤字・脱字の取り扱いまで法律で決めてくれることになった。小学校の指導要綱にも存在しないような、人を馬鹿にした低次元の法律だ。つまり、書類は99点では駄目なのである。100点満点でないといけない。小学校からズーッと100点の答案を出してきた国土交通省のハイクラスの人たちが考えそうなこと。100点なんぞ1度も取ったことない駄目設計士にはつらい。建築指導は、人の安全を守るためなので、これくらいは仕方のないことだろうという認識。人の命を守る医者だって、スリッパの履き間違いや、名札の付け間違いはあるだろうに。
確認の窓口応対が目に浮かぶ。
サンプル1 | |
能無しの地方行政: | 「立面図の表示で東立面図となっていますが、東北立面図の間違いです。これは誤字ではありません。間違いです」 |
馬鹿な設計者: | (たったこれくらい! ムカッ。でも歯向かったらお返しが怖い)「北の字を追加して、訂正印を押します」 |
能無しの地方行政: | 「訂正印では駄目です。法律違反です。出し直して下さい」 |
馬鹿な設計者: | 「出し直しということは、また、数万円の証紙を再度貼ることですか。その費用は誰から負担するのですか」 |
能無しの地方行政: | 「確認の申請者は建築主です。申請者に言えないならあなたが出しなさい」 |
馬鹿な設計者: | 頭から湯気 |
サンプル2 | |
能無しの地方行政: | 「階段の踏み面と蹴上げの寸法の記入、ベランダの手すり高さの記入がありません」 |
馬鹿な設計者: | 「階段の踏み面と蹴上げの寸法は階段図面に、ベランダの手すり高さは、べランダ詳細図に記入しています。そちらを見て下さい」 |
能無しの地方行政: | 「過不足なく、と法律で決まっています。余計な図面をたくさん添付されては困ります。階段の踏み面と蹴上げの寸法は平面図に、ベランダの手すり高さは立面図に付けて下さい。基準法と照合する目的の図面にして下さい。施行図は困ります」 |
馬鹿な設計者: | 「大工さんは、階段は階段図を見て、ベランダの手すり高さはベランダ図を見て工事します」 |
能無しの地方行政: | 「過不足なく、と法律で決まっています。法規上不要な図面がたくさんあれば、申請受理はしません」 |
サンプル3 | |
馬鹿な設計者: | 「伝統構法の住宅なので、限界耐力計算で提出します」 |
能無しの地方行政: | 「限界耐力計算は、県内の指定構造適合性判定機関では審査しません。東京の日本建築センターに送ります。追加料金22万円です」 |
馬鹿な設計者: | 「日本建築センターに送るのは1万M2以上の建物でしょう。平屋の建物でも1万M2以上の建築と同じ扱いにするのですか」 |
能無しの地方行政: | 「そうです」 |
馬鹿な設計者: | 「えっ!東京送りですか、そこで質疑があったらどうするのですか」 |
能無しの地方行政: | 「東京まで行って説明してください」 |
馬鹿な設計者: | 「そこで考え方の違いがあればどうなりますか」 |
能無しの地方行政: | 「判定不能通知が出ます。構造だけでなく、全ての確認審査行為がスタートに戻ります。ガラガラポンです」 |
馬鹿な設計者: | 「今まで支払ったお金はどうなりますか」 |
能無しの地方行政: | 「お金は戻しません。没収です」 |
馬鹿な設計者: | 「途中キャンセルだから、半分ぐらい戻してくれませんか」 |
能無しの地方行政: | 「1円も戻しません」 |
不都合な申請の場合は「適合しない旨の通知」を出せば、申請料は全額没収できる。行政庁や指定確認検査機関の雑収入となる。「適合しない旨の通知」を出せば出すほど利益は上がる。
行政改革の一環で確認業務が民営化された。昨今、建築件数は減ってきた。指定確認検査機関の仕事が減ったのでは困る。姉歯事件は渡りに船だった。指定確認検査機関の職員はほとんど行政の天下りである。仕事の内容から、民間より行政天下りの方が審査能力はあるので、天下り批判は少ない。国民の安全を守るために、時間と天下りによる人員増は国民の理解が得られことになる。めでたし、めでたし。
サンプル4 | |
馬鹿な設計者: | 「伝統構法の住宅なので、限界耐力計算で提出します。どうして構造計算適合性判定の費用が22万円もするのですか」 |
能無しの地方行政: | 「難しいからです」 |
馬鹿な設計者: | 「計算したものをチェックするのに、平屋だったら6時間もあれば十分ですよ。 |
能無しの地方行政: | 「難しいものは費用が高いのは世の中、当然ではないでしょうか」 |
馬鹿な設計者: | 「国家公務員は、難しい試験に合格してなったのに、給料は地方公務員と同じ。難しいものには、費用を出すべきという意識を国民に植えつけなければならない」 |
サンプル5 | |
馬鹿な設計者: | 「筋交いや構造用合板の家は、いままでと変わらず、しかも中間検査もありませんね 全然厳しくなっていませんね」 |
能無しの地方行政: | 「簡易な箱みたいな家はつくるのも簡単でしょう。審査も楽です。耐震偽装を防止するには、簡単住宅を増やす方が良いのです」 |
馬鹿な設計者: | 「なるほど。お金をかけるから良い家ができるとはいえませんね。○○ホームのコマーシャルで、みのもんたがそう言っていました」 |
サンプル6 | |
馬鹿な設計者: | 「限界耐力計算で平屋を申請します」 |
能無しの地方行政: | 「地盤の液状化現象の計算書が付いていません」 |
馬鹿な設計者: | 「どうして平屋に液状化現象の計算書が必要なのですか」 |
能無しの地方行政: | 「分かりません。お上の通達です」 |
馬鹿な設計者: | 「筋交いの建物は仕様規定で、液状化現象対策はどうしているのですか」 |
能無しの地方行政: | 「分かるわけないでしょう。私たちは、規定の書類を集めて、誤字脱字がないかを見るだけです」 |
サンプル7 | |
馬鹿な設計者: | 「前代未聞の厳しい確認申請手続きで、違反建築は減りますかね。準防火地域の物置やカーポートは、建築確認が必要でしょう」 |
能無しの地方行政: | 「膨大な違反建築を取り締まれるわけがないじゃないですか。私たちは申請主義です。申請する人に厳しくするのです」 |
サンプル8 | |
馬鹿な設計者: | 「違反建築をすれば罰金が科せられますね。私どもが違反を見つけてチクッたら行政指導して、違反摘発をしてくれますか」 |
能無しの地方行政: | 「場合によりけりです」 |
馬鹿な設計者: | 「薪ストーブは、火気使用で、内装制限がかかり、天井板貼りの家は違反建築になりますね」 |
能無しの地方行政: | 「当然違反建築です」 |
馬鹿な設計者: | 「住宅雑誌に天井板貼りの薪ストーブがたくさん掲載されていますが、その設計者を逮捕しますか」 |
能無しの地方行政: | 「・・・・・・・・・・・・」 |
世の中とズレた基準法の改正は行われず、ただ書類の完成度を上げるだけの法律改定である。 | |
馬鹿な設計者: | 「5年に1回、建築事務所登録更新の時、業務実績報告をしていましたが、これから毎年、業務実績報告をしなければならないのですか」 |
能無しの地方行政: | 「そうです。毎年提出して下さい」 |
馬鹿な設計者: | 「担当者の人数がそのままだと、仕事量は5倍になりますよ。見れますかね」 |
能無しの地方行政: | 「見れるわけないでしょう。提出頂いた書類は積んでおくだけです」 |
購読上の注意!
