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雑誌「建築ジャーナル」に掲載されていました”古川保のこんなもの要らない””こんなものほしい”の続編として伝統構法万歳が連載されました。 本当に「こんなものいる?いらない?」そして伝統工法について考えてみましょう。
その他の住宅閑話はこちらです
あたしの家のまこと こんなもの要らない こんなもの欲しい
No.90からはFacebookへ移行しています。「熊本地震震災日誌」を隔日載せています。
「古川保」で検索、ご覧ください。https://www.facebook.com/tamotsu.furukawa.9

伝統構法万歳-新連載!!
1.伝統構法とは何ぞや
2.伝統構法万歳 3方良しの産直住宅システム
3.格子戸いろいろ
4.伝統構法に厳しい瑕疵担保履行法1
5.伝統構法に厳しい瑕疵担保履行法2
6.熊本のスギQ&A その1
7.熊本のスギQ&A その2
8.太陽光発電に費用対効果はない
9.長期優良住宅普及促進法に物申す
10.エコエコエゴエゴ
11.伝統構法の住宅実例1
12.伝統構法の住宅実例2
13.民主党政権への税収提案
14.品確法再批判その1
15.品確法VOL.2
16.品確法VOL.3
17.品確法VOL.4
18.住宅版エコポイント
19.水俣エコハウスの理念
20.伝統的構法は玉手箱―水俣エコハウスの構造
21.伝統的構法は玉手箱―水俣エコハウスの材料検査・木材の品質
22.伝統構法は玉手箱―水俣エコハウスの玄関・味噌部屋玄関
23.伝統構法は玉手箱―トイレ・浴室・洗面所
24.伝統構法は玉手箱―エコハウスの寝室・子供室・座敷・寝室
25.伝統構法は玉手箱―エコハウスの居室U
26.水俣エコハウスの材料T
27.水俣エコハウスの材料U
28.地域の材料― エコハウスの機器
29.改正省エネ法は日本建築文化を崩壊させるかも
31.エネルギーの独り占めをやめてくれませんか
32.割にあわない太陽光発電を国民にどうして薦めるのだろうか
33.節電をしたつもりが増電なり
34.エコハウスの屋根と床の断熱性能
35.「家のつくりようは冬を旨とすべし」でよいだろうか
36.伝統的構法木造建築が建てられない法的課題 その1
37.伝統的構法木造建築物の法的な課題について その2
38.39.40.住宅版改正省エネ法を阻止しよう 
41.ゴミ先進国ニッポン
42.伝統構造の木材T
43.伝統構造の木材U
44.スマートハウスはヘビーハウス
45.資源大国ニッポンは豊富な資源を活用せよ
46.灼熱セミナーレポート
47.伝統構法に厳しい改正省エネ法の判断基準案が発表された
48.我が輩はシロアリである
49.改正省エネ法のパブリックコメントについて
50.省エネ住宅「施工技術者講習会」のテキストの内容について
51.省エネ住宅「施工技術者講習会」が及ぼす副作用U
52.省エネ住宅「施工技術者講習会」が及ぼす副作用V
53.伝統構法の基礎を過剰設計するべからずT
54.伝統構法の基礎を過剰設計するべからずU
55.誰のための木材利用ポイント410億円
56.民家再生は伝統構法を学習してから
67.住む立場からの伝統構法住宅
68.省エネ法義務化は真の省エネになるのか。VOL.1そもそも省エネ法とは。
69.省エネ法義務化は真の省エネになるのか。Vol.2:1次エネルギー消費量。
70.省エネ法義務化は真の省エネになるのか。 VOL3富裕層に優しいエネルギー消費量基準。
71.省エネ法義務化は真の省エネになるのか
72.大改造!!劇的ビフォーアフターの収録顛末
73.省エネ法義務化は真の省エネになるのか(伝統工法を壊さないための提案)
74.省エネ法義務化は真の省エネになるのか(補足)
75.省エネ法義務化は真の省エネになるのか(「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のありかたについて」のパブリックコメント)
76.省エネ法義務化は真の省エネになるのか(縁側)
77.建物価格と坪単価
78.木の家のメンテナンス
79.2030年に向けてのエネルギー消費量削減
80.太陽熱温水器のすすめ
81.プレカットの功罪
82.バイオクマテックデザイン
83.バイオクマテックデザイン 2
84.UA値簡略計算法
85.ジュール、ワット、カロリー
86.グリーン化住宅
87.仏事と建築
88.安藤先生の記事
89.胡散臭いエネルギー政策

   
   
 
1
 伝統構法とは何ぞや
   
   古いものを見直そうという動きがあるが、建築業界も例外ではない。伝統構法というコピーが良く目につく。伝統構法、伝統的構法、伝統工法、伝統木造といくつかの表現方法があるが、まずは言葉の整理が必要だ。

工法と構法の違い
伝統構法という単語は建築大辞典に載っていない。工法と構法の違いは載っている。工法は「物の組み立て方、施工の方法」。構法は「建物の構成方法、材料及び構成部品により構成される建物の実態」とある。
定義がないからこれが伝統構法だと断定もできない。

伝統とは
広辞苑によれば伝統は「系統を受け継ぐこと」とある。ウィキペディアによれば、「伝統は常に変革を伴う。そうでなければ、現代に生きる我々は古代の人々と全く同じ生活を送っていなければならないはずである。伝統の維持を求める者は、大量の『変革されたもの』に混じっている少数の『変革されていないもの』を見つけ出し、そしてその『変革されていないもの』の保護を求めるという行為が不可欠になる。」つまり、
生活のあわせて新しいものに変革させても良いということである。

伝統構法
伝統構法の材料要素は、昔から受け継いだ貫や板壁や土壁などである。それらを昔から受け継いだ施工の方法で家を建てる。民家村などの展示建築では生活しないので、純粋な伝統構法の建築は可能である。しかし、現代に生きるものが生活として使用する住宅では変革をどの程度行うかが議論となる。その変革の範囲に個人差や思い込みの差があるものだから話しが複雑になる。

伝統構法[思い込み仕分け]
伝統構法の思い込みを6つに仕分けしてみた。
@ 基礎石。石場建て。足固め。貫。土壁。金物なし。漆喰壁。込み栓。渡り顎。木の建具
A コンクリート。足固め。貫。土壁。金物なし。漆喰壁。込み栓。渡り顎。アルミサッシュ
B 布基礎。土台。貫。土壁。金物なし。漆喰壁。込み栓。渡り顎。アルミサッシュ
C 布基礎。土台。貫。下がり壁。モルタル壁。断熱材。金物なし。漆喰壁。渡り顎。アルミサッシュ
D 布基礎。アンカー緊結。土台。貫。モルタル壁。断熱材。金物なし。ボード塗り壁。渡り顎。アルミサッシュ
E 布基礎。アンカー緊結。土台。筋交い。モルタル壁。断熱材。金物なし。ボード塗り壁。渡り顎。アルミサッシュ

伝統構法[認識の差]
A @については、名工と呼ばれる人の施工が多く誰も反論はしない。しかしコストが200万円/坪かかるかもしれない。
B 伝統構法の構造は、木材の曲げとめり込みにより構築しているので、@〜Dは伝統構法だという人。
C 過半の建築工法要素を伝統構法から学んでいるので、筋交いを使っても良いのだ。よって@〜Eは伝統構法だという人。
D 地震が多い日本は、布基礎に建物を頑強に緊結し地盤の揺れにしがみつく構造思想ではない。丸めの  基礎石に乗っかっていて、大地震の場合は基礎石からずれて地震エネルギーを吸収する。免震と制震を合体したような構造思想が基本だから@〜Cという人。


伝統構法とはなんぞや、異論反論もたくさんあるが、建築大事典に掲載されていない言葉を定義するのは難しい。日本の建築文化を残すことに主眼を置き、構造思想の再確認にためには@〜E論争に巻き込まれても、Dの認識で基礎にアンカーボルトで建物を留めない家の作り方を伝統構法と称して今後書いていく。
伝統構法が強いか弱いという議論には意味がない。「綿1キロと鉄1キロではどちらが重い」というクイズに似ている。伝統構法愛好者が言う「強い」というのは、筋交いや合板が建築基準法で認められて、貫が認められていないことに対する反逆論である。

法的規制
戦後復興当時、柱が9寸とかバラック建築が横行したため、昭和25年に建築基準法が施行された。伝統構法のことは眼中になかった。不法建築も多く、建築基準法も申請主義だったため根本からの建築基準法改正はなかった。60年が過ぎ問題が露呈した。最近の問題の極みは瑕疵担保履行法まで及ぶ。土壁の中に防水紙を入れよとのお達しである。土壁の検査はないので、「土壁の中に防水紙を入れました」と言って事なきを得る方法もあるが伝統構法を行う人は正直者が多い。法的問題は後述する。

伝統構法[表舞台へ]
伝統構法は確かに建築基準法に違反している。法律の方がおかしいので訴訟になっても無罪の判決。今の時代、法令遵守が言われ建築検査が行われてきて、裏舞台では建築出来なくなった。声をあげて表舞台に上げなければならないが、なんと舞台に階段が無い。

 
 
  左:限界耐力計算で解析して建築確認を下ろした。アンカーボルトでの固定はない
右:基礎は地中梁方式で上部への立ち上がりはない。強震が来たら建物は横にずれる。給排水管に被害で出るとう意見もあるが、強震時大事なのは給排水管よりも命である。
   
 
建築ジャーナル 2008 11月号掲載
 
   
   
 
2
 伝統構法万歳 3方良しの産直住宅システム
   
   価格は売手と買手の間で決まる。産直住宅が最近流行っているが、買手が安く買いたい意向と売手が高く売りたい意向は相反する。途中の中抜きをしたとしても、途中の手間はどちらかが負担しなければならず大して安くもならない。

伝統構法に限ればいろんな展開が生まれる。
外国は丘に木が植わっているが、日本は山に植わっているので曲がり木が多い。伝統構法では直材は通し柱や管柱に使い、曲がり木は小屋梁に使う。クリープたわみのことを考えれば曲がっているほうが良い。伝統構法は継ぎ手に重なりが必要。渡りあごの場合はスパンより30センチ長めの材が必要である。例えば3.9Mスパンのときに、オーダー材は4.2M材が必要となる。しかし、量産伐採システムの山側は30M以上ある木を3.4.6.Mと定尺に切断する。4.2Mの材が欲しければ6M材の価格となる。つまり、1M1万円とすれば4.2Mならば4.2万円で良いはずが6万円となる。施主にとって142%の高買いとなる。柱は3M材が常識である。例えば30Mの木から3Mの柱は10本取れる。階高の低い伝統構法なら2.7Mの柱で良いので11本取れる。また流通システムで特注というのがある。大黒柱7Mは3.4.6Mからもはずれているので、目の玉が飛び出る特注価格となる。産直木材には特注はない。

山側にとっての高売り
伝統構法の家に合わせた寸法の玉切りを山に要求する。JAS等の規格とは関係ない切断である。材がバラバラで頭が混乱するが、その代わり2割高く買う。製材所には梁を取った残り材(裏材)を鴨居・敷居材にしてもらう。製材所にも労力に合った対価を支払いする。切り旬が良くても半年の乾燥期間は必要である。山側に近い製材所は田舎なので土地代も安いので、半年間の自然乾燥費用として3〜5万円を払う。

施主側にとっての安値
住宅の設計には半年ぐらいが必要である。基本設計が終わり、実施設計の前に山へオーダーする。伝統構法は骨組みが単純なので基本設計時にオーダーしても少々の変更には対応が可能である。価格的に見て、直梁・曲がり梁・大黒柱・管柱・鴨居・敷居・枠材をグロスで考えると安値となる。山側は瀕死の状態でお金が無い。山から切り出した時点で山側に、製材が終わった時点で製材所に施主が直接お金を払う。40坪の家で300万円を越えることは無い。又梁・柱以外の鴨居や敷居に節があることを受け入れなければならない。木には枝があるのでその枝が節となる。山の木に「枝は無いほうが良い」とは言えない。

設計。施工側にとっての利点
設計はJAS規格と関係なく設計が出来るという良さがある。ただし山の木を見て梁の大きさを設計する必要はある。120×300材は縦に長いので裏材が多く出て無駄になる。120×300と240×240は断面2次モーメントが同じである。240×240の方が構造組み立て時に接合剛性は高いという具合である。
伝統構法で手間がかかるのは継ぎ手の加工である。12Mの桁を4M材使用だと継手3箇所となるが6M材を使えば2箇所となる。タルキや母屋も6Mと長物が使え、継手がかなり減る。
施主と山側の直接取引となるとそこに大工の材料マージン利益は無いが、相当分の利益は確保しないと、大工の理解は得られない。

トリセツ
秋切りの材を半年乾かしても含水率は35%前後にしか乾かない。伝統構法はこの程度の乾燥が一番良いのだ。(後日記事)。九州は白蟻が多いので杉の木も自己防衛手段としてタンニン成分を多く出す。九州の木に黒ジンが多い所以である。この黒ジンは厄介である。半年乾燥程度では含水率は90%もある。2〜3年かけても30%以下には中々ならない。少々収縮しても良い場所。4方曝しの柱や小屋梁に使うのが良い。
 
 
施主の目の前で木を切る 1本1万円にもならない。   設計に合わせたバラバラの木材。
     
   
端材は鴨居。敷居となる。    
     
40坪の家です。タルキを含めた構造材は250万円です。
ちょっと高いシステムキッチンとあまり変わらない。
     

 
建築ジャーナル 2008 12月号掲載
 
   
   
 
3
 格子戸いろいろ
   
   格子は引き戸より歴史が古く、法隆寺のしとみ戸に既に使われている。風通し、防犯、目隠しの役目をはたし、日本建築特有の要素である。

面格子(防犯・目隠し・通風)
最近、敷地が狭くなり建物が道路や隣地に近くなり、目隠し機能を求められるようになった。外国では防犯目的だけで、頑強なスチール製が多い。最近の日本住宅にもアルミサッシュの付属品で横桟型・縦桟型・格子型・菱型と種々のデザイン面格子があるが、いずれも防犯目的で目隠しの機能はない。昔から狭い敷地の日本の町屋には、防犯・目隠し・風通しを目的とした木製の格子がある。木の格子は、水かかりのことを考え縦使いが多い。デザインは地域によって異なり、そのことが地域景観の特徴になっている。徳島の貞光・脇町は道路が狭いので、通行人からの目線を考え格子戸のピッチは狭く家の中はほとんど見えない。(参考写真1)
京都は格子縦桟と隙間が同じ寸法の連子格子が多い。道路から覗き込めば中は見えるが、町の暗黙の了解として道路を通行中は他人の家の格子を覗き込まない。京都は内陸で風が動かない地域なので、少しでも風を取り込みたいから格子間が少し広いのである。(参考写真2)
いずれの地域でも家の中の採光は減少制限されるので、目線の上部の格子をカットして少しでも採光量を増やす子持ち格子がある。倉敷は、商業が中心で、細い格子だと防犯上不安なので子持ち格子の親格子が太い。(参考写真3)
日本の住宅はアルミサッシュのオンパレードである。メーカーは他社との差別化を図り競い合った結果百花繚乱の様である。木製の面格子はアルミサッシュを隠す目的もある(写真1)。風通しをよくするため縦桟のピッチを広げ、縦桟の見込みを深くすれば、正面から覗き込めば別だが斜めからの目線はカットできる。(写真2)格子桟が細いと、外部に使用すれば反りが発生するので柾目材が多く使われる。費用を安くするためには、貫工法ではなく板目材でも裏から反り止め桟を入れると良い。(写真3)

格子網戸(防犯・通風)
昔は家の建具を全開放にして蚊帳を吊って暮らしていた。物騒な最近では網戸だけでは就寝できない。そこで網戸に格子をつけた。引き込み式のガラス木製建具であれば、全開網戸にできる。防犯上桟が細いと不安なので太めにして隙間は広くする。光の回折により、隙間は家の中から広く見え、外からは狭く見える。(写真4.5)南側は道路から離れていることが多いので、桟ピッチは広くても遠目には良い。しかしこの原理は昼夜逆転し、家の中が明るい夜は道路から丸見えとなるので注意が必要だ。
目隠し用にカーテンが一般的であるが、レースカーテンといえど風通しの機能はない。格子網戸を雨戸の役目にもしたい場合、物の飛来防止にはなるが風圧防止にはならないので、ガラス戸のガラスは強化にする必要がある。全開口木製サッシの構成は外から雨戸・網戸・ガラス戸・障子とするのが普通であるが格子網戸は網戸と雨戸を兼ね備え、格子網戸・ガラス戸・障子となる。格子網戸に錠を付けると夏の夜は蚊帳設置と同じ開放状態のままで、通風を取りながら寝ることができる。錠の位置は、家毎に少しずつ変えているので外部からその位置を確認することは難しい。

玄関の格子ガラス戸(防犯)
玄関の採光が玄関戸からしか取れない場合はガラス戸となる。防犯上厚めのガラスを入れると戸が重い。そこで格子桟の間隔を手が入らないくらい狭くすればガラスは3ミリで良い。できれば片引き戸が良い。玄関戸のピッキングやサムターン回しやデッドボルト切断等、泥棒は開き戸が得意である。錠の構造は同じだが引き戸だと勝手が違うので泥棒は侵入をあきらめるのでないだろうか。引き戸には防寒しゃくりをつけるので、外から見て鎌錠が見えないのでデッドボルト切断しは不可能となる。(写真6)

耐力格子戸
明かり取りにしたいが耐力が不足し、やむを得ず壁にしなければならない時がある。そこで、格子戸にも耐力を持たせるようにした。建築基準法上認められていないので、耐力割り増し時にしか活用できない。(写真7)

   
 
参考写真1
参考写真2
参考写真3
   
 

写真1

写真2
   
写真3
   
 
 
写真4
写真5
   
 
 
写真6
 
写真7
   
 
建築ジャーナル 2009 1月号掲載
 
   
   
 
4
 伝統構法に厳しい瑕疵担保履行法1
   
  瑕疵担保履行法の部分修正を希望する
瑕疵担保履行法が今年10月から施行される。H18年の基準法改正と同じく社会問題になりはしないかと危惧している人は多い。基準法改正時、「そのものに問題は無いが周知徹底不足」と国土交通大臣は反省の弁を述べた。建築士の理解の能力不足と言わんばかりであった。今回の瑕疵担保履行法については、各団体に山のようなパンフレット配布と、無料の講習会が各地で何回も開催されている。その講習会も、テキストの読み合わせで、質問に対するは的確な回答はない。建築基準法があり、瑕疵担保履行法に全件加入となれば瑕疵担保履行法の仕様書は基準法と同じ強制力を持つ。施行予定の瑕疵担保履行法仕様書は一部の住宅メーカーを基本にした基準としか思えない部分もある。今からでも遅くない。修正可能な項目を部分修正してほしい。

転んでもただでは起きない官僚機構
買主を保護するための法律であり、たいへん良いことのように見える。問題が多いマンションや建売だけでは保険金の集金が少ないので、数が多い戸建て住宅にも枠を広げ強制加入としたことに問題がある。
瑕疵担保履行法施行には表と裏の目的がある。裏の目的は、姉歯事件のように責任の矛先が国に向かうことは無いようにした。ついでに副産物を盛り込んだ。税金を天下り先に投じると国会がうるさいので、建築士や工事業者からの集金システムを考えた。建築確認と検査機関も準民間に開放し、建築士の管理も準民間に移行し、その費用は4〜5倍に跳ね上がった。新建築士制度も、講習会や試験により10億に近い集金システムとなった。「災い転じて福と成す」のことわざ通り、複雑に仕組んだ国の人は賢い。天下り先の確保の仕組みはジャーナル12月号に掲載。天下りする人たちは姉歯建築士が服役している刑務所に足を向けて寝てはいけない。

大工の質問
Q外壁にヒビが入いりました。保険金で修理ができるのですか?
できません。ヒビが入ったらそのままにしておいて下さい。ヒビから雨漏れが発生してから申請してください。ただし、その間、地震や台風に遭遇したのであれば、原因が地震や台風と見なされ出ません。

Q配筋は工事が完了して自主検査を行ってから検査依頼をします。建築士も1週間前に検査日を言います。保険屋さんにも検査依頼を出さねばなりません。配筋工事は1日で済むのに検査に2週間近くもかかるので工期に影響します。どうにかならないでしょうか?
住宅メーカーさまを基準にしています。設計事務所の設計監理は眼中にありません。職人の腕より検査を大切にする世の中に変わっていますのでご理解を。

保険金の内容
保険会社は民間である。当然保険金を払いたくないので当然独自の基準を作る。そこに矛盾と不都合な事象が発生する。車の自賠責と同じことだとの説明で納得した。しかし、契約書の中に次ぎのような記載がある。
 ・台風・暴風雨による雨漏れは保険金を支払いません。
 ・土地の沈下による構造体の損害は保険金を支払いません。
免責事項は、加入説明のパンフレットにも記載がなく、別の重要事項説明書に書いてある。大事なことは小さく書くのが保険屋さんの習性である。

基礎の仕様
基礎の設計は設計者がいろんな条件を総合判断して決定する場合がある。
 
  • 超軟弱地盤で杭工事に4〜500万円もかかる場合がある。住宅程度では負担が多いので、沈下覚悟で基礎と土台の間に梁を入れ、建物が沈下した場合に梁をジャッキアップする設計手法がある。
  【要望事項】沈下覚悟の場合は、保険金も要らないので免除して、その分掛け金を安くしてほしい。
 
  • 有明海地方は地盤が弱く、水位も高いので木杭を頻繁に採用する。塩分が多いのでむしろ木杭が良い。建築基準法にも木杭の項目があるのに、木杭の場合は保険に入れない。
  • 各保険会社にベタ基礎仕様がある。地盤が20〜30KN/uの場合の基準であり、「布基礎間隔4M以下だと13o鉄筋を150oピッチ配筋、4Mを越えると150oピッチのダブル配筋」となる。軟弱地盤の場合はこの基準でよいのだが、30KN/M2の場合でも、防蟻対策や湿気対策でベタ基礎を採用する場合がある。しかし、ベタ基礎仕様が適用され、建築基準法以上の過剰設計となる。「ベタ基礎配筋は構造計算」すればよいという条項があるが建築確認添付となると、厳格なる審査が待ち受けていて、書類作成費用は多大となる。
  【要望事項】ベタ基礎仕様は地盤強度が20〜30KN/uの場合に限るというただし書きを追加してほしい。

基礎検査

設計施工の場合、第3者が検査を行うことはない。他社の目から検査することは望ましい。しかし、設計監理を別契約し、建築士が設計監理を行っていれば、検査は二重業務となる。住宅程度の建物で、設計監理者の配筋検査と保険会社の配筋検査の二重検査は無駄だ。住宅程度の基礎配筋は1〜2日で終わる。検査日の調整は日頃から難しい。保険会社による検査は1週間前に予約しなければならないので、工程の空き日は相当なものと予想する。施主から、建築士の監理業務を排除してくれと要求が出てもおかしくない。
   
 
建築ジャーナル 2009 2月号掲載
 
   
   
 
5
 伝統構法に厳しい瑕疵担保履行法2
   
  保険会社に対する大工の質問
昔の大工です。1500万円以上の工事には業者登録が必要とのことですが、業者登録なんぞしていません。保険に入れますか?
加入できません。大きな会社に仕事を廻して下さい。そこから丸投げ下請けで仕事をもらってください。工事の丸投げは大手もやっていることです。違法ですが罪に問われることはありません。
アスファルトルーフィングなんぞ木が蒸れるし、10年も経てば硬化してボロボロになるので使いたくないのですが?
防水が大事です。10年以上の耐久性は無視しています。10年持てばよいのですから。
Q屋根葺き工事の下地に防水テープを使用のこととありますが、屋根面は、夏季70度になり防水テープは耐えるのですか?
A防水テープが10年持たないという証明はなされていません。よって、よいことにしています。
日本の伝統構法で建てています。土壁で施工してもよいのですか?
土壁の中にアスファルトルーフィングを入れて下さい。
Qいままで瑕疵保証支払いは壁が直接雨に当たる部分からの雨水浸入と聞いています。軒や庇が短いのが原因ですから、軒や庇の短さを規制することは考えていませんか?
A日本の家は平均寿命26年です。軒や庇が短い家は、日本のスクラップアンドビルドで建築経済に貢献しています。経済を止めるわけにはいきません。私たちは10年という基準をつくり、政治家先生に理解を得られたということです。
工務店との紛争処理に対処してくれるとのことですが住宅リフォーム・紛争処理支援センターが各
県の建築審査会に連絡するだけではないですか?
そうです。電話するだけで1万円です、ウファウファ。
地盤沈下をおこしました。修理費用は出るのですか?
建物周囲の地盤も沈下していれば、土地の沈下とみなし、保険金は出ません。
Q地盤調査会社は補強会社と関係が深く、調査結果からすぐ補強工事を薦めます。私はこの図面の基礎で大丈夫と思うのですが?
A地盤調査による基礎設計は難しく、建築士が大丈夫というサインを入れれば貴建築士の図面で良いことにしています。ただし地盤沈下の責任は貴建築士が取って下さい。(JIAケンバイを利用する方法もあります。ただし建築士は瑕疵ではなく私のミスですと認めなければなりません。)

構造中間検査

住宅でも構造中間検査において、条例で役所検査を求める県がある。そして、確認機関の検査と保険代行機関の検査が同じ場合は兼務で良いとのことになっている。しかし、検査費用はそれぞれ支払いとなる。検査は1回なのに2箇所への出費は理解できない。
コストダウンを求められる時代に、同じ目的の検査を2回も行うのは費用の無駄だ。
【要望事項】確認機関と保険代行機関が同じ場合は検査費用の低減をお願いしたい。

屋根・湿式外壁仕様
保険のパンフレットには「建築基準法レベルを想定しており、通常の設計施工レベルであれば問題ありません」とある。だったら、どうして、保険会社独自の設計施工基準があるのだろうか。

 
  • 「湿式外壁下地にはアスファルトルーフィングを防水紙に使うこと」となっている。木構造の場合、内部の木が蒸れるので、アスファルトルーフィングを嫌い透湿防水紙が使うことが多い。確かに庇や軒の短い最近のモダンな住宅で透湿防水紙を使うと雨漏れが多く、アスファルトルーフィング貼りが良いのは確かだ。防水だけを考え、保険会社は10年間雨が漏らなければ、構造はどうなっても良いという考えに起因する。
  • 土壁や落し板壁の場合は防水紙の挿入を義務づけているが馴染まないので、基準の見直しが行われているとのことだが、掛け金の低減をしないでただ除外するだけでは意味が無い。
  • 「屋根の下葺きルーフィング材の軒先は防水テープを用いて、軒先の雨押さえ金物に密着させること。」
  • 「開口部の周囲は防水テープを用いること」。とある。
    最近の簡略工法の仕様である。瓦葺で広小舞を使う場合は雨押さえ金物や防水テープは使わない。また木製建具仕様で木枠に防水テープは使わない。防水テープの耐久性は10年。伝統構法の住宅には全く馴染まない。
  【要望事項】雨漏れ対策は軒や庇の出が重要というのは、日本建築の常識。よって、軒や庇の出が60センチ(2尺)以上ある場合は、防水紙や防水テープの仕様を省いて欲しい。

届出の責任
「瑕疵担保履行法により引き渡した状況を、3月と9月、県に報告しなければならない。」車の免許みたいに期限切れですよという通達は来ない。50日を過ぎると保険加入が出来なくなる仕組みである。書類書きの苦手な大工たちを、わざと排除する意向ではないだろうか。
【要望事項】保険会社は県によっては2社しかない。各保険会社がまとめて県に報告するようにした方が合理的と思うのだがいかがだろうか。

事業者の登録費用

「事業者の登録費用として毎年3〜5万円を支払わねばならない」。以前の登録費用の目的は、経営状態を調べる費用であり経営が悪いと登録できなかった。現在は、事業者の経営が赤字であろうと保険加入を拒めない。全軒加入なので事業者の経営調査は不要である。よって登録費用は要らない。新規保険会社2社は登録費用を取らない。
【要望事項】全保険会社に登録費用を取らないように、国の指導をお願いする。

   
 
建築ジャーナル 2009 3月号掲載
 
   
   
 
6
 熊本のスギQ&A その1
   
  スギの性質
Q
杉の木にも種類があるのでしょうか?
A熊本には10種類あります。アヤ・ヤブククリ・メアサ・シャカイン・マスギ・等です。それぞれに特徴があります。
Q
九州の杉が黒ジンが多いのはどうしてですか?
A九州地方は高温多湿で物が腐りやすく白蟻も多いので、樹木自ら身を守ろうとするためタンニン成分が特別多いのです。その成分は黒っぽく、黒ジンと表現します。特に南の地方の杉の木に多いようです。防蟻性は高いのですが、水分が抜けにくいという欠点があります。
Q地元で建てるなら地元の木が良いというのはなぜですか?
A木にはその土地の自然環境に適応した性質があります。白蟻が多い地方の木は防蟻性のためタンニンが多く赤か黒っぽいのです。同じ杉でも、秋田杉は色が薄くピンク色をしています。白樺の木が白いのは白蟻を知らないからタンニンの必要がないからです。熊本のような高温多湿地方において、色白の北欧の木を使う場合は、薬剤による防虫加工が必要なのです。
Q
杉に漆喰が付けば黒くなります。どうしたらよいでしょうか?
A漆喰は強アルカリです。杉のタンニンと反応して黒くなります。酸性の物、酸っぱいミカンの皮を剥いて置いておくと黒さは消えます。そのまま放置しておいても1ヶ月で元に戻ります。
Q
日本の木は曲がりが多く、外国の木は曲がりが少ないというのは本当でしょうか?
A
本当です。日本は海からすぐ山へと続いていて急斜面です。外国は大陸なので山といってもなだらかで丘みたいなものです。木は光に向かって上に伸びるので、急斜面に植わっている木は根元から曲がることになります。根元部分は曲がっていてもその上は直材です。日本の建築技術はそのことを欠点とは考えません。曲がった部分は梁に使い、真直ぐな部分を柱として使うのです。 梁・柱共、直材を使うプレカット工法にとっては不都合なことです。

育成と伐採
Q
環境のためには、針葉樹より広葉樹を植えた方が良いと言われていますが?
A針葉樹が良いか広葉樹が良いかという議論が良くなされますが、問題は広葉樹の育成を誰が行うかということです。広葉樹と針葉樹を混植し、樹木下まで光が通るようにしてコケが生える状態を作るのが理想でしょう。広葉樹育成はお金にならないので民間での育成は難しいのです。税金を使ってなら可能でしょう。戦後の拡大造林計画のツケを山林所有者に押し付けるのは酷な話です。原始林に人間が一度手を入れてしまったら、ずっと手をいれなければなりません。
Qではどうしたらよいでしょうか?
A山を一律に論ずることはできません。産業として成り立つ針葉樹を間伐伐採し、風と光が通るようにすれば、自然に広葉樹と下草が生えてきます。そして針葉樹と広葉樹の混合林が生まれることになるのです。急斜面の山の場合は搬出手間がかかるので、皆伐し植林が良いと思います。
Q杉の木を間伐しますが、最初から間を空けて植えれば良いのではないでしょうか?
A稲作の田植えと同じ原理で、まず1haに3000本植えます。そうすると、樹木間に競争がおこります。育ちや癖の悪い木を間伐し、良い木を残します。最終的に1000本の優良木を取るのです。吉野地方では6000本植えますので間伐手間は相当なものです。それで吉野杉は目細な材が多いのです。
 
   
 
  針葉樹・広葉樹・下草の混合林、同じ時期に植えたのに大きさにかなりの差がでる。自然界にも勝ち組と負け組がある。
   
  Q新月に伐採した木にはシロアリがつかない、反らない、ヒビも入らないといわれていますが本当でしょうか?
A新月伐採は冬季に伐採し、谷側に倒し8ヶ月間葉枯らし乾燥するという内容なので、白太部分が赤身化し、虫が付きにくくなるとの研究結果があります。新月という伐採時期には関係がなく、葉枯らし乾燥にその効果があるようです。倒木は3〜5月に虫が入りやすいので、日本では8ヶ月間の葉枯らし乾燥は現実無理な話。外国の一例を日本に持ち込むのはいかがなものでしょうか。

   
 
  満月に切った木と新月に切った木を土に埋めて実験します。9月に報告。
   
  Q葉枯らし乾燥は良いことでしょうか?
A杉の木は自分の体重の倍くらいの水分を含んでいます。春季は含水率200%くらいですが、秋季には150%〜120%に落ちます。秋季に伐採し、葉をつけたまま乾燥させると90%くらいに落ちます。ただし、間引き伐採では立ち木の葉で光が入りにくく、葉枯らし乾燥させても乾燥効果はありません。皆伐の場合、有効な乾燥方法です。
Q人工乾燥はヒビが入りにくいとは本当でしょうか?
A自然乾燥は餅にヒビがはいるのと同じく表面にヒビがはいります。人工乾燥は内部にヒビが入るので外から見えにくいのです。伝統構法の場合は材木の中心を加工しますので外部割れより内部割れが問題です。杉のように含水率の高い木は半分以上が水分なので、重油を使って乾燥させること自体が問題です。木材は15000円/M3ですが,乾燥費用が15000円/M3かかります。
 
   
 
建築ジャーナル 2009 4月号掲載
 
 
7
 熊本のスギQ&A その2
   
  木の本当の強度
Q寿命の長い木はなんでしょうか?
A世界で寿命が一番長い木といえばなんといっても屋久杉です。縄文杉は推定3800年と言われています。しかし屋久杉は伐採禁止なので入手できません。
製材品で強度低下が発生する時期は、檜は1000年、杉は600年程と言われています。ケヤキなど広葉樹は400年です。もちろん虫害や腐食が無い環境に置いた場合でのことです。民家再生で、古材が100〜200年経過していても強度低下は無いといわれる理由です。
Q木材の梁の大きさを決めるとき、材のたわみで決めます。たわみは木材のヤング率で決定されます。杉のヤング率はE50〜90です。ベイマツはE90を超えています。数値だけで考えるとベイマツが良いように思えるのですが?
A梁として使用するとき、杉は60年生を使うので心持ち材。ベイマツは大径木なので心去り材になります。心持ちと心去りでは心去り材の方が材の収縮率は大きく、材収縮分を含めた材のたわみ量ではベイマツの方が大きくなります。結果として、杉E70材とベイマツE90材は同じ程度ということになります。数値だけに惑わされないようにしましょう。
Q平角材と太鼓と丸太の強度差を教えて下さい?
A辺材の皮目辺りが引っ張り強度は高いので、曲げ強度やたわみに関して丸太が一番強いとなります。平角材を1.0とすれば太鼓梁は1.1、丸太梁は1.2となります。伝統構法において、梁に太鼓や丸太を使うのは賢い使い方です。
Q木材の芯材と辺材ではどちらが強いですか?
A樹木の強度原理として、風に対抗するために辺材には引っ張り力が発生しています。又芯材は自分の重さを支えるために圧縮力が高いので、建築の柱に圧縮力だけを負担させるのであれば、芯材が良いとなります。しかし、伝統構法では柱に軸力・曲げ力・せん断力を負担させるので、バランス良く芯材・辺材を含んだ芯持ち材が良いことになります。100年以上の大木から細い4寸角柱材等を取ることは強度的に賢い方法ではありません。
Q年輪の目が粗い木は弱いのですか?
A目が粗くても密でも曲げに対する強度は、実験によると同じだそうです。大工さんは目が細かい方が強いと言いますが、ヤング率以外の要素であろうと。まだ解明されていません。
Q集成材が強いと言われています。本当でしようか?
A杉のヤング率はE50、E70,E90とバラバラです。無垢材として使う場合は最低強度で表現するのでヤング率はE50となります。集成材は木材をミンチ状に加工し、接着剤で貼り合せるので強度は平均のE70になります。よって集成材の方が強度が強いという表現をする人もいますが、家全体で比較すれば同じことです。熊本には本物の無垢材がたくさんあるのに、数字のマジックで集成材を使うのは賛成できません。ステーキ肉をミンチにしてハンバーグにするようなことです。
Qヒビがはいれば木材の強度はどれくらい弱くなるのですか?
A杉の木600本の強度実験がなされています。曲げ強度・圧縮強度共、ヒビがある方が、若干強度は高い結果となっています。硬い木の方が高強度です。硬い木の方が、ヒビがはいりやすい。よって、ヒビがある方が強度は高い結果となるのです。木材を、鉄線を束ねた電線と考えてください。鉄線の束ねが少々離れたからといって強度低下は考えられないでしょう。集成材は違います。集成材が長手方向の接着面の剥離が発生することがあります。鉄線の一本が切れることと同じで強度低下は著しいです。わざわざ、集成材を構造材に使うことはありません。無垢材が熊本にはたくさんあるのですから。
   
 
  表面割れ長さと木材の強度の関係(スギ105mm角心持ち柱材)。ヒビが多いほど強度が高い。
  Q金物で補強した建築は強いと言う人がいますが本当でしょうか?
A紙をホッチキスで留めるのとコヨリで留めるのはどちらが良いでしょうか。長期保存が必要な裁判資料はコヨリで留めていました。ホッチキスが錆びれば強度は著しく低下します。

森林が抱える問題
Q森林認証制度を国が進めています。「熊本の山の木で家をつくる会」では採用しないのですか?
Aそもそも不法伐採が多い欧米で提唱された制度です。1本1万円もしない木を盗む人はいません。杉の木は全て日本産です。菊池米を日本の米ですよという証明はいりませんし、直接山主から購入するのに認証してもらうことはありません。その認証経費が必要です。申請紙代と検査員の給料は誰が払うのでしょうか。日本における不法とは、皆伐したら植林をしなさいという「森林法」を守らないことです。この不法取締りは全く行われていません。持ち主はわかっているのですから、森を守るのだったらこちらの取り締まりを優先すべきではないでしょうか。
Q山に竹が多くなってきました?
A深刻な問題です。竹は食用として、海苔養殖材として、生活用具材として、家の裏に植えていました。竹は根が浅く横に広がるので、降雨を最初に採取しますので、他の木に水分が行かないのです。昔は竹と人間は共存していたのですが、見捨てたため竹の逆襲を受けています。そして竹の根は浅いため保水力が無いし、地すべりも起きやすいのです。税金をつかっての土木工事が必要となるでしょう。一番深刻な問題ですが手付かずです。
   
 
  写真(はげ山)日本で熊本は禿げ山が多い。禿げた部分にはいずれ竹が侵食してくる。山のテッペンまで竹が伸びている。
   
 
建築ジャーナル 2009 5月号掲載
 
   
   
 
8
 太陽光発電に費用対効果はない
   
   中国に「朝三暮四」という故事がある。宋の狙公が、猿に朝3夕4の比率で餌をやろうと言ったら、猿は怒り、逆に朝4夕3の比率でやることにしたら喜んだという話である。同じことが、高速道路料金の休日割引や太陽光発電普及補助金だ。国民は、高速道路料金が割引きになったと喜んでいるが、2〜3年後に消費税はアップされ割引料金差額分は国民に跳ね返ってくる。高速道路割引の弊害で大阪〜九州フェリーの乗客は半分になり危機的状況らしい。フェリーが永続的に不要だったら、時代の成り行きで廃止も止むを得ないと思うが、2〜3年後に高速料金は元に戻る。その時フェリー会社は無いかもしれない。「朝三暮四」よりもっと悪質な騙しだ。明日のことより、今日のことしか考えない国の政策には困ったもの。

 去年まで車はCO2排出量が多いので車にはあまり乗らないようにという運動が盛んだった。車は購入しても乗るなという意味だったが、トヨタ城が傾き始めたら車に乗れという。国の税収の40兆円のうち車業界は1兆円以上の税金を払っていたので、それくらいの税金投入は当然というのが政治の世界だろう。車が増えればCO2の排出量も増えるが、増えた分は途上国からCO2削減権をお金で買い取れば良いという考えだ。
経済波及効果は、車産業のお金が1動けば社会全体の経済は3倍動くとのこと。電気業界の経済波及効果は2.5倍。電気自動車は、車業界にも電気業界にも経済貢献できるので国の力の入れようはすごい。深夜電力を充電すれば燃費は安いというが、深夜電力は現在使用量が少ないので大廉売価格で7円/キロである。昼の料金の1/3の価格で、電力生産時原価より安い。皆が使い出したら価格は値上がりする。過去深夜電力が1.5倍になったこともある。良く考えてみよう。重油を電気に変え蓄電してモーターを廻すここと、重油を焚いて直接モーターを廻すこことではどちらが燃費効率が良いかは子供でも分かる。

 地球温暖化防止に貢献という言葉に騙されてはいけない。電気はクリーンというが電気の原料は2/3が天然ガスと重油である。原子力発電はCO2を出さないが海水温を直接暖めていて、CO2廃出以上に地球温暖化の原因施設である。熊本県某所に原子力発電所の新設計画の話が上がっている。地形とか岩盤とか交通の便とかが立地条件ではない。貧乏地域が立地候補である。地震大国に原子力発電所を55基以上も作って安全というが、事故が起これば想定外で済ませる。こんなにエネルギー源を電気にシフトしてよいのだろうか。H21年の15兆円もの追加経済対策では、経済波及効果が高いと電気業界救済に太陽光発電の普及促進をすすめている。

太陽光発電の計算に騙されるな。

1、データに騙されるな。
太陽光発電は10年で減価償却するというデータが横行している。
 太陽光発電3キロパネルでは月7000円程度の発電で年間84000円となる。設置費用は200万円程度なので、単純計算で減価償却は24年となるが、深夜電力やエコキュートを併設して計算し10年償却という表現が横行している。その深夜電力設備やエコキュートの減価償却費用は計算に入れていない。
  受電面にはゴミが溜まりメンテナンスが必要だ。最初の1年は無料だが2年目から1.5万円かかる。そのメンテ費用は計算に入れていない。メンテ費用や修理費用等を考えれば減価償却は24年を遥かにオーバーし、本体の耐用年数を越え、元は取らないと考えるのが妥当だろう。

2、太陽光発電が増えると原発が多くなる。
上記の減価償却をカモフラージュさせるためにオール電化を促進する。家中のエネルギーを電気に頼れば、ますます電力の消費量は増えて、原子力発電所の新設が必須となる。核廃棄物や核施設廃棄時の放射能問題は次世代のことで問題視しない。明日より今日の便利さを大事にする。

