鎮魂の家 M様邸
建築地:宇城市
竣工2007年3月  土地面積:454 M2 延べ面積:164.95M2(50坪)
設計:古川保・松村志磨子 施工:楠元建設 棟梁:平田保
定年になったら、新しく住まいを造り、ゆっくり生活をすることは夢だった。59歳で癌の宣告を受けた。余命あと1年と。設計から完成まで少なくとも1.5年は必要である。プレハブや最近の簡略住宅は半年とかからないので、それで建てれば、半年は住める。でも木組みの家でなければならないという強い意志があった。住めないかもしれないという覚悟で、設計は進んだ。設計が完成した。Mさんは逝去した。遺族は、本人の意志を受け継ぎ、工事をすすめることを望んだ。忌明けが上棟式となった。Mさんの住まない部屋はできた。Mさんは使わない机も出来た。クロゼットもできた。

年金を払い終わり、退職金を貰い、念願の住まいに住めるという誰でもが羨ましがる、最高の生活の一歩手前で終焉した。あまりにも残念な一生だった。

芦北の林研グループから直接木を買い、川尻六工匠の大工の手で、家を建てたことの意味は大きい。日本の山の木を切ることは、自然を守ることだし、伝統木構造で建てることは、伊勢神宮の式年偏宮と同じく大工技術の継承である。Mさんの魂は、葦北の山と大工の腕の中で生きつづいている。