賢い設計者や賢い行政マンもたくさんいらっしゃいます。その方々はお読みにならないように。
建築ジャーナル 掲載
熊本の夏日は、年間105日間もあるし、年間降雨量は2000ミリと多い。緯度はイラクのバクダットと同じで、世界の主要都市のズーッと南方に位置している。先進欧米諸国と全く違う気候なのに、欧米の住宅工法を参考にしての九州の家づくりには疑問が多い。気候風土無視の代表は、高気密高断熱住宅だろう。九州でも厳寒の日は年に1週間ぐらいある。鹿児島だって雪が降ったこともある。その1週間の寒さが脳卒中を起こすとか、恫喝商法まがいのコピーで高気密高断熱住宅会社は住宅販売を行う。1週間の暑さ寒さ解消が、残りの358日に害を与える。
人が、快適・不快を感じるのは温度だけではない。温度だけで表現するのが1次方程式だ。しかし、人の感覚は、温度・輻射熱・湿度・風・更に気分まで複雑に絡む高次方程式だ。難しい。素人にはわかりやすい温度だけの1次方程式で解決しようとするのが、エアコン頼りの高気密高断熱住宅だ。 温度・輻射熱・湿度・風を分解して説明しよう。(九州以北の人には当てはまらない)
温度・輻射熱
省エネのため、夏エアコンの温度は28度以上にしましょうというものだから、人は28度が快適温度と思ってしまう。湿度や風を複合的に利用すれば33度だって快適に住める。嘘だという人がいる。33度の水風呂に入れば涼しいではないか。33度の水が35度の体温の熱を奪うからだ。
まずは温度だが、輻射熱を語らないと、エアコン論に屈服してしまう。
輻射熱を説明するのに、例を2つ
- 寒い冬、太陽が雲から顔を出せば暖かく感じ、雲に隠れれば寒く感じる。その数秒で気温が上がるわけがない。その暖かく感じるのが輻射熱である。その輻射熱は物に当たれば、物が暖められ気温も上がる。
- ヒーターコタツはスイッチを入れて、しばらくしないと暖かく感じないが、赤外線こたつはスイッチをいれたら、こたつの中の空気温度は上がっていないのに、すぐ暖かく感じる。これが輻射熱である。 体感温度は、発熱体温度(輻射熱)と空気温度を足して2で割れば良い。
気象庁発表の気温は31度なのに、温度計で測ればそれ以上なのは、輻射熱が地面を暖めている影響である。下の写真で説明すれば、室内の温度は31度である。縁側は35度。デッキは41度である。デッキ部が輻射熱の影響を受けているのである。輻射熱を緩和しているのが縁である。最近の庇の無い洋風住宅は、この輻射熱の41度を直接家の中にいれている。輻射熱の影響を受けないためには、軒の出と縁側で、2Mは欲しい。なんだ、昔の日本の家だ。
人の体感センサー
人の温度を感じる感覚は夏と冬では違う。冬の24度は暑く感じるが、夏の24度は寒く感じる。冬と夏では、大体5度ぐらい感覚に差がある。この人感センサーの切り替えは5月と10月である。
この切り替え時に、温度管理を間違えるから体調を崩す。 春からエアコンを入れ、交通は地下に潜り、自然を知らないモグラ族は冬センサーのまま、夏を迎える。 そして、エネルギーを浪費する 。
潜熱
温まり易いものは冷めやすい。逆に、温まり難いものは冷め難い。最近の住宅は、断熱性能が向上したので、一度暖めたら、なかなか冷めない。潜熱が夜まで持ち越す。スウェーデンのエコ住宅は、断熱材が26cmもあるといって真似る住宅があるが、夏季、冬布団を着るようなもの。断熱材は地域に合った厚さが良い。 夜気温は下がっているのに、寝苦しいのは潜熱である。詳しく言えば壁の輻射熱。除去するには、風通しで壁や床の温度を序々に冷ますのが良い。木製の全面網戸は効果的である。網戸に格子を付ければ、夜、安心して開け放しができる。
風
熊本は西に海がある。夏は陸地が温められるので、西から風が吹く。西から風を取り入れたいが、西日も入ってくる。西陽は潜熱量が大きいので、窓の位置を低くして輻射熱の影響を少なくする。当然出口を考えないと風は入らない。建物の南の地面より、北の地面が低温である。その温度差で、空気が動く。無風状態でも、家の中で風が起こる。その風の通り道を確保するために、欄間をつける。
なんだ、昔の日本の家だ。
気温が同じでも、風があれば涼しく感じる。扇風機を廻しても気温は下がらないが、人の体の汗腺から出た汗の気化熱で体温の熱を奪う。エアコンで温度を下げれば、汗腺は閉まったままで開かない。健康にも良くない。子供をエアコンの部屋に住まわせたら、汗腺が自分は不要な存在と思い、閉ざしたままになる。そして退化する。本当に汗をかかなければならない時、汗腺が開かないのが無汗症である。
一人の1台のマイ扇風機を持とう。
湿度
ナイロンの肌着と木綿の肌着を着ればとどちらが爽やかかと問えば、全員木綿の肌着と答える。吸湿効果で体感湿度を下げるからだ。最近の住宅は結露防止対策で、部屋内にビニールを目貼りする。ナイロンの肌着を着ているようなもの。珪藻土で吸湿効果があるという人がいるが、下地にビニールがあれば効果薄。
木の家と、ビニール目貼りの家を比較するに、実験装置をつくった。内装に木で仕上げた箱と、ビニールクロスを貼った箱に、夫々、人と見たてたお湯を入れて比較してみた。木で仕上げたもの方がビニールで仕上げたものより湿度は12%低い。木の箱が吸湿効果が高い証明である。
この木綿の肌着や木の仕上げと同等の建築内装材は、三和土・藁畳・漆喰・板壁である。なんだ、昔の日本の家だ。
←左 木の箱。湿度68%
←右 クロスの箱。湿度80%
気分
四季を体験する日本人は、視覚・聴覚で自然を感じる。すだれを見たら涼しく感じ、暖簾の動きで風があるかのように錯覚する。風鈴の音や鈴虫の音でも涼を感じる。
体感温度は1~2度低く感じる。エネルギーゼロの手法を使わない手はないだろう。
緑
地面の照り返しがあっても、緑の表面温度は33度を超えない。西から風が来れば、西方向の樹木を抜けた風はラジエーター現象で、気温が33度近くに落ちる。大体木10本が目安である。
建築ジャーナル 2007 8月9月号掲載
建築基準法は、建築時の最低基準であり、誰でもが絶対守るべき法律だと思っています。
最近、建築の裁判が多くなっています。医療と建築の裁判は、高度な専門的知識が必要なので、以前は消費者原告が勝つことはありませんでした。しかし、TVに良く出る1級建築士がどうでも良い箇所を「違反・違反」と指摘して、違反建築と新たな認識を植えつけるために、クレームは意外な箇所に波及し、裁判へと発展しています。
弁護士さんもだんだん建築基準法を学習し、原告優位の判決が出始めました。建築裁判で、修繕費用1000万円をもらいたいなら、裁判請求金は2000万円を要求します。最近、2000万円の満額回答の判決が出て原告もびっくり。弁護士さんにとって魅力的な分野になっています。裁判は法律に違反しているか否かが争点であり、法律違反が多ければ多いほど原告に有利になります。現状に即しない法律がどんどん増えるので、違反建築もどんどん増えています。
建築基準法は現状に合わない項目が多いので、それを補正するために別の法律をつくり続けます。さらに、社会問題が発生すれば、その部分だけの諮問機関に依頼して法律をつくります。建築基準法はバンソウコの上に何枚ものバンソウコが貼った法律なので、矛盾だらけです。
工事の不具合にクレームを付けて工事費用を負けさせる事例は過去ありましたが、建築基準法違反を御旗にして多額の保証金を請求する例が増えてきています。どうでも良いことが違反建築になり、建築基準法ビジネスの餌食になる例をあげてみます。
- 24時間換気扇設置(採用頻度レベル1)
台所のレンジフードを24時間換気扇として建築確認をおろしている家はたくさんあります。ワンワン唸るレンジフードを夜中まで廻す人はいないでしょう。しかし、法律では常時稼動が条件ですから、スイッチが簡単に切れる家は違反建築です。 - 22条地域外壁仕様(採用頻度レベル1) 建築地の90%は防火地域・準防火地域・22条地域です。外壁は防火仕様および準防火仕様にしなければなりません。その仕様は外装材と断熱材と内装材で構成します。一階と二階の間の施工やユニットバスの施工は基準法通りには施工されていない家が多いのです。ユニットバスの天井高さは2.2Mです。ユニットバスの裏上部には内側に断熱材押さえの合板の施工はほとんどなされていません。施工が難しいのと、あまり意味がないからです。意味がなくても法は法。断熱材押さえ合板の施工がなければ違反建築です。