3、太陽光発電は家の中を暖める。そしてエアコンで冷やす。
太陽光エネルギーの10%は光で、残り90%は熱である。その熱は屋根面に伝わり小屋裏の断熱材で防御するには更にコストがかかる。寒い地方では問題はないが、南の地方では家の中が暑くなり発電した電気を使ってエアコンで冷やす馬鹿なことになる。
同じく太陽光を利用したOMソーラーシステムがある。費用は200万円で太陽光発電と設置費用は変わらないし、減価償却は設置費用を上回り効率は良い。しかしこちらには補助金は出ない。OMソーラーの会社は中小企業が多く、政治献金をやらない会社だ。

4、屋根瓦の寿命が短くなる。
太陽光発電の裏面は高温になり、直接屋根材に伝わる。ドイツなど低温地域ではさほどでもないが、九州では屋根面温度が70度を越え、屋根材を傷め寿命を縮めることになる。その研究は全く行われていない。

5、不公平な電気料金。
自分が使う電力を求めて太陽光発電を設置したのに、高価で買い取ることを強調する。電力会社に50円/キロ近くの高価格で買い取らせる計画をしている。そして、オール電化の人には深夜電力7円/キロで売る。その損失差額は国民全体の税金で負担する。

6、 太陽熱温水器をどうして推進しないのだろうか。
太陽光発電の熱効率10%と比べて太陽熱温水器は、太陽熱で直接水を温めるので熱効率は50%と高い。太陽光発電みたいに裏面が高温になることもない。太陽熱温水器の設置費用は20万円程度と安いし、減価償却は6年程度と短い。気温が高い九州では集熱効果は抜群で、太陽光発電と同じく21万円もの補助金を出してくれればお釣りがくる。しかし、これまた太陽熱温水器の生産会社は零細企業で政治献金を出せないから補助金制度はない。

7、 景観破壊。
屋根に太陽光発電が乗っている景観は良くない。ただでさえ見苦しい日本の街並みがますます見苦しくなる。

8、 本当に環境に良いのか。
自然エネルギーのことを考えればOMソーラーや太陽熱温水器の方が効率は良い。太陽電池のシリコンダイオードはレアメタルが必要で発展途上国に残骸の山を作り、生産時に5年分の電力が必要で、リサイクルも効かない。太陽光発電設置推進は、善良な国民の意識を利用した消費拡大の一環である。次世代は、冨士山ニッポンがゴミ山ニッポンと化す。エネルギーを少なく使う運動をすべきである。

   
 
建築ジャーナル 2009 6月号掲載
 
   
   
 
9
 長期優良住宅普及促進法に物申す
   
   200年住宅という言葉が一人歩きし、石油があと50年と言われているのに200年とは何事かなどの批判を浴び超長期住宅と改名した。それでも批判が続き長期優良住宅という命名に落ち着いた。

 長期優良住宅普及促進法が昨年11月に成立し6月に施行される。法律は、法律―政令―省令―基本方針―認定基準という構成で、国会では省令まで議論され、認定基準に国会議員が口出すことはなく、国の担当者の手の内で決まる。最初、この法律に野党は反対していたが、
 
  1. 住生活基本法の趣旨を踏まえ、地域材の利用、技術者の育成など、住宅の建設における木材の使用に関する伝統的な技術の継承及び向上に配慮する。
  2. 国産材の適切な利用が確保されることによりわが国における森林の適切な整備及び保全が図られ、地球温暖化の防止及び循環型社会の形成に資することをかんがみ、国産材その他の木材を使用した長期優良住宅の普及が図られるよう配慮する。
  3. 長期優良住宅が将来にわたってまちなみ等の一部を形成することを踏まえ、地域のまちなみ等との調和が図られているかどうかの観点から判断される。
  が追加され全会一致で可決成立した。

 具体的に家を建てる時設計に関係するのは認定基準である。能書きが意見一致していても認定基準に合致していないと長期優良住宅にはならない。能書きに順応する認定基準を探したが、無い。無い。どこにも無い。追加された3項目の内容がどこにも無いのである。確かにRC造は長期住宅という意見はあるが、「地域材の利用、技術者の育成など、住宅の建設における木材の使用に関する伝統的な技術の継承」といえば日本の伝統構法木造住宅である。

 政治家先生は基本方針まで見て認定基準など見ない。官僚の手による品確法の復興版である。H12に作成した品確法があまりに人気がなかったので、看板を付け替えての再来である。ローン減税と不動産取得税減税で客集めをし、審査機関に天下り先の財団を起用し、税金の無駄使いと批判され存亡の危機だった財団の蘇生法である。

部分修正を希望する
 本来の趣旨を尊重し部分修正をすれば、使えないことはない。各地で長期優良住宅の講習会が開催されているので、以下に記した赤文字部分の追加を、みなさんにお願いして欲しい。

1、外壁の軸組み等に対する措置
外壁が通気構造でない場合はK3薬剤処理材とある。サイデング工事ではやりやすいが、湿式工事や真壁仕様では通気工事がやり難い。(B)同等の劣化の低減に有効な措置の項目に、「D1材120角材使用で軒の出、桁の出が共に90p以上あれば有効な措置」を追加して欲しい。都会ではやむをえないが日本の町並みが、あまりに軒の短い建物に覆われている。外壁の劣化対策に軒の深い家をつくることを推進すれば、地域のまちなみ等との調和を図ることになる。

2、浴室及び脱衣室の防水措置
脱衣室の壁が防水上有効な仕上げが施されているもの。(品確法ではビニールクロス等という表現)
健康のことを考えればカビの発生源になりビニールクロスは適切ではない。「国産材の適切な利用が確保される目的で吸湿性の高い無垢の木材でも可」を追加して欲しい。

3、 床下防湿措置
最近の住宅の軒が短くなり基礎高さ400以上の規定となった。伝統構法にそぐわない基準。「構造計算を行った基礎の場合は、軒の出が90cm以上であればこの項目は除外」にして欲しい。

4、省エネルギー性能:省エネ対策等級4
省エネ基準の基本原則において、建物の総二階化、窓を小さく、なるべく真四角に近い構造体を推奨する項目がある。推奨基準を守って設計すれば、リカちゃん人形の家みたいになってしまう。又、外気音が消音され、音に敏感になり、我が子の発生音まで気になったり、子供は自然を拒否するように育つ。この基準を守りローコストの建築手法は、FIX窓を増やし、窓が小さくし、隙間相当面積の低減化を図ることである。

  高気密高断熱化は賛否両論がある。九州では圧倒的に不要論者が多い。伝統的技術の継承、国産材の利用、町並みとの調和を考えたら、省エネルギー性能等級4や3はむしろ害である。土壁では無理な話で、伝統的技術の継承には全くつながらない。高気密高断熱化住宅でインフルエンザ対策のため加湿器を付けたり、九州での夏結露対策を怠れば、壁内の木材は腐蝕する。高気密高断熱化はそもそも耐久性とは関係が無く、施工を間違えれば逆に建築の寿命を縮めてしまう。薪ストーブと風通しでの省エネ住宅が、この法の目的に一番合致していると思うが、省エネ基準外である。
省エネルギー性能は排除して欲しい。地域を重要視するなら九州の人は、Q値2.7・C値5の基準を必要としていない。


九州の建築士に9つの質問
九州の建築家に次のようなアンケートを取ってみた。数は37名と数は少ないしアンケートの内容がやらせに近いという批判もあるが、一般の人との認識にほぼ近い。

Q長期優良住宅普及促進法において、家を長寿命させる要素を次にかかげました。このうちから一番有効と思うものを3つ選んで下さい。

 
  1. 軒や庇が3尺以上長いこと。⇒92%
  2. 柱や梁が大きいこと。おおむね管柱4寸・通し柱5.5寸・梁幅4寸・梁背7寸以上あること。⇒92%
  3. 床下が開放されていること。⇒81%
  4. 高気密高断熱仕様であること。⇒0%
  5. 柱に防腐剤が混入されていること。⇒8%
  6. 筋交いが通常より1.25倍はいっていること。⇒8%
  7. 外壁に仕様が通気工法であること。⇒10%
  8. ペアガラスをつかうこと。⇒3%
  9. ユニットバスまたは洗面所にビニールクロスをつかうこと。⇒0%
  長期優良住宅の認定基準は4〜9を満足させることで、1〜3は関係がない。
   
 
建築ジャーナル 2009 7月号掲載
 
   
   
 
10
 エコエコエゴエゴ
   
   最近はエコの大合唱である。少しでも効率が良ければすべてエコと言う。ハイオクガソリンがエコガソリンで、タイヤの摩擦力があるものがエコタイヤだそうだ。エコ建材というのもあり、国産建材かと思ったら東南アジア産である。東南アジアの植林材を合板にして遠い国から重油を使って運んだ商品にもかかわらず、植林材を利用しており地球環境を守ったのでエコ建材だそうだ。この勢いだと、ピースよりタール分が少ないセブンスターを健康煙草としてJTが売りだすかもしれない。

  かつて資源が少ない日本はリサイクルやリユースはドイツよりも進んでいた。酒・醤油・牛乳・ヤクルト・ビールなどの容器はリサイクルシステムだった。便利さを悪なく追及する消費者の要求を聞き入れ、ガラス容器はペットボトルに変った。消費者がペットボトルを分別ごみに出したから環境に貢献したと言う。また自前のエコバックを用意しても、魚や冷凍商品を別のラップで包めはゴミの量は変わらない。

 日本人の環境意識は高い。意識だけである。CO2排出量が多いと中国やインドを批判するが、人口当たりのCO2排出量は日本は世界第2位であるし、国土面積当たりで比較すれば、アメリカを抜いて世界第1位である。資源が少ない日本の環境技術は高い。「乾いた雑巾をこれ以上絞れない」とCO2排出量削減を否定する人もいるが、国民一人あたりのCO2総排出量が問題なのだ。

エコ家電は本当に省エネ?
5月15日から家電製品にエコポイントがついた。ほんとうにエネルギー消費削減になるのだろうか。

冷蔵庫
家族の人数は減っているのに、冷蔵庫が大型化している。600Lとびっくりする大きさである。せめて料理の質だけでも上がれば救いようもあろうがそうではない。確かに保温技術が向上した分消費電力は少なくなったが、300Lも600Lも消費電力が同じというのは、中に食品を入れない空っぽの状態で計算だ。容器の保温性能がよいのであって食料品を入れれば話は別。容積600Lの食料品と容積300Lの食料品を冷やすエネルギーを比べたら、どんなに容器の保温性能が良くてもエネルギーは倍必要だ。その消費電力の計算も10年前の冷蔵庫との比較である。大型冷蔵庫の利点として、下記項目が挙げられている。

 
  1. 買ってきたビールのカートンを崩さず収納出来ます。
  2. 2Lのボトルが6本も入ります。
  3. カレーの残りも鍋丸ごと入ります。
  4. 保温庫もついています。(冷蔵庫なのに)
  5. すいかが丸ごと冷やせます。(食べる前に冷やせば良いのに)
  6. 大きくなりすぎドアーが重くなり、電動ドアタイプまで出現(もちろん電動ドアの電気代はカウ  ントしない)
  これらは本来の食品を冷やすという目的から外れている。冷蔵庫に貯金通帳まで入れている人もいる。概ね料理の腕と冷蔵庫の容量は反比例すると思ってよい。政府のエコポイント政策で500Lクラス以上の大型冷蔵庫が売れているとのこと。エネルギー消費を考えれば「ちっちゃいがいい」に決まっている。

大手企業といえど偽装表示が横行している。最近の新聞記事こんなニュースが載っていた。【最新モデルの冷蔵庫9機種でリサイクルの樹脂材料を活用しCO2排出量を削減したなどと宣伝しながら、実際はほとんど活用していなかったとして、公正取引委員会は4月20日、景品表示法違反で、製造・販売した日立アプライアンスに排除命令を出した。日立アプライアンスは不当表示を認め、経済産業省の「省エネ大賞」で、9機種が2008年度に受賞した「省エネルギーセンター会長賞」を返上した。
同社は大型冷蔵庫「栄養いきいき真空チルドV」「ビッグ&スリム60」シリーズ全9機種のカタログや新聞広告で「使用済み冷蔵庫の棚などの樹脂材料を真空断熱材として活用」と表示。「断熱材製造工程でのCO2排出量約48%削減」などと宣伝していた。『リサイクル樹脂』は全く使われていなかった】。

エアコン
家電店のチラシに、「古いエアコンと比べ電気代が年間2万円も違う」と宣伝している。計算の詳細をよく見ると1日18時間使用した場合との注意書きである。1日2時間しか使わない家庭では減価償却は102年かかる。いままで扇風機で夏をしのいでいた人が全館冷暖房にして、電気をワンワン使うことになる。
高気密高断熱の家の夏はたまらない。夏布団に包まって生活しているので、1日18時間もエアコンを稼動させるのだろう。エコポイント家電と長期優良住宅(高気密高断熱)の家は相思相愛の関係で国民の税金を湯水のように使いまくる。
エアコン付きの洗濯機もある異常さには唖然となる。洗面所に1台のエアコンをつけるより省エネになるからエコだそうだ。

テレビ
地デジへの変更が良いか悪いかは良く分からないが、テレビの買い換えも進んでいる。家電店に行けば広い店舗の中では40V型のテレビも小さく見える。店員は大型テレビがエコポイントの割引率が高いと、消費者の家の広さも聞かず大型テレビを勧める。40V型以上が一番の売れ筋らしい。部屋が狭いと言えば薄型になったから大丈夫という。6畳の部屋に40V型は似合わない。小さい画面が省エネに決まっている。

核廃棄物の後始末
アメリカは1979年に発生したスリーマイル島原子力発電所事故の後、原発増設を断念していた。しかし、低炭素社会に舵を切るために、オバマ大統領は原発増設を宣言した。が、廃棄物処理場がないため、再度断念した。日本は違う。日本には核廃棄物の最終処理場はない。(6カ所村は一時保管地である。)九州の電力会社は、増え続ける電力消費量のため、原発建設を計画している。なんと熊本県の風光明媚な天草にである。その天草の建設業協会は原発の誘致運動を始めている。核廃棄物の最終処理場が無いのにどうして原発新設を計画するのだろうか。将来のことは全く考えない。紙の無いトイレにはいるようなものだ。誰も紙を持ってきてはくれない。自分の手で拭くしかない。つまりエコポイントの多量使用者は核廃棄物を自分の家の庭か、天草建設業協会の会員の庭に埋めることを約束してほしい。

 
 
  大事なことは小さく書くのが日本の企業である。「エアコンの性能表示で1日18時間使用として算出」 と2ミリ文字でほとんど見えない。
電気代が年間13900円もお得という記事は8ミリ文字。

   
 
  一番売れている冷蔵庫は543L。テレビは40V。扇風機生活の人もエアコン生活に切り替え、総エネルギー消費は増える。
   
 
建築ジャーナル 2009 8月号掲載
 
   
   
 
11
 伝統構法の住宅実例1
   
    住宅は不動産である。動産なら消耗品でよいが、不動産は長寿命であることが原則である。日本の伝統構法には、長寿命のための要素がいっぱい詰まっている。伝統構法の要素を紹介しよう。
伝統構法といえば伝統構法愛好者からお叱りを受けるので、伝統的構法の建物を紹介ということにしておこう。

土間
土と石灰と砂が材料の土間を´三和土´と書き´たたき´と読ませる。湿気を吸収させるためにニガリを混ぜる。ニガリは金属を錆びさせるので、土間の中にガス管や水道管を通してはならない。田舎の家は土間の高さを外部のGLに合わせてあるので、いつも適度の湿りがあり、ヒビがはいることはない。生活スタイルの変貌で、玄関土間は内部的要素が強くなり外のGL線より上げるようになった。結果、土間は乾燥し、ヒビがはいり易くなった。適当な散水が必要だ。土間に水を撒くと湿度が5%ぐらい上がるので、電気代の要らない加湿器の役目も果たす。乾燥肌や鼻炎の人にとっては格好の健康器具となる。ベタ基礎の場合は土間の部分に穴をあけておかないと地中の湿りを呼びこまない。近代建築は壁内結露を嫌うあまり室内を乾燥させ過ぎる。健康に良くない。暑い夏、猫が土間に頬をすりつけていた。土間床の表面温度を計ったら他より1度低かった。
三和土は用が無くなったら金槌で砕けば元の土に戻るという最高の自然素材である。

無双窓
普通の窓に防犯の役目を望むなら、面格子を付けなければならない。無双窓は、目板の半分はスライドするが、残りの半分は固定している。防犯の役目も期待できる。網を貼ることもできる。無双窓の仕組みは簡単で、大工工事だけで出来る。断熱機能はないので、居室には向かない。玄関上の無双窓は良い。

深い軒
雨が降ったら傘を差す。年間降雨量は減っていないのに、最近の住宅から軒の長い家が消えた。日本建築の特徴の深い軒は長寿命の要素である。最近は軒の出が短くなり雨漏れが多く外壁通気仕様が増えた。外壁通気は軽い外壁となりサイデング仕様となる。軒の出ゼロの家が、外壁通気・サイデング外壁仕様で100年もつという長期優良住宅の基準に合格するから笑ってしまう。

構造材の使いまわし
民家再生が見直されている。単なる修繕ではない。柱や梁の構造材は単品として600年位の耐久性がある。ライフスタイルに合わせて間取りは変えるが、構造材はそのまま使おうという考えだ。民家再生を行おうと思えば、新築時に解体のことも考えておかねばならない。花結びの原理の建築工法である。部材と部材を解き易い込み栓や鼻栓でとめる。又、傷みの状態が外から分かるためには真壁構造が必須条件である。

いぶし瓦
30年前、電着塗装瓦は日本の最高技術が成し得た最高級製品という触れ込みだったが、昔からのイブシ瓦の方が長持ちしている。私の事務所の瓦は100年も経過してやっと交換した。凍害が無く、紫外線の強い南国ではイブシ瓦が良い。台風には弱いと言われるが、台風被害では自分の家の瓦が飛ぶことより他所から物が飛んできて被害を受けることの方が多い。被害は、部分的なので補修も部分的である。100枚割れても瓦代は15000円と保険の免責以下で保険金をもらうのさえ難しい。昔から自分で換えられるようにと瓦を10枚位床下に置くのが日本の慣習だ。屋根は上りやすいように屋根勾配は5寸以下にしなければならない。最近洋風建築といって急勾配の屋根が多くなったが、軒の出は短くなるし、屋根には上れない。洋風の建築はデザインが良いというが、機能無視も甚だしい。

土壁
土壁は環境面では最高の建材である。材料は竹と土なので、役目が終われば竹は燃やし、土は庭先にでもばらまけば良い。「何も足さない何も引かない」建材なのに、環境問題を問題視している建築業界では注目されない。生活の必需品として竹を植えたのに、日用品はプラスチックに変わり、建築業界は外壁にサイデングを使い、竹を使わない。竹は切らないとどんどん伸びる。今や山は竹だらけで、竹の逆襲を受けている。被害が原因者にかかるなら理解も出来るが、関係の無い山林業者なのでたちが悪い。土壁は吸湿効果がある。最近になってやっと土壁には防湿紙不要という見解が出た。微に入り細にわたる新建材を基準にした国の指導には困ったものだ。
 
 
土間
 
無双窓
     
 
深い軒
 
構造の使いまわし
     
 
いぶし瓦
 
土壁
   
 
建築ジャーナル 2009 9月号掲載
 
   
   
 
12
 伝統構法の住宅実例2
   
 
網収納
昔は戸棚に網が付いていて、冷蔵庫に入れないでもよい物を収納していた。カレーの残りは網笠を被せて保管したものだ。最近は家が密閉化し、収納までゴキブリ侵入を嫌い気密化している。そして冷蔵庫が大型化した。冷暗所に収納すれば良い物まで冷蔵庫に入れる。
昔の手法を学ぼう。泥もの野菜、葉野菜やカレーの残りは網収納に入れよう。4人家族だったら600Lの巨大冷蔵庫は要らない。300Lで充分である。
 
   
 
面格子
熊本は西に海があり、夏は西から風が吹く。西に窓を付ければ西陽がキツイ。西窓に面格子を付けゴーヤ、ヘチマ、朝顔などのツルものをからませよう。ツルものがラジエーターの役目を果たし、冷却した風を家に取り入れることが出来る。ゴーヤなら1間窓の面格子で収穫は20ヶ位である。2000円相当しかないと金勘定する人には向かないかも。
 
   
  柔構造
構造壁で一般的なものが筋交いである。日本に筋交いが入ってきたのは明治時代だ。それを文明という人がいるが、日本の大工さんが筋交いを知らなかった訳ではない。筋交いは横揺れ防止には簡単で都合が良い。建物を上棟して骨組みがしっかりするまでの期間大工さんは借り筋交いを使う。日本木造の構造材は杉・檜・松等柔らかい材料なので、部材の交点に筋交いを使うとあまりに交点に応力が集中し、強すぎて接点を壊してしまうという考えから採用しなかった。それよりも貫を使って貫楔のめり込みで横応力に対抗する手法を取ったのだ。宇治の平等院は貫構造がそのまま見える。現在の貫構造と全く同じなのだ。1000年前と仕組みはかわらない。昭和24年まで続いたと言える。(建築基準法は25年)

では貫と筋交いはどちらが強いかという話で、図1・2を見てほしい。縦軸が強さで横軸は力を加えた時の横のタワミである。図1の筋交いは、強度は5`あるが10a傾いたら折れる。図2の貫は2.5`の強度しかないが、タワミは20aにもなる。傾きはすれど貫が折れるか折れないかは分からない。そこで図1の面積Aと図2の面積Bを比較して、面積が同じだったら地震に対する強度は同じである。

一般的に図1を固い構造。図2を柔らかく粘りがある構造という。樹木に例えれば図1が柿の木で、図2が柳の木だ。柿の木は強いといって枝の先まで柿取りにいって落ちて腕を折った子供は多かった。柳は「柳に折れ無し」という諺があるように、揺れて風を受け流す。筋交いと貫のどちらが強いということではない。ただ筋交いは引っ張り力が作用するので、接点には金物が必要となる。金物は錆びるとか長持ちしないとか、柔らかい杉の木を金物で止めるのは豆腐に釘打ちといって嫌う人が多い。又開口部を必要とする日本建築では、窓の部分にも貫設置が可能という利点がある。伝統構法や伝統的構法といえるのは、図2のように粘りの特徴を構造体としたものだ。足固め・貫・土壁・差し鴨居・下がり壁等の耐力要素だ。しかし研究が殆どされていないので評価が低いし、建築基準法ではごく一部しか認められていない。一方、図1の評価は建築基準法では高い。合板・石膏ボード・筋交い等である。石膏ボードは濡れれば耐力はゼロになるのではという批判があるなかで、2×4の解禁時採用された。この図1がコスト安でもあり木造建築の構造主流となった。どうしても貫を使いたいと貫の上に合板を貼って、建築確認を取っている人もいる。合板は腐るのであってもなくてもいいんだという理屈は理解できる。また貫に筋交いを入れて検査後に筋交いをはずしている剛腕大工さんもいる。地震大国が生み出した柔構造を認めず、外国の構法を大事にするのはなぜだろうか。合板は30年しかもたず、石膏ボードは濡れればボロボロになり、立て替え速度が速まり、経済効果貢献度が高いからだろう。
   
 
 
     
   
 
床下解放
図2の場合は柱に浮き上がりが少なく、柱を基礎に固定しないで良い場合がある。その時は床下の全面開放が可能となる。白蟻が多い地域では、床下の風通しで白蟻が地表に上がって来難い方法だった。
 
   
   
 
建築ジャーナル 2009 10月号掲載
 
   
   
 
13
 民主党政権への税収提案
   
  日本は当初2012年までに温室効果ガス排出削減「1990年比6%削減」を世界に向かって約束したが、ほとんど達成不可能となったので、麻生太郎前首相は、達成期限を2020年まで延ばし、「2005年比15%削減」と目標を変更した。目標は同じなのに、数字のマジックの煙にまかれ国民の意識調査では60%の人は削減幅が大きすぎるといっている。命よりお金が大事な経済界は猛反対している。安部前前首相は2050年までに50%削減と言ったが、ズーッと将来のことは関心が薄く経済界からの反論はなかった。その意向を組んでか、鳩山新首相は「1990年比25%削減」とは高い目標を打ち出す予定である。官僚の方々は面白い。麻生太郎前首相が「2005年比15%削減」と言った基本資料をベースに鳩山新首相発言の「1990年比25%削減」を重ねるとおもしろい。
 
  • 太陽光発電を現状の55倍増やす。
  • 次世代車の販売台数は90%にする。
  • 省エネ住宅は100%、既存住宅は100%を省エネ改修する。
  • 国民の所得は世帯当たり年22万円少なくなる。
  • 国民の光熱費負担は世帯当たり年14万円多くなる。
 
官僚の方々はこのことを発表するか見ものである。
HPで「地球温暖化対策の中期目標について2009年4月内閣官房」を検索してみて下さい。早く見ないと消されてしまうかも。

目標達成のために課税はどうだろうか。温室効果ガス排出増大行為に税をかけてたら、消費税アップをしなくてもよいかもしれないという提案を新政権にしてみる。

1、 自販機税
電柱の数ほどある自動販売機。自動販売機は冷蔵庫を屋外に置いているようなもの。電力消費量は相当なものである。販売売上で儲かったと錯覚しているが電気代を差し引けば僅かな利益しか残らない。世界に稀にみる贅沢装置なので税をかける。

2、コンビニ税
セブンとは7のことでイレブンは11のことである。初心に戻り7時から11時までの営業時間でよいのではないか。夜中の買い物は贅沢行為であり、緊急的買い物は夜間料金を取っても良い。夜に明かりが灯っていて防犯に役立つという人がいるが、それだったら省エネの防犯灯を灯せばよい。

3、ペットボトル税
ペットボトルの生産・回収・処理費用はお金がかかり、不法処分も相当なもので、川や海に流れたペットボトルの回収は不可能に近い。昔からの瓶利用は重いとか、回収が面倒くさいというのが、ペットボトル愛好者の理由なので税を掛けて少々高くなってもの良い。

4、リニアモーター税
日本の代表航空会社2社は共に赤字である。今年、国は航空会社に1000億の政府保証をした。高速道路の無料化も進み、新幹線の5倍も電気を使うリニアモーターカーが開通すれば、航空会社は更に大赤字が出て当然税金での補填が行われる。やはり原因者に課税しておくべきだろう。「狭い日本そんなに急いで何処に行く」と昔のJRの広告が泣いている。

5、外材税
こんにゃくには1000%を越える関税がかけてある。自然の代名詞である山。日本の山の木は切らねばならぬ。なのに、日本の建築業界は80%もの外材を輸入し国産材は20%しか使わない。関税がゼロで安い。環境は大事だというが、環境よりお金を大事にする国民には強制的発動が必要だ。木材にも農産物と同じく関税を掛けるべきだ。1000%とはいわない。せめて20%ぐらいかけて欲しい。

6、プレカット税・人工乾燥税
日本の建築従事者は多い。建築件数が減ったことより、プレカットという合理工法の採用により、建築関係の失業者が増えた。そのプレカット工場の設置には補助金が使われた。その補助金と失業手当の税の補填のために、プレカット税を新設したら良いと思う。木造住宅工法はRC造やS造より環境に良いというが、合理化工法の木造住宅は重油による人工乾燥を行っている。放っておけば自然に乾く木材を重油で乾燥させるのであれば税をかけるべきだ。

7、海水温上昇税
温室効果ガス排出削減の目的は海水温上昇防止である。海水を直接温めているのは原発の冷却水である。消費大国アメリカには83基しか無い原発が狭い日本には55基もある。周囲が海のため放熱は分散され話題に上らないが、気が付いた時は取りかえしがつかない。今のうちから原発に海水温上昇税を課しておくべきだ。

8、太陽光発電税
東京都は100万円。地方でも50万円も補助金を出し、太陽光発電を推進している。国は20倍に増やすといっている。原発をやめる代わりというなら理解も出来ようが、特定産業の売上増が目的である。ドイツみたいに北海道より北の国ならいざ知らず南国日本では、集熱装置はヒートアイランド現象を加速する。買電価格を倍にして、その差額は一般電気代に上のせするというから困ったものだ。屋根の上にバンソウコウを貼ったような太陽光発電パネルは景観破壊でもあるので、景観税も付加しよう。

9.エコポイント・エコカー減税返却税・オール電化税
いままで扇風機で良かった人までエアコンを使う。グリーン家電で総エネルギー消費量は増えている。エコポイントに使った税金は課税で戻してもらいたい。
家族3人なのに500Lの冷蔵庫は大きすぎる。生活必需品を越えて贅沢品である。
6畳の広さに40Vのテレビも贅沢品である。メルセデスベンツ3500CC1400万円の車にもエコカー減税の対象である。エコポイントで特定の業種だけは潤った。
車業界や電気業界の救済が目的だった。奨学金と同じく急場をしのいだら戻して欲しい。

10、長期優良住宅の固定資産税
日本の木造住宅の固定資産課税期間は20年である。課税期間を延ばせば税収は増える。20年の課税期間を40年にすれば税収は倍になる。長期優良住宅の目的はなんだろうか。フラット50という制度まで現れ、50年ローンが組めるそうだ。サイデングとべニアとビニールクロスの家は100年もつという触れ込みの長期優良住宅は、課税期間を40年に延長して、税収アップをはかるのが目的の政策かもしれない。長持ちと関係なし長期優良住宅は新聞チラシ上を踊っている。
   
 
建築ジャーナル 2009 11月号掲載
 
   
   
 
14
 品確法再批判その1
   
   住宅品質確保法(品確法)が出来て9年が経過した。時の政府は50%の賛同を得るものと試案していたが、個別住宅での利用者はほとんど無い状態だ。情宣不足と10数センチの厚さもあるテキストをタダで配り、全国で講習会を行ったが広まらなかった。粗悪建て売り業者の「わが社の住宅は品確法ランク4」という新聞チラシを賑わすだけだった。完全に死に体法と思っていたら、ゾンビのごとく減税と融資付きの長期優良住宅基準に乗っかって生き返った。あまりに内容が幼稚で品確法を使う気になれないが、減税と融資がセットになれば、幼稚さと関係なく皆が使う。家の品格が落ちることになりはしないかと危惧する。当時9項目であったが現在はいつのまにか10項目になっている。再度項目毎に検証する。

火災時の安全に関すること

 火災警報器には煙感知と熱感知がある。最近の火災による死者の多くは、新建材の煙による窒息死だ。それで火災警報器の感知装置の義務化は熱感知器ではなく煙感知器にしている。新建材から出る有毒ガスを吸い込めば一呼吸で体が動かなくなる。試しにウレタンフォームを燃やして吸い込んでみれば分かる。断熱効率が高いからとウレタンフォームで包まれた家は火災時有毒ガスが多量発生し、煙感知器は鳴れど体が固まり1歩も歩けず中毒死する。新建材を使わない木の家は良く燃えるがゴホンゴホンとしながらも逃げることができる。吐き出し窓がたくさんあれば外への逃道は多い。火災時安全な家とは「逃げ道がたくさんある家」と思いきや警報器をたくさんつけたが性能が良い住宅とのこと。感知器は非常に敏感でホコリやクモの巣によっても感知しなくなる。30年前、100人以上の死者を出した熊本某デパート火災時には、消防設備が機能しなかった。以後検査が厳しくなった。事務所や商業建築では1年に1回専門業者による定期検査が義務づけられている。
 そもそも火災警報器の義務化は火災のよる年間死亡者が1000人から減らないという理由で始まった。同じ死亡者である自殺者は火災による死者の30倍を越えるというのにそちらの対策は見当たらない。それはさておいて、火災死亡対策はアメリカの物真似だった。アメリカでの警報器設置は全住宅の50%を越えるそうだがそれは1ヶ1500円程度と安いからだ。8年前、火災警報器は1ヶ1万円を越えていた。大手家電メーカーは火災警報器が売れると見込んで品確法の説明会会場に警報器のカタログを山程積んていた。しかし、最近では安売り商品が出始めて3000円岱で売ってある。最近の建築雑誌には火災警報器の広告は載らない。大手家電メーカーが潤うようにと仕込んだのだが世の中の人は思うように動かなかった。
 本当の「火災時の安全」対策は、1つに火災に気をつけること。2つに火災が発生したとき逃げやすいことと家から有毒ガスがでないこと。3つ目に火災を知らせることだ。3つ目が優先されるとは妙な対策だ。
「火災時の安全」の別仕立てに「開口部の耐火等級」というものもある。準防火地域や防火地域では開口部に防火戸を付けなければならない。防火戸対策で一番コストが安いのは雨戸だ。隣家に火災が起こり、時間があれば類焼防止で雨戸を閉めることはあるだろうが、「火災時の安全」のために雨戸を閉める人はいない。そんな余裕があれば逃げることだ。
防火戸は基準法で義務化されているので準防火地域や防火地域では必ず設置する。つまり密集地で防火戸がある家の方が、防火戸不要の山の中の1軒屋より「火災時の安全」性が高い家というなんとも理解しがたい基準である。
   
 
建築ジャーナル 2009 12月号掲載
 
   
   
 
15
 品確法VOL.2
   
   住宅にも性能のランクづけが必要と、誰が要求したのかは知らないが品確法がH12年に出来た。項目毎に等級1〜4(3)と決められていて数字が高いほど性能が高いとなる。

光・視環境に関すること「等級なし]
居室の開口部の面積の広さを評価する基準だそうだ。単純開口比と方位開口比がある。「あなたの家の単純開口比は30%です。南側開口比は40%です」と言われても、良いか悪いかは分からない。窓は小さいより大きい方が良いに決まっている。「温熱環境に関すること」という別の項目評価では、窓は小さい方が有利になる。相互矛盾がおきないように「光・視環境に関すること」には等級のランク付けは無い。素人には窓の大きさは立面図を見て、「1間幅の掃き出し窓ですよ」という説明の方が分かりやすい。ランクづけが目的なのにランクづけが無ければ不要ではないだろうか。こんな評価に評価費用をだすのはお金の無駄というもの。

空気環境に関すること「等級1〜3」

室内に発散されるホルムアルデヒドの発生量の少なさを評価する基準である。評価方法は、建築基準法の告示で定められたホルムアルデヒド発散建築材料の種類と使用量で決められている。☆1〜4に区分されていて☆4が高性能である。基準が決まれば建材メーカは基準にあう建材をつくる。そして世の中の新建材はほとんどが☆4になってしまった。そうすると「空気環境に関する」基準は☆4仕様の等級3がすべてとなる。等級3は性能が最高の基準といえばそうではない。27度の気温で測定し、健康な人に害を及ぼさない基準なので、気温が27度を越える九州などの地域では等級3では空気環境は普通である。建築基準法では、24時間換気扇を義務づけている。搬入する家具から発散するホルムアルデヒド対策という。本当は通産省が家具業界を規制すべきだが、商業業界指導は行わない。国の声にはすぐイエスの建築業界を指導する。建築行政指導も法律の方がおかしいと理解してくれていて検査は甘い。台所のレンジフード換気扇の代用にも建築許可を出す。台所のレンジフード換気扇を24時間廻している人はいないだろう。民生分野では省エネ励行で不要なスイッチは切りましょうという運動も盛んである。
 本来、室内の空気が2時間に1回入れ替わる換気は必要だ。C値(隙間相当面積)という基準がある。(説明すると長くなる)C値=8の家は2時間に1回の換気は自然に行われている。その性能があれば24時間換気扇は不要と言ってもよいのだが、良い設計をすることよりも審査がしやすい基準をつくることを優先する。
等級1〜3とあるものの99%が等級3では、あってもなくても良い評価基準である。

温熱環境に関すること「等級1〜4」
高気密・高断熱の潜水艦みたいな密閉住宅の基準である。冬、部屋を暖かくすれば結露が発生するので、壁の内部に結露が発生しないように室内側にビニールなどの防湿層で目張りすることを基準にしている。高気密・高断熱の家では、ストーブの上にヤカンを置いたり、加湿器設置は結露発生の原因となり禁物である。今年はインフルエンザが流行していて、医者は菌が死滅する室内湿度50%以上確保のためにストーブの上にヤカンを置くことや加湿器使用を薦める。命が大事か、家が大事かという決断に生活者は迷ってしまう。
 寒い地方の住宅には、高気密・高断熱の基準があることを否定はしない。温暖な地方では、採用しなければ良いことだが、長期優良住宅の基準に「温熱環境に関すること」の評価があるからことが複雑になる。長期優良住宅は長持ちさせることがことの始まりであったが、「温熱環境に関すること」等級4を条件にしている。「温熱環境」を示す基準に熱損失係数Q値という基準があるが(Q値は数値が少ない方が良い性能)、沖縄でもQ値3.7という高性能な高気密・高断熱にしないと長期優良住宅にはならない。密閉化には面状の合板や通気性のない石油製品の建材が多くなり、埋め立て建築廃材も増え、結果住宅建設がもたらす環境負荷が増大することになる。更に、密閉化は短命化につながる要素も持ち合わせている。
 地域によって求められる住宅性能は当然違うので日本全国を6つの地域に分けられてはいる。北海道が1地域で沖縄がY地域である。W地域は新潟から熊本までと範囲が広く、日本全土の半分を占める。そんなに広いのを地域区分と言えるだろうか。
 温暖地方ではQ値4で充分という専門家もいるが、新潟から熊本までW地域なので、温暖な熊本でも長期優良住宅ではQ値2.7にしなければならない。Q値は、壁・屋根・床下から逃げる熱量、窓から逃げる熱量、換気回数の総和で決まり、建築業界ではQ値を少なくするマニュアル本まで出ている。その項目を紹介しよう。
 
  1. 家の間取りは真四角にして、表面積を小さくする。豆腐みたいな家にする。
  2. できるだけ窓は小さくする。
  3. 換気回数は0.5回/時間を最低守れるように密閉化する。
  冬を旨にした住宅は九州には合わない。しかし、長期優良住宅の基準があれば、業界はそれに従い補助金や優遇措置を餌に薦める。省エネが目的にした基準「温熱環境に関すること」を満足させた家では、夏エアコン無しでは住めない家だ。
東京理科大学の井上隆教授は、「住宅の断熱・気密化は、室内環境水準の向上に大きく貢献していると評価されるが、いわゆるリバウンド効果で、高断熱・高気密化住宅では、より長時間、より広い範囲、より高い室温で、暖房される傾向があるとも報告されている。設備機器についても、それぞれの効果は向上しているものの、エアコン台数は増え冷暖房範囲・期間は拡大、室温もより快適な水準へ、冷蔵庫・TVも大型化、給湯量も増加、など、全体としてエネルギー消費が大幅に増大する結果となっている。」と警告する。

   
 
建築ジャーナル 2010 1月号掲載
 
   
   
 
16
 品確法VOL.3
   
   住宅にも性能のランクづけが必要と、誰が要求したのか知らないが品確法がH12年に出来た。項目毎に等級1〜4(3)と決められていて数字が高いほど性能が高いとなる。

「劣化の軽減」に関すること{等級1〜3}
等級1 建築基準法の定める対策が行われているもの。
等級2 構造躯体が50年〜60年もつ程度の対策が行われているもの。
等級3 構造躯体が75年〜90年もつ程度の対策が行われているもの。
日本の住宅の平均寿命が26年といわれているのに90年耐久性の家とはすごい。人間に例えれば寿命26歳の人が90歳まで生き延びるための健康管理は相当な工夫と努力が必要であると思う。75年〜90年もつ基準は、現存する100年寿命の家の要素を参考にして基準は決められたのだろうと誰もが想像する。これらの家の多くは瓦で軒が長く、床下は風通しのため開放されている。しかし、無い。無い。無い。日本の長持ち住宅の要素は全く採用されていない。「劣化の軽減」に関する基準の項目が8つあるが、カラーベストとビニールクロスとサイデングを主体としたハウスメーカーの提案を受け売りした8項目である。
 
  1. 外壁の軸組等の防腐防蟻の基準(外壁の軸組等に通気が確保されていることと耐久性の高い樹種の使用、有効な薬剤処理が行われていることが基準。)
    外壁の軸組等に通気が必要なのは、家を密閉化し吸湿性の無い断熱材を使えば、内部結露が発生するからである。土壁や吸湿性のある断熱材の場合は不要であるが、その基準はない。
    外壁の軸組等に通気を確保するには、通気空洞確保のため外壁が軽くなければならない。そうすると外壁仕上げはサイデングがよいとなる。サイデングを留めるには長い釘が必要となる。釘が長いとタワミが生じる。そのタワミを止めるための製品が発売された。プラスチック製品である。プラスチック製品が90年もつとは思えない。
  2. 土台の防腐防蟻の基準。(土台に耐久性の高い樹種が用いられているか、又は有効な薬剤処理が行われていることが基準。 )
    木を密閉させるから腐る。イカをサランラップで包めば1日で腐る。乾燥させてスルメにすれば1年でも2年でも持つ。同じ有機物の木材も同じだ。木は濡れても乾燥させれば良い。まな板を見よう。毎日3回濡れても水きりを良くして乾燥させれば30年以上もつ。家庭の主婦でも知っているスルメ状態にして耐久性をあげる基準は無い。
    土台には赤身の杉が良いとしている地域もあるが耐久性の高い樹種には該当しない。有効な薬剤は毒性が強い。毒性が強いものを使うか、耐久性の高い外材を使うかの基準である。
  3. 浴室・脱衣室の防水の基準(浴室の軸組・床組・天井・脱衣室の軸組に防水上有効な措置が行われていることが基準。)
    脱衣室の仕上げは防水上有効なビニールシートなどの仕上げをすることとある。更に、床にPタイル等の建材であれば下地に合板を使えともある。90年持たせるために、脱衣室にビニールクロスや合板を使えという基準は 本当に専門家が決めた基準かと疑いたくなる。法の条文は正しい。しかし、運用基準となると骨抜きになる1例。
  4. 地盤の防蟻の基準(ベタ基礎など防蟻に有効な基礎としているか、薬剤処理が施されていることが基準)
    ベタ基礎でも白蟻は上にあがってくる。床下の乾燥とは関係がない、白蟻はどこにもいる。風が起きればモグラと同じで地表には上がってこない。床下解放が一番であると思うが防蟻薬剤土壌処理を薦めている。薬剤の効能は5年なので5年毎の薬剤散布となる。自然素材と謳った木酢液とかヒバ油等があるが、基準には合格しないし、効能期限は2年なので散布してもしなくても効果にたいした差は無い。
  5. 基礎の高さの基準(床下からの湿気を軽減するために、地面から充分な基礎高が確保されていることが基準)
    基礎の高さ400_以上という基準である。どう考えてもおかしい。土台や足固め材を地盤より400_以上にすべきなのに、基礎の高さで決める。基礎が400_と高ければ間仕切り基礎部では床下の風通しは悪くなる。基礎を低くして土台や足固め材を高くする方が目的には合っていても、いやむしろ最も合っているのに、検査では不合格になる。
  6. 床下の防湿・換気の基準。(地面からの湿気を防ぐために防湿コンクリートなどの処置がなされておりかつ床下に換気口が有効に設けられていることが基準)
    床下の開放は大事である、床が高く開放されていれば必ずしもコンクリートは要らない。
  7. 小屋裏の換気の基準。(小屋裏に発生する湿気を除くために、換気口が有効に設けられていることが基準。)
    この基準はあっても良い
  8. 構造部材の基準。建築基準法の基準。
    建築基準法にある基準だから守らねばならない。基準法の検査があるからこの項目の検査はしなくても良いはずだ。審査費支払の無駄。
   この8項目を全部満たせば、ビニールクロスとサイデングの家でも90年持つのかと質問すれば「その住宅の寿命が90年あるということではなく、90年もつと考えられる仕様を満たしている」と答える。頭のよい人にもそうでない人にも理解できない表現だ。最悪なのは、長期優良住宅の基準がこの品確法の等級3+基礎通用33a以上とあるので困った状態になる。長期優良住宅にするために、ビニールクロスを使い、基礎は立ち上がり400_にして、逆に短命化する場合もあるので注意したい。基本的に、木造建築の長寿化は軒を長くして、木材が乾燥しやすい構造にしておくことが最善の方法であるが、国は無視する。今まで長持ちしてきた日本の伝統構法の家が、日本の長寿命の基準に合わないのは、外国から見たら笑い話だ。
 
