かつてこの地にあった家は昭和5年に菊池郡から移築されたものだった。Kさんはここで生まれ育ち嫁いでいった。どうしても思い出いっぱいのこの家を残して住みたかった。今回再生すれば、75年前の移動再生と今回の現地再生を2回行うことになる。杉・桧の単材の耐久性は600年とも1000年とも言われているので、白蟻被害と腐れが無い限り100年200年経過はたいした問題ではないようだ。
  築後80年という歳月にもかかわらず、梁や柱などの構造材はしっかりしていたことに加え、床下にも白蟻の被害が無かったため再生工事に取り組んだ。
 一人住まいなので建物全体は縮小した。広縁は日向ぼっこができるように少し広げることに、天井は外して曲がった松の梁を見せるように、玄関と南側のアルミサッシは気密性は低いが手触りの良い木製に変更した。壁・天井に100mmの断熱材を入れれば断熱性は充分だ。九州ではとりたてて気密仕様にする必要は無い。
 二間続きの吹き抜け空間の一人住まいにもかかわらず、今年の冬は暖かかったとのこと。
 真っ白の漆喰をバックに、すすで黒光りしている透かし欄間の富士山はKさんにとって、生まれたときからの風景である。

       
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