- 基礎のかぶり(採用頻度レベル3)
基礎幅は12cmが一般的です。鉄筋が13㎜またアンカーボルトが13㎜なので47㎜かぶりとなります。補強筋があれば更にカブリは㎜34㎜です。法律のカブリ厚は40㎜なので、建築現場でこんな施工精度がでるわけがない。布基礎の地中部分のカブリ厚は60㎜なので、更に深刻。土を被せればよいと鷹をくくったら基礎の根入深さ240㎜と別の法律がありますので逃げられません。 - 柱の目減りおよびヒビ(採用頻度レベル5)
芯持の柱や梁は乾燥収縮により、必ずヒビが入ります。そのヒビを理由に、わざと通し柱の取替え費用を請求するのです。たった6000円の柱ですが取替えとなると4~500万円になります。過去の裁判の判例では原告が勝っています。 - 薪ストーブ(採用頻度レベル0)
薪ストーブを付ける部屋は台所と同じく防火の内装にしなければなりません。薪ストーブを設置した家は内装に木を使った家が多いようです。指導する方もされる方も、おかしいと法律そのものを相手にしていませんが、違反建築です。 - 物置やカーポートや看板(採用頻度レベル0)
ほとんど建築違反です。法律を作った国会議員の先生方も物置やカーポートや看板が違反建築とはご存知無いでしょう。指摘しても、裁判の証紙代より撤去費が安く儲からないから採用されないでしょう。 建築裁判で勝訴した人が、儲かるというので、知人に、安く家を建てる指南を教えているということを聞きました。H19年6月の基準法改正で、バンソウコの上に山が出来、落っこちそうになっています。更に増えるでしょう。
違反建築を減らすには、どうでもよい建築基準法をなくすのが良いと思うのですが。
建築ジャーナル 2007 10月号掲載
世界最大級の柏崎刈谷原発が、地震で止まった。今年の夏は、史上最大の猛暑日が続き、電気の供給が間に合わず停電が起こるのではないかと騒がれたが、2~3の工場に使用停止を要請したら、なんとか停電にならずにすんだ。電気は総量ではなく、ピークが問題なので、時間帯で必ずしも電気が必要でない事業所に、お願いすれば対処できることを認識した。柏崎刈谷原発7基が無くても電力供給の急場はしのげたのである。地球温暖化でエネルギー消費を少なくしようという動きの中で、人口も減っているというのに、電気生産は右肩上がりに計画は進む。特に電気は貯蓄が出来ないので、まずは電気ピークの減少である。
アスファルトの路面温度は50度を越える。冷蔵庫と同じ仕組みの自動販売機は電柱の数ほどあり、電力を消費し、すごい熱を放射し、地球を暖めている。欺瞞的なレジ袋を推奨しなくても、削るべきエネルギーは山ほどある。パチンコファンも昔のばね式手動タイプを好む人もたくさんいる。更に電力会社が進めるオール電化を止めれば、日本に55基ある原発の10ヶぐらいは減らせるだろう。
柏崎の地震で原発の立地が話題になっている。原発の立地条件は地盤が固い地域と思ったら大間違いである。内閣府が、全国の地盤を揺れやすい方から1~7に分類している。原発はせめて6以上の地域かと思っていたら、九州にある原発は4の地域である。決して揺れにくい地盤とはいえない。どうも、立地条件は貧乏自治体が条件みたい。お金と引き換えに、体をささげるのである。長崎の島原と熊本の天草には、カラユキサン*1という悲話がある。自治体では今も続いている。
もんじゅのナトリウム漏れ以来、原発プルサーマル計画は非常に危険であることから、しばらく沈静化になっていた。そのプルサーマル計画を佐賀県の九州電力玄海発電所3号機に採用するとのことで、佐賀県知事と唐津市長と玄海町長が電力会社と調印をしたのだ。古川知事は、東大出身なので苗字が同じとはいえ脳細胞は私の倍ぐらいあると思っていたら、半分以上が政治病に冒されていた。
プルサーマル計画の安全性についての答弁がおもしろい。「本当にこのプルサーマル計画が安全なのかということについて、私どもなりにきちんと検討し、その結果、安全性を確保されるということを判断しました」と、そして、その根拠に「国の政策責任者である二階経済産業大臣が来ていただいて安全の確保について全力を尽くす。安心して下さい」という言葉だったそうだ。そして大臣の「政治家として、言葉にうそがあってはならない」という言葉を信じたからとのこと。なんか変。「政治家は嘘つかないと信じる政治家」(字あまり川柳)
飛行機は日本に何千機もあるうち、月に数機事故を起こす。自己責任で乗っている。原発の危険は国民あるいは世界の人々に危険を及ぼす。原発は日本にある55基のうち検査停止は別にしても、いつも事故で止まっている。
最近は、安全だからとか、コスト安だからとは言わない(コスト安もデータの捏造だった)。CO2を出さないから地球温暖化対策に是非必要という。嘘でしょう。CO2を出なくても直接海水温を暖めているではないか。よって全て外海に設置している。外海と思って若狭湾に11基もの原発をつくった。若狭湾は言葉通り狭かった。越前クラゲが上海から北上してきているではないか。(データ等の根拠は無い。私が勝手に言うだけ)
IHヒーターの電磁波問題で、今まで、国は、安全と言っていたが、今年6月にWHOが危険宣告をした。危険なIHヒーターを止めよう。オール電化を止めよう。大型冷蔵庫の屋外設置(自販機)を止めよう。電気は照明と通信だけで良いではないか。という運動をしたら、原発は要らなくなるかもしれない。
北朝鮮の核開発放棄が潤沢に進んでいる。北朝鮮は核爆弾を持たなくて良い。北朝鮮に一番近い佐賀の玄海発電所にプルサーマルを設置してくれるからだ(昔蒙古が攻めてきた場所)。今の時代googleの写真を使えば簡単に射程距離が測れる。普通のミサイルで十分だ。破裂するかしないか分からない核爆弾より普通のミサイルの方が安くて、確実で、プルサーマル事故は普通原発の5倍なので、長崎原爆の百倍ぐらいの効果が見込める。日本が迎撃ミサイルパトリオットを配置しても、パトリオットの数よりプラス1発射すればよいことだ。費用対効果は抜群。
今年は、古川知事に金正日将軍から、お歳暮が来るだろう。
カラユキサン*1島原や天草の農村・漁村の貧しい家庭の娘たちは、海外での奉公と偽わられ、わずかなお金で娼館に売られていった。
建築ジャーナル 2007 11月号掲載
建物を建てる時に先立ち土地を祓い清め、その土地をお守りしている大神さまをご神前にお迎えして、工事の安全とご加護を祈願する神事です。普通20分ぐらいで終わります。そこで儀式毎に解説をいれて進行すれば、参列者の方に地鎮祭の意味が理解できます。
修ばつの儀 | 祭典の開始にあたり、参列者の心を清めます。神様を迎えるに当たって人間の疾しい心をまず清めようという儀式です。 |
降神の儀 | 大神さまを正面祭壇にお迎えします。神主さんがヲーッとうなるのは、祭壇の場所をおしえているのです。 |
献せんの儀 | 大神さまにお供え物をおすすめします。お神酒の蓋を開けます。お供えものの鯛が向こうを向いているのは神様が食べ易いようにしているからです。 |
祝詞奏上の儀 | 工事の安全を大神さまにお願いします。一番のメインイベントです。 |
清祓いの儀 | 土地を祓い清めます。 |
鍬入れの儀 | 工事着工の儀式。建て主が鍬。設計者が鎌。施工者が鋤を持ち、盛砂に向かいます。エイッ・エイッ・トウという掛け声を漢字で書けば、永・栄・棟です。家が永久に栄えますようにという意味です。 |
玉串奉てんの儀 | 参列者が自ら、神前に玉串をお供えして工事の安全を祈願します。 |
撤せんの儀 | お供えものを下げます。 |
昇神の儀 | 大神さまのお帰りです。 |
乾杯のとき、次の3つのうちどれかを言うようにしています。
- 土地を人が所有して登記を行えば、その人のものになると思っているのは人間だけです。モグラはモグラでその地下を自分の所有と言っているだろうし、空ではカラスが自分の土地と言っているかもしれません。そう考えるとやはり土地は神様のものでしょう。であれば土地をいじるとき、神様にお断りが必要でしょう。そのお断りの儀式が地鎮祭です。
- アメリカではキリスト様を絶対な神様です。イラク人はどうなっても良い、私の息子の命だけ守ってくださいと祈ります。イラクではアラーの神を信じ、命を賭けても他の神さまを排除します。 日本には8百万の神さまがいますので、2人ぐらい神様が増えたってどうってことないでしょう。 川崎の民家村に面白い神棚があります。部屋の2方向にずらりと神棚が廻っています。その中にその他神様というコーナーがあります。日本は寛容な国なのです。