   
 
   
 
建築ジャーナル 2010 3月号掲載
 
   
   
 
17
 品確法VOL.4
   
   朝青龍に品格があるかないかの議論が話題になったが、「物のよしあしの程度」という意味では品確法も品格の程度を表す尺度だろう。品確法は利益至上主義の住宅産業に迎合してハウスメーカー商品支援法のように思える。

維持管理への配慮に関すること(等級1〜3)
排水管・給水管・給湯管・ガス管の日常における管理(点検・清掃・修繕)のしやすさ
基礎部分に二重のサヤ管を埋め込み、その中に排水管や給水管を通し、さらに点検が可能なように床板に床下点検口をつけることになっている。
通常の配管工事とサヤ管の工事をすれば単純に考えて工事費は倍かかる。古い家の再生改修工事の経験がある方は分かっていると思うが水回りは多くの場合変更になる。キッチンの長さは変わり、シンクの位も変わる。例えば便器の古い型番又はメーカーを変えれば給排水の位置は変わる。設備機器のモデルチェンジ・間取りの変更で、同じ場所に給水管・排水管・ガス管がくることはまずありえない。さや管工事は同じ場所で配管を差し替えるのには有効だが、位置が変われば結局、無駄な工事となってしまう。古い管はそのまま埋め込んで新しい管を別に付けるほうがコストは安い。
 次の点検口について、木造住宅の場合、床下は開放状態なので点検は床下に潜って容易にできる。便器の詰まりは便器直下の部分で起こる。便器をはずして修理するので、費用が高い便器専用の掃除口を付ける必要はない。そもそも掃除口はRC造建築で配管をコンクリートに埋めてしまう場合に行うことで、床下に潜れる木造住宅では設置しない。給水、給湯、排水、ガスのそれぞれに点検口や掃除口を付ければ、台所・洗面所は蓋だらけになる。誰がこんな基準をつくったのだろうか。RCを専門にしている設備設計士に聞いたのだろう。木造住宅を知らない人がつくった基準であろう。

音環境に関すること (等級1〜3)
外部からの騒音の遮断の程度として、居室の外壁開口部に使用されるサッシュ及びドアセットの遮音性能の評価
 高速道路の近くだったら音遮断をしなければならないが、閑静な住宅地だったら小鳥の鳴き声ぐらいは聞きたい。住宅はそもそも置かれた環境で性能評価はなされるべきである。
住宅の遮音の性能がどのくらいあるか住人としては知りたい項目ではある。家の中から出るピアノの音や外部からの高速道路の音が素人が判断するには分かりやすい項目だ。ただ言えることは遮音壁の性能ではなく、窓開口部の性能についてだけである。アルミサッシのほとんどがT−1.T−2の遮音性能商品なので、アルミサッシュを採用すればほとんどが等級2を満たしている。受験者全員が100点の試験と同じと考えれば良い。オーディオやピアノの使用や、外部からの音の侵入を検証するには、換気扇の穴、24時間換気扇の吸気穴、壁の性能を考慮しないと音環境に関する性能評価は難しいのにサッシュだけで評価するのはおかしい。

高齢者への配慮に関すること (等級1〜5)
 加齢などで身体機能が低下したときの住宅内の移動の安全性及び介助の容易性を評価します
等級1から5まであり、床に段差がないこと。階段がある場合は緩やかさ。階段・便所・浴室・玄関。脱衣室に手摺の有無。通路の幅が780mm以上あること。浴室の広さ、トイレの広さなどがこと細かく決められている。 全ての項目が工事されていれば等級5で、将来工事が可能であれば等級2である。高齢者や障害者はそれぞれ人によって障害のあり方はまったく異なる。千人分の基準は千通りである。万人共通の基準は邪魔な場合さえある。家中手摺だらけでは、もはや住宅ではない、施設である。病院のような家が高性能住宅だろうか。木造住宅は不都合になった時改装出来る良いように設計するのが良い。 ある設計者が、障害者に合わせて「ハイハイの家」を設計した。どこにでも這っていけるよう配慮した家だ。手すりはなく、車いすのことも考えられていないが住む人にとっては最高の家。なのに、性能評価は落第点になる。
子育ての家では、子供の危険予知訓練のため、若干の危険場所はあった方が良いように、住宅設計は非常に個人的な与条件で決まる。細部まで細かく工事されているより、不具合に対して改装が可能な家つまり等級2レベルが良い。
 高齢者や障害者への対応は靴と同じだ。平均や多数とは関係がない。25.5cmの靴が平均であっても27aの足は入らない。履けない。27cmの靴が必要だ。 マニュアル好きの日本人らしい基準である。

防犯性に関すること(等級無し)
開口部の侵入防止対策を評価する
住戸の出入口、外部からの接近が比較的容易な開口部、その他の開口部と3つに区分され、それぞれを錠による対策、サッシ・ガラスによる対策、雨戸による対策と表示するだけである。小学生でも書ける評価書。今どき、鍵がなかったり、ガラスが入ってない家があるだろうか。品格法の報告書の枚数が多い方がお金が貰いやすいためにある項目だろう。
H18年から新規追加された項目である。
すぺーす
  住宅は環境・家族構成・住み手の好みにより、要素は異なる。性能表示は迷惑な話だ。素人も玄人も絶賛する吉村順三の設計した住宅は、「住宅性能表示」に当てはめれば最低の等級となり、安売り○○ホームは等級4の高性能住宅になる。
 日本の住宅地は美しくない。国が新しく作る基準に比例して見苦しくなっていると言っても過言ではない。日本の山が疲弊したのは、品確法ができてからだと和田善行氏(TSウッド)は言う。
   
 
建築ジャーナル 2010 4月号掲載
 
   
   
 
18
 住宅版エコポイント
   
   住宅版エコポイント制度は、国費1000億円を費やし、景気対策と温室効果ガス削減の一石二鳥の効果を狙ったものと言う。前原国交相は「例えば国内材の需要振興、ひいては林業、大工、工務店の仕事が増えるというのはすばらしいこと」とも言っている。新築とリフォームに分けて説明する。

新築
エコポイント新築住宅は「新築基準は省エネ法に基づくトップランナー基準相当の住宅」・「省エネ基準を満たす木造住宅」が対象となり一律30万円を補助してくれる。満たす省エネ基準は品確法省エネ性能基準4のことであり超高気密高断熱仕様にしなければならない。高気密高断熱が普及していない九州地方において、この基準を満たすには100万円の追加金が要る。新築時に30万円をもらえるから家を建てようと思う人は少ない。新築価格が平均2700万円とすると30万円は1〜2%である。もし、1〜2%安くなるだけで新築促進になるのであれば、住宅業界は一斉に1〜2%値引き運動をするだろう。別商法で、200万円値引きという住宅販売がある。○○ハイムは誰が購入しても、何時購入しても、200万円値引きか、太陽光発電プレゼントという販売商法である。全員値引きの場合、それは値引きとは言わないが、この商法は新築促進には結構イケテル。上乗せした後値引きするのは住宅業界の常識でもある。
このエコポイントをもらうための省エネ基準4仕様を沖縄に当てはめてみよう。天井に200mm程度、壁に100mm程度の断熱材をいれよとなる。沖縄において、布団にくるまったような高気密仕様は不要であろう。この制度は温室効果ガス削減を狙ったのではなく、住宅金融支援機構のフラット35S基準の家を建てようと思う人へのおまけ補助金である。住宅金融公庫が廃止になり残務処理のための住宅金融支援機構だったはず。独立行政法人を廃止する民主党政策だが、住宅金融支援機構は、新たな住宅融資に加担し、上手くコバンザメ手法で生き延びる。新築エコポイントは、「例えば国内材の需要振興、ひいては林業、大工、工務店の仕事が増えるというのはすばらしいこと」ということには決してならない。
新築エコポイント受給時、不正防止ためには第3者機関から証明書を発行してもらわなければならない。証明書の発行には3万円の費用がかかる。30万円をもらうために3万円かかるのだ。申請ビジネスは潤う。

リフォーム
温室効果ガス削減が目的なので「窓の断熱改修」「外壁・屋根・天井・床の断熱改修」は対象であるが、なぜか「バリアフリー改修」でも補助金を受けることができる。
アルミサッシの価格は掛け率が低い。誰が購入しても6割前後の値引きなので、10万円のサッシは3〜4万円で購入できる。定価で販売すればボロ儲けである。リフォーム業界にリフォーム詐欺が多いのは定価表示が高いからであろう。定価で販売しボロ儲けしても詐欺ではない。「エコポイント事業の普及で、通常のリフォーム市場が成長し、悪徳リフォームに代表されるマイナスイメージが解消する」と呑気なことを言う人もいる。全く逆である。いろんな素人業者が参入し、そしてトラブルが増大する。
問題点を挙げてみよう。
 
  1. 断熱は部屋全体を均等にしなければ断熱効果はない。すでにFIX窓やジャロージー窓がある場合、既製品がないからと部分的に断熱サッシ工事しかしない場合は断熱効果はゼロに等しい。熊本県産山村の水漏れ大蘇ダムの漏水工事を、片面だけするようなものだ。断熱効果の出ないエコポイント工事が多発すると思われる。
  2. アルミサッシの熱貫流率はK=6.5(少ない方が良い)。ペアーガラスはK=4.6。サッシに内障子を付けた場合はK=3.9だが、内障子設置にはエコポイントはつかない。
    アルミサッシが鉄より高いのはアルミ精錬のために膨大な電力を必要とするからだ。エコポイントをもらうために、内窓アルミサッシの売上が伸びると電力が必要となる。電力量が増えると原発建設や戸建て太陽光発電普及は必要となる。温室効果ガス削減が目的ではなく経済活動が目的のように思えてならない。内窓アルミサッシを付けるより、内障子設置の方が、「大工、建具店ひいては林業、の仕事が増える」ということになるのだが。
  3. リフォーム工事は専門業種だ。家電量販店もアルミサッシの販売施工を行うことになった。当初の計画では工事施工会社の領収書でなければならないというものだったが販売業者でも良いとなった。家電量販店は自社では工事が出来ないから施工を下請けに出す。当然経費がかかる。途中に1クッション増えるので、経費は増える。得したはずのエコポイント補助金は隠れ隠れて経費に消える。消費者は決して得しない仕組みなのだ。
  4. アルミサッシのメーカーは定価しか表示しない。価格を確認するためにメーカーに電話しても定価しか言わないので怪しいリフォーム会社にとっては好都合である。アルミサッシが材工価格ではなく、材料だけの価格が定価の半分近くかどうかを確認すれば、詐欺まがいなことは防げる。
  5. 施工は建設業許可業者ということだったが、いつのまにか変なただし書きが追加になった。「施工者が建設業許可業者の場合、許可番号の記載義務あり、許可業者でない場合は提示の義務はない」という。つまり、免許を持っている人は免許証を提示しなさい。持っていない人は提示必要はありませんという変な基準である。
 

不正受給の方法はどんな手法が考えられるか。

リフォームは新築のように3万円の手数料をとられることもない。現地審査がなく書類審査だけなので不正受給はしやすい。どのような手法が考えられるかいくつか手口を挙げてみる。リフォーム詐欺業者が審査員の目をくぐりぬけるのは簡単だ。マニュアル通りに審査するので、マニュアルに書いてないことをすればよいのだ。

方法1、現地調査はないので、親子別々の名前で申請を行う。住居表示と謄本地番を別々に使えば同じ住居とは思わない。謄本地番でも郵便物は届く。年金問題で社会保険庁が間違った原因の手口を逆の手法として使うのである。アルミサッシュの写真を別のアングルから撮影して、その違いは書類審査では分からないから、同じ場所のサッシュを2回申請に使う。そして60万円をゲット。又はアルミサッシの補助金と断熱材入れの補助金を別々に貰う。バリアフリー補助金も別申請すれば30万円×3=90万円補助金収入も夢ではない。

 
方法2、新築工事のエコポイントの30万円はハードルが高い。新築工事に100万円近くの追銭工事がいるので新築申請しない。そこで新築の工事中に、断熱入れの写真を取っておいて、入居後にエコリフォーム申請をする。業者発行の領収書の日付け等の空欄にしてもらう。新築が終わってからリフォーム工事の申請する。日付け無し領収書発行は日常茶飯事の行為である。これで新築においても30万円をゲット。
   
 
建築ジャーナル 2010 5月号掲載
 
   
   
 
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 水俣エコハウスの理念
   
   環境省は、環境共生型住宅に対する知識や設計・施工技術の向上と需要創出を目的にエコハウス事業参加を全国の自治体から公募し、20のモデル地域が選ばれた。その一つが水俣市である。水俣市は、市内で排出するCO2量を2020年までに32.7%削減することを目標としている。@環境配慮型暮らしの実践A環境にこだわった産業づくりB自然と共生する環境保全型都市づくりC環境学習都市づくりの4つの柱を掲げており、今回のエコハウス事業と一致するものがすでにあった。事業はモデルハウスの建設からスタートし3年間続けなければならない。設計は公募によるコンペでおこなわれた。景気対策予算の税金を使い、モデルハウスを建築するだけのハコモノ行政ではないかとコンペ応募には少なからず後ろめたさを感じていた。趣旨の明確さを知り、伝統構法の普及に役立てばと思いコンペに応募し、選ばれた。私は今まで行政の仕事をしたことがなく、伝え聞くところから難しくトラブルが発生するのではないかと危惧したがスムーズに進行した。行政マンは規則遵守が一最優先と思っていただ水俣市の場合は違っていたので、その進捗状況を含めて、普通と違う設計・監理の進め方や積算、材料、入札、構造、設備について「伝統構法は玉手箱」と題してシリーズで紹介する。

環境共生住宅と日本語で言えば環境と共生する家づくりとなるが、エコファーネス・エコファースト・サステナブル・エコハウス・グリーンハウス・エコウインハウス・ゼロカーボン・エコプロダクト・カーボンオフセットハウスとカタカナにした言葉が世の中にあふれている。なんでこんなに多いのだろうか。今年もまた2つ3つ増えるだろう。その中の一つ「エコハウス」とはどんな住宅かとインターネットで検索してみた。ヒートポンプ・地熱利用・エネファーム・オール電化・太陽熱利用・バイオマス等と機器をたくさん付けて、生活レベルを落とさない快適な住宅をつくるというのが多い。機器をたくさん購入すれば、産業界が潤う。環境問題に気が進まない経済界だが、建築業界のエコ活動には販売が増えるので賛成らしい。建築業界の環境問題意識は環境全般ではなく生活時のCO2排出量削減だけが目標で、生産時のCO2排出量はあまり問題にしない。節約という意識は薄く「使い放題のお湯を使い、冬でもランニングシャツ1枚で過ごせるような全館冷暖房の家で、たくさんエネルギーを使っても、敷地いっぱいに太陽光パネルを敷きこんで発電すれば、CO2排出量を削減したことになる。機器類を付ければ付けるほどゼロカーボンに近づく」という仕組みである。 

建設・生活・解体時の全てを含んだCO2排出量(LCCO2)を考えるとき、LCCO2の6割以上が生活時CO2排出量であるため、建設・解体時のCO2排出量は少ないから無視しても良いとか、夏の冷房エネルギーは比率が少ないので考えなくても良いという乱暴な環境専門家も存在するようだ。それで生活時CO2排出量削減だけを声高に訴え、建設・解体時のことはあまり話題にしない。建設時、機器装置製作のためのレアメタル採掘は発展途上国に採石廃材の山ができることで、加害者になっていないのだろうか。原子力発電所の近くの住民は放射能汚染の危険に晒されていないだろうか。CO2排出量削減といいながら、自分の生活の利便性だけは優位に考えて良い子になっていないかを水俣では考えさせられる。水俣はもはや日本の水俣ではない。世界の水俣だ。科学は人間の生活を豊かにする。しかし、片方で被害者をつくっていないだろうか、被害が少ないからと言って無視したら、数年後には数百倍数千倍になってお返しがくることを水俣は過去の歴史で学んだ。発展途上国の一部や貧乏町村に被害を強いての「エコハウス」はありえない。

では、建築においてそんな理想住宅建築ははたして可能だろうか。都会では不可能だが、田舎では可能だ。風が抜ける家、近くの山の木での家づくり、土の土間、裏山の薪を燃料とした薪ストーブ、天日、ヘチマのグリーンカーテン、家づくりの原料は土と木と紙と藁と竹。昔の日本の家づくりの知恵がそうである。田舎には大工職人・左官職人・建具職人は健在だ。材料と職人がいる地域では、理想住宅建築は目の前にある。青い鳥はそこにいたのだ。

日本人の8割は温熱度日区分のW地域に住んでいる。水俣はX地域である。X地域でエアコンなしの生活が可能であることを実証できたらそれ以北の人たちもエアコンなしの生活がで可能といえる。器械に頼らない人間の潜在能力をも活用した省エネルギーを考えなおそう。木材、土壁、小舞竹、三和土、伝統構法技術、手漉き紙は無限の地上の資源だ。埋蔵量があと50年といわれている石油や70年といわれているウランに頼らなくてもよい方法が日本にはあるのだ。役目を終えた木・紙・竹・藁は燃やせば良い。燃やして出たCO2は、木が光合成で山を潤す。瓦や土壁は土に戻せばよい。埋め立てゴミは出ない。建築廃材とは無縁の自立した循環の世界を目指したい。無限の地上の資源には目を向けず、世界中の有限の地下資源を探しまわる日本と中国。
水俣でのエコハウスとは、地下資源をあまり使わず、少しの不自由さは楽しみに替え、次世代も次々世代も、変わることなく自然と共存しながら生活できる家である。
 
 
 
水俣エコハウスの外観
 
水俣エコハウスの内観
   
 
建築ジャーナル 2010 6月号掲載
 
   
   
 
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 伝統的構法は玉手箱―水俣エコハウスの構造
   
   伝統構法の建築の場合、現在限界耐力計算法を用いて建築確認をとる。その日数は確認機関と適判機関を合わせて70日も要する。H22年6月1日からは、確認機関の審査後、適判機関が審査して70日かかっていたものを同時に行い35日に短縮してもよいという通達が出た。しかし、それは書類に訂正がない場合に限ってのことだ。学業で100点満点を一度も取ったことがない小生には困難。建築確認審査では認識の違いや表現不足により書類訂正が必ずある。確認機関と適判機関は、訂正した書類のやり取りをしてくれないので、かえって煩雑になる。100点満点を取れる人だけの論理である。
水俣エコハウスは限界耐力計算ではなく、仕様規定と部分構造計算により、適判に行かずに確認を降ろしたので紹介する。伝統構法はきちんと計算しなければならないという考えの人や総二階の建物には参考にならない。

基礎工事
基礎の仕様規定に基礎高300_以上とある。(平12建告示1347号)この項目は土台等の木部を雨風から守るという意味である。だったら「土台や足固めの最下部は、地盤面より300_以上の位置にあること」とすれば良いのだがそうはなってない。伝統的構法はこの300_以上の規定が障害となるが、施行令38条4によれば基礎だけの計算をすれば告示1347号は省けることになっている。限界耐力計算では長期荷重と短期荷重と最大級地震荷重の計算をしなければならないが、38条4では最大級地震荷重の計算は省けるので少しは楽である。基礎の構造設計は接地圧と反力だ。接地圧は建物の重さを基礎底面積で割った地盤耐力との照合である。問題は反力である。RC基礎の計算をすれば、軽い木造でも建物にも馬鹿でかいコンクリート量の基礎となる。軽い建築物で、計算のような反力がくるのだろうかと計算方法に疑問が沸く。この土地は100KNと非常に固い岩盤であるが、建物の重さ73トンしかないのに基礎コンクリートの重さは50トンとなる計算だ。どう考えてもおかしいのが計算の世界だ。
この敷地は東西に勾配があり、建物を建てたら東西に60aの段差がでる。バリアフリーが設計条件なので床に段差は付けられない。60aの段差を4つに分け15aの棚田式にした。仕様規定による立ち上がり基礎を採用すれば一番高い場所では1Mを超える基礎になり、建物を遥かに超える重さのコンクリート基礎となるだろう。

壁耐力
仕様規定では、土壁の壁倍率は1.5で、木ずりは0.5である。足固め、差し鴨居やたれ壁の耐力は、仕様規定では認められていないので計算上耐力不足となる。計算上筋交いを入れなければならない。上棟時は筋交いを入れて検査後は筋交いを外す剛腕大工もいたが、コンプライアンスをいう時代になり激減した。本来、柔構造の土壁、貫、足固めと剛構造の筋交いは性質が違うので併用するものではない。30×90の筋交いは柔らかくたわんで他の耐力要素の邪魔はしないだろうと、この家に筋交いは4ヶ所入れている。実際の耐力は足固め、差し鴨居やたれ壁で負担している。

引き抜き
施工令46条では土台は基礎に緊結しなければならないと規定している。緊結には構造計算上、水平緊結と垂直緊結がある。垂直緊結の計算は平12建告示1460号により行う。いわゆるN値計算である。この計算で引き抜きが発生しなければ垂直緊結は不要となる。水平緊結だけとなり、ピンを出して横揺れだけを拘束すればよい。N値計算式はN=A×B−Lである。Lは押さえ効果でLが重ければNの引き抜きは少なくなる。重い屋根は軽い屋根の1.3倍も重いのに同じ係数では不公平である。数値は実情に合わせて勝手に動かせない。動かせば違反となる。そこで国語的解釈をし、文面通りの計算を行うことによりN値は低減できる。出隅に耐力壁を配置しないことと耐力壁を連続させることで低減できる。計算はおかしいかもしれないがコンプライアンスにより、伝統構法に近い足固め工法が可能となる仕組みである。運用する場合は、計算では表現していない柱間は7寸以上の足固め材でつなぎ、床梁、小屋梁は連続して柱を押さえる等の配慮がいる。
N値計算式で、引き抜きが発生するカ所は引きボルトで拘束しなければならない。

木組み
金物は強いという表現が多い。木より鉄が強いから当たり前だ。初期強度は確かにそうだ。30年以上経過した建物をみると熱橋等により結露がおこり金物の廻りの木部に腐食が多くみられる。ちょうど金属ホッチキスで止めた書類が10年も経過したら錆びてバラバラにほどけるのと同じ。長持ちさせたいなら紙は同質のコヨリで止めたがよい。木も長持ちさせたいならコヨリと同じ原理で同質の込み栓で止めたがよいだろう。

水平剛性
施行令46条3項で火打ち梁を入れるように規定している。ほどほどの剛性を要求している。高い剛性は火打ち梁では無理で、合板でないと取れない。柔らかい建物は計算に含まれない耐力要素をバランスよく配置しなければならない。硬すぎず、軟すぎずというバランスは限界耐力計算法の場合でも難しい。46条3項ただし書きにより部分構造計算で火打ち梁は省くことが出来るが扱いには注意が必要だ。


建築確認は許可ではない。淡々と基準法と照合する作業であり、安全性を証明するものではない。安全性の確保は資格の信義則にあり、法の揚げ足を取り、網の目をくぐったから大丈夫と思ったらいけない。
 
 
1.基礎の段々仕上げ
2.軸組み途中
3.段々の軸組み
4.引きボルト
   
 
建築ジャーナル 2010 7月号掲載
 
   
   
 
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 伝統的構法は玉手箱―水俣エコハウスの材料検査・木材の品質
   
   消費者にとってキュウリの品質といえば新鮮さと栄養価だけで、曲がりや大きさの差は品質とは関係がない。
基準法施行令41条によると「木材の品質」は「節、腐れ、繊維の傾斜、丸身等による耐力上の欠点のないもの」とある。「腐れ」は品質に影響があることは理解できる。しかし、節、繊維の傾斜、丸身が品質に影響するだろうか。節が強度低下につながるのであれば、枝の無い木を選べということになる。繊維の傾斜の切断は角材に製材すれば必ず起こる。施行令41条の「木材の品質」は何を言いたいのだろうか。「耐力上の欠点がないもの」というのであれば前項目はいらない。この前項目を見て「節、繊維の傾斜、丸身」を品質低下の原因と読みとる人がいるから困ったものだ。丸太梁や太鼓梁を好んで使う伝統構法では誤解が更に深まる。

設計する時、国土交通省監修「木造建築工事標準仕様書」をよく利用する。設計者が独自に決める仕様を特記仕様書という。設計者は特記仕様書を書かず設計図書の簡略のために国土交通省監修「木造建築工事標準仕様書」に準じると書く。そうするとX章1条4項の「構造材及び下張材の工事現場搬入時の含水率は特記がなければ、20%以下とする」という項目を守らなければならない。設計者が特記仕様書に「工事現場搬入時の含水率は40%」とか「建具取りつけ時含水率は25%」とかを書けばよいが、書かないと搬入時20%にしなければならなくなる。理屈に合わない低含水率を指導する原因は行政ではなく、設計者だった。安直に「木造建築工事標準仕様書に準じる」と書いてしまうのに問題があったのだ。

ただし、基準法施行令46条の2(46条の1を除く)に、構造耐力上主要な部分である柱及び横架材(間柱、小梁を除く)に使用する集成材その他の木材の品質は、告示1898号に準じなければならないという項目がある。「含水率の基準が15%以下(乾燥割れにより耐力が低下するおそれの少ない構造の接合とした場合にあっては、20%以下)のもの」とあるので守らなくてはいけない。こんな建物(46条の2)は、木質ラーメンみたいな特殊な構造の家だけであり、4号建築や伝統構法的建築とは関係がない。この項目は修正が繰り返され、混乱していて六項と七項は一言一句違わない全く同じ文章というお粗末な法令だ。
品質についての誤解が発生しやすい項目について説明する。

「ヤング率が高いと良品質か」

木材の強度の指標であるヤング率を品質という人が多くなった。杉材はばらつきが大きい。ヤング率はE50・E 70・E90と倍半分の差がある。E70を基準にするひとはE50の材を不良品というだろう。例えば家1軒に平均してE50・E 70・E90の材を使用したと仮定しよう。全てをミンチにして固めた集成材であれば、杉材は平均化されE70と表現する。伝統構法の場合は仕口や継ぎ手により材の大きさを決めるので、材は大きめになりタワミを基準にすればE50でも構わないことになりE50扱いになる。家1軒の材をミンチ状態にして使えばE70、無垢材で使えばE50になるというマジック表現に騙されないようにしよう。


「ヒビ割れ無しが良品質か」
木材は特殊な加工をしない限り芯持ち材にはヒビが入いる。高温度の人工乾燥では外部でなく内部にヒビがはいる。人工乾燥材が、外観上ヒビが無いので木材店が好む理由である。伝統構法にとっては仕口加工は材の中心が主であるので内部割れが多い人工乾燥材は良くない。外部の木の繊維方向のヒビ割れは強度には関係がないことを理解するには、熊本城の台所の梁と天井材を見ればよい。200本以上のヒビがはいっていても、びくともしていない。電線のヨリ部分が解けても線の強度に影響しない理屈と同じである。低温度の人工乾燥をまじめに考えている木材店もいるので人工乾燥を一緒に考えてはいけない。

「含水率の低い材が良品質か」
乾燥木材とはでは含水率25%以下をいう。含水率が高ければ強度が弱いというのは事実である。30%を過ぎてから収縮がはじまり、強度も上昇する。その強度をいつ必要かという問題である。柱の曲げ強度は地震や台風が来た時に、梁の曲げと柱の圧縮強度は人が住んで荷物を置いた時に、小屋梁の曲げ強度は雪が降った時に、柱材の収縮は漆喰壁を塗る時に含水率が25%程度であれば良い。
材料搬入時に含水率検査するのは早すぎる。生コンは打設後28日に強度を測定するのに、木材だけを材料搬入時に測定するのはおかしい。水俣の家の材料検査時は含水率60%近くだった。今でも黒い色の大黒柱は含水率35%もある。大黒柱は壁がないので収縮は関係ないし強度は余裕たっぷりである。伝統構法の場合は、材料搬入時一夜干し程度の含水率60〜40%程度で加工するのが良い。いずれ乾くのだから。葉枯らし乾燥を乾燥という人がいるがJASの乾燥とは違うので注意しなければならない。
各県に木造住宅促進のための融資制度がある。その条件に品質の含水率25%以下の基準を設けている県がある。必要以上な低含水率指導は山や大工にとっては迷惑である。

「曲がりがないことが良品質か」

山に植わっている木の根元部分は曲がっている。小屋梁や受け梁には曲がり部分を使う。木材の繊維は上に向かって傾斜しているので、繊維の傾斜は切断すれば強度は落ちる。丸太材と太鼓材と正角材の強度を比較したデータでは1.2:1.1:1.0と強度差がある。あまり加工しない丸太材や太鼓材の方が、強度はあるが寸法精度が悪く低品質という烙印を押され使用頻度が少ないのは時代の流れなのだろうか。


 
 
 
搬入時の含水率51.8%
 
曲がりたっぷりの小屋梁
     
 
曲がり材の架構風景
 
ヒビだらけの熊本城の丸太梁
   
 
建築ジャーナル 2010 8月号掲載
 
   
   
 
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 伝統的構法は玉手箱―水俣エコハウスの玄関・味噌部屋玄関
   
  玄関
 玄関土間は、粘土と石灰と砂を混ぜて叩いた三和土(タタキ)仕上げである。保湿性を高めるために塩水も混ぜている。冬期は室内が乾燥しすぎるので土間に水を撒くと湿度が10%上昇する.撒いた水が床下に溜まらないように中央部はコンクリートを打っていない。ベタ基礎の場合は地盤強度と関係があるので構造計算上注意しなければならない。
 薪ストーブを玄関土間に置いているのには、理由がいくつかある。薪ストーブには煙突があり、煙突から出る煙の量と同量の空気を取り入れなければならない。玄関は気密性がない場所なので、吸気孔がとりやすい。又、薪ストーブの灰の処分や薪の補給がしやすいという利点もある。薪ストーブを居間に置く場合と比べて、玄関には燃え易い家庭雑貨が少ないので火災の危険は少ない。一般家庭の玄関にあるような小上がりは設けていないのは、土間空間を少しでも広くするためだ。土間立ち上がり部に通気口があり、夏この部分を開けておくと床下の風が室内にはいってくる。
 座敷は2階にあり玄関から遠いので、ちょっとした応接は椅子を置いて、薪ストーブを囲んで行う。丸太の椅子は木を輪切りにすれば簡単にできるが、丸太の木に合わせて座布団をつくるのは大変だ。無印良品に既製品の38cmサイズの丸い座布団がある。38aに合わせて杉の丸太を切ることは簡単である。

キッチン
 システムキッチンのメーカーはたくさんあるが、全部の部品を自分の会社でつくるのではなく、アウトソーシングと格好良い言葉を並べて、小さな町工場からパーツを寄せ集めて組み立てているだけのメーカーが多い。A社の引き出しに人気が出れば、すかさず他社のキッチンにも同じ引き出しの商品が並ぶ。下請け町工場の発注先を変えれば即仕様変更が可となるからだ。シンクやカウンターは下請け町工場から誰でも買えるし、2.8Mサイズで8万円と安い。引き出しや扉などは自由に地元の職人で造れば良い。
 キッチンに食器乾燥機は付けていない。放っておけば自然に乾くものをわざわざ電気で食器を乾かすことはない。乾燥するのをそんなに急がなくてよいではないか。

カップボード
 省エネを目的としたはずのエコポイント政策では大型冷蔵庫が売れている。大型ほどエコポイントの点数が高いからだ。このモデルハウスは5人家族設定なので400Lの冷蔵庫で充分である。大型冷蔵庫に買い換えができないようにスペースをぎりぎりにした。そもそも、冷蔵庫は冷やすものだけをいれるものだ。カレーの残りを入れるものではないし、ペットボトル6本やビールを2ダースもいっぺんにいれるものではない。1日で飲むビールを冷やすべきである。そのためには、風通しの良い網付き収納部分に、カレーの残りや野菜や乾物類を収納するスペースを設けておかなければならない。
 H15年、シックハウス法の施行により建築業界は接着剤にホルムアルデヒドの放出量が少なくなったが、家具業界には旧態依然規制をかけない。新議員会館のシックハウス問題が良い例だ。落とし前を付けるか逃げ切るか見守ろう。家具の管轄が経済産業省で規制をすれば経済の衰退につながるという理由だろう。健康よりお金が大事な省なのだ。ホルムアルデヒドの放出量の多い家具を消費者が買わなければよいが、家具販売店は説明の義務もない。最近19万円というシステムキッチンまで出現したが、素人には表面だけでは何年持つか判断がつかない。
 カップボードは大工工事でボックスを作り、扉を建具屋さんがつくる。建築時壁仕上げを板張りにしているので、カップボードの裏板はいらない。べニアを使わない、安くて安全なカップボードを無垢材でつくれる。

味噌部屋
 昔の田舎の家には味噌部屋があった。味噌造りのためだけの部屋ではなく、加工食品・保存食品・発酵食品のための冷暗室である。日当たりの悪い、住むには一番不都合な場所でよいので北西に配置した。
家庭菜園を楽しむ家が多くなった。これからの時代、ハイパーインフレに対処するには食糧自給に備えよと経済学者が警鐘をならしているからかもしれない。家庭菜園収穫物を処理するつくりにしておかねばならない。大根はスーパーで買えば根だけだが、自分で植えたものには葉っぱも付いている。葉は一夜漬けにでもすればよい。皮はコンポストに入れて肥料にする。石油が高騰しナスが作れないと嘆いている農家がいた。ナスは夏作るもので、野菜は石油で作るものではない。電気でレタスを作る業者もいる。省エネに一番逆行する農業ではないだろうか。魚料理も同じことで、切り身を魚屋さんから買ってくるのではなく、1匹まるごと料理しよう。旬に多量に取れる魚は、塩辛や干物等に加工しよう。そのためは外部に流しと作業場が必要だ。休みの日はゴルフに行くよりも、ドライブにいくよりも、パチンコに行くよりも食料品加工を家族で行おう。床下は広く風通しが良く網が付いているので、一夜干しが出来そうな気もする。

  写真
味噌部屋・キッチン・水屋・玄関・床下・流し・

 
   
   
 
 
   
 
   
 
建築ジャーナル 2010 9月号掲載
 
   
   
 
23
 伝統的構法は玉手箱―トイレ・浴室・洗面所
   
  水俣エコハウスのトイレ・浴室・洗面所の特徴をのべる。 
トイレ
 便所に換気扇が付いている家は多いが、あまり使われていない。建築確認申請時に、基準法施行令28条「便所は換気をよくする」という指導で設置している。ウォッシュレットに脱臭装置があれば臭いを吸収してくれるし、脱臭装置が換気扇より安くて、電気代も少なくて済むので換気扇は不要である。最近、便器の蓋が自動で開くのがある。望みもしないのにメーカーが開発するが、余計なお世話と言いたい。蓋を開けたくなかったら、開けたままにしておけばいい。
 便器の背に手洗いが付いている機種は水垢が付きやすく、奥まっていて使いにくいという理由から人気が悪い。手洗いは既製品ではなく近くの陶芸家に焼いてもらった。細かい排水金具付近のディテールは不得手なので、排水口をVU排水管に差し込んだ単純な仕組みで、臭い止めは外部のトラップ付インパト桝に頼る。VU排水管は体裁が悪いので竹でカバーする。タオル掛けや紙巻器は大工さんか建具さんがつくればいい。仕事の閑散期に一度にたくさんつくれば1ヶ3500円ぐらいまで単価は落とせる。既製品より味がある。 
節水便器は水量が従来の6Lから4.8Lと少ない。しかし、落差が取れないので圧力ポンプが付いている。エコといいながらポンプの電気代のことには言及しない。また、4.8Lでは洗浄がうまくいかず、2回レバーを押せば9.6Lの水を使うことになる。この手のエコ便器は毎年改良型新製品が登場しているが、毎年発売する部品をいつまでつくってくれるか疑問である。
 トイレにいる時間は短いが外部の庭を見たい。自分が外部を見れば外部から自分も見られる。浴室と同じ黒竹の上部をトイレ側から下部を浴室側から見るようにした。

浄化槽
下水が整備されていない地域なので浄化槽を設置する。そこには補助金が存在する。補助金があるところには財団があり。財団が管理している検査機関が多すぎる。建築基準法の検査。使用開始の検査。機能しているかの検査。定期検査を2ヶ月に1回。その検査が行われているかの検査の検査がある。どうしてこんなに検査漬けなのだろうか。40万円近くの補助金をもらえるので文句は出ない。補助金の回収システムであろう。浄化槽の大きさは建物の延べ面積で決まる。まったく実情に合わない。この家は131M2に5人暮らしの想定だが、7人槽をいれなければならない。もっと確信的なデータで言えば日本の1世帯平均は2.9人なのに平均設置浄化槽人数は6人ぐらいであろう。過剰人槽建設費の無駄もあるが、40万円の補助金は検査費用に化してしまう。

浴室
ユニットバスを最初から希望する人は少ないが、メンテナンスや掃除がしやすいという理由で業者が勧めるので、造作浴室は極端に少ない。浴室は体を洗うだけでない。日本人にとっては安らぎの場でもある。プラスチックと塗料の固まりのユニットバスの中では安らぐはずはないが、カタログの中の写真はあまりにきれいである。石調に印刷したユニットバスの壁も写真写りは本物の石と違わない。種類の多さにもびっくりする。そして、毎年新製品がでる。部品の保管義務は7〜8年なので8年先部品があるかどうかわからない。現在行われているユニットバスのリフォームは部品がなく総替えとなっている。
 浴室は湿気が多いので換気扇で湿気を外に出す。よく考えてみよう。冬は家の中は乾燥している。浴室の暖かい湿度の高い空気を排出するのはもったいない。湿気を洗面所に導き入れ、さらに居間まで呼びこむと加湿器の働きをする。洗面所が高湿度になれば温かく感じる。最近全館冷暖房が流行っている。全館冷暖房にしないとヒートショックで命を失うとの脅し文句で浴室暖房もある。北海道や東北では必要かもしれない。九州には必要がないので温暖地方での脅し商法は止めてほしい。
 壁と天井は木がよい。温度差で結露水が壁を濡らすことはないが、シャワーで壁に水がかかるので、タイルより6ミリ板を出して水切りをよくしている。板壁とタイル見切りに横材が入れてある現場をよく見るがやってはいけないディテールだ。必ずカビが発生する。この家の浴室に換気扇はない。レジスターだけを付けている。外気の方が低温なのでレジスターから入り、高湿となった空気は浴室と洗面所の壁・天井材で吸湿する。
 タイルは販売量が少なくなればすぐ廃番になり新製品が出てくる。唯一変わらないタイルは、江戸時代から続く敷瓦だ。床が冷たいのでビニール敷物やスノコを敷く。最初からスノコをはめ込むようにした。スノコはヒノキでも平面に置くと長持ちしないので、ホームセンターで販売されているスノコを置くことにした。たくさんの種類があるが、ここ10年変わっていないのが450×880サイズである。何といっても1枚800円は魅力的だ。

洗面
  洗面所には既製品の化粧洗面台を置く家が多い。キッチンと浴室と洗面は住宅の機能の中心で、費用も高い。この3点で500万円とすれば、住宅会社は設備メーカー品を採用すれば、(20%の荒利とすると)100万円の利益となる。水回りはクレームが多いので、他人にまかせて責任逃れできる優れものである。木の家に既製品は似合わないのでつくることにした。引き出しを製作すると高くつくので、無印良品のかごを入れた。買い足したり、二階の子供室の家具との互換性もある。棚と受け木が全部木製なので、棚の高さを変えることも可能だ。高い場所に欄間があり勝手口へと空気が流れるようにしている。
 
  • 0.25坪庭の上半分をトイレから下半分を浴室から見る
  • 手洗い鉢の排水はVPパイプなので竹でカバー
  • 大工造作の紙巻き器とタオル掛け
  • 浴室から坪庭を見る
  • 造作洗面台
  • 浄化槽は2M2の面積を取る。太陽熱温水器も2M2ぐらいなので浄化槽の上に置く。
 
 
 
   
 
   
 
建築ジャーナル 2010 10月号掲載
 
   
   
 
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 エコハウスの寝室・子供室・座敷・寝室
   
  寝室
 暑い夏の夜は、人工のエアコンの風より自然の風の方が気持ちよい。地面に近い地窓に枕をもってくると、気温が30度でも涼しく感じる。外が無風でも、地窓と高窓を開ければ温度差で風がはいってくる。地窓は低い位置にあるので、面格子をつけて防犯性を高めている。地窓はガラス戸・網戸・障子戸と枚数が多く、柱幅の中にガラス戸と障子戸を納めるには狭すぎるので、溝1本に縦カマチの見込み半分14_の障子を2枚入れている。
 寝室は、ベットを使わず布団を希望する夫婦は結構多い。外国人は畳の部屋をオールベットルームと呼んだ。畳のクッションは柔すぎず堅すぎずベット仕様と同じである。畳の部屋は布団をしまえば部屋を広く使える。
 居間との仕切りは欄間付き障子である。欄間障子はホコリが溜まっても掃除が楽なように横桟がなく縦桟のみにしている。