- その土地で昔自殺者がいたり殺人事件が起きたりしていたら嫌なものです。怨念を引きずっていたり、成仏できない魂があったりするかも知れません。その土地の歴史は2~3代前のことしか分かりません。戦国時代の死者が埋められているかも知れません。縄文時代は墓所だったかもしれません。 過去の出来事を全てお祓いして、ガラガラポンにする儀式です。自分の心も清めておかないと効果はありません。と付け加えます。
- 日本人は無神論と思うのは大間違いです。墓所を嫌います。地鎮祭をしないとタタリがありそうとか、火を粗末にすればタタリがありそうとか、井戸を粗末にすればタタリがありそうと思う人は、りっぱな信仰者です。自然を崇拝するアニミズムという宗教です。
建築ジャーナル 2007 12月号掲載
工事の安全と、竣工後も建物が無事であるよう願って行うのが上棟式です。
祈願する神様は5名です。神様の名前を棟札に書きます。屋船久々能知神・屋船豊受姫神・手置紙負神・彦狭知神と4名の神様を書きますが、もう一人当地の産土神さまがいます。
地鎮祭をすれば、神社側から、印刷した棟札をくれることがありますが、材質も外材だし、使いたくありません。新しく杉材で作り直します。上棟式の当日、朝から屋根の上に5色の旗をあげます。夕方餅投げをしますというサインです。昔は、そのサインを見て夕方5時ごろ子供たちが集まってきたのですが、最近はその風習を知らない子供たちが多いので、現場に4~5日前から告知の看板を上げます。さらに近所にチラシを配ることもあります。
その5色の旗は、東は青色の青龍、南は赤色の朱雀、西は白色の白虎、北は黒色の玄武、中央は黄色です。魔よけの意味です。高松塚古墳の中に描かれている守り神の絵を見ればお分かりと思います。また、相撲の土俵の櫓も4方に青色、赤色、白色、黒色を使います。赤ぶさ下の朝青龍とか言います。最近は相撲業界にはご利益がないみたいです。心がヤマシイとご利益が無いのが日本の宗教。
1列に並べる場合は東から青・黄・赤・白・紫(黒)の順番にします。能の橋がかりの垂れ幕と同じ順番です。
上棟式の儀式は、まず屋根の上または二階に神棚コーナーをつくり、お供えと棟札の前で棟梁がお祈りをします。棟札の裏には、「日にち。施主。大工」の名前を書きます。1種のタイムカプセルです。数十年後解体するとき、建築年数等がわかる仕組みです。
儀式が終わったらひとぎ投げですが、投げる前に、二階の床に上がってもらって、施主に自己紹介をしてもらいます。そして家の説明
ひとぎは、餅の神さまです。「ひとぎ」と掛け声をかけて4方にひとぎ餅をなげます。4ヶしかないので、一つでも拾えば名誉なことです。そのあと、紅白の子餅を200ヶとお菓子やお金を投げます。
これだけだとものの5分で終了します。そこで、お金(5円玉)にクジ券をつけておいて、クジとお菓子を交換するシステムにしました。建て主が商品交換係りなので、近くで顔合わせが出来、親密感がでます。
工事を行う側にしてみれば、工事期間が長いので、近所迷惑は少なくとも起こります。餅を1ヶでも拾った近所の人は、少々の工事の音は我慢しようという気になることを期待します。
子供たちは、学校でも餅投げのことが話題になり、お菓子をもらったのだから仲良しになろうという気がおこるでしょう。餅投げでも競争原理が働いて、1けも拾えない子供もいます。後でこっそり、餅やお菓子をあげることも大事です。
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棟札表 |
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屋根の上から施主の紹介をします。来年の6月に引っ越してきますのでよろしくと挨拶します。設計士が建物の説明。営業活動の一環ですが、まだ受注の実績無し。 | |
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景品交換は長蛇の列。現在の確認機関みたい。 |
建築ジャーナル 2008 1月号掲載
小渕内閣のとき、恒久的減税であったはずのものが、廃止された。都合が悪いものは廃止される。建築基準法もそれに見習い、4号物件である住宅程度の「確認の特例」が20年12月に廃止される。 国は新しく法律を作るのではなく、「確認の特例」を廃止することなので、運用上問題は無いと言っている。確かに19年6月20日以前の感覚だったら問題はない。
今、「書類の厳格化」という一言で、確認機関は基準法過敏症という病にかかっている。ものの判断をするとき、白、黒、グレーが存在する場合、明らかな白以外は全て黒という判断である。提出者が困る状態を見て、サディズム的快楽感に浸っているものもいる。 住宅に「確認の特例」が無くなれば、次のような混乱が予想される。
- 構造設計1級建築士だけに特例を存続させる。
構造設計1級建築士は主にRC造・S造に詳しく、木造を軽んじる傾向にある。もっと言えばほとんど知らない。だって、構造設計1級建築士を受験するに木造は試験に出ない。原付バイクに乗れない普通免許保持者と同じ。平20年12月から構造設計1級建築士だけに、今までの「確認の特例」が認められる。大工さんたちは、2級建築士や木造建築士に「確認の特例」があるので、建築基準法を勉強して建築士の受験をした。「確認の特例」が無くなれば、資格取得の意味が無くなる。そして代願申請に頼る。結果として、違反建築物が増える。代願申請が増える温床をつくることになる。 もっとおかしいのは、「確認の特例」は構造だけではないのに、構造設計1級建築士に特権を与えるとは。 - 使用構造材料一覧の提示
構造材の品質を表示せよとのことである。「節・腐れ・丸み・繊維の傾斜による耐力上の欠点がないもの」という表示の受け取り方は個人差がある。私は、ニュージ松という外材は、木材ではなくて草だと思う。私が、確認検査員だったらニュージ松は「耐力上欠点材」として確認を下ろさない。 あるひとはJAS規格品が品質の証明というし、節のある木は駄目とか、含水率表を出せとか、訳の分からないことを言い出す確認検査員も出てくる。 - 地盤面算出表
この図面の要求根拠は高さ制限や道路斜線のチェックのためだ。
かつて、基礎部分に斜めに盛土して、地盤面を上げ高さ制限をごまかした設計者がいた。現場を見れば、ごまかしは、小学生でもわかることである。地盤面に高低差がある場合は必要であるが、道路が広くて、低層住居専用地域でない場合は明らかに適合している。10M単位の話なのに10㌢のことを表示せよという「厳格化」を要求する可能性がある。 - 2面以上の断面図
断面図を何のために要求するかといえば、軒の出、横材間距離、床高、軒高、棟高だ。1面の断面図で充分表現可能。どうして2面以上を要求するのか。「他の書類でその内容が明示されている場合は省略できる」とある。要求事項はすべて立面に表示可能である。だったら1面の断面図で良いと思う。 - 火気使用室の換気計算
12KW以上使用の場合排気計算と吸気口が必要となる。ガスレンジは10KW。オーブンレンジは5.5KW。総量は15.5KWとなる。常時開口の吸気口が必要となる。30㌢の換気扇を付ければ30㌢角の穴を空けなければならない。「厳格」に言えば、持ち込みオーブンさえ明示すべき事項となる。住生活の範疇まで入りこむ内容。 シックハウス法の吸気口と別に、台所に大きな穴を空けなければならない。 - 基礎伏せ図。床伏せ図。小屋伏せ図
構造計算は必要でない。これらの図面で明示すべき事項にあたるのは、基礎断面、筋交い下の布基礎表示と火打梁だけだ。火打梁等の表現は、大工が使う板図で表現してもよいのではないだろうか。床伏図、小屋伏図を検査時に変更すれば「構造の変更」であり、「軽微な変更」ではないとする検査員もいるだろう。 基準法で求める事項に、梁の大きさ等の表示義務は無い。大工さんが使う板図のコピーではと事前に聞いてみた。検査員が見れないからという返事だった。本末転倒な話。 - 構造詳細図
構造計算は求めないのに、構造詳細図がなぜ必要なのだろうか。確かに基準法で「構造耐力上主要な部分である軸組み、継ぎ手、仕口等の構造方法はボルト締め、かすがい打ち、込み栓」とある。政策に対しては対策が必要。「軸組み、継ぎ手、仕口等は全てをかすがい打ち」と文字表現し、現場ではそれ以上の施工をするという逃げ道がある。馬鹿げた対策をとらねばならぬ。 - 防腐措置
柱、筋交い、土台で地面から1M以内の部分には、防腐措置、防蟻対策が必要とある。住宅金融公庫基準では、12㎝以上の柱を使用したものは防腐・防蟻措置材とみなす。基準法にはない。どう判断し、どう指導するのだろうか。品確法にみたいに薬漬けの家を求めるのだろうか。 - 外壁のうち、軸組みが腐り易い部分の下地。
防水紙を貼れということだろうか。土壁の場合はどうなるのだろうか。土壁に防水紙をいれよという指導が発生しそうである。 11、基礎・地盤説明書 「基礎の底部に作用する加重の数値及び算出方法」とある。基礎の構造計算が必要な表現。根拠がわからない。基礎の構造計算が必要なのだろうか。
以上の内容は19年6月20日に(財)日本住宅・木材技術センターが発表したものに基づいている。実際は、実情にあったものに改正されることを期待する。
建築ジャーナル 2008 2月号掲載
福田首相が提案し、自由民主党政務調査会がつくった。「200年住宅ビジョン」は、よく見ると笑ってしまう内容。国にお金がないというのに、100億円以上の予算がついてしまった。
夏目漱石が熊本に赴任して来たのは100年前。そして、漱石が熊本時代に住んでいた家がまだそのまま残っている。日本の住宅は、軒や庇が長いので超寿命なのにその要素は入っていない。「200年住宅ビジョン」が、長持ちしている日本の昔の建築手法を参考に提案されたと思ったら大間違い。内容は現在販売されているハウスメーカー商品住宅とあまり変わらない。200年持つというのであれば、100年ぐらい経過してから言って欲しいものだ。
まず、「200年住宅ビジョン」の作成構成委員を見てみよう。理念の作成者は九州国際大学次世代システム研究所所長のN氏だ。「日本の家は平均30年と短い。諸外国と比較して半分以下の寿命である。そのため国民は住宅建設費の負担が重すぎ、収入の割に良好な生活をしていない。又、スクラップアンドビルドを繰り返すことで、建築廃材等の問題も発生する。寿命の長い住宅を作るべきだ」という内容であり、基本論調は正しい。誰も反対の余地はない。
構成委員は、国の行政OBの方々へと続く。肩書きはすばらしいが雲の上の建築行政をしていた人が長持ち住宅の建築構成の実態を分かるはずがない。問題は民間の構成委員。ハウスメーカーの文系出身の役員の名前がずらりと続く。メンバーに技術者が一人もいなく、金勘定ばかりしている人が主体。
そもそも福田首相の発言は軽すぎる。不動産協会の総会で「200年住宅の根拠はありません。100年の倍ということでメッセージ性があるということでしょう」と答えている。予算措置の権限があるものだから、ハエがブンブン集ってくる。内容はない。
「200年住宅ビジョン」には12の政策提言があるので、その一部を紹介する。
超長期住宅ガイドライン
耐久性が200年ということではない。200年もつための要素を持っている家とのこと。構造躯体(スケルトン)と内装・設備(インフィル)を分離して、サッシュやドアーは30年毎に交換し、基礎や床組みは75年毎に交換していくシステム。壁倍率の高い壁をつくり、構造間仕切り壁を減らしておくと、間仕切りの可変がやりやすくなる。
これくらいのシステムは、どのハウスメーカーも実施しているし、どの建築士も考えている内容だ。
30年前、ミサワホームが100年住宅というものを提案した。屋根は、短寿命のカラーベストや20年耐久しかないサイディングを使っているのに、100住宅と言い切るミサワホームの度胸はすごいと思った。内装も建材で一番安い石膏ボードにビニールクロス仕上げである。国が、センチュリーハウジングシステム(CHS)というものを提案し、このシステムを採用したので、100住宅と命名できるのである。CHSとは耐久性が100年あるということではない、100年もつための要素を提案するシステムだとのこと。私が知っている40年前建設されたミサワホームは現在もう無い。200年住宅ガイドラインの内容は、(財)ベターリビングが現行認定しているCHS住宅と全く同じ。そのCHS認定住宅は、H16年時点で8社あったが、そのうち3社は倒産して今は無い。
おそらく、(財)ベターリビングが、この200年住宅の認定機関となり、天下り要員を増やし、ハウスメーカーは、早速200年住宅ビジョンを打ち出すことは目に見えている。 偽装大国日本にふさわしい「200年住宅ビジョン」である。 (つづく)
建築ジャーナル 2008 3月号掲載
住宅履歴書の整備
設計図書や施工内容が保存される仕組みを活用(住宅性能評価)
履歴情報の蓄積・管理に当たってはIT技術の活用を促進
これから、住宅の新築件数は明らかに減ってくる。逆にリフォーム工事は増えてくる。そこで新築時の住宅メーカーは施主の囲い込みの手段をとる。部品にタグまでつけるという内容。プレファブメーカーはクローズシステムなので、リフォーム工事が他社に流れるとこは少ないが、在来木造のハウスメーカーは他社に流れる。そこで考えたものだ。設計図書や施行図は工事時に施主に渡すべき内容のもの。設備の部品なんてせいぜい7年しか保管していない。今まで、ユニットバスやシステムキッチン等は毎年新製品が登場し10年も経てば取っ手一つ部品は無い。200年も部品管理をしてくれるのだろうか。
既存住宅の性能・品質に関する情報提供の充実
住宅品質確保促進法に基づく既存住宅性能評価を行う
H12年に性能表示という制度をつくったが、あまりに馬鹿馬鹿しすぎて戸建住宅には普及しなかった。
例えば、構造木材を薬漬けにして、洗面所の壁と天井をビニールクロスにすれば、75年持つ要素を持っているという表示をする内容だ。ハウスメーカーの最低仕様に、お墨付きを与え商品価値を上げようというもので、素人も見破ってしまう程度のものだった。
200年住宅ガイドラインの内容も、品確法の性能表示と全く同じ。品確法の屈辱を、今回リターンマッチして再度土俵にあげる。
200年住宅の建設。 取得を支援する住宅ローンの枠組み整備
スケルトンには50年ローン。 インフィルには20年ローンを別々に組めるようにして、支払いを楽にする。
カラーベストとサイディングとビニールクロスの家に50年ローンを組んで良いものか。消費者の収入が減っているので、住宅購入をし易いようにと、住宅メーカーが言っていることを鵜呑みにし、長期のローンを組めるようにする。
米のサブプライムローン問題も50年ローンにすれば解決するのかな。
既存住宅の取引に関する情報提供の充実
取引価格などに関する情報が、既存住宅の売却・取得をしようとする者に対して的確に提供される仕組みの情報を図る。
中古住宅市場が、アメリカは80%なのに日本が13%と低いのは情報不足だとのこと。不動屋さんは町にあふれるほどいるのに、国が応援するのだろうか。福田首相が住宅土地調査会長だからだろう。 日本の中古住宅市場が振るわないのは、家を投資の対象にしないのと、土着性が強いのと、家がボロだからだ。カラーベストとサイディングとビニールクロスの家が最低仕様だということを全く認識していない。
200年住宅に係わる税負担の軽減
200年住宅ビジョンを普及させるには、内容に魅力がないので、減税措置で、関心を深め普及させようという趣旨のもの。
良好なまちなみの形成・維持 質の良い住宅はまちなみ形成に貢献するという内容。自画自賛というか「風が吹けば桶屋が儲かる」理屈と同じレベルだ。構造躯体と設備を分離しただけで、どうしてまちなみが良くなるのだろうか。
品確法とCHSの焼き直し版に、ローン優遇と減税を武器にした200年住宅ビジョンは絶対普及しないと断言できる。過去のハウス55やセンチュリーハウジングシステムの住宅政策も、ことごとく失敗している。10年毎に忘れたころ政策が出現する。
もう早々と200年住宅を謳っている業者が出てきた。
ミサワホームの社長を首になった創業者の三澤千代治氏は「プレファブメーカーは粗利益50%は高すぎる」と内部暴露発言をし、粗利益25%の200年住宅「ハビタ」を地域工務店を巻き込んで発売するとのこと。内容は柱を150センチ角の集成材柱を使うから200年耐久性があると彼は断言する。