子供室
6歳、9歳、12歳の子供3人を想定している。個室を要求するのは12歳ぐらいであろう。6歳と9歳は相部屋にし、個室は1部屋にした。6年位経つと下の2人は12歳、15歳となり共に個室を要求する。その時は最年長の子は18歳になり家を出ているだろう。そうとはならず3部屋必要となった場合は座敷を子供室にするとよい。住まいを子供の成長期に合わせて最大必要面積にするのは勿体ないし、子供が一人減り二人減り後は夫婦だけになる。場合によっては2世帯住居になるかもしれないので、部屋は細かく仕切らずオープンなのがよい。そのため仕切りの間仕切り家具は同じ大きさの箱を大工工事で作ってあり、必要に応じて動かせるようにしている。
 子供室東収納の御簾戸の材料はセイタカアワダチソウを採用した。色が黒っぽいので間隔は開いているが中は見えずガラリ建具と同じ機能を持つ。
 他の部屋に比べて子供室は暗い気もするが、子供は昼間外で遊ぶもので部屋に籠るものではないという理由で光が入らない北に配置した。北窓は1階の居間の風の出口の役目も果たす。暗さをカバーするために、廊下との仕切りは障子にし、居間の光が子供室まで注ぐようにした。南の廊下は座敷への通路の役目であるが、来客用としてはほとんど使わない。廊下との仕切り障子溝を3本にしてあり、2/3が開くので、廊下まで一部屋となり、4.5畳が6畳の広さになる。二人部屋6畳、個室4.5畳の広さは子供にとって狭いとは感じない。思い出してみよう。子供のころ、あの大きかった川が今見ると小川ではないか。それに、子供室は少し窮屈なほうがよい。そうすると居間に出てきて、家族間の会話時間も多くなるだろう。間仕切り障子は破れにくい配慮が必要だ。下部を腰板付きにし、桟を密にし、桟の見込みを深く、更に80cの厚さの障子紙を使用した。
 床の仕上げは机を置くスペース以外は畳にした。寝室と同じくベッドを置かないので、部屋が広く使える。

座敷
ホテルや喫茶店で気楽に接客できるような時代になり、家庭訪問以外、座敷を接客の場として使わなくなった。その家庭訪問でさえ先生は部屋に入らないことが多い。時々来る友人や珍客は、もはや来客ではなく家族と同等1員である。では座敷は不要かというとそうではない。正月や節句といったけじめ時の場として必要だ。また、季節感を演出する床の間のある部屋としても座敷は家の核である。最近はモノがあふれて床の間が物置になっている場合もある。もひどいケースとしては床の間にピアノが置いてある。1.6Mと横幅がぴったり当てはまっている。座敷は普通玄関近くに配置するが、この家ではニ階の西側の条件が悪い場所に設けた。西陽が強く住環境は悪いが、西へ沈む美しい夕陽は絶景だし、西から吹く風は心地よい。温まった空気が他の部屋に流れずに外部に排出するように3カ所も窓がある。窓の高さは、窓手摺に腰かけて道行く人に声をかけられるように45aにした。アルミの手摺は触りたくないので木製にした。軒の出を長くして雨がかりを少なくすれば木は使える。アルミは耐久性が高いが、軒を短くして雨に濡れる状態にして、耐久性能を上げましたというのはガマの油売り商法に似ている。次に床の間についてのべよう。奥行き3尺の板は1枚の無垢板にすれば50万円、2枚使いにすれば10万円、3枚おろしにすれば2万円だ。伐採時、木の根元の2M部分の曲がり部はチップにしかならないので幅広の割には安価である。その曲がり面皮材を3段重ねて使った。奥行きは3尺もあるが、段があり盛り鉢は置けないので、仕方なく1輪差しですと言い訳ができる床の間でもある。床の間の落とし掛けは普通鴨居より柱1本上げるところだが、障子の下がり壁をつくり鴨居より下方にした。床の間づくりのルール違反ともいえるが、京都の詩仙堂の落とし掛けは柱1本分下げて、天井の低さを感じさせない設計にしてある。それを真似たデザインだ。批判したい人は詩仙堂に物申して欲しい。
 1階の屋根勾配を2階まで延長した。薪ストーブの煙突掃除のため屋根上に登れる勾配は5寸である。そのため、天井高が平均2100ミリと少し低めになった。入ってすぐは天井を低く感じるが、畳に座ってしまえばなんのことはない。視線は天井ではなく水平線の風景とガラス戸と障子のデザインに目が行ってしまう。大正時代、大判ガラスが高い時代に、縦4分割横4分割の間を抜いた形は不滅のデザインである。
   
 
 
地窓の障子溝は1本
 
セイダカアワダチソウの収納戸
     
 
かまち3段の床の間と障子の落としがけ
 
南西の角を解放。大正ロマン風の障子
   
 
建築ジャーナル 2010 11月号掲載
 
   
   
 
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 伝統構法は玉手箱―エコハウスの居室U
   
  食堂
 家の中心位置に食堂を配置した。食堂から家族の動きを見渡せる。吹き抜けを通して子供部屋の様子もわかる。家に一番長時間いる主婦が、食堂に鎮座して家の中をコントロールして、名実ともに主婦が家族のたずなを握れる家だ。一般の間取りは玄関を中心として、玄関から各室に行く導線であるが、この家は食堂が放射状の核となっている。食堂から玄関へ、食堂からトイレへ、食堂から洗面・浴室へ、食堂から味噌部屋へ、食堂から子供室と続く放射状の導線である。また、ほど良い風通しとほど良い光で、この家の中で一番居心地の良い場所に食堂がある。見晴らしも良い。北の1本引き窓は窓枠が額縁のようになり北庭に植えてあるサルスベリが額の中の絵のように見え、南の庭とは違う雰囲気となる。
 網戸には縦格子を付けているので網戸の状態では、家の中が外からは見えにくい。
 食堂は居間の延長線にある。食堂側の厨房カウンターの高さを1100_にして、流し周りが片付いてなくても食堂・居間からは見えないようにしてある。

居間
 軒を深くしたら、夏、直射日光を家の中に入れずにすむ。窓はできるだけ大きく取った。最近の家は、省エネ目的の高気密・高断熱仕様で窓を小さくしている。省エネの基準指標にQ値がある。詳しくは後号で述べるが、安直な基準に設計者は簡単に乗ってしまう。その基準が窓を小さくさせ、開かないFIX窓を増やしている。いい換えれば、九州でも、エスキモー住宅みたいな、軒が短く、窓の少ないトーフ状態の家が国策で増やしているのではないだろうか。
 窓は大きい方が良いに決まっているが、いくら大きくしても出口が無いと風は入ってこない。西側の無双窓から入った風は、東側の階段上に付けた高窓ジャロジーから出ていく口で、屋根の軒が長いので、夏は1日中開け放しでも良い。電気代が要らない換気装置である。省エネを推奨する世の中なのに、建築基準法で24時間換気扇の設置を強いるのは疑問である。
 天井にシーリングファンを付けた。扇風機の役目を果たし40Wと電力はあまりかからずエアコンより優れものだ。冬、吹き抜けの室内の温度むらを均一にする役目なのだが、良いか悪いか。温度むら解消に空気を動かすとかえって寒く感じるという人もいる。体験してみないとわからない。
 床下の風を取り入れる装置を付けた。装置といっても床下改め口の蓋に網を付けただけのこと。夏の夕方は室内より床下空間の気温は2度低いので、その空気を取り入れる。最近のエコハウスにはクールチューブの採用例が多い。200万円もの費用がかかる。クールチューブには結露や持続時間等課題も多く研究段階で普及するにはまだ早いと思う。この床下空気採取装置は電気代もいらず安価でよい。冬、閉めても、蓋には断熱材がないので駄目という人がいるが、蓋の上に座布団を置いたら解消すると答えている。

縁側
 断熱材が無い時代は寒さの緩衝空間として縁側があった。直射日光を家の中に入れないための深い軒と縁側が夏の暑さ対策の役目を果たしていた。冷暖房器具の普及で縁側が無くなってきた。熊本県立大学の3年生(20歳の若者)を対象に、5年間アンケートを取っているがおもしろい結果がでた。衣食住を和風・洋風のどちらを好むかという質問である。衣は95%が洋風好みである。食は60%が和風好みで、まあ理解できる。しかし住は以外な結果で70%が和風好みなのである。更に、和のどこが良いかとの質問をしたら縁側との回答が一番多かった。今住んでいる家にあるのかと聞いたら祖父母の家での体験だった。住宅会社の社長は、若者は洋風好みと決めつけ、フリフリ付きのリカちゃん人形の家みたいな住宅を世に送り続ける。
 昔は縁側の室内側に障子があり、屋外側に1本引きの雨戸があった。雨戸を収納すると縁は外部空間となり、日向ぼっこの場・社交場・喫煙ルームとなった。しかし、冬は寒いので、ガラスの普及に伴い雨戸の位置にガラス戸が取り付けられるようになった。当時はガラス戸の敷居に水返しもなく単純な構造で、木製敷居に座ることにも抵抗はなく、外部でもなく内部でもない空間で、縁側として使うのに不自由はなかった。S40年代になり、アルミサッシの普及で縁側が遠のいた。水を侵入させないアルミサッシのディテールは敷居部分に細い凸凹があり座れない。気密性向上のためサッシ周りが頑丈となり、開けることを拒否しているようにも思える。縁側に椅子が置かれ、カーテンが取り付けられ、縁側は完全に室内となった。建築基準法でも完全に上屋構造扱いされるようになり、布基礎も縁側まで廻すので居室に加えないと損みたいな感じになってしまった。縁側の外部側でなく障子のラインにガラス戸と網戸と雨戸を敷設すると縁側の機能を損なわない。外部でもない内部でもない空間は気持ちが良い。はっきりとした目的のない曖昧さを好む日本人にぴったりだ。
 縁の材料は、軒先から3枚ほどは雨がかかり5年くらいで駄目になる。軒先に平行に設置しておけば、取り換えは3枚だけで良い。塗装によるメンテが一般的である。新築時に塗装するより、1年ぐらい経過してからヒビの間に含浸タイプの塗料を塗った方が耐久性は上がる。塗装は3年毎に行わなければならない。軒先3枚の取り換えと経費にあまり差はない。塗装不要のMD材があるが、比重が高く、夏の直射日光に当たると50度を超えてしまい、室内を暑くしてしまう。

   
 
 
家の核である食堂
 
外から縁を見る
     
 
床下空気取り入れ口
 
外部のような内部のような縁側
   
 
建築ジャーナル 2010 12月号掲載
 
   
   
 
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 水俣エコハウスの材料T
   
  木材
  最近TPPが話題にあがっているが、林業においては既に実施済みと思ってよい。木材の関税は昔からゼロである。米には778%、こんにゃくには1706%の関税をかけているというのに。政治献金が少ない木材業界が外交のしわ寄せ被害となる。
 日本は国土の65%が山林で、木材は産物なのに75%も木材を輸入している。外国から見れば理解しがたいであろう。消費者が外材を望んでいれば致し方ないが、8割の人は国産材希望と答える。では価格が高いからというと、そうではなくむしろ国産材が安い場合もある。外材が多く使われる原因は、使用基準が外材に合わせているからである。2000年の性能規定はアメリカの外圧で決まり、JAS基準を満足させるためには国産材では多額の費用がかかり、素材では安いが使用するときに高くなる。素材を素直に使うのが賢いやり方だ。湿気が多い日本の木は当然含水率が高く、根元は曲がっている。日本の伝統的構法は曲がった材料は曲がっても良い場所に、含水率は場所にあわせて一夜干し程度の乾燥をして使う。
 日本の山の木を、日本の工法で家を建てる木材が、日本の基準に合わないのは、基準の方がおかしい。無理して基準に合わせることをしないのがいい。

瓦・熊本産  
 一昔前、台風に飛ばない瓦といってたくさんの種類のセメント瓦や洋瓦が出た。そしてほとんどが廃番となっていて、修理用の瓦が無い。昔の日本のイブシ瓦は64型であった。現在は53型が主流である。熊本の中川瓦店は昔葺いた瓦が無くなるとみんなが困るからと64型を製造している。大手は儲からないとすぐ廃番にしてしまうが、後始末を地方の極小企業が行うとはおかしい話だ。極小企業の良心によって、大企業はもうけ主義を謳歌している。
 家の寿命はなんで決まるのかといえば屋根材である。最近、100年住宅や200年住宅がある。そんな家に限って屋根材はスレート瓦だったりする。長期優良住宅の屋根の基準に屋根の耐用年数の項目はない。イブシ瓦より長寿の屋根材は無い。

瓦タイル
 タイルも廃番が多い。よくトイレにパッチワークみたいなタイル貼りを見るがタイルが廃番になっているからだ。これ、かわいいねと花柄タイルは絶対選ぶべきではない。10年以内に確実に無くなる。廃番にならないタイルがある。400年前から変わらない敷き瓦である。大きさは5寸7寸9寸10寸で、厚さはまちまちだが厚さは現場でどうにでもなる。浴室に使っている。

断熱材
(カンナ屑)
 造り酒造の麹部屋を改装した時、壁の中からもみ殻が出てきた。昔の木製冷蔵庫の断熱材もモミ殻であった。工業製品の断熱材が無かった頃の断熱材である。エコハウスの天井に、工事中に木材を削った時に出るカンナ屑を袋に詰めたものを敷きつめている。カンナ屑の断熱性能は調査しなければわからないが、10Kのグラスウールよりは良好だと思う。
(フォレストボード)
 杉皮をコーンスターチで固めたフォレストボードという断熱材がある。木片を断熱材に利用した断熱材はたくさんあるが、山で処分に困っている杉皮を利用しているのが魅力だ。土壁には、断熱性能がないので、土壁の外側にこのフォレストボードを入れた。

土壁
土壁は構造体であり内装材であり、外装材でもなる。断熱性能は小さいが蓄熱性能は大きい。材料は近場にあるし、用が済めば自分の庭に捨てれば良い。建築廃材で埋め尽くされる日本の将来を考えると、最高に優等生の建材だが見向きもされない。


竹は日本の山を覆い尽くし、健全な循環を阻止している。根が浅く地滑りがし易く、保水力も少ないので緑のダムにもならない。昔、竹は裏山に植え、食糧、家庭用具、土壁下地、海苔網の支持棒などと活用してきた。伐っても翌年には同じ分だけ生えてくる便利なものだった。現在竹を使わなくなった。タケノコは中国が1円安いと偽装までして輸入し、家庭用具は竹よりプラスチックの方が安いと使わなくなったし、海苔網支持棒も腐るからと使わなくなった。竹だったら使用済みになり海に放置しても自然に分解し問題はないが、プラスチックはそうはいかないのに。現在山で、竹の逆襲を受けている。

漆喰
漆喰の原料は石灰岩であり、日本の国土は石灰岩の塊である。わざわざ、火山灰や貝殻を使わなくてもよいではないかと思う。北海道の帆立貝の殻を鹿児島で使い、鹿児島の火山灰を北海道で使うのはおかしい。漆喰は安いため広告はなく、カタログもない。砂や砂利にカタログがないのと同じだ。建築家はカタログがないと使わないので、帆立貝殻や火山灰をカタログ化して漆喰の倍くらいの価格にしても売れる穴場商品だった。漆喰は昔からあり、室内の湿度が高いと吸湿するし、湿度が低いと放出してくれる便利な材料だ。湿気以外の家の匂いも吸い取ってくれる。安いのがいい。

土間
土壁と同じく土間の三和土の原料はただに近い。ほとんどが人件費である。施工は左官職人が一人いて、あとは素人でよい。新建材に「タタキ」という高い商品もあるので間違えてしまう。

  建築材料の産地と処分方法
 
使用場所
材料
産地
将来
構造材 水俣市久木野地方のメアサ杉
漆喰 福岡県田川市
屋根 熊本県宇土市の中川瓦
天井の断熱 カンナ屑 この家の工事現場
壁の断熱 フォレストボード 秋田県
建具 襖紙 水俣市産の楮
畳表 熊本県八代産のイ草
畳床 水俣市の稲
床・天井 杉無垢材 水俣市久木野地方のメアサ杉
浴室の床 瓦タイル 熊本県宇土市の中川瓦
土間 三和土 水俣市
土壁 熊本県小川市の土
設備機器 電気・給排水 住宅設備メーカー各社
産業廃棄物
   
 
建築ジャーナル 2011 1月号掲載
 
   
   
 
27
 水俣エコハウスの材料U
   
  畳(いぐさ)熊本産
 イグサの9割は熊本の八代地方で生産されている。畳表生産は分業システムではなく、イグサ生産者が畳表織り加工まで一貫して行うのが特徴である。生産者と直接話せばトレーサビリティは確かだ。「○○マークがついているので安心」という認定品より信頼性はある。
 畳床は藁床とし、吸湿性能を期待している。畳床が藁であることを知らない人が多いのは、最近では藁ではなくスタイロになっているからだろう。そのため畳の効能から吸湿性が消えた。高温多湿の御家芸だった吸湿装置が消えた。理由は畳屋さんの都合でスタイロに替わってしまったのだ。1枚1000円も利益が出ない38sのものを、エレベーターのない最上階までかついでいくのは大変である。それでダニのせいにしてスタイロに替えてしまった。畳床は藁と昔から決まっている。
 藁は米の副産物である。藁床がないと言う人がいるがおかしい。米をつくったらかならず藁が出る。また米をつくる合理化のために機械化が進み、コンバインで稲藁を粉砕してしまうのは確かだが藁束にする機械もある。「明日稲藁をくれ」と言うからないのであって、1ヶ月前から予約し、藁代に僅かでもお金を払えば喜んで揃えてくれる。自家米や産直販売米の場合、稲を掛け干しにする人は多い。今回は水俣副市長の森さんが自家米をつくっていて掛け干しにしていた。その藁を市の職員が畳床製作場まで運んだ。掛け干ししたおいしい米と吸湿性が確かな藁床は、食と住の共生であるのに、近代は循環システムを捨ててしまった。

杉板
 杉の比重は0.38である。60%が空気と思っていい。木材の中のカーペットである。
キズは付きやすいが、気になれば無垢材だから削ればいい。ワックスなどかけるものではない。ワックスは塗装の劣化を守るためのもので、新建材塗装床材に使用する。建築業者で安物のフローリングを勧めるために、「無垢材は反るから使わない」と言うからびっくりする。その程度の説明しかしていない。2〜3_の反りを気にするかしないかは消費者の判断に任せるのがいい。無垢材に反りや収縮防止のためにウレタン塗装したら、吸湿性の特徴もなくなってしまう。

和紙
 和紙の原料はほとんどコウゾである。コウゾは草みたいなものでどこでも育つ。やる気があればどこでも和紙生産は可能である。静岡出身の金刺順平氏が30年前、水俣の地域性に魅せられて、1q四方に家のない袋地方に住みつき和紙生産を始めた。漆喰壁に吸湿性能を期待することは大事だが、開放的な日本家屋の壁の半分は建具である。その建具を紙でつくり、建具にも吸湿性を負担させる。

障子
 座敷、寝室欄間、寝室窓、子供室窓、子供室南、居間、欄間、洗面欄間は、前出しの和紙を使った障子である。

生垣
 「タデ食う虫も好き好き」というように、樹木や草花に付く虫は種類が違う。同一種の生垣にすれば、付く虫も1種となり被害は拡大する。しかし、混植すると虫も多種になり広がらない。このことは、アルセッド建築研究所の三井所清典氏が、佐賀県陶磁会館の設計時に虫予防のために混植を採用したと聞いたからだ。今回のコンペの審査員長は三井所清典氏だった。受け狙いで混植植樹の提案をした。審査後聞いたら、混植採用のコメントは見なかったとのことだった。

カタログ商品
 昔、照明器具のカタログは年に2回発行されていた。売れ行きが悪い商品は半年でカタログから消える。5年もすると総替えとなる。芸能社会とよく似ていて空しく感じる。ちょっと高いがルイスポールセンの器具を選んだ。40年以上前から作り続けている。ヤマギワの木座ボール球照明も30年前も存在していた。おそらく今後も存在するだろう。
 システムキッチン・洗面化粧台・ユニットバスを見てみよう。機器類を改良してくれるのはありがたいが、毎年モデルチェンジをしてくれると翌年は型落ちとなる。メーカーの部品保存期間は5〜8年なので、修理が必要な時期には部品はなく、結局総替となり、使える部分も捨てるはめになる。ちょっと便利なものは、壊れたらおしまいと思っていい。キッチン・洗面化粧台・浴室は、地元の大工で地元の材料でつくれば特注にもならないし、廃番もないし、修繕は永久に可能である。

ゴミ問題から考えるとエコ商品に疑問
エネルギー枯渇の危機から、エネルギー問題が新聞・テレビを賑わしている。石油があと50年しかもたないので、レアメタルやウランに代替しようとしている。しかし、そのレアメタルやウランもあと70年と言われている。しかし、エネルギー問題よりゴミ問題で日本は崩壊するように思えてならない。水俣はゴミ問題には敏感で、現市長宮本氏は産廃処理場建設反対で生まれた市長である。都会の人はゴミを有料化し、お金を出せば田舎に捨てる場所はたくさんあると思っていないだろうか。日本全国ゴミの捨て場はない。

  エコと言われるシステムを採用しない理由
 
屋根緑化 輻射熱が強い九州において、屋根材は重要な要素である。輻射熱低減には効果があるものの、緑化には水が必要である。屋根緑化は屋根材が常に濡れていることになり、耐久性に問題が出る。費用対効果に長持ちを分母に加えると、いぶし瓦に断熱材の方が優位と思う。また処分に困る建材を多量に使うことになるので使いたくない。
和紙クロス貼り薄塗り珪藻土 下地が石膏ボードであれば、和紙や珪藻土が吸湿しても下地の石膏ボードの吸湿効果はない。ビニールクロスよりましという考えだ。木ずり漆喰のほうが吸湿効果が大きい。
太陽光発電 パネルの生産時に相当のエネルギーが必要であり、レアメタルの採掘のために発展途上国にゴミの発生を強いている。パネルガラス面のメンテナンス費として、経費が毎年かかる。たとえ電気代を8万円うかせたとしても、1.5万円は維持経費で消える。
ダイレクトゲイン 寒い地方での輻射熱取得には良いが、水俣では夏はむしろ害になることが多い。マニュアルでは良く夏至の12時の図が用いられるが、8月の4時が一番暑い。夏、床部に日光を当てない設計は難しい。雨戸を閉めて対処するというのは言い訳である。
外壁通気工法 内部結露防止の役目は果たすが、通気層の外側には軽い建材を使わねばならず、サイディングを張ることになる。サイディングは街並みの風景を壊す。内部結露防止には、吸湿性のある断熱材で対処するのが良い。
Low―Eガラス ガラスは熱ですぐ溶ける。よってリサイクルはしやすい。しかし、高性能Low―Eガラスは重金属がガラス面に吹き付けてあるので、リサイクルが利かない。埋め立てゴミとなる。熱貫流抵抗は、普通シングルガラス+内障子で十分取れる。
複合サッシュ アルミはリサイクルの優等生である。プラスチックも燃えるゴミに出す。しかし、アルミとプラスチックが複合されたものは埋め立てゴミとなる。「分ければ資源、混ぜればゴミ」の原理を考えると使いたくない。
   
 
建築ジャーナル 2011 2月号掲載
 
   
   
 
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 地域の材料―エコハウスの機器
   
  薪ストーブ
 エアコンやファンヒーターのような空気を温める装置は、温風を部屋全体に行き渡らせるのに強制風がいる。風が起こると体感温度が下がり、寒く感じるので更に温度を上げなければならない。しかし、薪ストーブ等の輻射暖房は室内材からの熱線なので、隙間が少々あっても急に寒さを感じることはない。それで、熱を保持できる蓄熱性能が高い土壁と薪ストーブは相性がよいのである。薪ストーブは煙突から出る煙と同じ量の空気を外部から取り入れなければならない。薪ストーブを玄関に置き、玄関の引き違い戸や無双窓の隙間から吸気するようにした。
 木をたくさん燃やすのは環境破壊と言う人がいるが、建築現場の残材や街路樹の伐採材は焼却炉で廃棄物として燃やしている。確かに日本人全員が薪ストーブを採用するわけにはいかないが、今のところ燃料の方が余っている。最近、ナラ枯れが各地で起こっている。昔、人間がナラやカシの木を切ったら、切り株から又枝が生え、60年サイクルの里山状態を保持していた。しかし、今は、木を切ることを止めたら虫が入ってきて、根まで浸透し、ナラ枯れを起こしている。ナラ・カシの木は、人間が60年毎に切ってやらねばならない木なのである。針葉樹は人手を入れ植林をし、広葉樹は燃料として伐採することで、人と山が共生していたのだ。

シーリングファン
 風が吹かないときもある。南と北の窓を開放し、地窓と高窓で温度差による風をシーリングファンでちょっと風を起こしてやると、風の速度が増す。ファンの向きは夏は下向き、冬は上向きとなっているが、夏はどちらでもいいような気がする。エアコンと比較して消費電力は少ないのがいい。冬、薪ストーブによる暖房は、部屋の上下で温度差が7度あるので、ファンを回して上部の暖気を下におろす。この時、ファンを上向きにして、暖気を天井に当て壁伝いに下方におろす。直接風が肌に当たらないので寒さを感じない。

24時間換気扇はない
 気密の度合いを隙間相当面積(C値)で表現する。C値5以下が気密住宅である。
 24時間換気扇はシックハウス対策で義務化された。室内の空気を入れ替えることが目的で、換気扇の能力を家の体積で割り0.5回/時以上あれば良いという単純な計算を指導した。設計者はトイレや廊下に換気扇を設置し、各室に吸気口を設ける簡単換気法を採用した。北方建築総合研究所の福島明は、C値5の気密住宅でも簡便換気法だと計算の2割しか換気していないという。日経ホームビルダー23年1月号の実例実験では、なんと気密住宅であっても換気性能ゼロという衝撃的な報告をしている。板の隙間、建具の隙間、壁と柱の隙間から換気している。いわゆる漏気である。温熱専門家はこの漏気を非常に嫌う。計算出来ないからだ。漏気は電気を使わない自然換気システムと思うのだが。
 シックハウス法は、有害物質含有の家具を持ち込む恐れがあるので、持ち込む人も持ち込まない人も、万民公平の原則から24時間換気扇を付けなさいという法だった。建築基準法28条では居室の換気義務がある。その条項では換気扇による機械換気は認めないし、逆にシックハウス法では建具の隙間等の自然換気は認めないのである。矛盾する法だが文句をいわずにコンプライアンスといって従順に従うのが日本の建築士像。換気扇の電源をいれている人は25%というデータもある。あるホテルに泊まったらスイッチは自分で切りなさいという表示がしてあった。24時間換気扇による換気法は破綻している。
 シックハウス法にただし書きが付いている。「真壁造りで面状の建材を使用しない場合は0.5回/時の換気があるものと同じ」と。土壁には隙間があり、換気扇を付けなくても換気は充分というお国のお墨付きに喜んでよいものか。

太陽光発電器
普通の家庭で使う電力は昼間1.5Kほどである。1.5Kサイズの太陽光発電器を付け、自分で使う分だけ発電するのはよいことだが、5Kサイズの大型を付け、売電し儲かるという。儲かる人がいれば損する人もいる。損する人とは太陽光発電を付けない人のこと。48円で買い取り、昼は22円夜は8円で売る仕組みはどう考えてもおかしい。
 機器を取り付ける際の防水を屋根瓦にコーキングしたり、母屋材の耐力不足を検討しなかったり、2次部材の交換費用や黄砂、隣地の樹木の枝等でも効率低下は、設置時にはあまり説明されていない。こんなはずではなかったということが今後起こってくる。

太陽熱温水器
 水道圧を利用した直圧式は床置きでもよい。水圧があるのでシャワーも使える。夏期は高温になりすぎるので3方弁を付けることになっているが、風呂の温度を正確に把握する必要はない。複雑なオプション機器を付けすぎると高価になり、減価償却期間が延びてしまう。省エネ機器でメンテナンスを考えて現実に償却期間が10年以下の商品は太陽光温水器だけではないだろうか。

浴槽
 設備機器の効率も大事だが、浴槽の湯冷め防止をした方が省エネになる。既製品浴槽に断熱材が吹き付けてあるが薄すぎる。断熱効果が高い商品として存在するのは、Y社のシステムバスは床部を魔法瓶みたいにしているし、T社の断熱浴槽は50万円を超える。メーカーはエネルギー問題を真剣に考えているのであれば、普及タイプ浴槽の薄い断熱材を厚くするのが先ではないだろうか。

 
 
玄関に置いている薪ストーブ
太陽光発電は雪・木の陰が少しでもかかれば能力はゼロ近くになる。
 
   
 
建築ジャーナル 2011 3月号掲載
 
   
   
 
29
 改正省エネ法は日本建築文化を崩壊させるかも 
   
   1997年に京都議定書が採択され、日本の炭酸ガス排出削減の2012年までの目標は1990年比―6%だったが、逆に10%増加しており絶望的な状況である。家庭部門が3割近く増えているのは事実である。産業関係部門が2008年に減小したのはリーマンショックのためであるが、産業界は「産業部門、運輸部門、エネルギー転換部門は減らしているのに、家庭部門が頑張っていない。産業界は枯れた雑巾を絞るように頑張っている。家庭部門こそ努力せよ」という。家庭部門が増えたのはパソコンやゲーム機や大型TVやビデオなどの消費エネルギーなのに、住宅の暖房性能をあげれば炭酸ガス削減につながるという法律をつくろうとしている。経済企画庁は、規制は技術向上につながるとマスキー法を例に上げ、経済と環境問題は両立すると主張する。
 住宅は経済活動の一部ではない。エネルギー消費の削減が目的ではなく、エネルギー効率を上げるために建築設備が投資されれば、経済が潤うのが目的と思えてしかたがない。「使い放題・食い放題」を助長する最近の世の中を規制するのが先ではないかと思うのだが。

建築専門家でもよくわからない省エネ法
 戸建住宅に、「旧省エネ基準」、「新省エネ基準」、「次世代省エネ基準」、「断熱性能評価基準」、「トップランナー基準」、「省エネ法」、「CASBEE」、「自立循環型住宅ガイドライン」、「住宅事業建築主の判断基準」とあるが、どれだけの人がその違いを理解しているのだろうか。まず、「省エネ法」は、経済産業省が1979年に出した「エネルギーの使用の合理化に関する法律」の略称である。その中の73条に基づき定められたものが「省エネ住宅基準」である。省エネの住宅基準は変更が繰り返され、「旧省エネ基準」「新省エネ基準」「次世代省エネ基準」の3種類がある。2000年、住宅にも車と同じように表示があったほうがよいと「品確法」ができ、その中で断熱性能を等級で表示したのが「断熱性能評価基準」である。その基準内容は省エネの住宅基準を転用している。旧省エネ基準が等級2、新省エネ基準が等級3、次世代省エネ基準が等級4となる。ここまでが法律である。法律ではあるが、フラット35や長期優良住宅の融資、エコポイントの補助金をもらうときに必要なだけで強制力はない。
 人間の暑さ寒さの要因は、気温、湿度、気流、放射、着衣、活動熱の6項目だが、建築性能の要素は断熱、気密、湿度、風、輻射である。前出しの旧・新・次世代省エネ基準は、建築性能の断熱、気密だけを指標にしている。いわゆる「熱損失係数Q値」である。床・壁・天井・窓の断熱性能と気密性能を足した数値で低いほど性能がよい。地域区分のW地域において、旧省エネ基準のQ値は5.2、新省エネ基準は4.2、次世代省エネ基準は2.7である。
 断熱・気密だけのQ値では評価できないと、住宅性能と周辺環境を含んだCASBEEがある。また、数値化にも限界があると風通し、輻射熱、遮熱を考慮した設計マニュアルとして自立循環型住宅ガイドラインもあるが、共に法律ではない。
次に、2009年、企業の事業主を相手にした「改正省エネ法」ができた。2010年からは300u以上の住宅・建築物と年間150戸以上の住宅供給事業建築主に規制の対象が広がったが、戸建て住宅に関係するものではなかった。

改正省エネ法住宅版が産声をあげている
 改正省エネ法には「住宅事業建築主の判断基準」がある。年間のエネルギー消費を1次エネルギーで換算する「消費量算定シート」がある。そもそも建売住宅を相手にしたシートなので戸建てには合わない。そのシートを使い、全ての住宅に法規制をかけようとしている。「低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議」が検討を重ねて「住宅・建築物の省エネ基準の適合義務化に関する検討会」が2011年6月に骨子をつくり、2012年に国会に提出する予定である。若干の微調整があると思うので、今のうちに問題点を提示しておきたい。
 品確法のように選択性であればいいのだが、すべての住宅に国策として省エネ基準を強いるのは問題である。土壁真壁の断熱性能はゼロに近い。そうなると、真壁・土壁の家は日本ではつくれなくなるのである。世界に冠たる桂離宮が違反建築となり、茶室もつくれない。土壁には蓄熱性能や吸湿性能があるし、縁側や玄関、押し入れをバッファゾーンとした温熱環境手法もあるが、そんな評価は無視し、高気密・高断熱指標のQ値を最高の指標とする可能性がある。九州地方では、住宅の断熱性能は少々悪いが直火暖房生活の人は多い。そしてエネルギーをあまり使っていない。少々寒くても開放的な家に住みたい人を規制するのは人権侵害ではないだろうか。「用の美」の象徴である真壁は日本特有の建築デザインである。

建築家はどうしたらよいのか
 コンクリート打ち放し住宅も造れなくなるので安藤忠雄氏もびっくりするだろう。法案提出は2012年。施行は2020年というから、2020年は先の先。国は8年間講習会を行い、講習会ビジネスが潤う仕組みである。講習会新規ビジネスは建築士から集金するので、税を使わないから事業仕分けにはかからない。24時間換気扇設置、改正基準法、建築確認の厳格化、瑕疵担保履行法など、国はいつも「改正法は正しいが、周知が徹底しなかった」と弁明する。8年先のことと皆の関心は薄い。「消費量算定シート」の基準が決まるのは今年の夏ごろだ。「伝統木造など住宅構造の評価方法の検討」を行うと言っているが、土壁の外に断熱材をはればよいという安直対策にならないようにしてもらいたい。「消費量算定シート」の問題点を次号に提示する。
   
 
建築ジャーナル 2011 4月号掲載
 
   
   
 
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 エネルギーの独り占めをやめてくれませんか 
   
   現在の世の中は「ウソではないが本当のような話」が淡々と仕込まれ、実際とは異なる表現がまかり通る。

H14年10月25日「詩と真実」
 文芸詩「詩と真実」という熊本の地元誌がある。何気なく平成14年の号の編集後記を見た。今月号かと目を疑った。
 
  • 「絶対安全」と謳い文句の東京電力の福島第1、第2原子力発電所で「隔壁ヒビ割れ」が起こり、次いで柏崎、刈羽発電所にもと。東京電力のトラブル隠しが表沙汰になり、会社の経営者が報道陣の前に居並び頭を下げて陳謝し、引責辞任を表明したのも型通り。
  • 原子力発電の国の監督指導の日本保安院は厳しく摘発するどころか、東京電力にトラブル隠蔽を示唆したというからビックリ。国民の安全より企業の発展、国策の推進というのだから怖い。
  • 東京電力の隠蔽が表に出たのは、実は勇気ある良心的会社員の「内部告発」だった。彼は転職して我が身を守ったが。
  • 日本保安院はこの良心的会社員を「危険人物」として東京電力に教えていたという。その為この会社員は転職したGE(ゼネラル・エレクトリック)を解雇されていた。
  • 会社の反社会的な不正を告発すると、国は会社の肩を持ち、良心的会社員の行く先まで追い掛け職を奪うのだろうか。
  • 「絶対安全」の筈の原子力発電所のトラブルはスペイン風邪のように東北電力、中部電力、日本原電と広がっているという。
 
H23年3月28日「経済産業省資源エネルギー庁」発表

 原発事故後の3月28日、経済産業省資源エネルギー庁が「省エネルギー技術戦略2011の策定」を発表した。これからの国の進む道の基本となる。長文なので住宅部分のみを抜粋する。

  機器自体の省エネルギーを一層進める対策として、エネルギー消費の大きい冷暖房等空調、給湯、照明、OA機器、また、IT機器関連のエネルギー消費量に対する省エネ技術であり、これらを制御するゼロエネルギーハウスがある。
 外皮性能・建材については、高断熱・高気密、パッシブ住宅の技術がある。冷暖房等空調においては、冷暖房の空調機器の効率化と、断熱性能の高い外皮性能と建材の採用により空調負荷自体を減らす技術が重要となる。
 照明においては、高い発光効率を可能とするLEDや、有機EL等の光源技術を要素技術とする高効率次世代照明が重要技術となる。
給湯のエネルギー消費を減らすには、給湯用ヒートポンプ、燃料電池、ガスエンジン給湯、潜熱回収型給湯器等の高効率給湯器や、これらの給湯器と太陽熱との一体化を図る技術が今後の重要技術となる。
省エネ情報機器・システムは、IT機器の利用等により増大する消費電力量を削減するため、個別のデバイスや機器の省エネルギー化に加え、省エネ型情報機器、省エネ型次世代ネットワーク通信、待機時消費電力削減技術、高効率ディスプレイという関連技術を駆使し、情報通信ネットワーク全体での革新的な省エネルギーを実現するエネルギーである。
 さらには、家庭機器を利用する人間サイドから、居住空間を含め、個人により異なる快適性や嗜好性を追求し、制御技術、センサー技術等を駆使することにより最適な住環境を実現する快適・省エネヒュマンファクターが、省エネルギーの視点から新しい概念の装置・システムを創造することが出来る重要な技術となる。
また定置用燃料電池は、発電効果の向上・熱の利用技術の進展により、家庭分野の1次エネルギー消費をさらに大幅に削減するとともに、スケールアップに業務分野、産業分野にも適用でき、省エネを加速する重要な技術である。


H23年4月25日「九州電力」発表
今年4月25日、九州電力は、昨年の電力消費量が前年比4.9%増の875億`h時であったと。販売電力量は過去2番目の大きさだった。特に家庭用は4.3%増で過去最高。エアコンの使用量が増えたからと発表した。エコポイントで各家庭のエアコンの設置台数が増えたからだろう。

 
  • フランスの放射線防護原子力安全研究所のジャック・ルピュサール氏は「日本はテクノロジーを過信しすぎる」と警告するが、「省エネルギー技術戦略2011」は、ルピュサール氏が言う通りテクノロジーにどっぷり浸かった策定である。
  • 電気機器をたくさん付けて省エネという「省エネルギー技術戦略2011の策定」は、鉄腕アトムの世界に近い。この策定をつくった委員を調べたら、東京電力・大阪ガス・パナソニック、プレハブメーカー、大学教授2名、設計事務所2者で構成されていた。設計事務所とは、小さすぎる住宅設計は苦手な天下の日建設計と日本設計である。電力会社・ガス会社・電気製品会社の主導による「省エネで金儲け」の魂胆が透いて見える。
  • 省エネ電気機器をたくさん付ければ「省エネと経済成長は両立する」という方針は方向転換しないのだろうか。国民の目は明らかに変わっているし、構想会議の梅原猛氏は「文明の転換期」に差しかかっているという。現在作成中の「改正省エネ法」は、省エネ機器をたくさん付ける基準が多いので見直しが必要だが、国の方針は変わらないのであろう。策定委員の方々の「電気で省エネ」・「省エネで金儲け」の目論み通りに進んでいて、事故があっても、命よりお金が大事な暴走列車はブレーキを踏むことなく走り続けるだろう。「改正省エネ法」は、一時ストップして再度検討してほしいのだが。
 
国が描く省エネ像
国民が描く省エネ像
   
 
建築ジャーナル 2011 6月号掲載
 
   
   
 
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 割にあわない太陽光発電を国民にどうして薦めるのだろうか 
   
   Q:割にあわない太陽光発電を国民にどうして薦めるのか。A:割にあわないからである。
原発事故の後、省エネルギー運動が高まりつつあるが、原発の代替エネルギーとして太陽光発電をたくさん付けるべきだという意見が出てきた。太陽光発電を電力会社や事業主が設置することには賛成だが、個人に付けさせる政策には疑問がある。

■発電時間
 夏の昼間に電力が不足するが、一番使うのは冷蔵庫を屋外に放置したような自販機や湯水のように電気を使うパチンコ屋だ。彼らの事業者が昼に発電する太陽光発電を設置すべきであるが、発電コストが46円/kwhと高いので設置しない。一方、個人住宅では昼あまり電気を使わない(図1)。そこで、発電のピーク時に個人住宅に太陽光発電を付けさせる案を考えた。余剰電力と命名し、高値買い取りのシステムだ。すそ野は、製造メーカー、量販店、営業会社、工事会社と広く、経済効果は高い。

■世界で高い日本の電力料金
 原子力発電には、政・官・学の利権が絡み、発電原価が安くなるような計算はバレてしまった (表1) 。原子力が安いと言っていたのに、石油や天然ガスに切り替えたら2000億円原価が上がると矛盾することを言い出した。発電の平均原価は10円/kwhで、一般家庭への売価は22円/kwhである。日本の電力料金が高いのは、発電原価が高いからではない。夜の電気を8円/kwhにし、企業用の電力料金を8円/kwhと安くするから、一般家庭用の昼の電力料金が22円/kwhと高くなるのである。夜を大廉売しなければならないのは、原子力発電所が夜止められないからだ。深夜電力のエコキュートを薦め、ガスは高いというマイナスキャンペーンをはり、エネルギー独り占めのオール電化に走った(図3)。

■余剰電力というカラクリ買い取りシステム
 夏のピーク時に個人住宅に発電してもらうことを考えたのが「余剰電力買い取りシステム」だ。43円/kwhで買い取るシステムで、パチンコ屋と自販機の電力事業者に43円/kwhで売るなら納得できようが、事業用料金8円/kwhで売るのだ。その差額は「太陽光発電促進付加金」として国民全員に負担がかかるので、国や電力会社の懐は痛まない。余剰電力売電は147kwh×43円=6321円/月ぐらいなので、太陽光発電を日本全所帯が設置すれば、太陽光発電促進付加金は147kwh×(43−8)=5145円/月となる。序々に増えるので気が付くのは20年後だ。年毎に高くなる年金システムと同じで、最後は破綻するネズミ講とも良く似ている。そもそも、売価8円と22円の商品を43円と高値で仕入れる商いがおかしい。