自分が3年間日本中の長寿命家を350件見て回ったら、柱が太いのが耐久性要素だと、これを商品にすれば売れると動いていたら、ちょうど200年住宅ビジョンが発表になった。長寿命のための要素は100項目ぐらい必要とすれば、そのうち1つか2つしか満足していない。マスコミも政府発表の200年住宅と三澤千代治氏の200年住宅の区別がつかない。共に偽装性が高いことでは一致する。
中国と日本は偽装大国である。
建築ジャーナル 2008 4月号掲載
最近、木の家や自然素材がブームです。良いことばっかりのコピーが氾濫しています。そもそも、自然素材に欠点があるから、新建材が開発されました。自然素材には欠点が必ずあります。欠点は消費者に事前に説明しておかねばなりません。私のインフォードムコンセントのいくつかを紹介しましょう。
<構造材>
1 柱,梁材が1等芯持ち材の場合は、ヒビ・節が必ずあります。ヒビは強度にまったく影響しません(詳しくは本連載「無垢材は欲しけりゃ、ヒビにビビるな」(2005-6)を参照)。
熊本城が今年4月20日に一般公開されますが、本丸御殿の台所の梁と柱はヒビだらけです。梁1本に200カ所ぐらい入っています。本丸御殿は1000年持たせると熊本市は言っています。ヒビに不安な人は熊本城を見に来てください。ヒビが入る音が発生します。場合によっては5年ぐらい続きます。夜寝ているとき音が気になる人がいますが、子守歌と思ってください。木材の節は樹木だったときの枝の痕です。木に枝があるのは当たり前ではないでしょうか。自然素材というなら枝がないほうがおかしいことになります。
<自然建材の対処の仕方>
2 床暖房や薪ストーブ暖房の場合、床板は5ミリぐらい床板が縮み、隙間が出ます。6月ごろ暖房を止めて室内湿度が上がれば隙間はなくなり、元に戻ります。水分を含めば膨らみ、水分を吐き出せば縮む自然の摂理です。床板が調湿しているので仕方のないことです。
このことをクレームと受け取り、木の表面にコーティング塗装をする人もいますが、調湿作用もなくなります。またナラ材など硬い木は調湿作用が少ないので、縮みは少ないようです。しかし、触ったら冷たい。吸湿性があり、縮みがなく、暖かかく、汚れない建材はこの世に存在しません。美人で、背が高く、頭が良くて、謙虚で、心が優しい、そんな女性が日本に一人もいないのと同じです。
3 ヒノキ材は油分が多く黄色くシミになっている部分があります。油が1カ所に集中していて、色白な材ほど目立ちます。時間が経てば分散して判らなくなります。半年ぐらい待って下さい。シミは消えます。
4 玄関三和土はヒビが入ります。田舎の家の土間は外部と地盤面が同じなので、常に濡れていてヒビは入りません。居住性を上げるために、玄関の高さを外部面より上げれば湿潤がなくなり乾燥土間になります。
粘土の焼き物を焼いた経験がある人は理解できると思うのですが、3割ほど収縮します。吸湿性が上がるようにニガリを混ぜたり、収縮防止にスサを混ぜたりしますが限度があります。5ミリぐらいの隙間は覚悟して下さい。1センチ以上あれば隙間を充填することは可能です。
4 玄関三和土は地球とつながっていて夏のひんやり感はなんともいえない心地良さがあります。
コンクリート土間は室内とつながることになり、潜熱現象がおこり、ひんやり感はありません。ヒビは入りにくいです。冬の乾燥期、三和土に散水すれば加湿装置にはや代わり。以前喘息持ちの施主様がいて、毎日土間三和土に散水して湿度を10%上げていると聞きました。
<自然と向き合う暮らし>
5 浄化槽の臭いは6カ月間ほど、続きます。バクテリアがうまく働いていないからです。バクテリアが活動するまで6カ月間かかるのです。決して、排水には、強アルカリ・酸の洗剤は流さないで下さい。バクテリアが死にます。そしたら臭いが発生します。汲み取りをして、最初からやり直しになります。
6 薪ストーブは北国で開発されたものから、台風防水対策がなされていません。強雨風の場合は二重煙突の継ぎ目から漏ることがあります。雨は木部には伝わりませんので、家には問題はありません。煙突を伝って本体に落ち濡れます。そのままにしておくと錆が発生します。すぐふき取ってください。煙突からスズメが入ることがよくあります。網設置はススがたまり良くありません。煙突をたたいて逃がしてください。逃げない場合は焼き鳥です。過去3件発生しました。
7 九州は広葉樹が少ないです。針葉樹に比べてススの付き方が5倍くらい多いです。針葉樹が手に入りやすい分、煙突掃除が多くなります。掃除がしやすいように直煙突にしました。年に2回ぐらいの掃除は覚悟しておいて下さい。
建築ジャーナル 2008 5月号掲載
<床のメンテナンス>
8 タタミ表は、無染土です。欠点は滑り易いこと、焼けも早い、色むらがあることです。藁床には防虫紙を入れていませんのでダニが発生しやすい状態です。人が住みやすければダニも住みやすいのです。タタミの上にカーペットは敷かないで下さい。
保健所の見解によれば、500W以上の掃除機を使って、一週間に[部屋㎡]分間の目安で掃除をすればダニの被害は少ないとのこと。つまり、12㎡の場合一週間に1回12分間掃除するか、毎日2分間掃除するかです。刺されるダニ被害とダニの死骸や糞によるハウスダスト被害は意味が違います。(本連載「ダニは悪くない」06-6参照)。
9 床塗装は汚れ防止のためにエゴマ油を使っています。床の油は完全に乾いていません。乾燥まであと10日間ぐらいかかります。また、床板の間に入った油は乾燥が遅いので板同士のこすれで床鳴りがします。1ヶ月後に止まります。建具の手垢が気になる場合は、エゴマ油を自分で塗ってください。
<エクステリアのメンテナンス>
10デッキはウッドロングエコ塗装をしています。防腐効果はありません。雨がかりの状況で、1年後、3年後、デッキにヒビが入ってから防腐塗料を塗る方が効果的です。ホームセンターの防腐塗料を自分で塗ってもよいのですが、健康のことを考えればエココートという塗料が良いです。価格は5000円/500CCです。材料は工務店に要求してください。市販品ではありません。直射日光に当たると硬化しますので、保存不可です。
<自然建材のメンテナンス>
11漆喰の汚れ取りは、まずは消しゴム。落ちない場合はサンドペーパー200番程度で削り落として下さい。浸透性のある汚れはハイターやカビキラーでも落ちます。
12 漆喰は吸収作用があり、何でも吸いこみます。タバコの煙や薪ストーブの煙も吸い込みます。漆喰壁に絵など掛けていれば、絵の裏側に煙が回りこみ定着し壁が黄変しますので、壁に絵等は掛けないで下さい。
13スギ・ヒノキは柔らかく傷が付きやすい材料です。床の傷や汚れはサンドペーパー150番程度で削り落として下さい。
<浴室>
14 浴室は湿度が高い場所です。脱衣所と1体と考え、脱衣室の床・壁・天井の杉板にも吸湿を負担させる考えです。入浴後は、ガラスとも欄間も開け放しにして下さい。冬は家の中が過乾燥状態になります。脱衣所の戸も開けて、浴室の湿気を家中に廻らすようにして下さい。加湿器の役目です。バランスがくずれたら浴室の壁・天井の板に黒カビが生え出します。注意点は
①風呂のふたは必ずかぶせて下さい。
②浴室はいつも乾燥させて下さい。
③お湯が熱いうちに栓を抜いて下さい。
④欄間の戸やガラス戸はいつも開け放しにして下さい。
15浴室の瓦に石鹸カスが付きます。酢で洗って下さい。石鹸のアルカリと酢の酸で中和させる方法ですが、あまり落ちません。良く落したい場合は洗剤を使って下さい。
16 蛇口の水垢は水のカルシウム成分です。熊本市内の水道水はミネラルが多く、水垢が付き易いのです。金属たわしで落ちますが、またすぐ付きます。
17 大きい窓は強化ガラスを入れています。強度は普通ガラスの5倍あるのですが、たわみは同じなので、台風時はガラスが曲がり不安を感じる恐れがあります。
18 桧風呂は乾燥が一番です。寿命は平均12年。使い方が良ければ20年持ちます。最後の人が栓を抜いて下さい。残り湯を使って洗濯する場合は、その日の内に洗濯し、翌日に持ち越さないようにして下さい。1週間家を空ける場合はバケツに水を入れ、桧風呂の中にバケツを入れ、ふたをして下さい。乾燥しすぎると木が収縮し漏水します。
19 家族が少ない場合は、ボイラーに追い炊き機能は付けていません。追い炊き装置が逆に放熱装置となり、湯冷めが早くなります。浴槽の外側に断熱材を詰め込む対処はしていますが、限界があります。冷めたら追加湯でお願いします。追い炊きより追加湯の方がエネルギー費用は安いのです。