■原価償却の計算
 減価償却は10年と平気で言う。3kwの太陽光発電を設置費共で212.9万円としよう。1ヶ月の発電電力を300kwhとすると、300 kwh×22円×12月=79200円が年間発電料金となる。パワーコンデシショナー(30万円)は10年毎に取り変えなければならないので、2回分を入れて計算すると、(2129000+300000×2)÷79200=34.45年となり、耐用年数20年の機器の減価償却は成り立たない(図4)。そこで売電と絡めて計算を例にあげ、自分で使った残りを余剰電力として売れば電気代が半分になるという計算を示す(図2)。減価償却は設置費用÷発電費用と単純にすればよいものを、複雑な計算を使って煙に巻く。
補助金を使えば減価償却は10年近くとマスコミは言っている。東京の補助金は昨年度まで百万円近くと高く、更にパワーコンデシショナー交換のお金を計上せず、(2129000−1000000)÷79200=14.2年とした場合に、10年近くで元を取るという情報だった。今年の4月以降も10年償却と言っているマスコミもあるが、東京での補助金は半分に減ったので10年原価償却の地域はどこにもない。熊本の場合は、補助金が20万円なので減価償却31.9年となる。
3kwの大型太陽光発電で、売電43円/kwhと高値だから自分では使わず全部売れば300 kwh×43円×12月=154000円。(2129000+300000×2−200000)÷154000=16.4年となり耐用年数20年より短いので儲かるはずだが、太陽光発電促進付加金は自分も負担するので絶対元はとれない。ただし、10kwの大型太陽光発電を乗せれば高値43円/kwh買い取りなので、自分だけは儲かるが他人が損をするので正義ではない。環境問題を論じる人は金儲けに走ってはいけない。

■そもそも耐用年数20年は疑問
 設置方法はカラーベストの場合脳天から穴をあけてコーキングで留める (図5) 。コーキングの耐久性は10年が常識。瓦の施工はさらに難しい。瓦の施工で雨漏れを一番心配するのは瓦施工業者である。初めは設置に協力的だったが今はそっぽを向いている。「どうぞ太陽光発電業者さま勝手に取りつけてください。私たちは知りません」という態度だ。
 太陽光発電は巨大台風が来襲すれば、ガラスが割れるか、機器が飛ぶだろう。台風は天災だから責任は誰も取らないでよい。まずは、電力会社や事業者が太陽光発電を設置して量産し、コストを下げてから一般庶民に普及を促すべきである。1000万台もの太陽光発電を個人住宅に付けさせ、コストを下げさせてから電力会社が設置する計画だろう。

■エコは税収アップの源
 日本政府はエコという名のもと特定の企業を応援する。企業の2/3が赤字で、納税企業は1/3である。2/3は法人税を納めていない。業界全体を潤わせるより、特定企業が潤った方が納税は多くなる。例えばトヨタが1兆円の経常利益を挙げれば5千億円が納税される。住宅版エコポイントも全体のエコを考えるより、儲かっている特定のサッシュメーカーをピンポイントで支援して、更に高利益を得てくれる方が法人税は増える。アルミサッシュの精錬には木材の800倍もの電力を使うから、木製建具や障子の方が省エネには良いのだが、貧乏業者を応援しても税金は増えないので、エコポイントの対象にはならなかった。電化エコポイントの時、エアコン台数が増え電力使用量が増えたのは皮肉な話だが、量販店と家電メーカーは潤った。次の潤いの番は太陽光発電製品メーカーだ。エコの名のもと200万円以上の経済活性化商品の売上を延ばして税収を上げなければならないのだ。日本では、辛抱は悪で、消費は美徳である。
   
 
経済産業省エネルギー白書 2008年板
1kwh当たりの電力原価
太陽光発電
46円
地熱発電
8〜22円
風力発電
10〜14円
水力発電
8.2〜13.3円
石油発電
10.0〜17.3円
天然ガス
5.8円〜7.1円
石炭
5.0円〜6.5円
原子力発電
4.8円〜6.2円
平成11年総合エネルギー調査会 原子力部会
1kwh当たりの電力原価
原子力
59円
水力
136円
石油・火力
10.2円
天然ガス
6.4円
石炭
6.5円
   
 

図1 (売電48円は去年の例である。今年は43円)

図2
   

図3

図4
   

図5
 
   
 
建築ジャーナル 2011 7月号掲載
 
   
   
 
33
 節電をしたつもりが増電なり
   
   電力消費を15%削減しなければならない状況となった。日本の省エネ技術は世界最高で、これ以上の削減を求めることは乾いた雑巾をしぼるようなものだという人がいるが、我が国はアメリカに次ぎ世界第2位のエネルギー浪費国だと知らないのだろうか。自分の快楽のレベルは落とさずに、照明器具をLEDに変えたり、太陽光発電機を屋根に乗せたりして、省エネを実施しているつもりだが、それは単にウランからレアメタルの消費に変わっただけのことで、発展途上国にゴミの山を強いることには変わりがない。

節電いろいろ
 
  • 電柱の数ほどある自販機を止めよう。自販機は冷蔵庫を屋外に置いているようなものである。電力料金を考えれば、ほとんどは採算が合わない。別の問題だが、自販機の空き缶は飲料メーカーが責任をもって回収すべきではないか。ボランティアで空き缶を拾う運動はおかしい。そもそもマニフェスト運動は民主党ではなく産業廃棄物処理において、発生者責任を問うシステムから始まった。製造者がラベリングを行ない、途中不法投棄をされても、製造者が責任をもって回収しなければならないというシステムである。それならば空き缶の処理はボランティアではなく製造者が処理すべきである。一昔前までは、ビン回収というすばらしいリサイクルシステムがあったが、自販機の普及で崩れてしまった。復活させるにいい機会である。飲料は飲む1時間ぐらい前に冷やせばよいものを、自販機に入れて1ヶ月も前から冷やすのはエネルギーの無駄だ。
  • コンビニは店舗名の通り7時から11時までの長時間営業が売りでスタートした。地方のコンビニ店長は深夜、店を閉めたいが、本部からの指示で仕方なく開けている。初心に戻り7時から11時まででよいではないか。電灯をLEDに変えることは悪くはないが、明るすぎる照度を落とすべきだ。外国のコンビニの10倍は明るい。
  • エコパチンコという機器が出た。画面がLEDだからエコだという話だが、一度検証に行かずばなるまい。昔、パチンコは指の運動と言っていた。電脳式から手動にしたらいい。指の運動はボケ防止にもいいし、ばねの運動で発電も出来るかもしれない。風俗だから警察の管理下というより、健康機器として扱い厚生省の管理下にしたが博打収益の配分バランスがよい。ちなみにサッカーくじの収益は文部省だ。
  • 運動不足でジム通いがブームである。運動器具のエネルギーは相当なポテンシャルである。発電装置に結線して発電しよう。
  • 食糧危機に役立つといって、電気で野菜をつくっている、お天道様がいるのにどうして電気で野菜をつくるのか。速刻禁止にすべきだ。減反しているぐらいなので、農地が不足していることはない。
  • 乾燥機付き洗濯機を止めよう。晴天が多い地域では太陽光発電を付けようというなら、その前に洗濯物を太陽で乾かすべきだろう。確かに共稼ぎの家庭では必要かもしれないが、全所帯に薦める機器ではない。
  • リニアモーターカーは止めよう。リニアモーターカーは新幹線の5倍の電気を消費するという。昔、JR駅の広告に「狭い日本、そんなに急いでどこへ行く」というのがあった。東京〜大阪間の切符の奪い合いになる。リニアモーターカーか、新幹線か飛行機か、どれかが赤字になることは明らかだ。競争はサービス向上につながり良いというが、競争は敗者がいて成り立つ。この前、航空会社に税金投入したばかりなのに。経済効果指標はプラスだけ計上し、マイナスの指標がないのは不思議だ。
  • IHヒーターは止めよう。エネルギーの独り占め作戦は原発が夜も止められないため夜昼電気を消費する仕組みだった。消費電力が3800Wと大きいIHヒーターも、深夜電力のエコキュートと一体になり、消費料金はカモフラージュされていた。燃焼効率90%と2次消費エネルギーで計算したウソ情報をメーカーの社長が発言するから、電力業界は全く信用を無くした。電磁波の危険性があるかもしれないものををわざわざ使わなくてもいい。ガスを燃やすガスレンジがよい。
    ●誘導灯は昼夜問わず、点きっぱなしである。夜しかいらないので、光センサー式点滅式?でもよさそうだが、消防法が邪魔するのだろう。さらに、真夜中も点灯しているマンションの廊下灯は、外人の目には日本人が省エネに努力しているように見えないだろう。
  • 冷凍食品を買うのを少なくしよう。冷凍餃子事件の時、製造から消費まで1ヶ月以上あった。つまり餃子を1ヶ月間も冷凍しておいたのだ。産業用の電気代が安いから可能なのだろう。家電エコポイントの効果で、省エネだからと家庭の冷蔵庫は500Lを超える大型になった。さらに家庭冷蔵庫の中にも冷凍食品が長期保存されるだろう。
  • 生活スタイルと生活レベル
    生活レベルを落とさずに省エネという方針は、エコ機器の増設により、結果、総エネギー消費量は増えている。LEDへの機種変更や高効率機器への買い替えではなく、窓を開けたり、冬は着込むなどして生活スタイルを変えよう。待機電力の消費量は5%なのでプラグを抜こうというが、ボイラーやテレビのプラグは簡単に抜けない。ドライヤーのプラグを抜いても効果はない。待機電力が多いリモコンを無くすことが先である。家の中でリモコンをいつも探している。リモコンは無い方がよいかもしれない。
  • 電気自動車は省エネではない。
    原発は夜も止められないので、深夜料金を8円と大廉売している。これをいいことに利用しているのがエコキュートや電気自動車だ。原発が太陽光発電に替われば、8円は当然22円になる。エコカーなんて存在しない。
  • 太陽光発電機をベランダの手すりに設置するタイプは禁止するのがいい。太陽光は水平線より上なので垂直パネルは地上へ反射する。発電効率は15%なので、残りの85%は熱としてヒートアイランドの原因となる。自由社会日本であるが、自分のことしか考えない会社が多いので法律で規制しなければならないのだろうか。
  • 蓄電池は電力使用量を増やすだけ。
    リチウムイオン蓄電池の人気が高い。車1台分の価格もするが、省エネにはならず停電時自分だけ役立つお金持ちのエゴ商品だ。停電になってから起動させても役に立たないので、常に充電しておかねばならない。電気ポットと同じ原理で、常に通電していれば総エネルギー量は増大する。
  • 某家電量販店のHPを見ると、「我が社は省エネ機器の販売で、東京ドーム22.5個分のCO2削減を成し遂げた」という。あるハウスメーカーも高性能住宅の普及で樹木2万本相当のCO2固定化を成し遂げたという。自称エコ企業は増えたのに、どうしてエネルギー消費は増えるのだろうか。
 

「限りある地球資源を大切にしましょう」と、まず櫂から始めよ自販機様。
   
 
日本の地の1/10の明るさしかないデンマークの日本のコンビニ
   
 
ヒートアイランドを助長する手摺式太陽光発電 
   
180万円の蓄電池
   
 
建築ジャーナル 2011 8月号掲載
 
   
   
 
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 エコハウスの屋根と床の断熱性能
   
  ●屋根の断熱
 太陽の熱を受けた屋根材が家の中にどのように影響するのかを調べた。まず平地に鉄板屋根と瓦屋根のモデルを置き、太陽からの輻射熱による表面温度を測った(写真1)。鉄板屋根の表面温度は57℃まであがり、噂通り目玉焼きが焼ける。瓦は鉄板屋根より10℃落ちの47℃であった。エコハウスのイブシ瓦と鉄板屋根の下に温湿度計を埋め込んで計測した(図1)。外気温35℃の日の計測であるが、鉄板仕様の場合は断熱材上で52℃、断熱材下では33.6度であった。瓦仕様の断熱材上では45℃、断熱材下では33.4℃であった(図2)。屋根の上では10℃も温度差があるのに断熱材を介すれば温度差は0.2度である。この差を大きいとみるか、小さいとみるかは個人の判断で決めてほしい。居住空間に与える影響が0.2℃であれば、鉄板屋根でも瓦屋根でもよいではないかと考えるのは早合点すぎる。
  温度が上がれば湿度は下がるのだが、断熱材の下で、温度が上がっているのに湿度まで上がる現象が起こっている(図3)。鉄板屋根裏の断熱材上では気温52℃と高温になると、相対的に湿度は19%と当然下がる。しかし、鉄板屋根の断熱材下では気温33.6度なのに湿度は66.6%と高くなっている。どこからか水分が来ているのは確かだが、軒先から入った外気からか、天井板を通して室内からかは特定できない。屋根裏は温度差が激しいので、湿度が高い梅雨時に夏結露が発生しやすい。九州の建設屋さんは、昔から結露問題から野地板としてコンパネは使用しない。しかし全国展開のビルダーや新鋭作家たちは、コストと工期短縮といって野地板にコンパネを使用している。将来どうなることやら。最近の住宅の工事仕様書を見ると壁と天井の仕上げの下にビニールなどの防湿層をいれるようになっている。内装仕上げの珪藻土は材料の吸湿性能を強調しているのに、ビニール等の下地を入れればその効果はいかに。長持ちさせるのが絶対条件である長期優良住宅の基準がビニール包みとは理解に苦しむ。吸湿性がある断熱材であれば、温度差が発生して、少々結露が発生しても水蒸気として吸湿するのだが。
 エコハウスの屋根裏の断熱材にカンナ屑を使った。現場でカンナ屑は、廃棄物である。杉やヒノキのカンナ屑であれば防虫効果も期待できる。吸湿性は抜群である。断熱性能を、熊本県立大学細井准教授に計測してもらった(写真2)。熱伝導率はλ=0.07であった。グラスウール10Kがλ=0.05なので性能は少々悪いが、材料がタダなのが魅力である。普通は12aの厚さに詰めるが、厚さが均一にならない為、計算上10aの厚さで天井の熱貫流率はK=0.5となる。カンナ屑を不織布に詰める作業は誰でもできる。施主にしてもらうのがよい。カンナ屑断熱材の性能は厚さに比例すると説明すれば、施主が詰めた袋は厚い。 
 一般によく用いられるグラスウールは経年変化で収縮している事実を職人は知っている。湿気を含むとすぐ縮む。20年経過のグラスウールをリフォーム現場からもらって性能実験をしてみた。縮んでしまったグラスウールの断熱性能は60%に低下していた(写真3)。長期優良住宅仕様の温熱性能は等級4を求められるので、価格が安く密度の低いグラスウールは壁の中に詰め込めばいくらでも入る。将来的性能は60%に落ちるであろう。更にグラスウールは既製品なので横幅は910モジュールと2×4用しかない。関西間や九四国間だと当然間柱と断熱材に3aの隙間が発生する。間柱の隅にはカビが生えて可能性がある。仕様書には隙間なく充填施工することと書いてあるが現実は不可能な施工である。袋は伸びるので引っ張ってホッチキスで間柱に留めれば外部からはわからない。
遮熱塗料なるものが出現した。

●遮熱塗料
 遮熱塗料が多くでまわっている。その効果の実験をしてみた。価格は非常に高い。その高い遮熱塗料とホームセンターにある一番安い塗料を石材に塗って、表面温度を測った(写真4)。遮熱塗料とホームセンターの安い塗料の温度差はほとんどなかった。遮熱塗料には断熱効果もあるというので、良く見るとブツブツの材料が少し含まれている。僅かな断熱効果はあるかもしれないという程度の効能だ。スペースシャトルにも採用されているというのが売りであるが、飛ばす毎に塗装をやり変える仕様と比較するものではない。この遮熱塗料はウソかと思い、細井准教授に聞いてみた。明度が低いほど効果があり、高いと効果は薄いとのこと。なんだ。遮熱塗料と高い塗料を塗るなら、安い白い塗料を塗ったほうが安上がりということが結論だ。

●床下に計測機を埋めている
夏の夜、室内は29℃なのに床下は25℃で温度差は4℃(図4)もある。昼の床下も段々気温は上がるが外気温以上にはならない。この冷気を利用しない手はない。床下点検口に網を張って、夜1日中開ければ4℃低い冷気が入ってくる。300万円もするクールチューブがびっくりする装置である。
冬対策としては、床の仕上げは杉板21_で下地にフォレストボード60_を入れていて熱貫流率はK=0.58である。床から熱の逃げる熱量は悪くはない程度。
 
屋根鉄板の温度差
カンナ屑断熱材の実験風景
   
へたりグラスウールの性能実験
床下通気口
   
遮熱塗料の実験 

左:遮熱塗料 42〜44℃  
中:塗料無し 52℃    
右:安い塗料 43℃
   
 

 
屋根裏の断面2種類
   
 
 
屋根裏 ●瓦断熱材上の温度●瓦断熱材下の温度●鉄板断熱材上の温度●鉄板断熱材下の温度
   
 
 
屋根裏 ●瓦断熱材上の湿度●瓦断熱材下の湿度●鉄板断熱材上の湿度●鉄板断熱材下の湿度
   
 
 
床下温度  夜室内29℃、夜床下25℃   昼室内30℃昼床下29℃外部32℃
   
 
建築ジャーナル 2011 9月号掲載
 
   
   
 
35
 「家のつくりようは冬を旨とすべし」でよいだろうか
   
   省エネのためには「家のつくりようは冬を旨とすべし」という意見が目に付く。夏の冷房消費エネルギーより、冬の暖房消費エネルギーが多いからというのが理由らしい。冬の寒い日は1枚羽織ればよいという昔からの理屈が通用しなくなり、夏も冬も機械で室温を管理し、その機械の性能と、それを効率よく動かす環境をつくることに重きを置いている。根本的に夏と冬でどちらを旨にすべきか、夏日と冬日で比較してみよう。日本は南北に長く、日本全土に共通するものではないので、熊本の場合という注釈を付けておく。

 1日の最高気温が25℃以上になるのが夏日、30℃以上になるのが真夏日、35℃以上になるのが猛暑日である。昨年の熊本の夏日・真夏日・猛暑日を数えると、149日・85日・23日であった。夏日だけ見ると2008年は157日、2009年は167日、2010年は149日である。

 冬については、最低気温が0℃未満になれば冬日、最高気温が0℃未満になれば真冬日となる。熊本での冬日は、2008年は13日、2009年は24日、2010年は35日、真冬日は無い。これではどうも冬が短すぎるので、最低気温が4℃以下となる日を「寒い日」、平均気温が4℃以下となる日を「非常に寒い日」とした。それでも夏が長い。1年の内で夏が6ヶ月、冬が2ヶ月、春・秋が4ヶ月であれば、どう考えても「冬を旨とすべし」にはならない。当然といえば当然である。熊本の緯度はカダフィが住んでいるリビアと同じなのだから。それでも、東京から、冬主体の高気密・高断熱の家が押し寄せてきている。迷惑している。
最近の住宅設計のノウハウ本を見ると共通して次の事が言える。

 
  • 熱が逃げやすい窓を小さくして、壁を多くする。
  • 熱が逃げないように、建物の凸凹をつくらず、2階建てなら外壁の表面積が小さくなる総2階がよい。
  • 気密性能を上げるために防湿シート、気密テープを使用して、隙間を最小にする。空気の流れは、換気扇に頼る。
  • 地震対策を考慮して屋根は軽い方がよい。瓦屋根は重いので良くない。 S54年に発行された宮川英二著の「風土と建築」の建築手法と比較してみると面白い。全く逆の考えである。
  • 開口部を大きくして、通風、換気をはかる。
  • 規模が大きな家は輪郭を凸凹にして、また、場合によっては中庭を設けて、外郭の延長を長くし、多くの開口部をあけやすくする。
  • 軒の出を深くし、開口部に庇を付けて、夏外壁に日のあたるのを防ぎ、また室内へ直射日光の入るのを防ぐ。
  • なるべく外気の影響をうけないように、室内の空気容量を増やすようなプランや構造にする。
  • 雨の季節にも、窓や出入り口が開けられるように、軒や庇を設ける。
  • 床を高くし、また、建物の裾まわりの水はけ・通風をよくして、大地からの湿気を防ぐ。 とある。
 
 東京や大阪は家が密集して仕方がないかもしれないが、田園の中でも窓を閉め切った家が多くなった。1軒1台のエアコンが2台となり、エコポイントで更に加速し、3台4台と増えていった。暖房と違い、エアコンでの冷房は、室内を3℃冷やせば家の吹き出し口から3℃の高温が出る。そうすると、お隣は更に冷房の能力を上げなければならない。お互いがシーソーゲームとなり、更なる電気代が必要となり、窓を閉め切る。

 東電の原発事故により、電力需給は夏のピーク時の消費電力が問題であることが露呈した。「冷房にはエネルギーはあまり使いません。冬を旨とすべし」と言っていた学者さんは今、黙っている。
人間の快適さの感覚は温度、湿度、風速、輻射熱だけでなく人の感覚によっても違いがある。
人間の暑さ寒さの感覚は、温度、湿度、風速、輻射熱だけでなく着衣量や代謝も影響し、違う。

  例えば地下水に焦点を当ててみるとよくわかる。地下水や井戸水の温度は安定しているので、夏も冬も16℃と同じ温度であるが、夏の16℃の井戸水を冷たいと感じ、冬の16℃の井戸水を温かいと感じる。これは、人間の体感温度が季節により違うからである。夏と冬では7℃の感覚差があり、春と秋にこのセンサーが切り替わる。その季節の変わり目にセンサーがうまく切り替わらないと体調を崩す原因となる。一日中機械設備に頼って生活する人はセンサーの切り替えができず、せっかくの夏・冬モードを活用できない状態で暮らすことになる。また生まれ育ちでも違う。体温を調節するのは皮膚の汗腺が影響している。汗腺の数が多いほど体温を冷やす能力がある。アイヌ人の平均汗腺は143万個なのにフィリピン人は280万個と倍半分の違いがある。幼いときからエアコン漬けの生活をしていたら、汗腺が退化してうまく機能できなくなる。それが現代の熱中症の増加につながっていると専門家は言う。日本の熱中症の患者は年間3万人を超えるのに対して、タイ国では50人とTVは報じていた。人間には体温調整能力があるからだ。

 今年2月18日、同時刻に一斉に日本全国17000人を対象に電話アンケートで室温を聞いたラジオ番組があった。一番高温で暮らしているのが北海道で22℃、2位が秋田。一番低温で暮らしているのが佐賀で17℃、2位が長崎だった。佐賀が貧乏だから暖房をつけずに我慢しているということを否定はしないが、寒い地方の人は九州より、より高温に暖房しているという事実に驚く。(夏の場合は逆の現象が起きてないか、興味深い。)北海道の人は、冬部屋を暖かくして、ランニングシャツ1枚の姿でビールを飲む人もいると聞いたことがある。寒い時は、一枚余計に羽織り、温かい飲み物で暖を取り、暑いときは一枚脱いで、冷たい飲み物で涼を取る。これが、真のエコだろう。やはり「家のつくりようは夏を旨とすべし」がよい。
 
  熊本夏日
熊本市
2008年
2009年
2010年
 
25度以上
30度未満
30度以上
35度未満
35度以上
(猛暑日)
25度以上
30度未満
30度以上
35度未満
35度以上
(猛暑日)
25度以上
30度未満
30度以上
35度未満
35度以上
(猛暑日)
4月
4
0
0
8
0
0
2
0
0
5月
16
4
0
22
3
0
13
1
0
6月
21
4
0
20
8
0
15
10
0
7月
1
17
13
12
19
0
8
21
2
8月
3
19
9
1
23
8
0
13
18
9月
5
21
0
8
20
2
8
17
3
10月
20
0
0
10
1
0
18
0
0
11月
0
0
0
3
0
0
0
0
0
70
65
22
84
74
10
64
62
23
夏日
157
168
149
真夏日
87
84
85
猛暑日
22
10
23
   
  東京夏日
東京都
2008年
2009年
2010年
 
25度以上
30度未満
30度以上
35度未満
35度以上
(猛暑日)
25度以上
30度未満
30度以上
35度未満
35度以上
(猛暑日)
25度以上
30度未満
30度以上
35度未満
35度以上
(猛暑日)
4月
1
0
0
1
0
0
1
0
0
5月
8
0
0
9
0
0
7
1
0
6月
15
0
0
14
2
0
20
4
0
7月
8
23
0
14
14
0
9
18
4
8月
8
19
1
9
21
0
1
24
6
9月
14
10
0
20
1
0
8
11
3
10月
1
0
0
3
0
0
6
0
0
11月
0
0
0
1
0
0
0
0
0
55
52
1
71
38
0
52
58
13
夏日
108
109
123
真夏日
53
38
71
猛暑日
1
0
13
   
  熊本冬日
 
熊本市
 
2008年
2009年
2010年
12月
5
4
3
1月
8
14
22
2月
0
5
4
3月
0
1
6
冬日合計
13
24
35
 
  熊本造作冬日
 
熊本市
 
2008年
2009年
2010年
平均4度以下
最低4度以下
平均4度以下
最低4度以下
平均4度以下
最低4度以下
12月
3
20
5
17
5
20
1月
7
22
8
23
25
31
2月
0
15
3
13
3
18
3月
0
7
1
9
0
21
10
64
17
62
33
90
   
 
能動汗腺数の違い
人種
能動汗腺数
アイヌ
143.3万個
ロシア人
188.6万個
日本人
228.2万個
 成長後タイへ移住
229.3万個
 成長後フィリピンへ移住
216.6万個
 台湾で出生
271.5万個
 タイで出生
273.9万個
 フィリピンで出生
277.8万個
タイ人
242.2万個
フィリピン人
280.0万個
久野寧「汗の話」(光生館)より
   
 
建築ジャーナル 2011 10月号掲載
 
   
   
 
36
 伝統的構法木造建築が建てられない法的課題その1
   
  ×××住宅版改正省エネ法は要りません××

はじめに
 木造建築は、建築基準法施行令3章3節に従いコンクリート基礎を作り、土台と柱と筋交いや合板で耐震性能を確保しなければなりません。昔ながらの土塗り壁やたれ壁の構造壁で、足元は石場建ての伝統構法木造建築は建てにくい状況でありましたが、2000年の基準法改正で性能規定が導入され、限界耐力計算法を使えば伝統構法建築も設計可能になりました。

 しかし、2007年の建築基準法改正による建築確認の厳格化で、主に高さ20m以上の建築物等の特殊な構造を審査する適合性判定という機関が新設され、限界耐力計算法を使うならば小さな4号建築物でも適合性判定機関の審査を受けなければならなくなりました。多大な審査費用、長期の審査期間、そして120頁を越える構造計算書類が必要となり、申請物件は全国で一ケタ以下となりました。

 そこで「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験検討委員会」(委員長:鈴木 祥之立命館大学 立命館グローバル・イノベーション研究機構・教授)が結成され、4号建築物程度は容易に審査できるよう進めています。そのうち構造的問題は改善されていくでしょう。しかし問題は他にもあります。

 建築基準法は社会的問題が発生するごとに追加・改訂され、複雑化しています。郷原信郎氏が「法令遵守が日本を滅ぼす」の中で、具体的なこと、細かいこと、枝葉末節なことが多くなれば、法の基本的なこと、重要なことを忘れてしまいマニュアル主義になると警告しています。建築基準法にぴったり当てはまります。(参1)特に、排煙開口、換気扇設置、そして、今審議されている住宅版改正省エネ法です。

排煙窓
 200m2以上の住宅に排煙窓設置義務があります。排煙窓は火災時、煙を高い位置から逃がす目的であり、天井から80p下がりの開口部が有効開口面積です。伝統構法建築物では天井下がり部に欄間か垂れ壁があり(参2)有効な開口ではありません。今回の設計法では垂れ壁は大事な構造要素なので、構造の面では必要とされ、防火の面ではなくしなさいと矛盾するのです。商業建築ではFIX窓や腰窓が多く、火災時は外部にすぐ避難できないので排煙開口は必要でしょうが、住宅では排煙窓を開ける時間があれば掃き出し窓から逃げます。以前は200m2以上の建物であっても、法の不条理さから排煙規制は審査の対象から外すという姿勢の地方行政もありましたが、法令遵守を言いだした昨今ではありません。微細な防火避難対策が伝統構法の基本構造要素を阻害するのです。日本を代表する桂離宮等の建築が違反建築となることは、外国からみたら笑い者です。すぐさま改正して欲しい基準です。

シックハウス法
 建築材料に含まれる有害物質が健康被害を及ぼすので、シックハウス法が生まれました。そもそも土壁、木材などの自然素材の建材はシックハウスと関係がないので法律の適用外と思われますが、建材の区別審査がしにくいという理由で全建築に換気扇設置が義務付けられました。ベトナム戦争でベトコンと農民の区別がつかず村ごと焼き払う行為と同じです。高気密住宅の場合、換気扇が必要なのはCO2濃度の問題で混同する人もいますが別の次元の話です。気密性の低い住宅の多い九州では吸気のショートサーキットを起こし換気扇は換気の効果を全くなしていません。無駄な法令対応のために、今では24時間換気対応のレンジフードまで出現しました。商魂たくましい日本の家電業界です。逆に婦人雑誌では細めに電気のスイッチを消しましょうと換気扇のスイッチを切ることはもはや省エネの社会運動です。もう一度(参1)を見て下さい。換気が目的なのに、換気扇設置が目的になっている例です。そもそも換気法については、建築基準法の中に床面積の20分の1の換気開口部の規制があります。この法では機械換気は駄目で、自然換気でなければなりません。シックハウス法の換気では自然換気は駄目で、機械換気でなければなりません。同じ換気法なのに相反する規制がどうして起きるか不思議です。おそらく細分化した担当者の違いによる矛盾です。

省エネ法
 建築基準法第1条に「建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、・・・」とあります。基準法は、最低の基準というわりには箸の上げ下ろしまで細かく規定しすぎていますが、「敷地、構造、設備」の枠を広げることはできません。雨漏れや断熱の項目を法令化することができないの、雨漏れについては「瑕疵担保履行法」をつくり対策を講じました。断熱は住宅金融公庫の仕様書で融資と引き換えに全国に浸透しました。金融公庫はフラット35と姿を替え利用する人は少なくなりましたが、誘導法効果で、断熱材を入れない住宅は少なくなりました。平穏な状況にまた物議が起きそうです。

 省エネが話題なり、外国への原発販売が怪しくなった昨今、国は省エネ機器販売がこれからの日本の進むべき道と位置づけました。太陽光発電は日本が先駆者だったのに、誘導政策を取らなかったのでドイツに追い越されたという認識なのでしょうか、省エネ機器販売をまず国内で普及させる法をつくろうとしています。経済産業省と国交省は、「我が国の卓越した省エネルギー技術の海外進出」を目指し「単身世帯を除く全所帯に高効率給湯器・給湯用ヒートポンプを普及させる」と宣言しました。まずは省エネ法の改正です。省エネ法の基準は断熱・気密が主で、総合的なエレメントで構成された伝統的構法の家やまじめな家づぐりの仕様には合いません。生活の基礎である住宅が産業に利用されてよいのでしょうか。

 
参考1
参考2
上方
・重要なこと
・基本的なこと
・根本的なこと
下方
・具体的なこと
・枝葉末節なこと
・細かいこと
 
 
住宅の環境性能評価
評価
次世代省エネ基準
住宅版改正省エネ法
伝統的工法の家
断熱
×
気密
×
蓄熱
×
遮熱
×
吸湿
×
通風
×
参考3
   
 
建築ジャーナル 2011 12月号掲載
 
   
   
 
37
 伝統構法木造建築物の法的な課題について NO2
   
  住宅版改正省エネ法は要りません
 省エネ法は石油危機に直面した1979年に制定・施行されました。そして翌年具体的な断熱の基準として「旧省エネ基準」が生まれました。主に住宅金融公庫の基準に採用され普及しました。規制するのではなく誘導法の代表でした。1992年に強化されたのが「新省エネ基準」です。1999年、「気密」が加わり「次世代省エネ基準」が生まれました。その後、2000年の品確法に採用され、「旧省エネ基準」は等級2、「新省エネ基準」は等級3、「次世代省エネ基準」は等級4と表示することになりました。更に2010年の長期優良住宅の温熱基準では、「次世代省エネ基準」だけが採用されました。

 CO2排出削減が話題になり、経済企画庁と国交省は2000m2以上の建築と150棟/年以上建設の建売業者に「事業主の判断基準」を課したのが改正省エネ法です。この法は3年毎に報告義務をつけましたので、永久に報告しなければならないという申請者にとっては重荷な法です。屋外広告物法と同じく、法律はあるが看板屋さんさえその存在をしらないのと同じく、形骸化して将来は誰も提出しなくなるのではないでしょうか。

 鳩山首相が2020年までにCO2を25%削減と国際公約をしたので、2010年に改正省エネ法の建築基準を2000m2以上から300m2以上に引き下げました。続いて次なる改正が予定されています。2010年11月民主党の市村国土交通大臣政務官は「低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議」の中で「新築の住宅すべてを省エネ基準に適合させることを検討せよ」と指示し、「その取り組みが産業界のビジネスチャンスを生みだす」と付け加えました。 
 
 その指示のもとに作成されようとしているのが住宅版改正省エネ法です。具体的な基準書づくりは「住宅・建築物の省エネ基準の適合義務化に関する検討会」が担っています。検討会の委員長が今年の正月に「トップランナー基準をモデルにする」と発言していますが、トップランナー基準は伝統構法木造建築物には厳しいものです。

 原発事故後の3月28日、経済産業省資源エネルギー庁が、これから国がすすめる基本となる「省エネルギー技術戦略2011の策定」を発表しました。長文なので住宅部分のみを抜粋します。「省エネルギーを一層進める対策として、エネルギー消費の大きい冷暖房等空調、給湯、照明、OA機器、また、IT機器関連のエネルギー消費量に対する省エネ技術であり、(中略)外皮性能・建材については、高断熱・高気密、パッシブ住宅の技術がある。冷暖房等空調においては、冷暖房の空調機器の効率化と、断熱性能の高い外皮性能と建材の採用により空調負荷自体を減らす技術が重要となる。省エネ情報機器・システムは、IT機器の利用等により増大する消費電力量を削減するため、個別のデバイスや機器の省エネルギー化に加え、省エネ型情報機器、省エネ型次世代ネットワーク通信、待機時消費電力削減技術、高効率ディスプレイという関連技術を駆使し、情報通信ネットワーク全体での革新的な省エネルギーを実現するエネルギーである。(中略)また定置用燃料電池は、発電効果の向上・熱の利用技術の進展により、家庭分野の1次エネルギー消費をさらに大幅に削減するとともに、スケールアップに業務分野、産業分野にも適用でき、省エネを加速する重要な技術である。」と報告しました。そして「2020年までに高効率給湯器・給湯用ヒートポンプを、単身世帯を除くほぼ全所帯に普及」と付け加えています(参考7)。経産省はエコポイント政策で省エネ効果があったと手褒めしていますが、本当に省エネ効果はあったのでしょうか。一世帯あたりの家庭の人数は減っているのに500Lの冷蔵庫、50Vのテレビへと大型化し、中部地方ではエアコンの台数が3倍になったとの報告もあります。住宅のエネルギー消費量の30%以上を占める家電エネルギー消費量には手を付けず、暖房エネルギー消費量を一番の標的にしています(参考5)。ドイツに遅れているという学者さんもいますが、おそらく高性能住宅だけを視察したからでしょう。困ったものです(参考4)。

 そもそも家の環境性能は断熱・気密・蓄熱・遮熱・吸湿・風速で決まります。しかし、住宅版改正省エネ法では断熱・気密だけを評価基準にしていますので、伝統的構法の家は評価が悪いものとなってしまいます(参考3)。委員会でも日本の家や伝統的構法の家が基準に合わないことは認識していていますがどう対処されるのでしょうか(参考6)。断熱・気密が不充分なら、ヒートポンプ暖房や高性能エアコンを付け、太陽光発電やエコキュートでトレードオフせよというのでは困ります。

 「次世代省エネ基準」の家の普及が2割近くあるのは、長期優良住宅の100万円の補助金をもらうために省エネ基準を採用しているだけです。補助金が無くなれば採用も止まります。過去のバリアフリー住金融資を考えればわかります。性能を上げる意識より100万円の融資をもらうために最低限の仕様だけを守るので弊害も出てきています。955モジュールに910の既製品断熱材を入れれば45_の結露域が出てカビだらけになったり、1階と2階の通気スペースが通っていなかったりと、断熱工事に不慣れな温暖地方では、充分に温熱の仕組みを理解せずただ融資をもらうためだけの仕様になっています。「木材防腐工業組合・長期優良住宅の総合的検証委員会・耐久性分科会」では、「この10年で木部が急に腐るようになってきている」とさえ報告しています。955モジュールの断熱材が世の中に存在しないのに、生産の指導もせず、「隙間が無いように施工しなさい」だけでは不良工事が発生するのは当然でしょう。

まとめ

この住宅版改正省エネ法が成立すると、伝統的構法の家、日本的な家、ログハウス、新建材を使わない家は建てられなくなります。断熱・気密性能の指標である熱損失係数だけの性能をあげるために、合板や防湿ビニール等の石油製品が主要な建材となり、真壁、竿縁天井は消えてしまいます。
土と紙と木と藁で構成される日本の伝統的構法の家は、つくるときもエネルギーを使わず、役目を終え処分するときも産業廃棄物を残さない最高の環境共生住宅であるはずです。エコという名の消費拡大成長戦略に住宅建築を巻き込まないで下さい。世界で最高の環境共生住宅が建てられないというこのひどい法律をつくろうとしていることに、叩かれ強い建築士の皆さんはどう動きますか。

 
参考4
住環境計画研究所「各国の統計データに基き」より
参考5
住環境計画研究所「家庭用エネルギー統計年報」より
   
 

 
参考6 低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議より
   
 
 
参考7 省エネルギー技術戦略2011の策定より
   
 
建築ジャーナル 2012 1月号掲載
 
   
   
 
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 住宅版改正省エネ法を阻止しよう 
   
    2020年までにCO2排出量を25%削減のため、住宅版改正省エネ法(以下改正法)がつくられようとしている。学者や環境専門家が中心で、委員の中に建築士は少なく内容は幼稚すぎる。「国がそんなおかしな法律をつくるはずがない」と言う建築士もいるが、いままでの改正基準法やシックハウス法のことを考えればわかるだろう。「はずがない」ものが「はずがある」になるのだ。今回の改正法は一部の企業を応援するような内容で、膨大な書類作成と審査費用と建築費がかかり、官製不況は免れないだろう。せめて住宅の質の向上を促すものであれば少しは救われるが、内容を見ると逆になることが多そうだ。

 改正法は、現在建売住宅に採用されている「事業主判断基準」(以下「判断基準」)を基本とするとの発表なので、それらを運用した時の問題点を挙げてみる。

 エネルギー問題に世間が関心を持ち始め、住宅の省エネ化には賛成だが「判断基準」が「高効率の電気機器を満載すれば省エネになる」という方向性は、エコよりエコノミー推進が目的に思えてしまう。

1、建築の環境性能指標を増やすべき
 
  • 判断基準」は、建物外被の高断熱・気密化と高効率設備の利用を誘導する内容だ。
  • 建築の環境性能の要素はたくさんある。JIAの環境ラボ(中村勉委員長)は9つの要素を挙げている。断熱、気密、日射遮蔽、日射導入、蓄熱、通風、換気、調湿、水・緑の利用である。しかし「判断基準」には断熱、気密だけの要素しかない。土壁の家は、蓄熱、調湿性能はあるが、断熱性能がないので不良建築物となってしまう。また、家の内部でも外部でもない縁側という緩衝空間は温熱環境的に非常に有効だがその評価はない。9つも要素があるのに、評価しやすいものだけを基準にするのはいかがなものか。
  • 土壁の家は断熱性能や気密性能が無いので「判断基準」を採用すれば、日本の風土、歴史、文化により生まれた土壁・真壁の家は建たなくなる。
  • 土壁の家に住み、薪ストーブなどで山に余った木を燃やして暖を採る家は環境的には優等生である。建築生産時もエネルギーを使わないし、処分時もエネルギーを使わないのに、悪者扱いになるのは基準の方がおかしいのではないだろうか。
  • 京都に多く建っている数寄屋建築が「判断基準」によると違反建築扱いになることを外国人はどう思うのだろうか。吉田五十八、谷口吉郎の建築は駄目であり、環境性能を考えた吉村順三の建築も駄目である。これらの建築を対象外にしないと日本は世界から笑い者になる。
 
 改善事項
 
  • 土壁の蓄熱性能や調湿性能を評価する基準を追加すべきだが、評価が困難なら茶室と同様に、土壁・真壁の家については「断熱・気密」の項目を対象外にすべきだ。
  • 縁側は日本住宅のシンボルである。温熱の緩衝空間であるのに「判断基準」では性能評価の基準はない。外皮ですっぽり包むことを主にしているので縁側は逆に悪い評価となる。縁側を評価する計算が環境専門家にできないので排除するというのならはおかしい話。このまま進めば縁側が日本から無くなってしまう。緩衝空間の評価式をつくるべきだ。
  • 玄関ホールも縁側と同様な考えである。玄間戸までペアガラスという「判断基準」は本当に必要だろうか。格子戸のペアガラスは作りにくいので、規制すれば格子戸が日本からなくなってしまう。玄関戸と玄関ホールの戸で評価する方法を作るべきだ。
  • 断熱・気密の基準Q値だけで評価するのには無理がある。前記した9項目で評価すべきである。
  • 構造計算には、壁倍率計算、許容応力度計算、時刻歴応答計算、限界耐力計算等多くの種類があり、建物に合った計算法を自由に選択できる。環境性能においても「判断基準」だけでなく「自立循環型住宅への設計ガイドライン」やその他多くの基準をつくり、選択できるようにすべきだ。
 
「判断基準」を分析する

1次エネルギー消費量算定シートの問題点
 
  • 「判断基準」は「1次エネルギー消費量算定シート」に目標値があり、それ以下になるようにしなければならない。地域区分を8区分に分け、年間の基準1次エネルギー消費量を定めている。例えば北海道での基準1次エネルギー消費量は113 GJ、岩手県は62GJ、熊本県は53GJである。地域区分に差があることは理解できる。しかし、Wb地区の熊本において、全館空調設備式を採用すると、53GJ が89GJに上がるのである。岩手の人より熊本の人がエネルギーを多く使っていいとはおかしい話だ。ダクト式換気装置を設置すれば、更に93.9GJまで上げてよい仕組みである。金持ちには基準が上がるというアラブの国のような制度である。
  • (A)暖房設備の1次エネルギー消費量+(B)冷房設備の1次エネルギー消費量+(C)給湯設備の1次エネルギー消費量+(D)換気設備の1次エネルギー消費量+(E)照明設備の1次エネルギー消費量−(F)太陽光発電等の発電電力の総和である。この値が「基準1次エネルギー消費量」を超えないことを基準にしている。
 
 改善事項
 
  • 全館冷暖房装置やダクト式換気装置を設置すると53GJ が93.9GJにもなるような基準を上げる裕福者優遇措置はやめて、高性能機器を付けようと付けまいと平等に扱うべきだ。
  • 近年のエネルギー増加は暖房エネルギーではないのに、住宅の建築性能に過度な規制をする。エネルギー消費の増加は家電である。大型テレビ、3Dテレビ、温水洗浄便座、IHヒーター、待機電力機器、パソコン等が消費量を押し上げて、全体を占める割合は36%とトップである。次に多いのが30%の給湯エネルギーで、暖房エネルギーは24%と3位である。一番多い「家電のエネルギー消費量」という項目を追加すべきだ。そして家庭全体のエネルギー消費量削減を考えることである。
 
用途別1次エネルギー消費量の問題点をあげてみる
(A)暖房設備の1次エネルギー消費量

 
  • 暖房によるエネルギー消費量は全体の24%なのに、九州ではこの項目の規制が大き過ぎる。暖房エネルギーの1軒当たりの平均消費量は北海道では40GJ、九州では10GJ程度であろう(環境建築読本資料より推測する)。日本全国を高気密高断熱住宅にしたらエネルギー消費量が総じて一律に減ると考えるのは間違いである。寒冷地では効果があるが温暖地では効果が薄い。
  • 新築時に設備が設置されていない場合や項目が無い場合はエアコン設置と同等とみなされる。コタツは省エネ暖房の王様と言われているのに項目がない。高効率エアコン暖房がコタツ暖房より4.4 GJ少ないことになるのはおかしい。
  • 薪ストーブの暖房方法を採用すれば「設備が設置されていない」項目に該当し20.9 GJ使ったことになる。暖房設備がない方が設備を付けるより消費量が多くなるのは矛盾している。
  • 全館熱交換換気扇を付けている家は1〜2GJ少なくてよい。全館熱交換換気扇が九州の戸建住宅に何軒あるだろうか。非常に稀に存在する家を基準にするより、一般的に使用している暖房機器を考慮すべきである。九州で一般的な暖房機器は石油ファンヒーター、開放式石油ストーブ、コタツである。価格の安い暖房器具は意図的に排除するのはおかしい。
 
 改善事項
 
  • 薪ストーブの項目がない。樹木などの再生可能エネルギーを使い、1次エネルギーを使わないのでゼロと表示すべきだ。
  • 石油ファンヒーター、開放式石油ストーブ、コタツの項目をいれるべきだ。Wb地域では10GJ程度だろう。これらの項目を入れるべきだ。
  • 暖房なしの家をエアコン暖房ありの家と同じ基準にしたのは、売却したりして持ち主が変われば暖房方法が変わることもあるからだろう。それならエアコンの耐久性は7年程度だ。故障したら外すかもしれないので同じことではないか。全ての暖房機器を入れるべきだ。
  • 掛け布団・敷き布団をしっかり使い保温すれば、こたつは電気ヒーターといえど部分暖房の王様である。九州ではこたつが主な暖房という家は多い。「部屋全体を暖房することを基準にした」ものではない局所暖房方法も基準に入れるべきだ。省エネの王様であるコタツを基準に採用しなければ「暮らしの手帖」社などが必ず取り上げ、批判の渦が巻くことは明らかである。学識経験者や法を作る人は国民のライフスタイルを知らないのだろうか。
 
(B)冷房設備の1次エネルギー消費量
 
  • 通風確保の家とそうでない家の区別がある。風通しを良くしてエアコンを使わないように誘導する基準かと思ったら、エアコン冷房の家よりエアコンを使わない家が1.2GJエネルギー消費量多くなるとはおかしい。
  • 機器を設置していなければ、普通のエアコン機器を入れているのと同じでは「推定有罪」の考えだ。「疑わしきは罰する」は日本の法の基本ではない。
 
 改善事項
 
  • 温暖地の九州といえどもエアコンを使わない家もある。冷房機器をいれない家の消費エネルギーが6.1 GJとなっているが、エアコンを使わない家は0GJにすべきだ。
 
(C)給湯設備の1次エネルギー消費量
 
  • 給湯設備の種類が7種類ある。冬の水道水の温度差を熊本と東京で同時に計測したことがある。熊本14度、東京は6度だった。給湯1次エネルギー消費量の差は地域によりかなり違う。
  • 節水シャワー、手元止カラン等を設置すれば3.3GJ減じて良い。節水機器について過大評価である。
  • 高性能給湯機器は普及すれば価格は下がるというが、下げなければ普及しない。法律化するのであれば価格を下げることを先にすべきだろう。
 
  改善事項
 
  • 暖房エネルギーより給湯エネルギー使用量が多い。配管材料の保温や浴槽の保温性能を向上させた方がよい。浴槽の湯冷めはかなりのエネルギー消費である。浴槽に敷設してある断熱材の厚みは1aと薄い。本気で国が省エネを考えているのであれば、国民に強いる前に普及版の浴槽の断熱材を厚くするよう浴槽製造メーカーを指導してほしい。(高級品の浴槽は存在する)
  • 地域差をつけるべきだ。特に水温の差で倍半分の差があるはず。もっと調査して基準を決めるべきだ。
 
(D)換気設備の1次エネルギー消費量
 
  • 換気扇は法律だから設置したものの廻っていない。
 
  改善事項
 
  • 24時間換気扇は実態として機能していない(昨年の建築士2月号)。換気扇を廻していない家は4.1GJではなく0GJにすべきだ。
  • 万民平等の原則から沖縄地域にまで24時間換気扇を設置させているのは、実情に即していない。換気扇設置のシックハウス法そのものを改正すべきだ。
 
(E)照明設備の1次エネルギー消費量
 
  • 調光器を蛍光灯に付けている人はいない。非常に個別なマニアック仕様が基準になるのは委員会に声高なメーカー寄りの人がいるからだろう。このようなマニアックなものまで採用すれば、他に100項目ぐらいあるだろう。
 
  改善事項
 
  • 新築時に照明設備が設置されていない場合などありえない。この項目は排除すべきだ。
  • 蛍光灯に調光器の項目は排除すべき。環境専門家のオタク志向が強すぎる。
  • 非居室では点灯時間が短いので白熱灯を使うことが多い。白熱灯はトランスもないので短時間の消費量は少ない。白熱灯3.3 GJと蛍光灯の1.6 GJとは違いがありすぎる。非居室は共に1.6GJでよい。
  • 「全ての器具が蛍光灯」ではなく、「主たる居室の全ての器具が蛍光灯」にすべきだ。防犯灯、フッライト等の短時間使用の白熱灯もあるのだから。
  • 人感センサーを設置すれば省エネとなるのはおかしい。人感センサーには待機電力が必要なので逆に多くなる可能性もある。この項目は無くて良い。
 
(F)太陽光発電設備等のトレードオフ
 
  • 太陽光発電をつければトレードオフでエネルギー使用量を削減できるが、あまりに削減量が多すぎる。機器費用が200万円ぐらいかかるので普及していないコ・ジェネレーションシステムまで出てくる。これらは生産時に相当なエネルギーを使う。当然生産時のエネルギーを加算すべきである。100万円近くの補助金が出るが、国民全員が設置すれば、その補助金は国民全員が負担するという変な話。また、中国産の太陽光発電が増えている。補助金が中国製品を購入するために活用され消費税を上げざるをえないのに国民は気付いているのだろうか。
 
  改善事項
 
  • 太陽光発電に8GJのエネルギー生産とみるのは多すぎる。雪やホコリ、メンテナンスによる発電効率低下、消耗機器交換を考えると6 GJが妥当ではないだろうか。
  • 10KWの太陽光発電をつけ、売電が目的で利益を得ようとする人を優遇すべきではない。創エネ機器は生産時や処分時のエネルギー消費量を加算して評価すべきだ。
  • 太陽光発電購入の多額の補助金は国産品購入の場合に限定すべきだ。
 
更なる矛盾
 
  1. 薪ストーブを暖房に使い、エアコン無しの風通しの良い家では実際使用エネルギーを支払ったレシートで計算すれば30GJ以下である。しかし、「消費量算定シート」に沿って計算をすると53GJを越えてしてしまう。エネルギーを使ってないのに使ったことになる。盗んでいないのにドロボーにされてしまう冤罪に似ている。計算法が間違っていることの証明だ。
  2. 「改正法」は許可なのか確認なのか。違反しても建築基準法違反ではない。違反した場合の罰則者は施主なのか、設計者なのか、施工者なのか。そして、取り締まる役所は建築指導課なのか。申請時だけなのか、完成時なのか。屋外広告物法と同じく、誰も守らない法になってしまう気がする。
  3. 設備機器は7〜10年しかもたない。建物はそれ以上もつ。長期優良住宅は100年もつ要素を保有するというが、エコキュートやボイラーが耐用年数を過ぎた場合の規制はどうするのだろうか。「100年間付け続けます」という制約書でも入れるのだろうか。逆に、「高性能エアコンを次のボーナスで付けます」という人の対応はどうするか。そもそも日用品に近い機器設置を法で規制することは困難である。
  4. 「算定シート」の項目をみると高効率機器類をたくさん設置させる目的に思えてしまう。エコポイントと同じく省エネが目的でなく、メーカー商品機器の販売促進が目的に思える。
  5. 冬、北海道・東北ではぬくぬくした生活をしていて、九州は寒々した生活をしている。昨年2月18日のラジオ情報によると、日本全国17000人に同時刻にアンケートをとり室温を測ったら、一番高温で暮らしているのが北海道で22度、2位が秋田。一番低温で暮らしているのが佐賀県で17度、2位が長崎だった。北海道・東北では冬、ランニングシャツでビールを飲むと聞く。即刻辞めてもらいたい。九州と同じくらいの温度設定の生活をすることが省エネ生活だ。「改正法」が適用されれば、九州でも北海道と同じに冬、ランニングシャツでビールを飲むことになるだろう。
  6. 北海道と九州や沖縄では省エネ対策は根本的に違う。同じ「算定シート」の基準の数値を少し変えて使うことに無理がある。感覚的に年間暖房費は2万円である。北海道は20万円だろうか。10倍近くの差がある。同じ指標で数値だけを補正するのではなく根本から違う基準にすべきである。
  7. 九州での年間エネルギー費は平均23万円である。暖房費は2万円、給湯費は7万円、家電・調理費は9万円である。目標は5万円削減である。自ずとどこに力をいれて省エネにすべきかは子供でもわかる。あまりに費用対効果の少ない住宅の断熱規制が強すぎる。経済産業省は家電機器規制に消極的で、建築側に規制に力を入れる。国土交通省より経済産業省の官僚が強い結果だろう。
  8. ヒートポンプエアコン暖房は効率が良いと推薦するが、室内が乾燥し過ぎ健康面からはよくないと、医者は加湿器やストーブの上にヤカンをのせることを薦める。室内環境は医学的見地からも考えるべきだ。
  9. 九州電力の23年4月26日の発表によると昨年の電気使用量が前年比5%増えたのは、エコポイントで家電が大型化し、エアコンの台数が増えてからとのことだ。又23年12月13日の新聞では、家電製品が大型化し住宅のCO2排出量は6.8%増えたと報道した。
  10. 北欧やドイツの高断熱高気密住宅に遅れているという理由で日本全土を高気密高断熱住宅にするつもりだろうか。日本は縦に長い国である。地域ごとに気候が違い、省エネのやり方は全く違う。単純な基準で全国展開するのをやめて欲しい。
  11. 環境専門家は開放型石油ストーブは良くないという。開放型石油ストーブは、毎年ホームセンターに山積みされている。高気密高断熱住宅を法律で推奨するのであれば、開放型石油ストーブの販売禁止の法律を先につくるべきだろう。
  12. 1次エネルギー消費量は家庭の電気代・ガス代の領収書で簡単に算出できる。省エネが目的の法律なので領収書証明でもよいではないか。複雑な計算式を使いその審査関係に財団の臭いがする。
  13. 「判断基準」は室温20℃確保が基準である。法律で、国民の最低限度の生活を確保するためのものであるならば、最低室温は10℃程度を基準とすべきである。「判断基準」はそもそも理想的な性能を誘導するためのものであった。室温20℃の理想を目標にするのは法律ではない。
  14. 使わないスイッチは消しましょうという省エネ運動で、24時間換気扇のスイッチを消す主婦。大きいな家ではエアコンで室内全部を暖房するより小型ヒーターを使いましょうという運動に、環境専門家はどう対処するのだろうか。机上の計算の世界ではなく、省エネには主婦の目も必要だろう。
 
まとめ
 法律は簡単でなければならないという論理があるが、計算しやすいヒートポンプ機器設置は高得点で、計算しにくいコタツ等は切り捨ててもよいものではない。難しいものを簡単に評価する基準をつくるのが専門家の仕事である。ヒートポンプもコタツも評価した基準になることを期待する。

 「住宅事業建築主の判断基準」がそのまま施行された場合の問題点を列記した。改善されることを希望する。「がまんしての省エネはよくない」「快適性を保持しての省エネ」「エネルギーを電気に集中させれば省エネ」という考えが今までは多かったが、東日本震災・福島原発事故の後、原発に頼った省エネ政策は大幅に方向転換せざるをえない。地下資源が無かったころの生活の知恵に答えがあるかもしれない。

 寒い地域では高気密高断熱仕様の家は必然かもしれないが、鹿児島や宮崎の温暖地域でも、高気密高断熱仕様にしなければならないという法律にJIAとして反対声明を上げて欲しい。
   
 
   
 
   
 
建築ジャーナル 2012 2・3・4月号掲載
 
   
   
 
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 ゴミ先進国ニッポン
   水俣病はチッソが水銀を海に垂れ流して起こった公害でした。1956年に最初の被害者が出て、熊本大学医学部が、原因はチッソの排水と発表しても、国とチッソは、水俣湾に棄てられた戦時中の爆弾かもしれないという虚言をし、究明を遅らせ、その間も廃液は垂れ流され、被害は拡大しました。隠したり、後回しにすることが反って被害を拡大させ、その代償は大きくなることを国は学習したはずでした。

 水俣病事件と建築も無縁ではありません。建築材料でもある塩化ビニールの原料を作るときに出る廃液なのです。
福島原発事故の事故というより事件に近い様相は水俣病と似ています。全電源停止はメルトダウンにつながるとスリーマイル事故で認識していることであり、SPEEDIで放射能の風向きを予測し、即刻避難指示を出しておけば人体への被害は免れたでしょう。隠すことと後回しにすることが事態を悪化させました。

 エネルギーを電気に一元化させようとする国と電力会社に、建築関係者はオール電化推進で加担しました。施主は望んでいないのに、厨房の垂れ壁を付けたくないという理由だけでオール電化を薦めた建築家も少なくありませんでした。エネルギーを一元化することも、人体への影響が懸念される電磁調理器を使うことも、数多くの専門家が警鐘を鳴らしたにもかかわらず、脇目もふらずに住宅の電化を推し進めた結果、原発促進の一翼を担ったことは事実です。

 原発事故の少し前に、NHKの“BS世界のドキュメンタリー”で「フィンランドのオンカロ」のことを特集していました。オンカロ(フィンランド語で「隠し場所」)と呼ばれる処分場は太古の岩盤層の深さ500mまで掘り下げられた先に作られ、国内で排出される核廃棄物で満杯になる100年後に完全封鎖されます。しかし、核廃棄物が出す放射線は生物にとって安全なレベルに分解されるまでには10万年もかかります。日本では10万年も分解しない廃棄物を最終処分場がないまま六カ所村の1次預かり所に置いているだけです。残り僅かで満杯になると分かっていても、問題を先送りにし、後回しを繰り返し、土俵際に来ています。どうするのでしょうか、日本での核廃棄物を。

 ブータンの首相が昨年来日し、UIA大会で「建築家よ便利さの追求より自然と共生し自然に生きよ」と訴えました。聴衆した建築家たちは映画を見るごとく感動し、その時間だけうなずき、会場を出るとさっぱり忘れてしまっているのではないでしょうか。

これからの問題「CCA材」
 1980年から住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)の「建設基準」の中で防腐土台の使用が指定され、1996年までの16年間に建設された住宅の土台や根太にはほとんどCCA処理木材が使われました。このCCA材にはクロム、銅、ヒ素化合物が含まれていて、焼却処分すれば六価クロムやヒ素が空中に散布されます。日本の住宅の寿命は平均26年なので、現在解体されている木造住宅の土台や根太はCCA材でしょう。新築当時は薄緑色をしていたのですが20年も経過していれば区別はつきません。おそらく一般木材と同様に焼却処分されている事実を関係者は知っていますが黙っているのです。いまのところ被害は出ていないからでしょう。問題となるのはこれからですが、それを複雑にするのは自然界にも存在するものとの区別がつかず、六価クロムやヒ素がCCA材が原因であるという特定が難しいからです。役所は人事異動が早く、前任者の悪行は掘り起こさないルールで、問題解決を遅らせてしまいます。

次世代の問題「不燃建材」石膏ボード
 最近の建築材料で、石膏ボードの使用量の多さに驚きます。石膏ボードは単純に埋め立てゴミにできません。管理型処分場での処分が必要です。現在の処分は100万トンですが、生産は500万トンです。管理型処分場が5倍必要になることは掛け算ができる人にはすぐわかりますが、建築関係者は目をつむっています。石膏ボードは安い。1枚250円です。処分は500円です。それなら今750円で販売し、処分費用までを考えるべきです。地下水になってから対策を取れば処理費用は1枚10000円になるかもしれません。

リサイクルがデキナイLow-Eガラス
 省エネ基準でも僅かな断熱性能のために、エコポントという税金を投入してまでLow-Eガラスを奨めています。ガラスはリサイクルが常識ですが、Low-Eガラスはリサイクルが効きません。処分時コストがかかる物は処理費用を販売時に上乗せすべきです。税金を投入してまで奨めているLow-Eガラスは、数年後の処分には何倍ものお金がかかります。不法に処分すればCCA材と同じく空中に重金属をまき散らすことになるのです。どうして次世代のことを考えないのでしょうか。次世代を見ない基準が次世代省エネ基準とは笑ってすまされません。

アスベスト問題はホンの一部
 アスベストについては公共建築や病院に限定して追跡調査をし、新築当時の10倍くらいの費用をかけて処理しています。対処しているように思えるのは公共建築や病院だけで、一般建築は野放し状態です。鉄骨造の不燃建築物はアスベスト吹き付けが常識でした。関係者は沈黙を保っています。

 お金をだせば、貧乏な自治体がゴミを引き受けると思うなら大間違いです。

 ゴミは自己責任で処理すべきです。オール電化の家は福島原発の廃材を小分けして自分の庭に埋めてください。ビニールクロスが好きな方は水銀ヘドロを我が庭に埋めてください。
1,000兆円の借金の一部に水俣事件、福島原発事故、核廃棄物、アスベストの対策費用も含まれています。1の利益を得るために100の税金を投入しているのです。これからも増え続きます。CCA材、石膏ボード、サイディング、ZEHなどの建築廃材です。先送りにすればするほど0が1ケずつ追加されます。後の処理のことは全く考えていない省エネ対策は、逆に次世代への負の贈物になっています。
 世界先進国の中で、生産時、使用時、処分時を考えれば、最高の省エネルギー建築である伝統構法を建たなくする「改正省エネ法」をどう思いますか。

 


   
 
建築ジャーナル 2012 5月号掲載
 
   
   
 
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 伝統構造の木材T
 
2010年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行された。2×4の基準や、仕様規定から性能規定への拡大はアメリカの発言により法案化されたように、今までは、外圧による輸入材の販路拡大のために決められてきた中で、今回の「木材利用促進法」は日本発の自主的な法律である。地上3階建以下かつ延べ面積が300u以下の公共建築物は努めて木造化し、森林木材を活性化しようという内容。「日本は資源の無い国」といえるのは、資材として鉄や石油製品を使うためで、資材に木材を使うなら日本は資源大国といえる。木を扱う人たちにとって喜ばしいことだが、公共建築物に使う木材はJAS材が条件と思っている人は少なくないのではないか。木材利用促進法の改革が少し行われているだ、同法律の仕様書である「木造計画・設計基準」を見てほしい。

「木造計画・設計基準」

第3章建築構造の設計3.2製材の品質の項目に、JAS工場が少ない地域のことを考えて、条件があえばJAS材でなくてもいいとある。
 
  1. 製材のJAS規格に規定するヤング係数の確認と同等の確認ができること。曲げヤング係数の目安を示す。ただし基準強度は無等級材の基準強度を上限とする。
  2. 原則として、製材のJAS規格第5条に規定する含水率の確認ができ、その平均値が20%以下であることが確認できること。(略)古材を再利用する場合については、含水率の制限がない計算方法を選択した上で、将来において、部材の収縮、変形によって支障が生じない工夫をする場合に限っては、含水率20%以上の木材を用いることも許容するものとする。
  3. 製材のJAS規格6条に規定する節、集中節、丸見、貫通割れ、目周り、腐朽、曲がり、狂い及びその他の欠点について、品質の基準を満たすことが確認できること。
    素案では「木材の含水率については搬入時に計測」という条件がついていたが、なくなっている。単に決められているから守りなさいではなく、チャックを半分緩めてあり、開けるかどうかはあなた次第。細かい部分は担当者間で決めてくださいといった内容。非常に実務にあった内容である。古材の扱い方については画期的。土場に半年置いたから古材ですという屁理屈は普通は通らないが、無理を通せば道理は引っ込むかもしれない。
 木材は人間に使われるために生まれたわけではない。台風に耐え、貧栄養に耐え、白蟻に対抗しつつ、生命を維持してきた。伝統構法は木材の利点と欠点と同調しながら発展してきた。故に、木材を単なる建築素材と見るなら欠点だけが目につく。まず、木の性質をしることから始めたい。

木材の比重について
 木材をうまく使うには木材のことをよく知らねばいけない。杉の比重はいくつかと問えば、ほとんどの人は0.38と答える。建築学会図書では0.44。現場からランダムに15ケの木材を選別(参考1)。比重を測ると0.343から0.557までで、平均は0.404(参考2)。杉の比重を0.38といえば、大体該当するのは9ヶ、0.44と言えば2ヶしかない。人間の中学生の体重に例えれば34kg〜55kgで、平均が40kgということになる。自然のものはこれくらいバラツキがあって当たり前である。
 人間も杉の木も神様が作ったものだから、これくらいのバラツキがあって当然。鉄も比重0.78と均一だが、鉄鉱石のときはバラツキは相当ある。

目細と強度
 木材の強度は年輪の数が細かく詰まっている目細材の方が強いと思っている人は、意外と多い。杉の場合、強度は比重に比例するので、(参考2)を見ると、年輪の数と強度は比例しない。青森県産業技術センターが強度実験したデータでも同じ結果となっている(参考3)。ではどんな杉が強度があるのだろうか。秋材の部分が太い方が強度があるというのが正解。

含水率の計測
 含水率は含水率計で測る。機器には比重レンジがついていて比重が分からないと正しい含水率は計測できない。乾燥具合を調べる目的だが、一部分の乾燥重量を知らないと含水率が測定出来ない。普通は、杉の比重0.38や0.44と仮定して機器のレンジを合わせて計測する。(参考1,2)の15ヶのうち、0.38とすれば(カンマトル、)9ヶしかなく、0.44とすれば2ヶしか存在しない。
 含水率の正確な測定法は、小口から30p離れた場所の2pの試験片を切り取り、完全乾燥させて重量を測り、比重を決定し、含水率計の比重レンジを合わせてから含水率測定を行う。しかし現実は、これから使うであろう全材料の端から30pの部分を切り取ったりはしない。杉の比重は0.38や0.44と決め打ちして、計測結果を報告している。
参考1の場合、比重レンジを0.38に合わせて試験体1(比重0.343)を測り、例えば真実が20%とした場合、計測器には18%と表示される。次に、試験体15(比重0.561)を測ると、計測器には29%と表示される。18%と29%と11%もの差がある。つまり、比重が確定していない場合、目の前の木材の含水率が真実では20%でも、計測では18%か29%と幅があるというのが真実だ。故に、計測器のわずかな差に目くじらたてるものではない。また、生乾き状態の木材を、寝かせておいたら上部と下部では数値はもっと違う。雑巾を絞って置いていたら上は乾いていても下は湿っているのと同じ。以上のことを良く理解して「木造計画・設計基準」を見直すと、「平均20%」は、手刻み加工の実情を見こした基準といえる。仕様書の深読みと検査官との対話をうまくやってほしい。

参考1  木片15ヶ
参考2  表(15ヶの比重と25_幅の目数)
参考3  :青森県産業技術センター林業研究所
 





   
 
建築ジャーナル 2012 6月号掲載
 
   
   
 
43
 伝統構造の木材U
 
生乾き材の問題点
 未乾燥材使用の問題は強度不足と乾燥収縮だ。未乾燥材と乾燥材の強度差は30%である(参考1)。しかし強度がいつ必要かといえば、地震時、台風時、積載物載荷時だ。工事中は建物自重に耐えられればよい。乾燥しにくい杉の木を使う場合は、納品時に強度の100%を期待しなくてもいいのではないだろいうか。ただし、短工期の建築の場合は建物使用時期が早いため納品時に完全乾燥が必要だ。伝統構法の場合は、工期が長いので工事中に乾燥する時間があり、仕口の都合で材が大き目となり強度やタワミに余裕があるから少々生乾きでもよい。乾燥収縮については、将来支障が生じない工夫として、継ぎ手や仕口に仕掛けがある。例えば、凹材を凸材より1.5mm大きくつくりカケヤで叩き込む。込み栓仕口の 場合は、3mmの誤差を最初からつけ、込み栓にバネのような役割をさせ、乾燥収縮を吸収する。(参考2)
 プレカットの場合は金物接合である。収縮すると金物がゆるんでしまい、完成後に締め直すことは難しいゆえに含水率は20%以下にしなければならない。伝統構法とプレカット仕様を同じ土俵では語れない。建物の工期と工法の違いを区別すべきだ。

ヤング率について
 製材の強度を示すのに目視等級区分と機械等級区分がある。目視等級区分は、目で節や割れや年輪幅などを確認する区分である。米松が杉より強いと思っている人は多いので数値(参考3)をよく見て欲しい。1級は確かに米松が強いが2級、3級では杉が強いのだ。その理由は、松の枝が対称に生えるのに対し、杉の枝はループ状に生え、同じ位置に枝がこないので節による強度低下にならないからだ(参考4)。米松も杉も構造材として無節の1級を使うことは少ないので、杉より米松が強いと目視だけで判断するのは間違いである。
 次に機械等級区分についてのべる。目視より信頼度は高い。木材の強度はヤング係数に比例するが、樹種によって強度は違う。杉のヤング率70の曲げ強度は29.4s/uだが、米松のヤング率70では12.0s/uだ。よく建築雑誌に掲載されているが、カナダ栂のヤング率110といかにも強いという広告している。勘違いしないようにしたいのが、杉はヤング率70で29.4s/uだが、栂はヤング率110で30.6s/uだ。杉の70と栂の110は、ほぼ同じ曲げ強度なのだ。ただし、たわみはヤング率に比例するので注意が必要である。

ヤング率区分
 ヤング率(以下、E)は、E50は40〜59s/u、E70は60〜79s/u、E90は80〜100s/uに区分される。杉は60s/uあたりに一番集中している。59.9s/uの材はE50になり、60s/uだとE70になる。わずかな差だが、表示では4割もの開きが出てしまう。この違いに翻弄されるより、木材はそういうものだと思ったほうがよい。安全限界ぎりぎりに設計するのが優秀な構造計算という鉄やコンクリート業界と伝統構法木造の世界は違うのだ。伝統構法は強度に対してアバウトだ。

未乾燥状態はコストパフォーマンス大
 部材の大きさが倍になれば強度は何倍になるだろうか。120×120材の成を2倍にすれば120×240となり強度は8倍になる。120×120材を幅、成を同じ比率で体積を2倍にすれば170×170材となり強度は4倍になる。つまり、木材費用を2倍にすれば強度は3.8倍となるのである。材積1割増しが強度2割増しになると思えば良い。その逆のこともいえる。     
 材料のコストでウエイトが高いのが乾燥費用だ。実際の乾燥費用は杉の場合10,000円/m3かかっているが、補助金と機器融資で原価は正確には分からない。確かに含水率が高いと強度は低くなる。乾燥状態含水率15%での曲げ強度600s/uの材が未乾燥状態だと400s/uだ。乾燥材が強いと早合点せず、材を一回り大きく使うのが賢い方法だ。例えば、120×240材の乾燥材と120×270の未乾燥材の強度は同じだ。価格は120×240乾燥材が8,500円、120×270未乾燥材が7,900円だ。未乾燥材は、そのうち乾いて強度は5割増しになる。あなたは120×240材の乾燥材(8500円)と120×270の未乾燥材(7900円)のどちらを選びますか。

適材年数材を使い
 「1000年の木材は1000年もつ」という西岡棟梁の言葉に大径木から製材すると良いと思っている人がいるが、適切な判断ではない。神社・城郭建築物は計算以上の大径木を使うという意味で、外材みたいに大径木から小木を採るという意味ではない。樹木は周囲に引張力があるので、梁に使う場合は、下弦材と上弦材に引張力がくるように製材するのがよい。H鋼を見ればわかる。大径木の芯去り材で下弦部に材芯がくるような使い方はもちろんよくない。(参考5)

丸太と製材
 太鼓梁の強度は製材より1割アップ、丸太梁は2割アップだ。円錐状の丸太材を角材に切断するのでは木の繊維を切断していまい、引張り強度は弱くなる。繊維方向にはできるだけ切断しない方がよい。しかし、丸太材は腐食に弱い白太部分を含んでいるので、家の下部には使わず、上部の小屋組みだけに使う伝統構法は理屈に合っている。材料でJASは品質管理が行きとどいた製品と思われがちだが、丸太梁や太鼓梁にJAS材はない。JASはあくまでも製材法の品質なのだ。
  山は合理化が進んで3〜4mに製材する。トラックのクレーンもない頃6m材は普通だったのが、機械化が進んだ近代では3〜4mが基準とはおかしな話だ。7mとなるととんでもない金額になり、4mより少しでも長ければ6m材と同じ金額だ。曲がった丸太や太鼓はほとんどストック材はない。曲がりは樹木の根元部分で節が少なく1級材が多いのに、山で根元から2mは不良品として外され、チップ工場行きとは悲しい現実だ。

近代工法と伝統構法
 建築工法のプレカット化がすすんでいる。プレカットは精度の高い寸法や均一性能を要求し、杉には適していない。山の谷に育ち斜面に植えられたために曲がった木を、不良品と人間が勝手に決めつけてよいのだろうか。CO2と水から神様が作った木材は自然の恵みと受け入れるべきではないだろうか。自然の物を粗末にしたら罰が当たる。伝統構法のように、一回り大きく使えば、わずかな含水率の違いやヤング率の計測に振りまわされず、曲がり材も有効に使えるのだ。
 
参考1:乾燥と強度 :木材活用事典(産業調査会)より
   
 
 
参考2: 痩せを考慮した工法
   
 
米松
1級
27.0s/u
34.2s/u
2級
25.8s/u
22.8s/u
3級
22.2s/u
17.4s/u
参考3:曲げ強度
   
 

 
参考4:枝の出方
   
 

参考5:H鋼と丸太
   
 
建築ジャーナル 2012 7月号掲載
 
   
   
 
44
 スマートハウスはヘビーハウス
 
 昨今は飽食の時代で、肥満が社会問題となり、スマートな体になるためにダイエットがブームである。BSテレビの番組の半分が健康食品か健康機器販売である。そんな機器を買わなくても食べなきゃよいではないかないかと思うのだが。

建築業界に、これとよく似たスマートハウスなるものが出現した。

HEMS(家庭用エネルギー管理システム)

 HEMSは家庭内の電化商品を外部からコントロールでき、各機器の使用電力量を目視できるものである。監視できるので省エネ・節電という位置づけだが本当に省エネになるのだろうか。
よく似た装置が30年前にあった。家の中の家電機器を「ハウスコントローラー」という機器で操作する電脳住宅だった。エアコンを外部から操作し、家に帰ればぬくぬくとした部屋がお出迎えをし、外部操作で洗濯をし、家に帰っても、雨戸の開け閉めは電気が行うというものだった。HEMSと全く同じシステムである。30年間家電メーカーが温めておいた技術が今生かせる。ことごとく外国に惨敗している家電メーカーへの応援策に思える。この商品に1/3もの補助金を国はくれる。当時は、快適さ追求の電気消費の「電脳住宅」だった。広告の文句をかえて今度は「エコ住宅」だ。子供の電気の付け忘れを外部から消して省エネ。エアコンを外部からスイッチオフして省エネと。人がいない家の家電が自分勝手に動く様子は異常だ。昔浪費で今省エネ。「見える化」は流行で、消費量が見えると意識的にエネルギーを少なく使う方向にいくらしい。メーターとにらめっこの電気オタクはそうかもしれないが、ふつうの主婦は1ヶ月分の電気の請求書や領収書を見てウナル。瞬時にHEMSに表示された電気料金が多いか少ないか分からない。「燃料費調整金」や「太陽光発電促進付加金」は月毎の請求書にしか書いてないから、そちらに目がいかなくなる作戦なのだろうか。「燃料費調整金」や「太陽光発電促進付加金」がHEMSに表示されればおもしろいが。

創エネ
 太陽光発電を否定はしないが、投資して金持ちが更に儲けるような金額設定は疑問である。発案者(商社)が資金(株主)を集め、土地を借り(地主)施工を外注する。4者が共に莫大に儲かるのだ。税金は投入されないので、誰かが損をする。損するのは国民だ。損金は100円/月だからお願いというが、嘘に近い。100円相当は1.5%である。電気買い取りは30%を目指しているのでそのうち2000円になる。今月、来月の付加金が100円というのは正しい。短命な政権だから存命期間中は100円ですといえる。ドイツやスペインでは問題となり、現在ドイツは中止している。いずれ行き詰まるネズミ講にみたいなものだ。
 昨年8月に菅総理は自分の首と引き換えに電気買い取り法案を成立させた。当時、孫氏は買い取り価格30円は原価なので駄目だと言っていた。それがいきなり42円になった。42円にすれば4割も儲かる。いまどき4割も儲かる産業はない。創電装置は、電気をよく使うパチンコやコンビニや自販機がつければよいのだが、産業用電気を11円で買うほうが安いから付けない。
 またまた、太陽光発電は儲かると言うハウスメーカーが出現した。普通の家は屋根に3〜5KWのパネルを載せるが、27kWを載せるという。平屋なら可能である。3000万円の建築工事費のうち売電で2200万円儲かるので、実質800万円で家が建つという試算である。詐欺か盗人みたいな仕組みだ。早く防除しないと、国民はさらに不公平になる。

蓄電
 つくった電気を貯めるのが蓄電器の役目である。車のバッテリーの耐久性は、T社の車のバッテリーの寿命は10年という。蓄電池は確かに停電の時に役にたつ。電気が通じているときにスイッチオンしていなければ蓄電器に電気はない。いつでもお湯を使いたいなら電気ポットは常に通電しておかねばならない。はたして蓄電器は省エネ機器だろうか。蓄電池は200万円もする。今7割が石油・ガスから電気をつくっている。電気を蓄電するより、石油から直接電気を作るほうが安い。直接電気をつくる発電機は6万円ぐらいである。国はこれにも70万円の補助金を出す。非常用電源は蓄電器より発電機がよい。使わないと燃費は減らない。音がうるさい?非常時に音なんて気にするものではない。
 どうも、今の国のやり方は、電気万能の家の方が幸せだと決めつけているに思えてならない。

スマートハウス
 創エネ装置と蓄電池をつけ、HEMSで管理をする装置は500万円〜700万円かかる。自動車2〜3台分を一度に購入してくれるので日本の電機産業経済は潤う。金持ちが好きで付けるのは一向に構わないが、補助金を350万円くれるとのこと。とんでもないことではないだろうか。国税が不足し、乾いた雑巾を絞るようなものなので消費税を上げたいといっているのに、片方で経済産業省の政策はすき焼きを食べているのと同じ構図だ。
 スマートハウスの原価償却はどれくらいだろうか。九州で暖房費は2.7万円給湯費6万円を全部創エネしたとして年間10万円である。原価償却には70年かかる。機器類が70年はもたない。つまり、スマートハウスは道楽である。道楽は自由であり税金を補助するものではない。道楽は自費で行えば美学だが。日本は狂っている。2030年には日本の住宅の半分をスマートハウスにするというから外国から見たら狂乱にしか見えない。

オール電化
社会が豊かになり電気需要が増え、電力不足で「原発」が乱立した。「原発」は止められないので「電気」が余り、今度は電力需要拡大で「オール電化」にシフトした。また電気不足となり、「原発」増設。需要と供給はシーソーゲームのように連鎖拡大していった。その中で3.11原発事故が起こった。「オール電化」は影を潜めたかのように思えたが様子が違う。ますます「オール電化」に傾いている。太陽光発電を付け、HEMSを付け、蓄電地を付けて、高効率空調機で全館冷暖房を行う。電気中心の住まいに変わりなく、「原発」から「光発」に変わったものの「オール電化」住宅である。
 省エネ運動は知らず知らずに創エネ・畜エネに代わり、エコはエコノミーへと転嫁している。電気依存の生活を改めることなく、ハイテクが重視され、ローテクは軽視されるのはエコヒイキの度が過ぎる。
 我慢しての省エネはよくないと環境専門家は一同に発言する。スマートハウス構想は、いっぱい食べても、健康食品を食べればダイエットになるということに似ている。ヘビーハウスにならなければよいが。
 
 
東京大学の研究住宅「コマハウス」の実験設備のイメージ図です。スマートハウスとは関係ございません。
   
 
建築ジャーナル 2012 8月号掲載
 
   
   
 
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 資源大国ニッポンは豊富な資源を活用せよ
   
   7月28日民主党政権は、再生成長戦略なるものを閣議決定し、発表した。2020年までに経済成長を3%にするための壮大な政策である。100兆円の新設産業と450万人の新規雇用を生むという。成長戦略の目玉がグリーン戦略で、新築住宅の省エネ基準を100%達成させ、ゼロエネルギーハウスを標準化させるという。環境問題も、雇用問題も、経済優先の政策にしてしまうみたいで、自民党時代となんら変わらない。人が大事、緑優先の思想はどこに行ってしまったのだろうか。ゼロエネルギーハウスとは太陽光発電を付け、蓄電地を付け、環境問題に関心のある消費者に、エコ商品と命名した機器類をたくさん買わせて消費を拡大させるのである。
そもそも経済効果という数字はごまかしが多い。住宅業界は合理化・工業化が進み、手作業が減り、雇用は1/5まで下がった。プラスだけを計算して、地場産の木製建具や湿式左官工事のマイナスは計上しない不思議な計算だ。これから、円高で外国企業買収がすすみ、生産拠点は国外に流出し、企業売り上げは増加するが、国内生産量は減る。電化製品のほとんどは国外生産である。すでにマンション建築の建材は、日本製はセメントと水だけで、あとは全部外国製と聞いたことがある。

 成長戦略のゼロエネルギーハウスにするには500万円のコストアップとなる。総予算は限られているので、蓄電池や太陽光発電の機器類が増加する分建築コストを削減しなければならない。坪単価に影響がない軒や庇は短くなり、省エネ効果を上げるために窓は小さくなる。住宅産業は潤うが建築従事者の雇用が減ることは明らかである。
日本の住宅の建築材料は木と竹と土と藁と紙である。当たり前だがすべて国内調達品だ。別の見方をすれば日本は建築用材の資源大国である。木や竹はあまるほどある。土は日本国土がある限り存在する。今回は土の特性についてのべよう。

土壁の断熱性能と蓄熱性能
 土壁には断熱性能がないと悪口をいう人は多い。土壁の家は壁がスカスカの状態で、冬は氷の家にすんでいるようなものと決めつける。断熱性能は熱伝導率で表すが、土壁の熱伝導率は0.69w/m・Kで、断熱材の代表であるグラスウールの熱伝導率0.0.05 w/m・Kの1/14しかない。つまり,グラスウール50_相当を確保するのに土壁だと760_の厚さが必要となる。しかし断熱性能はないが蓄熱性能がある。断熱性能は材料の比重に反比例するが、蓄熱性能は重さに比例するとおおむね思ってよい。断熱性能と蓄熱性能の双方を持ち合わせている建材を望むが、軽くて重い材料となり、引力が存在する地球上にはない。

 断熱性能とは温まった空気の熱を逃がさないことで、気密とセットで考えなければならない。毛皮のコートが断熱性能でコートのボタンがしっかり締まっていることが気密性能だ。コートの下に温かい石焼芋用の石をかかえこんでいれば、石が蓄熱し、直接受ける熱が輻射熱である。蓄熱も断熱があれば保温効果は持続するし、気密性はスカスカでないくらいのほどほどで良い。人が住む住宅は換気が必要だ。それなら、高気密にして換気するより、蓄熱性能を利用してほどほどの気密にする方がよいだろう。