建築ジャーナル 2008 6月号掲載
<建具>
二重建具は、乾燥・湿潤の差でそりが発生します。安定するまで半年かかります。しばらくは閉めた状態にしておいて下さい。その後は出来るだけ開けっ放しにして下さい。
21台風の時、木製サッシュは敷居下から雨水が吹き込んできますので、新聞紙を丸めて外部から、差し込んで下さい。新聞紙が水で膨れて、密閉度が高まり雨水の浸入を防ぎます。
22 障子紙はい草入りです。市販にありません。工務店に要求してください。少しの破れは銀杏やモミジの押し葉を貼って下さい。
23柿渋紙・カス入り紙は伝統工芸館(熊本城下)で600円/枚で販売されています。千代紙は熊本市上通りの甲玉堂に500円/枚で売ってあります。
<電気・機械設備メンテナンス>
24 乾燥機つき自動洗濯機を使用し、機器の真下に排水を取る場合は、直下排水Lパイプ(オプション)1000円程度を購入してください。
25 照明器具ボール球は60Wを付けています。明るさに慣れたら40W等に付け替えて下さい。暗い場合は100Wに交換してください。白熱灯で280円。蛍光灯の要求が強くなっています。ボール球の蛍光灯への変更も可能です。コジマ電気で750円。ナフコで770円です。必ず電球色蛍光灯を購入して下さい。15分以上点け放しの部屋が省エネになるのです。トイレや納戸など15分以内の場合は蛍光灯の方が電力料金は高くなります。40W以上の蛍光灯は電磁波が多く出ます。省エネと健康の比較は考えものです。自己責任で判断してください。
26 洗面所の暖房は縦型の小さいハロゲンヒーターが良いでしょう(5000円程度)。
27 平成17年度より寝室・階段に火災警報器設置の義務が課せられました。余計なお世話ですが、法律なので設置しています。電池の寿命は10年です。本体丸ごと交換で、1ヶ4000円です。ビルなどは、年1回の検査があって有効なのです。汚れや蜘蛛の巣で、センサーが感知しなくなります。最初から警報器は無いものと思っているほうがベターです。むしろ消火器を購入して下さい。
<構造メンテナンス>
28 構造は柔構造です。柳の木に折れなしの原理です。震度6でも7でも、倒壊はしませんが、壁の落下、下屋柱の破損はあり得ます。最低命を守る考えです。隣の筋交いの家は震度6でびくともしなかったのに、わが家だけが破損という状況はあり得ます。阪神・淡路大震災の家は筋交い工法の家が多く、倒壊しました。中越地震は木組の家が多く、壁破損はしましたが、倒壊は少なかったようです。
29 夏季、欄間は開け放しにして下さい。
30 土間は定期的に水をかけて下さい。加湿器の役目をします。やりすぎても良いように、べた基礎の下は水抜きの穴をあけています。
31スギ材を多用しています。工期も普通の家の倍近くかかりました。材料の養生はしていましたが 柔らかい材料なので、細かい傷は残っています。止むを得ないと思って下さい。
32 古材は乾燥しているので乾燥収縮はないと思わないで下さい。幅広の場合、さらに縮みます。下地の木が見えたら墨汁を薄く溶いて染み込ませて下さい。
33 2階の床が1階の天井です。2階の音の遮音性はほとんどありません。歩く音。鉛筆を落とした音も聞こえます。我が子が騒いで何が悪いという考えです。
<シロアリ・ダニと向き合おう>
34白蟻予防工事はしていません。洗面所・便所の壁から土粉が出たら連絡下さい。基礎立ち上がりに化粧モルタルをかけていないのも早期発見のためです。床下も基礎立ち上がりがないため、潜りやすい構造です。白蟻の活動時期である7~8月に1回床下に潜って下さい。自分の家ですから。土台パッキンを使用している場合は、白蟻被害補修工事の5年保証があります。(詳細は本連載「シロアリは悪くない」06-7参照)
35 薬剤使用がないため、虫の侵入は多いです。チャタテ虫・ジバン虫・ヒラタキクイ虫・ナガシンクイ虫です。弱いスプレー殺虫剤で除去できます。予防のために薬漬けの家にするより、付いたときに除去する考えです。 自然素材に欠点があるから、新建材が開発されました。自然素材には欠点が必ずあることを理解してください。
建築ジャーナル 2008 7月号掲載
2009年10月から、新築住宅建築の全てが瑕疵担保保険に加入しなければならない。消費者には良いことのように見える。しかし、新しい法律が成立し施行されるとき、いつも問題が発生する。国の答弁はいつも同じ。説明が足りなかったと。説明不足ではない、検討不足である。2009年10月までに問題点は修正して欲しい。
2000年品確法施行
2000年に品確法ができた。「瑕疵担保責任10年保証」「住宅性能表示制度」「完成保証制度」の3法から成り立っている。「瑕疵担保責任10年保証」は保証期間を民法の2年間から10年間に改正した。これは良いことだったと思う。
次に「住宅性能表示制度」について。①住宅の性能を9項目(現在は10項目)についてランクをつけ表示することと、②瑕疵保証の保険加入の2本柱を立てた。この制度は10数万円程度の費用がかかった。政府は住宅の半数が加入すると見ていたが、現実は加入者が非常に少なかった。法律で10年の瑕疵保証は義務づけられているので、加入は必要ないという建築主や施工者が多かった。
2005年耐震偽装事件が起こる
耐震偽装で、耐力不足を出したマンション関係者がすべてが倒産し、入居者に多大な債務を強いられた結果、建築確認行政を管理している国に対し責任追及が始まった。マンションの販売元ヒューザーが「性能表示制度」に加入していれば、倒産しても保証機構が債務を受け継ぎ国への責任追及はなかった。
2008年5月に瑕疵担保履行法
耐震偽装事件の後2008年、国は1万人を対象に住まいに欠陥が生じた場合の「保証への不安」と「保証の必要性」についてネットアンケート調査を行った。「保証への不安」に「はい」と答えた人は81%。「保証の必要性」に「はい」と答えた人は91%だった。信用ある業者に依頼した場合とか、瑕疵担保責任10年は法律化されているが強制加入が必要かとか、保証費用に10万円必要という条件を出せば答えは変わっていた。車の強制加入保険と同じという説明に、消費者が賛同するのは当たり前だ。アンケート対象者は、車の保険とヒューザーのことを想像し、答えを書いた。
品確法の「性能表示制度」への加入者50%達成を絶望視していた時期、やらせに近いアンケート結果を基に、瑕疵担保履行法は、2008年5月に立法化された。「瑕疵担保責任10年保証」で充分という意見に対して、工事会社が倒産の恐れがあるのでつくったという。だったら倒産保険にすればよい。
家電製品の保証期間は1~2年である。保証期間中はメーカーが保証する。ソニーやナショナルが倒産した場合や保証の支払いが滞った場合の救済措置の法があるだろうか。
■1、品確法では検査費用だった。瑕疵担保履行法では保険費用
ステップ1建築主からお金を取るのではない
建築確認の申請者は建築主である。建物の検査が目的であれば請求先は建築主である。高い検査費用を施主に請求すれば、問題が起こるので、保険制度にした。工事保険だと請求先は建築業者となる。終局は建築主の財布から出るお金ではあるのだが。
ステップ2高すぎる保険費用・便乗検査費用
住宅保証機構(指定保険法人)は、120㎡の建物で、現場検査費用23320円+保険費用45650円=68970円と発表した。過去10年間の瑕疵の発生データがある。発生率は0.6%、発生費用金は1件180万円と調査会の報告である。つまり1000件の内6件に瑕疵が発生し、瑕疵の総金額は1080万円。1件当たりの負担金は1万800円となる。還元率は23%である。競馬の還元率は70%、パチンコの還元率は80%、やくざの賭け事だって還元率は70%なのに、あまりに高すぎる保険料。
品確法をつくり、天下り・行政退職者による検査組織をつくったが利用者がいない。行政改革で住宅金融公庫同様消されるかもしれない法人組織に、存在価値をつけなければならない。保険には検査は付きもの。強制保険にしたら、検査もコバンザメみたいについてくる。検査組織は安泰だ。
ステップ3保証と保障の違い