 蓄熱性能についてもう少し詳しく述べる。
 蓄熱式暖房の代表は薪ストーブだ。薪を燃やして、安定するまで1.5時間かかるが、火を消して温度が元に戻るまでも1.5時間かかる。その仕組みを利用しようというのである。冷める時間が延びるのでフル運転しなくても、薪が消えかかってから燃やすので、燃料は半分ですむという理屈である。蓄熱暖房の薪ストーブと蓄熱性能が高い土壁は相性が良いとなる。
日本人は、輻射熱には関心がなく、室温の高さ低さで、喜んだり、悲しんだりする。空気暖房をして暖まった空気を少しでも逃さまいと気密する。気密化すると、空気中のCO2濃度が高くなり、24時間換気扇を設置する。蓄熱を利用した輻射暖房の場合、温暖地方では気密性能を必要としない。24時間換気扇は気密性と暖房方法により必要性を決めてもよいのではないだろうか。輻射暖房の場合の人の体感温度は、室温と発熱体・床・壁・天井の平均表面温度を足して2で割った温度である。それで、室温が17度でも薪ストーブと等周辺の床・壁・天井表面温度が23度であれば平均20度なり暖かく感じ、室温が低いので隙間風をそう感じないのである。

夏の土壁
朝方は気温が低い。朝方の8時ぐらいが放射冷却で最低気温である。(ここでコーヒーブレイク*)。この下がった温度を保持することを蓄冷という。土間ともなれば、土間は地球とつながっていて、そう簡単には暖まらない。室温が33度となっても土間は30度と2〜3度低い。逆に、蓄熱体である土間に直射日光を当てるような設計をすると最悪になる。40〜50度に上がってしまう。パッシブソーラーといって縁側の床を蓄熱体(トロンボウォール)したら大変なことが起こる。九州ではスダレ程度では防除できない。スダレの隙間から直射日光が当たり蓄熱体は40度を越えてしまう。特に西日の斜め照射にも気を付けなければならない。西日の当たらない密集地ではよいかもしれないが。
日が当たらない土間の部屋が昔あった。味噌部屋である。今でいうパントリーだ。ひんやりしていて他の部屋より2〜3度室温は低い。家の中全てを均一にしようと思わず、午前中は居間で、日中は味噌部屋に引っ込み、夕方は縁側へと、猫みたいに、時間ごとに居場所を変えるのも、エネルギーをあまり使わない生活方法だ。
もっと土を利用しよう。土は日本国土があるかぎり存在する。枯渇しない。なんといっても処分時がよい。土壁の場合は再利用して又壁に使うのが良いが、処分する場合は、我が家の庭に廃棄すればよい。ゴミ処分がこれからの社会問題になる。生産、雇用、マいレージ、蓄熱、処分、資源のことを考えると土壁は一番の優等生である。

(コーヒーブレイク)
1日で一番暑い時間は2時〜3時というが、熊本は3時〜4時だ。逆に一番気温が下がる時間は、東京では7時だが熊本では8時。経度差15度で1時間違うので当たり前のこと。あまりに東京中心の情報が多すぎて、2時が一番暑いと思っている人が多いのにびっくりする。
 
土壁下地の竹小舞
土壁塗り
   
 
建築ジャーナル 2012 9月号掲載
 
   
   
 
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 灼熱セミナーレポート
   
   1年の中で、一番暑い日の暑い時間に水俣エコハウスにて灼熱セミナーを開催した。
気温の高い低いだけで、喜んだり悲しんだりしているが、家のつくりようでかなりの差がある。気温・湿度・気流・輻射についてその仕組みを理解してもらい、エアコンに頼らない納涼方法を実体験してもらうことがセミナーの目的だ。
セミナーの前に水俣エコハウスの管理人特製のそうめん(ピリ辛韓国風)とエコハウスの庭で採れた野菜を使った一品料理の品々を出してくれた。
 

   セミナー開始時には、受講者14名と関係者8名を含めた総勢22名が一堂に居間・和室に集まった。人間一人当たり白熱灯100w程度の熱を発散しているので22名もいると2200KWのヒーターを置いているのと同じ状態となり、それだけで暑いはずである。
かつてはエアコンがなくても生活ができた。しかし、現在これだけエアコンが普及したのは、家が密集したからだけではない。建築のつくり手が、風通しのことを考えなくなったからある。では、エアコンがなくても暮らせる家のつくりとは、

@ 軒を深くして日射を遮る
直射日光のあたるところ(日向)では縁側の表面温度が41℃以上となり、その輻射熱が室内にはいる。室内気温が31℃でも、体感温度は31℃以上になる。

A 温度差をつくることで風が流れる
 北側には日差しがないため、同じ室内でも北と南では温度差が生じ、南北に風が抜ける。また、上下の温度差を利用して、低いところから風を入れて高窓から風が抜けるようにする。エコハウスは1階の吹き抜けと2階がゆるやかにつながった大屋根の家である。1階の南から入った風は2階の子供室の北側の窓から抜ける。吹き抜けと子供部屋の間の2階の廊下にいると風がぬけて気持ちがいい。加えて、床下を開放している伝統構法なので、その床下の冷気を取り込む。

B 家の内装は床・壁・天井すべて吸湿材
床は杉板と藁床の畳、壁は土壁の漆喰塗、天井は杉板と全てが吸湿材である。どれほど吸湿しているか分からないが、湿度が10%下がると体感温度が1℃下がるのは事実だ。
家の中すべてが涼しいわけではなく、玄関土間や2階の廊下など風が抜ける場所以外でも涼しいところはある。吸湿効果なのか、蓄冷なのか、地中温なのか分からない。涼しい場所を探して、そこに移動して生活するという発想が必要である。全館冷暖房の考えで、条件が悪い部屋の改善を図ろうとするとエネルギーコストがかかる。

アンケートと各部屋の実際の気温・湿度の計測を行った


*2階座敷の気温33.74℃、湿度43.90%
 2階の西に座敷がある。注目すべきは、アンケートの回答者数14名のなか、やや不快と答えた人が2名しかいないことだ。ほかの部屋ではやや不快・不快という回答はなく、座敷の評価が一番悪かった。2階で西に面している部屋なので、他の部屋よりも実際に室温も高く評価が悪いのもうなずける。しかし、それでもやや快適・快適と答えた人も回答者数の半分を占めた。これは、部屋のもたらす清浄な雰囲気、木と漆喰壁、畳が見た目にも清涼感を与えたのではないかと考える。例えば、この部屋と同じ温熱環境で、無機質なものばかりでつくられた部屋ならばこの回答結果が得られるとは考えにくい。温熱環境とは本当に相互に複雑に絡み合うものなのだ。これに加えて、風鈴や虫の音などが聞こえればまた違ってくるのである。

*居間の気温33.08℃、湿度44.80%
14名中11名が快適・やや快適と回答した。2階の座敷と気温湿度はそう変わらないが、評価がよいのは、南の大開口から見える庭、通り抜ける風による効果が大きいのではと考える。床・壁・天井の表面温度も32〜33℃で、風もあったので、体感温度を考ると、もっといい評価をもらえても良かったかもしれない。しかし、セミナー中は20人以上もの人がおり、それだけでも暑いはずなので評価も妥当と言える。

*玄関土間の気温31.70℃、湿度54.05%

玄関土間が一番温度が低い。少しでも風があれば快適なはずである。土間床の表面温度は27℃とさらに低く、体感温度はそれだけで29度に下がる。アンケートでも快適、・やや快適と全員が評価しており、予想通りの結果が得られた。

*外部の表面温度。 外部の気温は34.22℃、湿度35.87%
・庭を見てみる。全面道路のアスファルトの表面温度は60℃、敷地内の砂利の表面温度は53.0℃、草は38.2℃であった。
草むしりがいやだといって、コンクリート打ちにしたり、砂利敷きにしたりする人がいるが、そうすれば表面温度は一気に14.8〜21.8℃も上がる。庭にヒーターを置くようなものだ。エアコン設置が必須となる。
打ち水も効果があるが、焼石に水というごとく、炎天下では10分ぐらいしか効果がない。草を生やすことは連続打ち水と同じ効果だ。庭に草を生やすことをズボラだと思う人は、部分的に庭石を置けば、りっぱな数寄屋の庭に早変わり。
外壁は土壁の漆喰仕上げで、四方壁全ての表面温度は33〜35℃であった。漆喰壁は夏対策に非常に良い。最近、遮熱塗料が良いとNHKで放映された。本当かと思い遮熱塗料を手に入れて、ホームセンターの500円の白ペンキと比べてみた。どちらも同じ効果だった。遮熱は白色だけの効果なのか。銀色はもっと良いが近所迷惑になるのでやめたが良い。Low-Eガラスもその一つだ。


結論
室温を下げるにはエアコンしかない。しかし、お金がかかる。それならば体感温度を下げればよい。風速2m/Sで体感温度は1℃下がる。湿度―10%でも1℃下がる。室温が34℃の場合、湿度60%なら体感温度は30.5℃だが、家の周囲の表面温度はそのままで風速が2m/S、湿度50%にすれば体感温度は28.5℃となり快適となる。

「感想」
セミナーの最後にスイカを供していただいた。これもエアコンの効いた部屋で食べるより、窓を開けて少し暑さを感じながら食べる方が美味しいし、清涼感を味わえるのではないだろうか。
外気温が35℃近くまで上がる中、エコハウスには縦横無尽に風が通り抜け、気持ちが良いと感じる時間(分間)がたびたびあった。セミナー時には20人以上もの人が集まり、熱気も漂い、汗をかきながらのセミナーだったが、アンケート結果からも分かるように「もう我慢できない」という評価はなく、一番暑い昼間でも何とかエアコンがなくても過ごせるのではと感じてもらえたセミナーではなかったかと思っている。
 
   
   
 
建築ジャーナル 2012 10月号掲載
 
   
   
 
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 伝統構法に厳しい改正省エネ法の判断基準案が発表された
   
  現在公示されているパブリックコメントと比較して読んでください
(パブリックコメント155120719で検索)

炭酸ガス排出量削減を目的として省エネ法が改正される。省エネ法は単一法ではなく、建築基準法と同じく複雑多肢にわたる。建築物と深くかかわっているので、国土交通省が行政指導を行うが、主管が経済産業省なので、建築物は経済活性化の要素として利用され、省エネ機器販売が目的のように思えてならない。
新省エネ基準や次世代省エネ基準は、フラット35Sやブランド化住宅を採用する場合には守らなければならないので、ほとんどの建築関係者は知っている。全員が遵守しなければならない法ではなく、飴玉が欲しいひとが守る誘導法である。飴玉が欲しくなければ、基準は知らなくてもよい。しかし、その誘導法が2020年には全員が守らなければならない規制法に変わるような内容が今年の6月に閣議決定された。全員が守らなければならないことが問題である。現在、基準の見直しがなされていて、11月7日締切のパブリックコメントがもとめられている。2本あるので注意してほしい。「建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準」と「低炭素建築物の認定に関する基準」である。後者は選択性なので選ばなければ良いが、前者は2020年に規制法になる。
【平成24年6月に省エネ法全体の工程表は発表された】
告示の基本となる「住まいと住まい方委員会」が今年4月までに4回開催された。委員の方で建築の実務が分かる建築士は一人である。省エネは緑が大事と発言しても、省エネ機器をたくさんつけるべきという意見に消されてしまった。5月に行われたパブリックコメントで、実務者の意見が多く寄せられた結果、「伝統的な木造住宅に関し、省エネルギー基準への適合義務化によりこれらが建てられなくなるなどの意見や、日本の気候風土に合った住まいづくりにおける工夫も適切に評価すべきとの意見などがあることから、引き続き、関係する有識者等の参加を得て検討を進める。」が工程表に追加され、一定の成果はあった。

【建築主及び特定建築物の所有者の判断の基準案】告示案

■1-1:外壁・窓等を通しての窓の損失の防止に関する基準
現行次世代省エネ基準は新省エネ基準と比較して坪3〜4万円のコストアップになると国は発表した。(環境省の資料:(5)断熱構造化対応のための費用負担2010年5月18日:17ページ)更に、「国民の納得が不可欠となる」と付け加えたのに、今回のパブコメでは意識的に費用のことは書いてない。120uの建物で100〜140万円のコストアップになる。九州の暖房費は年間2万円。1割減らして2千円/年。省エネが目的の法とは思えない。5GJ(ギガジュール)のために100〜140万円のコストアップを強いることになるが、「国民の納得が不可欠」というと(とる)言葉からほど遠いように思う。費用のことを言わずに法を通す計画は卑怯ではないだろうか。

■1-2:除外規定
前記工程表の追加内容が、「地域の気候及び風土に応じた住まいづくりの観点からエネルギーの使用の合理化に関する法律第74条に規定する所管行政庁が認めた場合」となっていて少しニュアンスが違う。74条とは地域のキャスビーに移行と読み取れるので注視しなければならない。最初の趣旨に準じて、「伝統的な木造住宅や、日本の気候風土に合った住まいづくりにおける工夫も適切に評価するために、所管行政庁が認めた場合は除外すべきだが、その基準は、関係する有識者等の参加を得て検討を進める。」にするのが妥当ではないだろうか。

■1-3:地域の区分に応じた熱貫流率(UA値)等の基準
地域区分が6つから8つに増えた。しかし、新5地域は新潟で、新7地域は奄美大島である。ほとんど8割の国民がこの5〜7地域に住んでいる。8つに分けたのに5〜7の遵守基準が同じなのだ。熱の逃げ具合をUA値で示すが、5〜7地域共に0.87なのだ。
・新5地域の暖房度日は2500度日(年間暖房温度を上げる日数)である。新7地域の暖房度日は500度日である。2000度日も差があるのに、同じUA値0.87ではおかしい。
・UA値とは暖房時の熱の逃げ方である。北海道と鹿児島では、年間暖房費20万円と1万円で20倍の差があるが、新1地域がUA値0.46で、新7地域がUA値0.87とわずか2倍の差であるはずがない。明らかな計算ミスである。あるいは意図的に操作された数字である。素人でもわかる数値操作はやめてほしい。新1地域がUA値0.46なら新7地域はUA値2.0ぐらいが妥当である。

■地域区分に応じた冷房期の平均日射取得率の基準
・全壁に対し窓の割合を開口率という。北方の家の開口率は2割、南方では3割ぐらいだろう。計算値を否定はしないが、最近、窓の開口率が1割程度のローコスト住宅が九州にもたくさん建つようになった。フランチャイズの家ほど小さい。窓が小さいと高性能になる日射熱取得率?値は改善を求む。本来の日本の住宅から軒が短い豆腐みたいな家づくりを国が指導していると言っても過言ではない。

■1次エネルギー消費量に関する基準

・「暖房設備が設置されていない場合は、ロに定める方法によるものとする」について。
薪ストーブの場合は暖房設備ではない扱いなので暖房設備であるエアコンをつけたことになる。同様に、こたつも暖房設備とみなされず、暖房設備であるエアコンをつけたことになる。
新築時に所定の機器を付けていない場合は、エアコンをつけたことになるのは、盗んでないのにドロボーにされる冤罪に似ている。もっと詳細に基準を決め、国民をドロボー扱いにするのはやめてほしい。

・「暖房方法の区分について」
主たる居室及びその他の居室の暖房方法が連続運転である場合、つまり全館暖冷房の家はエネルギー消費が1.9倍ほど多くてもよいとある。金持ち優遇の暖房基準をどう思う。

・「冷房設備が設置されていない場合は、ロに定める方法によるものとする」について。
扇風機の場合は冷房設備ではない扱いなので、冷房設備であるエアコンをつけたことになる。
扇風機は省エネの王様である。なのに扇風機を認めないのは経済産業省は安い扇風機より高いエアコンを買わせたいからだろう。健康にとっては、エアコンより扇風機が良いという人は多い。
この項目は全く理解できない。

・「その他の1次エネルギー消費量(EM)」について
そもそも、参考2で住宅部門が1.35倍になったのは、家電の消費エネルギーが倍になったからである。暖房エネルギー消費はここ20年増えていない。一番多いのは家電製品の消費エネルギーである。消費量は21.1GJもあるのに手をつけさせないことになっている。暖房よりこちらが先である。経済産業省の家電製品をたくさん買わせたい魂胆が見え見えである。
   
 
 
「パブリックコメント参考資料2」より
日本は欧米諸国より暖房エネルギー消費量は極端に少ないのに、 欧米なみの基準をつくるとは。
   
 
  「パブリックコメント参考資料2」より
住宅。建築部門が1.35倍に増えたというが、暖房費費ではない。家電である。なのに、「家電等は、省エネ手法を考慮しない」とは中国式勝手思考法である。
   
 
建築ジャーナル 2012 11月号掲載
 
   
   
 
48
 我が輩はシロアリである
   
  シロアリを地球上の極悪生物と思っている人は多い。シロアリは他の虫と違い、デンプン質以外のセルロースまできれいに食してくれる。山の木を伐採し、切り株や根はそのまま山においてきても、シロアリがきれいに食べてくれる。木の根は枝と同じくらい張っているが、シロアリがいなかったら、切り株や根の処分も人力が必要で、伐採費用は単純に倍になる。山にとっても、人間にとっても、なくてはならない存在なのである。シロアリをこの世から一掃退治できたらと願うが、シロアリは居てもらわねば困る。シロアリの生態を知りシロアリと共存することが望ましいのではないだろうか。最近被害が増えているのは、地球温暖化で、シロアリの生育区域が北上していることもあるが、最近の家のつくりようが白蟻生育器みたいになっているからだ。
家を丸ごと断熱材で包む外断熱工法の基礎の外部の断熱材は効率は良いが、わざわざ蟻道を造らずとも侵入できるシロアリご招待通路に思える。基礎断熱材に防蟻剤を注入して防蟻策というが、防蟻剤の効能は5年で、5年が過ぎたら、メンテは難しい。新築したときの業者は面倒を見ず、施主はシロアリ訪問販売者の餌食になってしまう。シロアリは目がなく皮膚もぶよぶよとしていて、地表にはそのままでは出てこれない。ゆえに、発見しにくいが、やむをえず地表に出てくる場合は、風に触れまいと蟻道をつくりその中を往来する。例えばゴキブリは現行犯として発見しないと存在は確認できないが、シロアリの存在は蟻道という証拠を残してくれる。しかし、蟻道もシロアリ自身も見たことがない人が多いのは、モグラとおなじ地中生物で陽の当たる表に出てこないからだ。裏街道生物なので、人間は想像でシロアリを断定的に判断することが多い。乾燥木にはつかない、ホウ酸団子はシロアリ対策に良い、赤味は食べない、新月伐採の木は付かない、コンクリートも食べる、とか。伝言ゲームと同じで「付くにくい」と聞いた人が次の人に「付かない」と伝言するから話が複雑になる。子供の弁当に、卵焼きとご飯があった場合、卵焼きを先に食べ、ご飯を後に食べる。子供がご飯を嫌いなわけではない。
事例からの検証と実験から白蟻の生態を知る。
   
 

例1乾燥木にはつかないというのは間違い。
シロアリは湿気が多い浴室や便所から侵入するもので南からは侵入しないと聞いていた。しかし、S邸では南のデッキの束から侵入した。デッキに雨が当たる。樹液が地中に浸透する、それをシロアリがキャッチして目が見えないのに樹液を目がけて蟻道を作り、デッキの束、デッキの大引き、窓下の土台をつたって家の中に侵入してきた。家の根太に最初に食いついたので、根太の強度が弱くなり、床がぶかぶかするということで、床下に潜って確認したら蟻道があった。早期発見となった。進行部分だけを薬剤駆除し、床下全体に薬剤散布はしなかった。定期的にデッキ下に蟻道がないか確認することが大事だという教訓になった。全面散布すれば5年は大丈夫だが、また5年後に薬剤散布をしなければならない。デッキ下を確認して、付いた時にその部分だけを駆除すればよい。写真1

例2:クロアリがいるとシロアリをたべるので大丈夫
「クロアリがシロアリを食べる」は正解であるが、大丈夫というのは嘘。クロアリは確かに地中に巣をつくるが、餌場は主に地表である。シロアリは完全地中生活である。地表近くのシロアリがクロアリにやられるだけのことである。繁殖の速度と軍団の大きさは数十倍の差があるし、更に雨の日はクロアリは休みだが、シロアリには休みがない。労働時間が全く違う。10万匹のシロアリを1/1000減らすだけのことで大丈夫なわけがない。
クロアリとシロアリの違いについて質問がよく来るので写真を見てほしい。シロアリに羽が生え羽蟻になると色が黒くなる。それでシロアリとクロアリの区別がしにくくなる。写真2

例3兵蟻だけが表にどんどん出てくる不思議な現象。
まず、軒下の薪置き場にシロアリがついた。本巣は隣家近くの木の根元にあった。薪置き場に分巣として広がった。その分巣から家の中の土間に侵入してきた。そして、玄関の木枠から、柱、梁と伝い、二階の松材まで一直線にすすんでいた、まず一直線に遠方まで行き、それから拡大する予定だった。施主が薪置き場の分巣に気が付き、市販の防蟻剤を撒いた。分巣の働きアリが死滅した。兵アリは働きアリから栄養をもらい自分では直接木を食べない。働きアリがいなくなると、食材が目の前にあっても自分では食せないので餓死する。兵アリが飢餓状態で表にぼろぼろ出てきたのだった。分巣を見つけて、薬剤で処理しても他に分巣や本巣があるので、根治にはならない。増殖してまた分巣をつくる。シロアリはエサを口移しで巣にいる仲間や子供に分け与えるので、伝搬力は早い。そこにベイト剤をしかける。その薬剤効果は一家集団に広がり、1匹残らず殲滅させることができる。写真3、写真4

例4基礎パッキンはシロアリ対策になるか
基礎パッキンを否定するものではない。布基礎との設置面を少なくしコンクリートの湿気を土台に伝えず耐久性が上がることは評価する。しかし、そのことでシロアリがつかないことにはならない。コンクリートから土台に向かう途中にパッキンがあったら乗り越えるだけだ。写真5

例5:シロアリはコンクリートを食べる
コンクリートを食べるわけがない。もし食べるのであれば、福島原子力発電所のコンクリートの残骸をシロアリに食べさせれば良い。シロアリが進行するとき顎の力か蟻酸の力かは知らないがコンクリートでも穴を開けてしまうということだ。10センチの厚さがあるとシロアリ被害は大丈夫といわれている。もし食べるのであれば何センチあっても食べるはず。べた基礎でも被害があるのは、給排水の埋め込み部や立ち上がりの打継部である。 写真6

例6:ホウ酸団子は自然にやさしい防蟻剤
DDT、クロルデン、クロルホスピス、等防蟻剤は人体に悪影響があるので、ホウ酸は人体への影響がないと注目を浴びている。九州ではシロアリはどこにでも居る。我が庭に杉の木を置いていたらヤマトシロアリが付いた。新月に切った木と満月に切った木共に付いた。そのあと、ホウ酸団子をそこにおいた。シロアリは死んではいない。ホウ酸団子を避けて逃げた。写真7
シロアリとは共存する他仕方がない。そのかわり、家のつくりをシロアリが発見しやすいようにつくることが大事である。

   
 
写真1:南からも侵入
写真2: 地中のシロアリは色白
写真3:羽を落としたシロアリは色黒
     
写真4:薪置場の分巣
写真5:餓死状態のイエ兵アリ
写真6:基礎パッキンも飛び越える
     
写真6:コンクリートの継ぎ目から侵入
写真7:ホウ酸団子は忌避するだけ
 
   
 
建築ジャーナル 2012 12月号掲載
 
   
   
 
49
 改正省エネ法のパブリックコメントについて
   
   改正省エネ法へのパブリックコメントは750件の意見が出された。経済産業省と国土交通省はこれに対しての考え方を、専門委員に伝え1時間の審議がなされ、告示案は原案通り来年の4月から施行されることになった。750件の意見は、71件にまとめられた。そのうち5件が伝統構法関係だったので紹介しよう。
:「地域の気候風土に応じた住まいづくりや伝統工法も考慮した基準とすべきではないか」
:「基準において、蓄熱性を持つ土壁や、高い床下、深い庇、風の通り抜けやすい大きな開口部、縁側、玄関などの緩衝空間も評価すべきではないか」
:「土壁住宅などの伝統的木造住宅においては、断熱材を入れることが難しいため、外皮基準を除外する項目を明示すべきではないか。」
:「伝統木造住宅などで設備に頼らない住まい方をしている人が不利にならないようなしくみとすべき」
:「伝統的木造住宅の省エネ基準の義務化のあり方については実務者の意見を聞いて検討を進めるべき」
これらのコメントに対しての回答は、「地域の気候風土に応じた住まいづくりの観点から所管行政庁が認めた場合には外皮基準を適用除外とできる規定を設けております。所管行政庁に対しては実務者の方々の意見も伺いながら技術的助言等において、明示していく予定です」とあり、とりあえず延長戦となった。

 伝統的構法以外の意見も数多くあるのでいくつか紹介する。新省エネ法と次世代省エネ法との費用差は坪あたり3〜4万円のコストアップという見解もあったが、最近費用についての言及はない。やはり、省エネ法が施行された場合の関心はかかる費用である。費用対効果があるか等の質問に対しては、71件に含まれていない。都合がわるいもの、答えられないものは最初から除外してある。公表された意見(Q)に対して、経済産業省および国土交通省の考え方が(A)である。考え方にたいしてさらに私がコメント(Aにコメント)する。

   
  :Q:新5〜7地域の外皮平均熱貫流率が同じなのはおかしいのではないか。
A:現行の熱性能に関する基準は、現行の省エネ基準達成状況も踏まえ、現行の省エネ基準相当の水準を求めることとしております。
Aにコメント:質問に対する答えになっていない。温熱地域が現行6区分から8区分に精密に分け直したのに、5〜7地域が同じ数値ではおかしいという意見なのに、現行基準の水準を守るというおかしな回答である。ヒイキ目に見て基準が甘いから5〜7地域は同じでも良いという見方も考えられる。「現行の省エネ基準達成状況も踏まえ」という言葉の裏に達成率50〜60%というデータが存在するが、本当に実態を調べたデータだろうかと疑う。別事業の「ブランド化住宅」に長期優良住宅の実施状況の記載項目があるので調べてみた。ブランド化住宅鹿児島4グループの総計667件の内、長期優良住宅仕様は60件である。つまり、省エネ基準の達成状況は7地域の鹿児島では9%だということになる。北海道では50〜60%かもしれないが。都合の良いデータを引用し達成率50%という数字を使うのは卑怯である。

Q:暖房設備による1次エネルギー消費量の算出において、こたつや解放型石油ストーブの利用を考慮すべき。
A:ご指摘のような建築設備ではない器具については、設計時点では把握できないため、対象外としています
Aにコメント:暖房の手段にこたつ、石油ストーブ、エアコンがある。こたつや石油ストーブは建築設備ではないと温熱専門家が自分たちだけで勝手に決めてよいのだろうか。こたつも石油ストーブもエアコンも同じ家電販売店に売ってあるし、耐用年数も同じくらいだ。把握できないからという理由はあまりに手前勝手である。こたつ、石油ストーブを対象外にすれば、性能の悪いエアコンを設置したことと同じとなり建築確認はおりない。言葉を換えれば法律で、高性能エアコンを付けないと建築確認をおろさないよという経済産業省の陰謀である。

Q:冷房設備を設置しない場合は、設計1次エネルギー消費量の冷房用エネルギー消費量は無いとする評価にすべきではないか。
A:一般的に、竣工後にエアコン等を設置するような場合も考えられることから、当初設置しない場合であっても設備の設置を評価する方法としております。
Aにコメント:エアコンは800W、扇風機は40Wで別の団体は省エネのために、エアコンより扇風機の使用を勧めている。扇風機の人はエアコンを使ったことと同じにするのはおかしいという意見に、「竣工後に設置するかもしれない」と消費者を犯罪者扱いにする行政指導はひど過ぎる。日本の司法は想定無罪だが、行政は想定有罪の考えである。

Q:新築時に照明器具を設置しない場合、白熱灯を含んだものとして、設計値を算出する過剰な評価は見直すべき
A:設計段階で特定できない場合は、白熱灯も設置される可能性があるため、白熱灯も含んだものとして算定することが妥当であると考えております。
Aにコメント:白熱灯が1ヶでもあれば全て白熱灯をつけたものとみなすのが妥当であろうか。10分以下の点灯は白熱灯が省エネという意見もある。ベトナム戦争でソンミ村事件があった。ベトコンが一人いるかもしれないという理由で村人全員を虐殺した事件を思い出す。

Q:外皮基準に関する簡易計算ツールを整備すべき
A:ご指摘を踏まえ、外皮性能の計算ツールを整備することとしております。
Aにコメント:
渡りに船の意見である。すでに、中小工務店・大工の省エネ設計・施工技術の向上支援が始まっている。基準に簡易さを求めると、必要でない家も必要な家も必要な基準となる。24時間換気扇やホールダウン金物がそうだった。必要な家は2〜3割なのに、簡易さを求めるから全ての家に設置せよとなる。外皮性能を上げると内部結露が発生しやすくなるから先回りして、住宅省エネルギーの「施工技術者講習会」は始まっている。必要な家と必要でない家の区別は次号で説明する。

   
 
これから先どうなるのだろうか
とりあえず来年の4月からは誘導法で施行される。皆が知りたいのは、2020年に全ての住宅が義務化になるかということだ。それに対し国は今のところ「義務化になるかは決まっていない」という回答である。告示は2013年から施行としか書いてないので2020年に義務化へ移行するかは未定との回答は当然であるが、2012年6月に発行された工程表を見ると次世代省エネ基準を2020年に100%実施と書いてある。そして現在行われている「施工技術者講習会」の趣意書には「新築住宅の省エネ適合率を2020年までに100%とすることを目標とし、地域の木造住宅生産を担う大工技能者等断熱施工にかかわる者を対象におこなう。」とある。
この「施工技術者講習会」を広めるために各地に地域協議会が組織化された。その協議会に熊本ではなんと熊本県建設労働組合が加わっている。この団体は、高気密・高断熱化は住宅メーカーの陰謀だと言っていたのではなかったのか。いつのまにか高気密・高断熱を推進する建設団体に変貌している。講習会の受講者の目標は5年間のうち全国で20万人である。今年度はとりあえず11000人の受講者数だった。残り4年で残り18万9000人となると、1年で47200人となり、今年度の4.3倍の動員となる計算だ。本当に可能なのだろうか。各地の地域協議会がネットワークを使って動員をかけることになるが、半強制的な要請になると予想する。建築士会や建設業協会に要請がかかる。熊本県での割り当ては3000人となるが、いままで基準法改正や融資の説明会で自主的に講習会に参加した人は500人ぐらいしかいない。地域協議会へ行政から要請がかかれば組織は動く、仕方なく組織の動員で講習会をうけることになる。後半の受講者は興味がない人が多く半分は居眠り受講となるだろう。建設労働組合あたりは「講習会を受けた人は仕事につながる」と言っているがありえない話だ。2000万円の新築住宅で消費税アップが100万円加算される時期に、改正省エネ法で更に100〜120万円加算されることで、仕事が増えるとか、仕事につながると考えるのは浅はかだ。
国交省は、経済産業省の言いなりにならず、国民と建設関係者のために頑張ってほしい。
   
 
建築ジャーナル 2013 1月号掲載
 
 
50
 省エネ住宅「施工技術者講習会」のテキストの内容について
   
  2020年に次世代省エネ基準が100%義務化になる公算が強い。今のうちから学習しようと省エネ住宅「施工技術者講習会」がはじまった。断熱施工は北海道では30年前から普及し、工事のノウハウは蓄積されている。寒い地域では断熱・気密は必須であり、かかる費用や工事内容については施主の理解は得られている。しかし、九州においては寒さ対策は少し我慢すればよいことで次世代省エネ基準レベルの断熱・気密は普及しなかった。長期優良住宅という100〜120万円の補助金があったときは数件採用されたが、仕様内容に理解を得られたからではなかった。融資がなくなると仕様は激減したことからもそれは分かる。温暖な九州に次世代省エネ基準ほどの高性能に最低基準をあげなければならないのだろうかと疑問を持つ人は多い。断熱工事は断熱材を入れればよいではすまされない。副作用が発生するのだ。そこで全国一斉に次世代省エネ基準「施工技術者講習会」がはじまったのだ。
まず講習会の内容で断熱工事の必要性が挙げられている。主な3つを紹介しよう。

■「断熱材を入れないと年間14000人が死ぬ」という嘘に近い記述
1年間にヒートショックが原因で亡くなる人は推定14000人で、交通事故の死者よりも多いといわれています。(交通事故の2.4倍という挿絵付)
家の中での事故死が14000人であることは事実である。しかし、その数字のうち浴室・洗面での事故が原因の死亡者数は3691人と厚生労働省大臣官房統計情報部「人口動態統計」では公表しているが、ヒートショック死とは言っていない。片方、国土交通省のバリアフリーの担当者は、浴室で滑って転んだ死亡者が3162人と類似の数字を発表している。滑って転んで亡くなったのか、ヒートショックによるものなのかは不明であるのに、14000人すべてをヒートショックで死んだというデータ操作は甚だ頂けない。(参考資料1)

2■住宅のエネルギー消費量の表示
家庭用エネルギー消費を用途別にみると、シェアーの大きいのは@動力・照明他A給湯B暖房C厨房です。また1973年度と比較して、2009年度で動力・照明用のシェアーが増加しているのは、家電機器の普及や大型化・多様化や生活様式の変化等によるものと見られています。
本来ならばエネルギー消費量が多い分野から対策をたてるのが普通であるが、エネルギー消費量が多い家電には手をつけず、3番目の暖房エネルギー消費量対策に力を入れる。建物の断熱仕様と暖房エネルギー消費量とダブルで規制するのだ。しかし、これは費用対効果が一番低い。例えば、建物の断熱性能U値を0.87にあげると5GJの削減になるが、かかる費用は100万円を超える。一方、給湯で太陽熱温水器をつけると10GJ削減になり費用は30万円ですむ。暖房のために100万円をかけて外皮性能をあげる工事は必須で、30万円ですむ給湯の省エネ対策工事は選択となるのはおかしい。

3■エネルギー消費量の多い全館暖冷房をすすめる
省エネ法の目的はエネルギーを少なくするための法律である。九州で全館暖房すれば37.2GJ必要だが。間欠暖房だと15.6GJでよい。しかし、間欠暖房はリビングとトイレの温度差が6度以上になり、いかにも前出しのヒートショックで死亡すると言わんばかりである。全館暖房なら暖房時間が100分かかるところを25分ですむとか、部分暖房になると、非暖房室の湿度が50%から80%に上昇し結露が発生しやすくなるとか、与条件が違うものを比べて全館暖房の優位性を述べる手法は三流の健康器具販売業者のレベルの説明である。部分暖房のエネルギー消費量15.6GJを全館暖房にすれば、37.2GJと2.5倍に増えるのに全館暖房を推奨するのは、そもそも省エネが目的ではないからだ。いうならば費用対効果の少ない高断熱・高気密仕様を強制するのは、経済成長のためにエコ建材、エコ設備を買ってほしいただそれだけである。

施工マニュアル
新5〜7地域では、壁・床に100_のグラスウールを、天井には200_をいれることになる。断熱性能がよくなると当然内部結露が起こる。それを防止するためには室内側に水も漏らさない防湿層の施工が必要となる。その施工が大変なのだ。断熱・気密と結露の関係は複雑すぎるので、素人は住宅をマニュアル通りに施工しなさいということだ。


断熱には外張り断熱と充填断熱の施工方法がある。どちらの断熱方法がよいかはお互い相手の悪口合戦があるので、双方から意見を聞くとお互いの特徴がよくわかる。外張り断熱工事の決めてはガムテープの力、充填断熱は0.1_のビニールの貼り方の施工力ということだろう。マニュアルでは言葉で「隙間なく充填しなさい」「室内側に空気だまりをつくったら駄目ですよ」ですむが現場は簡単ではない。壁の柱・間柱に断熱材を密着させる工事は大変なのだ。910モジュールの場合はうまくいくが955モジュールや985モジュールの場合は横寸法が不足する(参考資料2)。特殊サッシュの場合は標準より狭いので隙間が発生する。手に刺さるグラスウールをちぎって挿入する人がどれほどいるだろうか(参考写真3)。それにジョイントは3p重ねという指導があるが、断熱材の袋は透明ではないので間柱間の3p程度の隙間は良くわからない(参考写真4)。壁の面材が基本となっている。ビニール袋に入っている断熱材はビニールが防湿層を兼ねていると理解している人が多いが、胴縁で空気層ができる場合は室内側にもう1枚ビニールを張らなければならない(参考写真5)。真壁の場合は絶句する神の手が必要な施工になる。こうなると日本から真壁がなくなる。


床部の施工でも3pの余裕を持たせ床板で押さえるとある。床は合板下地の2重貼りが条件となっていて、床にビニールを貼るなんて考えられないと思う人は多い。1重貼りの施工方法の記載はない。施工が難しいから無いのだ。

天井
天井の場合は、天井材と野縁と吊り木があるため隙間ができる。かならずビニール張りとなる。(参考写真6)竿ぶち天井を考えてみよう。竿縁天井は竿に尺幅の軽い天井材を乗せていく。天井材の重ねはイナゴというクリップで留めていくが重ね代は僅かながら空気が通る。天井材の上に断熱材を乗せることは可能だが、防湿層付断熱材を入れた場合、野縁やイナゴで空気層ができる(参考資料7)。物理的に施工は出来ない。できる方法があれば教えてほしいものだ。次世代省エネ基準が必須となれば日本から竿縁天井が消えることになる。

防湿シートは厚さ0.1_のビニールである。それを隙間なく固定するのはガムテープみたいなものだ。耐久性は何年だろうか。石油製品は硬化し、弾力性が失われることは誰でも知っている。コーキング等は10年という耐久性しかなく、10年すぎたらメンテナンス工事が必要となる。瑕疵担保履行法の保証期間10年とも一致する。コーキングは再施工はできるが、壁の中に埋もれたビニールは検査も施工もできない。どうするのだろうか。
つづく。
 
  参考資料1 説明資料

 
 

参考資料2 横幅の種類の多さに対応可能だろうか。

 

  参考写真3 この隙間をどうやって充填するのだろうか。

 
 
参考写真4 断熱材の袋で隙間はわからない。
 
 
  参考写真5 内側に密着させなさいと書くのは良いが施工不可能。
 
 
  参考写真6 野縁でかならず隙間ができる。
 
 
  参考資料7

 
建築ジャーナル 2013年2月号掲載
 

   
   
 
51
 省エネ住宅「施工技術者講習会」が及ぼす副作用U
   
  講習会を受けた人の意見を聞いた。勉強になったという人より、施工方法にびっくりしたという人が多かった。断熱性能をあげると結露が発生する。その結露防止のためのビニールでの目張り方法が「施工技術者講習会」の目的で、マニュアルどおりに施工しないと手抜き工事といわんばかりの様相である。断熱化しても吸湿できれば結露は防げるが、そのことには言及していない。気密化と吸湿はある程度まで共存できるが、1線を越えると敵味方になる。つまり、高気密化による「結露」を呼ぶ。マニュアルはその結露防止のための施工方法に多くページが割いてある。の仕様に疑問を抱くのだ。医学の世界でも副作用が大きければ治療を断念するように、結露が怖いから高断熱をあきらめ、ほどほどの断熱気密で良いではないかという考えがあっても良いはずだ。誰が決めたかは知らないが、室温20℃を確保せよと高気密・高断熱を押し付けるのはいかがなものか。結露が発生するので、尋常ではない副作用対策に疑問をもつ。を取らせる。その対策は
最後の章に副作用対策が列記してある。「省エネ住宅の住まい方」である。健全な生活を営む行為とは思えない。「より快適で、より健康で、より地球にやさしい暮らしのために」との小見出しで対策は次の通りである。(参考1)
 
  1. 24時間換気扇は止めるな。
  2. 加湿器は使うな。
  3. 厨房機器を使うときは窓を開けよ。
  4. 来客があるときは窓を開けよ。(詳しくは次号で説明)
 
潜水艦みたいなビニール包みの住宅の中で快適に住めるのだろうか。壁の中にいれたビニール製品は何年もつのかと言われても、それは将来のこと。年金問題と同じで現政権には関係がない。CO2削減のための国策の一翼で、省エネ法という法律がつくられ、2020年に完全施行にするための準備講習会だ。断熱性能をあげると結露が発生する仕組みを原理から考え、ビニールを使わない方法がないかを検討しよう。結露が発生しても吸湿させればよいではないか。冬は乾燥するので加湿装置をつけ普通に暮らせないかを考えよう。そんな住宅工法はないだろうか。「ある」。「土壁の家」だ。吸湿性の高い土壁はたとえ結露が発生しても土が吸湿してしまうのでビニール等の防湿材は不要となる。実は「施工技術者講習会」はビニールが要らない土壁仕様を広めるための裏戦略かもしれない。

結露の仕組みを知ろう
まず結露の仕組みを知ろう。原理はここで説明するのは字数が限られているので中学校の理科の教科書を紐解いてもらうとして、現象を見てみる。外気温と内気温の差が原因で結露が起きる。断熱性能が大きければ大きいほど結露が起きる。昔、安藤忠雄氏が言っていた。「自分の設計する家は絶対結露しない。冬寒くて夏暑いからだ」と。もちろん正しい。結露の仕組みは飽和水蒸気量の計算もあるが、ここでは建築材料の透湿抵抗比を知り、結露が起こりやすいかについて検証する。

*透湿抵抗比
断熱層の外気表面より室内側に施工される材料の透湿抵抗の合計値を、断熱層の外気側表面より外気側に施工される材料の透湿抵抗の合計値で除した値で、室内側と外気側の湿気の通し難さの比率を表す数値である。断熱材の境界線を中心とした透湿抵抗比の値が大きいほど、室内側は湿気を壁に通しにくく、外気側は湿気を放湿しやすいことになり、壁体内での内部結露が生じ難い。
  旧W地域の場合、透湿抵抗比が天井では3以上、壁では2以上あれば結露しない。
 
*透湿抵抗
透湿抵抗は材料の種類と厚みによる異なる。

 
材料
厚み_
透湿抵抗uhmmHg/g
通気層18ミリ以上
 
1.8
通気層9ミリ程度
 
3.6
アスファルトフェルト
 
5
アスファルトフェルト
 
300
透湿防水シート
 
0.4
ポリスチレンフォーム
25
11.3
グラスウール
100
1.2
セルロースファイバー
100
1.3
高性能フェノール
25
35
土壁
80
8.1
コンクリート
100
70
モルタル
20
28
合板
12.5
23.4
MDF
12
6.3
軟質繊維版
12
1.3
石膏ボード
12.5
0.7
杉板
20
28
防湿フィルム(A種)  
170
防湿フィルム(B種)  
300
スチロールスポンジ
25
11.3
窯業サイデング
12
12
 
・透湿抵抗値は材料の継ぎ目で大きく値は違う。アスファルトフェルトを見てみよう、床に敷いただけでは5uhmmHg/gなのに、継ぎ目なく施工すれば300u hmmHg/gとなる。60倍も違う。その程度は、抵透湿抗値が1桁の場合は材料を重ねただけの施工でよいし、2桁の場合はテープ止め。3桁となると完全密閉となるだろう。
・木材の透湿抵抗値は28ummHg/gであるが、本実や合い欠き接合部は梅雨時は膨らみ、冬は縮む。冬を主眼においたら縮むので無垢の床材の透湿抵抗値はゼロと見るほうが妥当だろう。

結露がおきる場所
屋根

外気側 :S−1:瓦、僅かな空気層、アスファルトフェルト、野地板
  :S−2:瓦、僅かな空気層、アスファルトフェルト、合板
  :S−3:瓦、僅かな空気層、アスファルトフェルト、野地板、良い通気層
  :S−4:瓦、僅かな空気層、透湿シート、野地板
室内側 :U−1:グラスウール、ビニールシート、杉板
  :U−2:グラスウール、杉板
  :U−3:グラスウール、石膏ボード12.5_、クロス
  :U−4:グラスウール、ビニールシート、石膏ボード12.5_、クロス
  :U−5:羊毛ウール、杉板
 
  • この数字は筆者が勝手に当てはめた数字で一般に公表できるものではない。信用度はかなり低い。
  • 透湿抵抗比が3以下では結露がおきる。太字が結露しやすい組み合わせ。(太字にしてください)
  • 小屋裏換気が無い場合は屋根には使用できないことになっているが参考までに算出してみた。
  • 空気層があればそれより外気側の材料はカウントしない。ことになっている。
  • クロスなどの内装仕上げ材は算入できない。
     
 
  • 通気層があっても、アスファルトフェルト敷きは室内側にビニールを入れないと結露を起こす。
  • 屋根下地のアスファルトフェルトは熱で溶けて、密着度は高まり透湿抵抗値は上昇するので、さらに結露は発生しやすくなる。
  • 温暖地では、夏結露は起きないという人もいるが、屋根には起きる。特に梅雨時は、内外の気温差は少ないが湿度が高いのでわずかな温度差でも結露が起きる。結露対策も冬結露と夏結露では露点位置が逆転するので、夏の結露対策はこの表では参考にならない。意味をなさない。冬の結露対策が逆に悪さをする。断熱材の外と内に防湿層をつくるのは理論的に難しい。そのことを知っている地元の建設会社はどんなにコストダウンを要求されても、屋根野地板には合板を使わない。無垢材だと結露水を吸収することで問題が起きないことを知っているからだ。全国展開のFC住宅は工期短縮と屋根剛性や精度を売りに屋根下地に平気で合板を使う。瑕疵担保履行法があるから10年は大丈夫という考えだろうか。(つづく)
 
「住宅省エネルギー技術・施工技術者講習」の挿絵から
 
  (1)解放型ストーブはしようしないようにしましょう!
(2)換気装置はとめないこと!