保証がいつのまにか保障に変わった。国民は保証と思っている。建主に特別、落ち度がなければ、修繕は無償でやってくれるものと理解している。工事に瑕疵があった場合だけの保険である。地震が起きて、壁にヒビが入いっても保険金は出ない。地盤沈下で家が傾いても、施工上瑕疵がなければ保険金は出ない。地盤沈下の保険はオプションである。雨漏れが多いと聞くが、台風時の雨漏れは火災保険がある。火災保険は築後10年と短くない。どんなに古くても加入できる。ほとんどの人が火災保険には加入しているので二重保険になる。「瑕疵担保責任保険」から「雨漏れ」を除いて、掛け金が安くならないだろうか。
■2、供託と保険の選択
保険金が高すぎると言う人のために供託金制度もある。建設業者は供託金を納めるか、保険に入るか選択制になっている。供託する場合は供託金が必要。年間施工5戸の建設業者の場合1戸当たり560万円。年間施工100戸の建設業者の場合1戸当たり100万円。住友林業クラスの年間施工1万戸の建設業者の場合1戸当たり4.4万円。積水ハウスクラスの年間施工3万戸の建設業者の場合1戸当たり2.7万円である。もちろん検査もない。供託金なので目減りはしない。大手と中小企業の差はあまりに大きい。
中小建設業者ほど金がかかる仕組み。中小建設業者ほど文句をいうので、パイが少なくなった建設業界を見ると、中小建設業者を淘汰させたが良いというねらいもあるだろう。
■3、設計施工分離に逆行行為
設計施工一貫においては、工事監理が行われていない。設計施工一貫の場合には第三者が検査を行うのは正しい。しかし、設計施工分離であれば、設計者が監理するので第三者検査は行っている。検査機関と設計者監理の二重業務となる。例えば配筋検査で言えば、配筋が完了して、検査までの時間を施工会社に待たせることを強いている。配筋検査を設計者が行い、さらに検査機関が行うとなれば、施工会社に多大な時間ロスが発生する。
地域によっては中間検査がある。となれば三重検査となる。確認機関と検査機関が同じ場合は、同時の検査ができるが費用の割引はない。一つの仕事に2箇所から収入がはいる。
この三重検査費用は、建築主にとって多大な出費となるので、設計者の検査はいらないとの要求がでるだろう。実労働者より検査要員の増大になる。農業従事者より農協職員が多いの と同じ。
■4、仕様のダブルスタンダード
検査機構(指定保険法人)は独自の内部基準をつくっている。保険の支払いを少なくしたいからだ。構造木材の含水率は20%以下、土壁は駄目、松杭は駄目、バルコニーは10㎡までなど。パンフには「すべての工法・建て方の新築工事」とある。建築基準法にない内部基準は問題が多い。建築基準法を遵守すれば、家は建てられる、保険には入りなさい、でも基準に合わないので保険の支払いは致しませんとは詐欺行為ではないだろうか。ダブル検査にダブル仕様。
■5、紛争処理
売主と買主に紛争が生じた場合、紛争処理の窓口をおいた。元締めは(財)住宅リフォーム・紛争処理センターだ。1戸につき1万円(不確定)の供出金とのこと。財団に年間10億のお金が集まる。
紛争が起きたときのため、各県に建築紛争処理審査会がある。これもダブル紛争処理だ。クレームが発生した時、東京の(財)住宅リフォーム・紛争処理センターがわざわざ地方まで来ることはない。地方の建築紛争処理審査会か弁護士さんを紹介するだけだろう。地方の建築紛争処理審査会が機能を果たせば、10億のお金は財団の純利となる。
最初120㎡(2400万円)の場合は12万円の掛け金だった。高いという声に6.8万円に下がったと思ったら地盤保証が消えていた。平均180万円の保証に対し掛け金6.8万円でも高すぎる。戸建て住宅の場合は180万円ぐらいのお金は倒産しない限り払える。問題はマンションの保証である。マンションの場合、耐力不足を戸建て住宅にみたいに壁を開けて筋交いを入れるというわけにはいかないので、マンション業界だけでの互助保険には無理がある。それで、戸建て住宅建設の方々にも掛け金参加を法律でお願いしたのだ。掛け金が高い理由はそうだったのか。
最近、業界への天下りに世間の目は冷たい。耐震偽装事件は渡りに船だった。記憶が醒めないうちに、天下り先の確保と、国に責任が来ない2重3重の防護策をしておかねばならない。保障機構は、指定保険法人に変身し、人員増強を行い、増益を狙う。実務労働者の上に乗っかる間接業務の増大に、実務労働者よ、声を上げよう。制度に反対ではない、あまりに高すぎる保険費用に意見を言おう。確認申請費用の値上げ、高い適合性判定費用に更に追い討ちをかける。机の上だけで儲かる金融業界と同じ方向に行く建築業界の被害者は、建築主なのだ。
建築ジャーナル 2008 8月号掲載
出江寛氏は言う「建築士は1級建築士、2級建築士などの資格を持っている人。建築屋は商売を旨としている人。建築家は画家や作家と同じ、画家が絵の具の塗る価値を㎡いくらで換算しないし、作家が紙と鉛筆の消耗費で請求はしない。建築家は哲学をもって作品性で勝負する人である」と。
最近は建築家のオンパレードである。建主と建築家をつなぐという仲人組織が増えてきた。歩合制もあるし会費制もある。「建築家と建てるデザイナーズハウス」「ハウスメーカーより建築家と家を建てませんか」などのキャッチコピーで、建主を募り、登録建築家から紹介料をもらう。その組織に登録すれば、誰でも明日から建築家になれる。出江寛氏の建築家論では建築屋である。
建築家はいらないと千葉のS氏からメールがきた。S氏に詳しく聞いてみた。
①やすらぎ・なごみを強調する建築家は怪しい
熱貫流抵抗値や隙間相当面積等の数値をもって建築の優位性を訴える業者が増えてきた。もちろん建材メーカーの受け売りである。建築家はデータを持ち合わせていないので安らぎや和みに頼る。
建築家ではないが、私もその一人。
②自分で設計した木造の家に住む建築家は少ない。
⇒シャッキンコンクリートの家に住んでいる。
当たっている。貧乏なので木造の家にも住めない。狭い土地を購入しRC造の小住宅に我慢して住んでいる。その小住宅を奇想天外な形にして、住宅雑誌に売り込み掲載できればデビュー作となる。
意外と景観破壊の建築も多い。
③建築家は責任をとれない。⇒金がない。
責任を取ろうにも金がないのが事実。建築家賠償責任制度がある。専門性がある職業には予期せぬ失敗が起こりうる。医者は必ず保険に入る。医療ミスが潜んでいるからである。設計という仕事にも設計ミスがある。なのに、建築家は建築家賠償責任制度に加入していない。
④建築家は芸術家であると勘違いしている。
本当にそう思う。建築雑誌の影響だろう。安藤忠雄や伊藤豊雄を目指すのは良いが、彼らはトップランナーである。新しいデザインを作るのに億に近い設計費を貰い自費で試験をし、模型を百ヶ位作り、検討し新作を発表する。一方、消費税くらいの設計料しか貰えない建築家が、思いつきで新作に挑むがほとんどが失敗する。失敗の被害者は建築主である。しかし、建築主は親や親戚なので、我慢して住んでいる。設計が今までにない新作というが必ずしもそうではない。外国の雑誌を調べあまり公表されていない建物をコピーするのである。人をあっと驚かすデザインは建築雑誌に1回は載るが、後は泡沫建築家と消えてしまう。毎年繰り返される。
⑤建築家は建築物理に弱い。⇒数理に強い設備屋のほうが頭が良いのでは。
自称建築家には自分は構造が苦手という人があまりにも多いのにはびっくりする。建築というものは構造がメインなのに意匠ばかりを重視し、構造は人まかせなのである。ラーメンにたとえれば、麺とスープが勝負なのに、麺とスープはまずいままかやくと海苔に力をいれてもラーメンはおいしくならない。
⑥建築家は施工図面が書けない。⇒納まりは施工業者任せである
吉村順三の設計図は施工図の固まりである。ディテールには神が宿るといって吉村順三を崇拝しているのに施工図の勉強はしない建築家が多い。実はこの問題は奥が深い。施工図はサッシュなどの収まりを施工の途中に書く。設計図と施工図の区別がつきにくいことをいいことに、施工図といって施工業者に設計図を書かせる。設計図を書く業務の低減が可能で、安い価格で設計受注ができる。設計図に近い施工図を書くことを条件に工事入札時、設計者に口利きをしてもらう悪しき習慣もある。設計者はデザインだけに注力し収まりを知らない。施工図も見れないし書けない。もっとひどい場合は設計中に裏指名の施工業者を呼んで設計図を書かせる設計者もいると聞く。このことは工期とも絡んでいる。計画・設計・入札・工事と進むが概ね計画が遅れるのに最後の竣工日は決まっている。入札前に段取りしないと工期が間に合わないという負い目があるので発注者も見て見ぬふりをする。
建築ジャーナル 2008 9月号掲載