  (3)ガスレンジ使用時には強制換気をすること!
(4)人が大勢集まった時には窓を開ける!

 
建築ジャーナル 2013年3月号掲載
 

   
   
 
52
 省エネ住宅「施工技術者講習会」が及ぼす副作用V
   
  結露が起きる場所


 :外気側S-1:窯業サイディング、透湿防水シート、構造用合板
 :外気側S-2:窯業サイディング、空気層18ミリ、透湿防水シート、構造用合板
 :外気側S-3:窯業サイディング、空気層18ミリ、透湿防水シート、ダイライト
 :外気側S-4:漆喰、モルタル、透湿防水シート、下地板
 :外気側S-5:杉板:
 :外気側S-6:漆喰、モルタル、アスファルトフェルト、下地板

 :室内側U-1:グラスウール100_、石膏ボード12ミリ、クロス
 :室内側U-2:ポリスチレンフォーム25_、構造用合板、空気層、石膏ボード12ミリ、クロス
 :室内側U-3:ウール断熱材、ラスボード、プラスター、漆喰、
 :室内側U-4:フォレストボード25、土壁、漆喰
 :室安側U-5:グラスウール100_、石膏ボード12ミリ、防湿シート、クロス

 
透湿抵抗比
外気側
S-1
S-2
S-3
S-4
S-5
S-6
室内側
透湿抵抗の合計
35.8
25.6
3.5
28.4
0.1
33
U-1
1.9
0.05
0.07
0.5
0.06
19
0.05
U-2
34.7
0.9
1.3
9.9
1.2
347
1.05
U-3
4.1
0.1
0.1
1.1
0.1
41
0.12
U-4
9.4
0.2
0.3
2.6
0.2
94
0.28
U-5
171.9
4.8
6.6
49.1
6.0
1719
5.2
透湿係数比が2以下では結露がおきる(太字)
 
  • 表を見るとU-4仕様の土壁は結露が発生することになるが、朝方の結露水を土壁が吸湿し、午後の気温上昇で蒸発してしまう。しかし、防湿シートがあると結露水の乾燥を邪魔してしまう。U-5仕様はどんな組み合わせでも結露は発生しにくい。だからこの仕様を国は勧める。
  • 吸水はするが吸湿はしない代表的な材料が、グラスウールやロックウールだ。構成材の繊維自体に水を貯め込むだけで、吸湿する作用ではない。ほどほどの断熱だったら、断熱材付属の防湿シート程度の結露対策でよいが、高断熱にすれば副作用対策の工事が必要となる。U-1仕様とU-5仕様の違いを見て分かるように、防湿シートを隙間なく敷き込むと完璧な結露対策となる。「隙間なく敷き込む」という施工が難しい。床や天井との見切り部の防湿シートは3p以上の重なりとか、筋違部の防湿シートを残して断熱材を切断せよとか、神の手程の技術が要求される。最近の断熱材には、現場吹き付けだからジョイントがなく、防湿シートは不要と説明する製品があるが、床や壁や天井の見切り部では密着した防湿シートの施工は必要だ。利点は声高に言うが欠点は黙る日本の企業精神が断熱業界にもある。
  • 外壁下地に透湿防水シートが普及してきたが、瑕疵担保履行法の設計・施工基準では透湿防水シートは雨漏れがしやすいと禁止している。アスファルトフェルト防水紙での施工をしないと補償金はおりない。瑕疵担保履行法では結露被害は保障の対象外で雨漏れ被害が保障対象だからだ。雨漏れ防止が大事か、結露対策が大事か大工さんは困ってしまう。
 
外気側 :S−1:合板
  :S−2:下地板
  :S−3:基礎断熱等密閉仕様
室内側 :U−1:ポリスチレンフォーム50_、フローリング
  :U−2:ポリスチレンフォーム50_、合板、杉板
  :U−3:ポリスチレンフォーム50_、防湿シート、フローリング
  :U−4:ポリスチレンフォーム50_、杉板
  :U−5:フォレストボード50、杉板
  :U−6:スタイロ畳
 

透湿抵抗比
外気側
S-1
S-2
S-3
室内側
透湿抵抗の合計
23.4
0.1
1.8
U-1
34.7
1.4
347
19.2
U-2
34.7
1.4
347
19.2
U-3
181.3
7.7
1813
100
U-4
11.3
0.4
113
6.2
U-5
2.6
0.1
26
1.4
U-6
11.3
0.4
113
6.2
透湿係数比が2以下では結露がおきる(太字)
 
 
  • 床下に結露水が溜まるという事故が頻繁に起きている。床下は湿気が多く湿度が高いのでわずかな温度差で結露は起きるのだ。透湿抵抗比2以下でも起きるのかもしれない。
  • 床材に厚い無垢板や藁床畳を使うと露点を越えても、床材が吸湿するので結露水が表に出にくい。無垢材でも塗装品は吸湿しないし、スタイロ畳も吸湿しないので防湿シートが必要となる。
  • 井戸水の場合、夏でも水温は16℃である。給水管は断熱してあるので問題はないが、排水管はむき出しなので排水管に結露が発生する。排水ヘッダー方式の場合は特に注意が必要だ。
   
  講習会テキストの4つの注意事項
 
・加湿器は使うな。石油ストーブの上にヤカンを乗せるな。
省エネの生活スタイルが広まっている。加湿器のリコールが問題になっているが、最近の商品は安全だと売れ行きは好調だ。湿度が高いと、同じ気温でも体感温度が高くなり、省エネになると生活専門家は加湿器を勧める。医者も湿度50%以上の場合、インフルエンザ菌が死滅すると説明するので、家電販売店の売り場は加湿器で埋め尽くされている。温熱専門家は加湿器を酷評し、ハウスメーカーの営業マンは加湿器を使わないように説明するが、家より命の方が大事と医者の進言を優先する。国は本気で2020年に省エネ法を義務化するのであれば加湿器販売を禁止すべきではないだろうか。国は怖いおばさん相手に喧嘩は売れないので、行政に弱い建築業界を指導をするのだ。脱法ドラッグ規制のように、売ってはよいが使用してはならないという論理にどこか似ている。

・24時間換気扇は止めるな。
福島原発事故の時、放射能が家の中に入ってこないようにと24時間換気扇は止めるように指示が出た。過去、24時間換気扇設置義務化の講習会の時は、「絶対止めるな!命に関わる」と当時の説明会ではあった。テキストのような施工をし、換気扇を廻さないと酸欠を起こすことになりはしないか。換気扇を止めて窒息死するか放射能を取り込んで被爆死かの選択を迫られる。大変な家の仕様だ。九州においてPM2.5粒子が中国から飛来している。呼吸器が弱い人は外出をひかえよというが、24時間換気扇を止めよとの指令は出ていない。最初から止まっている家が多いからだ。

・料理する場合は窓を開けよ。
密閉住宅では台所の換気扇を廻すと吸気量が不足する。24時間換気扇は人間の呼吸のために必要な空気量で料理用燃焼機器の空気量は計算外である。24時間換気扇と台所の換気扇を同時に回すと、室内の空気が無くなってしまうので別の吸気孔を設置せよとのことである。茶室では茶釜に炭を使う人もいる。鍋料理にカセットボンベを使うこともある。一酸化中毒の危険性があるので、更に換気が必要である。2020年からの義務化と同時に茶室での炭使用やカセットボンベの使用は禁止と住みにくい世の中になりそうだ。

・来客が多い場合は窓を開けなさい。
人は臭いと感じると忌避行為で避難する。その原理を利用して都市ガスやプロパンはわざと臭いをつけてある。住人が多くなるとCO2濃度が高くなり酸欠を起こすので「来客が多い場合は窓を開けよ」との注意があるが、CO2は無臭なので濃度が高くなっても危険を感じることはなく普通の人は対策を取らない。低酸素の状態に長くさらされると健康障害が起こるが、医者はまさか低酸素状態とは思わないし、病院に運ばれても簡単には診断できない。低炭素住宅が低酸素住宅になるとは笑いにもならない。そもそも、住宅に酸欠を起こすほどの密閉度が要るのだろうか。20〜30m程度の洞窟だったら吸排気装置は設置してない。洞窟以上の性能を要求し、冬は室温を20℃キープ、夏はエアコンで27℃に下げることがそんなに大事だろうかと疑問に思う。冬は17℃、夏は31℃程度でどうしていけないのだろうか。これくらいだったら、省エネと耐久性と健康問題が両立できるのにと思うのだが。

・講習会を受けた人の感想を地域毎にまとめたらどうだろうか。1〜4地域での施工指導は賛成である。5〜7地域では害になることが多い。暖房エネルギー使用量の少ない5〜7地域の人に、「冬の暖房は20℃、夏は27℃にする家」を基準に結露防止対策工事を全住宅に指導するのは止めて頂きたい。結露する家、結露しない家、20℃の家、17℃の家と多種の家があるのに結露するからと全部の家に規制をかけないでほしい。「銃を持った悪人がいるから銃がいる」というアメリカ的発想は良くない。みんなが銃を持たない平和な日本は住みやすいのだ。自己防衛と裁判が好きなアメリカを模倣するのはやめませんか。2×4化した日本の住宅。街並みも、店舗も、家の作り様も、国の守り方も個人の守りかたもアメリカに近づいている気がする。

ハイテク材が目指すものはローテク材だった。
S55年に、住宅の価格を550万円にする国家プロジェクト「ハウス55」が企画された。その中の一つであるMホームが開発した「セラミックウォール」は注目を浴びた。外装材でもあり、内装材でもあり、構造体でもある多機能建材という振れこみだった。別会社までつくる力のいれようだったが、コンセントやスイッチが付かないとかの接合部の難しさから数年で製造中止になった。
よく考えてみるとそのセラミックウォールが目指した夢の建材は既に日本にあったのだ。土壁だ。外装材であり、内装材であり、構造体でもあり、コンセントやスイッチは仕上げ前であれば簡単に設置可能である。土壁は「セラミックウォール」の上をいく建材であり、前号に書いたビニールなどの防湿材を使用しなくてよいのだ。結露防止のために何年もつか分からない石油製品を使うより土壁を採用しよう。次世代省エネ基準と「施工技術者講習会」は土壁施工の裏の応援団なのだ。

副作用シリーズは伝統的構法の建築に限った注意であり、一般の住宅に対しての注意喚起ではない。

   
 
建築ジャーナル 2013年4月号掲載
 

   
   
 
53
 伝統構法の基礎を過剰設計するべからずT
   
 

建物の構造の部位で、基礎が一番大事だと思っている人は多い。家の重さの6割が基礎だとすると少し重すぎはしないだろうか。基礎が大事といって、過剰設計になっていないかを検証する。古くからある伝統構法の建物の基礎を見てみよう。東大寺や西本願寺は、重量もあり大きな建物だが、ただ石の上に乗っているだけである。それなのに100年も1000年ももつのはなぜだろうかと疑問がわく。
 昔の人は、基礎の石よりも基礎の下の地盤が大事であると頑丈な基壇をつくった。基壇の場合は土なのでどんなに固く強く作っても基壇の重量は変わらない。しかし、コンクリート基礎の場合は土の2倍の比重なので下の地盤が弱いと建物が沈下しやすくなる。そのためにいろんな手法が取られる。
現在の基礎工事の方法は、杭を別にすれば、ベタ基礎、布基礎、独立基礎と3種類である。ベタ基礎が一番コンクリート使用量が多く、軟弱地盤にはベタ基礎がよいと思っている人が多い。

頑丈そうなベタ基礎が原因で建物が沈下する。
ベタ基礎の計算をしてみよう。建物の大きさを10×10=100uとし、上部の建物の重さを30tとする。ベタ基礎の大きさは、10×10=100uとなり、基礎の重さは大体50tとなる。上部30tと50tの基礎の合計は80tとなる。30tだったら沈まないのに、重い基礎をつくり80tとなったために建物が沈下することになりはしないだろうか。海中で人間が裸だったら浮いているのに、鉄の鎧を着たために沈むようなものだ。(図1)
さらに計算をしてみよう。地盤の地耐力が5t/uの場合、建物が100tだったら地盤面は20uの広さで十分である。100uも要らず1/5で充分ということになる。(図2)
合理的な設計を行うハウスメーカーはほとんどベタ基礎を採用していない。基礎幅が広いベタ基礎は、地下に影響線が広がり、深い層の軟弱の影響や地下の障害物の影響を受けやすく、ベタ基礎が不利になる場合もある。(図3)

基礎は過去の事故例がトラウマ
30年前は地盤調査はほとんど実施されていなかった。構造計算書には「地耐力は長期で5t/uと仮定する」という内容で建築確認をとっていた。そのため沈下の事故が多かった。地耐力が5t/u以上あるのは過去の調査例からみると2割しかない。昔、地盤調査をしないで建てていた建築物は8割が適切な対応をしていなかったとなる。そのために地盤沈下の事故が起こった。事故がおこると基準は厳しくなる。それが現在に至っているのではないか。計算をしなくてもよい楽な仕様規定の基礎設計基準を採用すれば過剰な設計の基礎となる。

地盤の強さ
地盤が弱い場合の指針に国土交通省と住宅保証機構の指針は表現が微妙に違う。
国土交通省告示1113号第2号をみると、
「地震時に液状化するおそれのある地盤の場合又は三項に掲げる式を用いる場合において、基礎の底部から下方2m以内の距離にある地盤にスウェーデン式サウンディング(以下SWS)の荷重が1kN以下で自沈する層が存在する場合若しくは基礎の底部から下方2mを越え5m以内の距離にある地盤にSWSの荷重が500N以下で自沈する層が存在する場合にあっては、建築物の自重による沈下その他の地盤の変形等を考慮して建築物又は建築物の部分に有害な損傷、変形及び沈下が生じないことを確かめなければならない。」
さらに、住宅保証機構の指針をみると、
「地表から深さ2m以内にSWSの荷重が500N以下で自沈する層が合計して0.5m以上存在する場合、又は、地表から深さ2m以上、10m以下の間にSWSの荷重が500N以下で自沈する層が合計して2m以上、連続で1m以上存在する場合、(ただし深さ2m以上、5m以下に自沈層が無い場合を除く)地盤改良や杭基礎が必要である。」
国土交通省の告示をみて、2m以下に1kN以下の自沈が1か所でもあれば地盤改良と判断する人が多すぎる。「建物の沈下が生じないことを確かめなければならない」とあるだけで、地盤改良等を即求めるものではない。確かめる方法として住宅保証機構の指針や、地耐力強度バランス、履歴、埋蔵物など多次元に考察しなければならない。
いくつかのテストをしてみよう

A・2〜5mに1か所に500N次陳壮が0.25mあった場合。
B・2〜5mに1か所に750N自沈層が0.50mあった場合。
C・2〜5mに自沈層がなく6〜7mに500N自沈層が1mあった場合。
D・2〜5mに自沈層がなく1か所に750N自沈層が0.50mあった場合。
E・2〜5mの全てが750N自沈層な場合。
F・2〜5mにおいて1ヵ所に1kN自沈層があり、地耐力に2.5t/u、5t/uとバランスが悪い場合。

総合的判断で明らかに対処工事が必要なのはFだけである。A〜Eは地盤強度が均等であれば、地盤補強の必要はないと見るのが一応妥当。A~Fの地盤強度は計算すると2〜3t/u程度だろう。2階建の建物重量は1t/uなので、不等沈下のことを考えると地耐力の強度より基礎に接する地盤の強度差が2倍をこえる土地は要注意である。(図4)
国土交通省告示1113号の「確かめなければならない」を盾に取り、A〜F全てを地盤改良や杭打ちと判断する調査会社が多い。基礎補強工事と地盤調査が同じ会社なら、地盤調査をサービスで行い、軟弱地盤だったら弊社に補強工事をさせて下さいという誘導商法にひっかかり、多大な費用を施主負担にさせているのである。地盤調査を撒き餌とし、補強工事で儲かる仕組みである。
長年地盤の研究をしてきた建築研究所の田村昌仁さんは、「自沈層がなければ問題ないとする場合もあるようですが、新規の盛土ではSWSの結果のみに依存する設計では極めて不十分です」と警告し、「自沈層がほんのわずか存在するだけで即、改良といった安易な設計」については過剰反応と言っている。
また、地盤ネット株式会社も「現在実施されている地盤改良工事判定物件の7割が、改良工事不要なのではないだろうか」と、SWS調査だけに頼る安直な判断に警告している。
つづく


 
図1
 
図2
     
図3
 
図4
   
 
建築ジャーナル 2013年5月号掲載
 

   
   
 
54
 伝統構法の基礎を過剰設計するべからずU
   
 

地盤補強が必要かどうかをスウェーデン式サウンディング(以下SWS)調査だけで判断するのは非常に難しい。確実に補強不要であるという地盤は2割、沈下するから地盤補強が必要であるという地盤は2割、残りの6割はグレーゾーンである。グレーゾーンの地盤に地盤補強会社が補強工事を安易に勧めることには疑問であると前号で書いた。地盤補強工事費用は100万円近くかかり、必要性の是非を容易に判断する責任は重い。

構造計算の落とし穴
基礎の検討は2種類の計算をしなければならない。まず一つは、建物の重さを基礎の面積で割り、地盤の強さがそれ以上あればよいという計算。先月記載の計算を例にとれば、建物と基礎が80トン。地盤の地耐力が0.8トン/uであれば、基礎の低面積は100u必要である。地耐力が4トン/uであれば、基礎の低面積は20uとかなり少なくてすむ。地盤の強度により基礎の大きさが違うのは当たり前である。もう一つは地盤の反力による配筋の計算である。建物の重さで基礎のコンクリートが壊れるので、相当の鉄筋をいれよという検討である。仕様規定の配筋表をみてみよう。(参考1)スラブスパンの長さによって鉄筋の量が違う。地盤の強さは関係ないのである。地耐力が0.8トン/uでも,4トン/uでも同じ基礎でなければならないのはおかしい。理由は地盤の反力の計算が難しいので、安全側に合わせているのである。スラブスパンが長ければ鉄筋量が多くなる計算は過剰計算と思う。独立基礎であれば必要な底面積の分しか配筋は必要がない。ベタ基礎は白蟻対策や防湿対策に利点はあるが、コンクリートや鉄筋量が多すぎる。ベタ基礎を選択する場合は、計算の上では独立基礎としておこない、施工をベタ基礎のようにする方法がある。図の白い部分はおまけで荷重は負担していないので基礎ではないという考えである。(参考2)白い部分には鉄筋も要らないし、かぶり厚も要らなければコンクリートの厚さは薄くてよい。
ひび割れ防止のためなら鉄筋の替わりに竹をいれてもよいだろう。(参考写真3)熊本には戦時中の竹筋コンクリートの橋が今でも健全である。

液状化から学ぶ伝統構法の基礎
3.11の浦安地区の液状化から学習しよう。ベタ基礎の家が沈下した。土台から上の建物構造は壊れていないのに、建物を嵩上げし、水平にするのに500万円以上の費用がかかる。基礎と土台がアンカーボルトで緊結されていて、それを見つけるのに壁を剥がし、作業をするのにスペースの確保も必要だからである。また柱を上げるのに手掛かりがないので嵩上げ装置をつくらねばならない。基礎と建物の接合部が見えないから修復工事に500万円以上かかるのである。
 伝統構法の場合、基礎の上に乗っかっているだけで目視できる。基礎が沈下した場合、建物を上げるのに、足固めをジャッキで上げれば柱は追随して上がる。上げた分にスペーサーを入れる作業は簡単である。嵩上げ工事も田の字の交点の通し柱だけ上げればよいので、9本もしくは12本をあげればよい。工事費用も30万円程度だろう。(参考写真4)民家再生の現場では嵩上げ工事は日常行われている。100年以上経過した建物は殆ど不等沈下していると言ってよい。伝統構法の足固め構法は地盤沈下が起きることを想定した構法なのだ。
ベタ基礎、布基礎、独立基礎のうち、コンクリート量が少なくてすむのは独立基礎である。地耐力がある程度あれば、構造計算をして独立基礎とするのが経済的だ。グレーゾーンの地盤に100万円のお金を掛けたくない。とはいえ、なんとなく不安である。それならば沈下した場合の補修工事を想定した伝統構法の家づくりがよい。

実例独立基礎
ベタ基礎信仰者は意外と多い。ベタ基礎の工事費用が120万円とすれば、独立基礎は80万円ぐらいである。独立基礎の地盤沈下の可能性が大と仮定しよう。起きるかもしれないし、起きないかもしれない。もし地盤が沈下したときの建物の嵩上げ費用が30万円だったらどうだろうか。30万円を補修費用を供託金として10年定期にしておく。沈下したら30万円を使い、しなかったら30万円の儲けとなる。地盤補強工事に100万円かけるより伝統構法を採用して、地盤沈下対応仕様にしておくのが良い。伝統構法の利点がここにもあった。
地盤沈下の検証はSWS調査以外に、1、建物の重さ対地盤の強度。2、地盤強度のバランス。3、水深の変化。4、新しい盛土ではないか。4、切土、盛土が混同していないか。5、過去、貯水池や河川ではなかったか、または川岸ではなかったか。6、ガラや木の皮などの埋めものがないか。これらを全て良しと判断するには莫大な調査費用がかかる。

間接経費
基礎を頑丈に作っても地盤が弱ければ建物は沈下する。瑕疵担保履行法は工事に対する瑕疵の保険であり、地盤が原因による建物沈下では保険金はおりない。地盤は沈下せず、建物だけが6/1000_沈下したら保険の支払があるという素人には理解しがたい保険制度である。瑕疵担保保険会社の保険金の還元率はわずか0.4%と東京新聞2月11日号は伝えた。パチンコ業界の還元率80%、やくざの賭博の還元率の70%と比べて還元率はきわめて低い。これで保険といえるのだろうか。施行時、交通事故の自賠責と同じとの説明で強制加入させられ、当時は批判もあった。喉もと過ぎれば反対意見は沈静化してしまう。24時間換気扇、火災警報器、確認の厳格化、品確法、瑕疵担保履行法といつのまにか、間接経費がどんどん増えてきた。今後予想されるのが消費税で平均100万円アップ、防火戸認定で100万円アップ、改正省エネ法で100万円アップとつづく。これらの間接経費だけでも、本来掛けるべき建築費用はなくなってしまう。シロアリが群がる住宅建設業界である。

 
参考資料1



参考資料2


参考資料3
 
参考資料4
 
   
 
建築ジャーナル 2013年6月号掲載
 

   
   
 
55
 誰のための木材利用ポイント410億円
   
 

車のエコポイント、家電のエコポイント、住宅版エコポイントはエコノミーとエコが両立したと自画自賛の評価だった。住宅版エコポイントは、ペアガラスを採用したら最高30万ポイント(30万円相当)の商品券をくれた。ポイントをもらう条件が、アルミサッシュ等の採用で、申し込み、設置、支給まで短期間で、書類の手続きは簡単だった。業界の認知度は高く、使用証明の発行もスムースで、価格も相場があり不正受給はなかった(だろう)。商品券の使用もウォーシュレット等の建築設備等であり、欲しいものと簡単に交換できた。原資枠はあったが、締切1ヶ月前に、枠が満杯で利用できないかもしれないという情報が流れていたので、ダメ元申請の人も滑り込みアウトになっていたとしても、不満の声は聞こえてこなかった。木材利用ポイントはどうだろうか。

木材利用ポイントのもらい方

 

  @ 主要構造材の半分以上に対象地域材を使う工事に、登録業者が施工した場合、最大30万ポイント。
A 内装の床・壁や外装壁に対象地域材の登録建築材料又は天然木の板類を使うものに最大30万ポイント。
B ペレットストーブ、薪ストーブ、木質製品を購入する場合に最大10万ポイント(7月に決定)。
 
 
    ・H13年4月1日着工分より予算の枠が終了するまで。原資410億円に達したら締切る。
    ・申請は建物が出来上がって検査済証が発行されたもの。
    ・対象の地域材とは地域で「ガイドラインにより合法性が証明された木材の証明」を受けた材等。
    ・住宅会社の登録は5月末に締切、発表は6月以降になる。
    ・登録建築材料のリストの発表は6月下旬である。
    ・@とAの重複申請は可である。Bについては7月に発表。
 
総予算は410億円である。@とAは重複申請が可能なので1軒当たり60万円を申し込むと、対象者は6万戸分である。1年間の戸建ての新築数は平均40万戸なので、新築換算で15%分しか枠がないのである。増築も含まれるので新築の融資枠はもっと少なくなる。
よく考えてみよう。4月からスタートしたものの@とAの説明会がやっと5月にあった。登録業者の発表は6月末だ。Bの薪ストーブ等や木材製品についての要綱説明はなんと7月とのことだ。神業的スケジュールだ。次に申し込みに必要な申請書類を見てみよう。
・登録工事業者等の発行する工事証明書
・建築工事届の写し
・供給業者の発行する納品証明書
・工事請負契約書の写し又は売買契約書の写し
・確認済証の写し
・検査済証の写し
・主要構造材等で使用する対象地域材の産地・樹種に関する表示の写真
・竣工写真
・領収書の写し
施工は登録業者との契約が条件で、材料は「合法性が証明された木材」等の証明書をもらい、工事中は「その木、どこの木、○○産のスギの木を柱、梁に使用しています」という工事看板やのぼりを自費で立て、工事完了後に検査済証をもらってからの申請だ。その時、予算枠410億円が満杯とこの制度は受けられない。予算枠が今年の12月に満杯になるのか、来年の3月になるのか全くわからない。工事看板やのぼり旗だって3万円ぐらいはかかる。準備してポイントがもらえなかった場合、その3万円の経費支払は無駄になり腹が立つ。やり場がないので、木材利用ポイント制度を勧めた設計士か工務店に怒りの矛先が向く。
普通なら融資は、申込申請をし、実施し、検査合格が出て、融資をもらえる。木材利用ポイントの申請はどうして全てが後日申請なのだろうか。融資締切に間に合うか分からないのに手続きをしなければならない。「いやなら止めれば」という具合でおごり申請のように思えてならない。

目的は国産材需要拡大なのか
外材で建てようとした人が、木材利用ポイント政策のことを知り、国産材に切り替えるなら国産材需要拡大の意味がある。消費者は5月に説明会でしり、6月末に登録業者に相談し、国産材への切り替えは7月、木材を乾燥する間もなく、8月に着工し、現場に3万円の看板を立て、6ヶ月工期で26年年1月に完成し、確認機関から検査を受け、検査済証をもらいA月にやっと申請だ。普通の最短コースでこれだ。最短で国産材への切り替えを決断しても、木材乾燥に3ヶ月かければ締切の26年3月をオーバーしてしまう。締切に間に合うか、間に合わないかわからないことを5〜6月に決断しなければならない。(もう過ぎている)
では、実際には誰が使うかといえば、初めから国産材と決めたていた人が利用するだけで国産材の需要拡大になるとは思えない、
もう一つ落とし穴が開いている。@の規定では構造材の半分以上使用というが、判断が難しいので、規定では100uの建物で構造材6?としている。普通の木造住宅で100uなら、構造材は20?なので半分では10?となる。規定が6?とは極端に少ない量である。構造材と言えば柱・梁・母屋・土台・筋違である。間柱まで含んでよいとある。外壁下地板は構造に含まないが、○○ホームの家は、外壁下地材を構造計算の一部にしているので、屁理屈をいえば構造材の一部と言える。構造材6?は非常にハードルが低い。全体の7割に外材を使い、外壁下地に国産材をつかえは基準の6?使用は簡単にクリアできる。言うなれば、国産材使用を5割に増やさなくても申請ができるのだ。工事契約2月、着工が4月1日、6ヶ月の工期で9月に申請が可能となる。木材利用ポイントは○○ホームのお客様プレゼントのための制度のように思えてならない。


ポイントの利用方法
ポイントをもらって活用する方法は

@ 地域の農林水産品と交換
A 農山林地域における体験型旅行
B 全国商品券(食品・
C 森林づくり・木づかい活動への寄付
D 被災地への寄付

30万ポイントをもらい、被災地に寄付したり、森林づくり・木づかい活動に寄付するのはよいことだが、よく考えてほしい。原資は国税である。書類をつくり、各方面から印鑑をもらい、ポイント券をもらって被災地や山に寄付するなら、直接国税を寄付した方がよい。住宅版エコポイントの10倍くらい複雑な申請手続き経費は、政府関係の外郭団体に消えていく。不正が無いようにという大義名分があり、複雑に申請すればするほど中間経費は必要だ。410億円のうち、実質のポイント費用はいくらになのだろうか。

地域材の需要拡大の喚起になるのか

林野庁が地域材の需要の拡大を喚起する施策として410億円の予算で実施する。が、利用する人は最初から地域材を使うと決めた人か、100u程度の住宅で6?の地域材(全体の3割程度)をつかう○○ホームか、短工期のビルダーである。地域材の需要が伸びたかどうか、国民はしっかり見届けなければならない(国民の代理人は国会議員であるが、書類をみるのは苦手のようだ)。全国1家族当たり2000円相当の税金だ。山が大事だったら、林業人口は5万人なので、410億円を直接林業者にくれてやったら一人あたり80万円となる。夫婦だと160万円である。直接支給した方が効果的と思うのだが。
決まってしまった制度は仕方がないので、伝統構法の人よ、○○ホームが使うまえに利用し、被災地や山に寄付しよう。
 
 
   
   
 
建築ジャーナル 2013年7月号掲載
 

   
   
 
56
 民家再生は伝統構法を学習してから
   
 

民家再生という単語は広辞苑に記載がない。建築事典にもない。降幡廣信氏が作った造語だからである。降幡氏は40数年前から民家再生に取り組んでいた。「建築工事は新築が主流であるが、古くなり機能がそぐわなくなると古いものは取り壊され、新しく造り変えられる。復元という工事もあるが古い姿を残すことが目的で、時代に合わないことも多い。民家再生とは、新築工事と復元工事に加えて新しい第3の工事という位置付けであり、一時しのぎの修繕工事ではなく、民家の欠点である暗い・寒い等を解消し、構造や耐久性は新築工事に劣るものではなく、現代の生活に合わせて生まれ変わることである」と定義した。

日本民家再生協会という組織と類似品
テレビ番組の「劇的ビフォーアフター」は人気があるのは誰もが知るところである。構造は大丈夫かと批判的に見る建築専門家もいるが、ひとつのドラマとしてみると結構おもしろい。著名な先生が「匠」と呼ばれ、ノコをぎこちなく操作する姿は笑ってしまう。しかし、この番組が、工事内容を「民家再生」と言わないところがよい。幅広く視聴者に、古い家でも賢く手を加えれば新築と同等もしくはそれ以上になると訴える力は大きい。「民家再生」の認知度があがったのも、この番組のせいだろう。
民家というものを見直すのはまだまだ珍しかった1990年代に、「日本民家再生協会」が結成された。幾世代にもわたり風雪に耐えてきた日本の民家が失われるのを守るため、「日本の民家を次代へ引き継ぐ」を理念として掲げ、降幡氏を顧問とし、民家に関心を持つ人々(民家所有者、民家利活用者、建築家、工務店、職人、研究者、文化人、マスコミなど)が集まった組織である。
ところが昨今、民家再生という言葉が浸透してきたので、民家再生を表現する団体が別に現れた。「古民家再生協会」という団体だ。名前からして非常に紛らわしい。韓国裁判所が「ダサソー」を「ダイソー」の商標権侵害とし、商標使用の差し止めをしたのは記憶に新しいが、「民家再生」と「古民家再生」の違いはなんだろうか。内容をよく見ると、なんと「古民家再生協会」は資格のオンパレードであるようだ。古材鑑定士、古建築資材施工士、古民家鑑定士、循環型民家解体士、古材活用士、その他住育検定、住育コンシェルジュ、木のソムリエ等盛りだくさんである。資格マニアには絶好の団体だ。1日の講習会を受け、会費を払えば資格を貰える。資格ビジネスという新しい成長戦略で、アベノミクスの一環だろうか。

民家再生の意義
法隆寺が1300年もったというのは不具合な箇所を発見したらその都度修繕できたからだ。民家の構造である木造の伝統構法は鉄筋コンクリート造や鉄骨造と違い、部分補修が可能である。構造が意匠となり表面に出ているので、不具合箇所を早期に発見でき、メンテナンスがしやすい。なおかつ、木・土・紙・石などその土地にある材料でつくられ、役目を終えてもすべて土に還るので不都合なゴミとならない。

民家再生に建築確認は必要か
建築基準法に民家再生の定義はない。近いのは「過半の大規模の修繕」「過半の大規模の模様替」である。まず「修繕」と「模様替」の違いについて説明する。建物は、月日の経過とともに少しずつ傷んでいき、建築物としての構造上の性能や品質が失われていく。代表的な事例としては、屋根の雨漏り、外壁のひび割れ、柱の腐食、床のたわみ等が挙げられる。性能や品質が劣化した部分を既存のものとおおむね同じ位置に、おおむね同じ形状及び寸法で、おおむね同じ材料を用いて造り替え、性能や品質を回復する工事を「修繕」といい、同じ位置でも異なる材料や仕様を用いて造り替え、性能や品質を回復する工事を「模様替」という。
次に「過半」とは「全体の過半」か「部位の過半」かという問題がある。建築基準法の「過半」の定義を見ると「各主要構造部ごとに行い、柱や梁にあっては、それぞれの総本数に占める割合、壁にあっては、その総延長に占める割合、床や屋根にあっては、それぞれの総水平投影面積に占める割合、階段については、その総数に占める割合が、過半か過半でないかを判断する。」とある。そうすると、階段の付け替えや屋根替えも「過半の大規模の修繕」となる。しかし、階段の付け替えや屋根替え程度で建築確認を出す人はない。
 建築基準法6条1項4剛をよく見てほしい。4号建築物には建築(新築、増築、改築、移転)しかなく、「大規模の修繕」・「大規模の模様替」は存在しないので、建築確認はださなくてよい。それでは「改築」には該当しないかとの疑問がわく。建築基準法での「改築」は、「建物の全部または一部を取り壊した後に、引き続き、これと位置・用途・構造・階数・規模が著しく異ならない建物を建てること。使用材料の新旧は問われない」とある。取り壊さない限り「改築」ではないので、建立したままの大幅な修繕や模様替えは「改築」にも当たらない。
ただし、曳家をして建物を移動させるのは「移転」にあたり、建築確認は必要となる。
また、カフェや飲食店への改装は、用途変更となり建築確認は必要となるので注意しなければならないが、民家が昔から店だったり作業場だったら救われる場合もある。

民家再生の価格
建築は基礎、屋根、軸組、外壁、内壁、建具、設備で構成している。再利用できる部分は軸組と建具だけのことが多い。金額に置き換えると軸組と建具が占める割合は15%だ。軸組と建具が仮にタダだとしても85%はお金がかかる。痛んでしまった構造や建具にも手を加えれば工事費用は新築とあまり変わらなくなる。
一昔前は、「民家再生は軸組にお金がかからないので500万円ぐらいでできるはずだ。」とか、「民家再生の高い金額は詐欺だ」との声があった。「劇的ビフォーアフター」の工事費も当初は事実より低価格の表示だったが、近頃は実情金額に近い表現になったようだ。
最近は「民家再生と新築と同じ金額だったら民家再生をしたい」という意見が多くなった。

民家再生
にわか学習で「民家再生」事業を始める人は多い。構造、耐久性、温熱環境等、新築工事を熟知してやっと民家再生工事は許されるべきだ。再生は新築より難しい。人間も「生む」ことは全員可能だが、「修繕」は医者しかできない。安易に考えると大きな失敗をする可能性がある。まず伝統構法を学習しなければならない。

 

写真
   
     
  現地再生

基本的な構造は変えない。柱があっても間取り変更や窓移設や耐震壁移動は大幅に変えることは可能である。基礎を全部やり替えることもある。
     
  移築再生

現地再生と同じ行為だが建物を移動すると「移築」に該当し、建築確認が必要となる。
     
  古材利用

建築用材として古材を使いので新築工事である。4号建築は梁の強度を証明する必要はないので、あえて古材使用と表明することはない。
   
 
建築ジャーナル 2013年8月号掲載
 

   
   
 
67
 住む立場からの伝統構法住宅
   
 


池田理知子さんから伝統構法の家の設計依頼を受け、建てた。彼女はどういう思いで伝統構法を選んだのか。私たちは、どうも「伝統オタク」になってしまい、外部からの声に耳を閉ざしていないだろうか。彼女は『シロアリと生きる』という本を出した。実際に伝統構法の家を選んだ人の胸の内を見てみよう。
●3.11と移住
 2011年3月11日の震災後に起きた原発事故は、これまでの暮らし方への再考を私たちに促した。あの事故の直後に以前から縁のあった水俣に生活の拠点を移したのも、ひとつには考える暇さえ与えてくれない都会での暮らしに疑問を覚えたからである。エネルギーをなるべく使わない生活とは、消費することを強要するような社会から一歩踏み出すにはといった、考えるべき課題は山積みなのに、忙しい日々は私たちを思考停止へと導く。
水俣に越してしばらくは、アパート暮らしを余儀なくされた。しかし、住戸が隣接する集合住宅での生活は、シックハウス症候群の私にとっては耐えがたいものだった。2013年3月に今の家が完成し、ようやく窓を開けて思いっきり深呼吸できる生活となったが、こうした当たり前のことすらできなかった以前の暮らしとはいったい何だったのだろうか。伝統構法の家に住むということは、3.11以前と以降で何が変わったのか、いや変わらなければならないのかを考えるということなのかもしれない。

●「オール3」の思想
 古川氏と出会ったのは、彼が設計を手がけた「水俣エコハウス」である。環境省が補助金を出し、水俣市が運営するこのモデルハウスは、「足るを知る」という暮らしを提唱している。それは、何事も「ほどほどがいい」という思想であって、家の有り様は「オール3」を旨とする古川氏の考え方に通じる。様々な災害に見舞われる日本という風土に合う住まいとは、ほどよく快適に暮らせる住まいとは、と考えたときに彼が出した結論は、伝統構法の家だった。
 「オール3」の思想と伝統構法の家という選択は、3.11後を生きる私たちにとっては特に重要な意味をもつ。そこには、エネルギーの消費を抑えるための知恵が詰まっているからだ。構造材に使われる木や、漆喰と土の壁は家の中の湿度を調節してくれ、長く伸びた軒は夏の日差しを遮ってくれる。昔ながらのやり方を取り入れるだけで、エアコンなどに頼らなくてもすむのだ。それは、夏であれば室温28度、冬は16度というほどほどの暑さ寒さのなかでの生活ということである。過剰な快適さを求めた結果があの原発事故だったのだとすると、「オール3」の意味をもう一度考えてみる必要があるのではないだろうか。

●シロアリとの共生
南九州の地にあってはどうしても避けられない課題が、シロアリ対策である。伝統構法の家は、このシロアリに対しても、常時薬剤を使用することなく有効な手立てを与えてくれる。それは、床を高くして床下の風通しを良くすることである。つまり、退治するという発想を転換して、シロアリが来ないような家を建てればいいと考えるのだ。それが昔からの知恵だったはずで、シロアリとの棲み分けという共生の在り方に気づかされた私は、このことがきっかけで冒頭の古川氏の紹介にもあったように『シロアリと生きる』という本を書くに至ったのだった。
シロアリは山で枯れ木をせっせと分解すればいいし、私たちはエネルギー消費を抑えた生活を送ればいい。仲良く手を取りあって生きることだけが共生の姿ではないのだ。与えられた役割をそれぞれが自分の持ち場で果たせばいいのである。こうした当たり前のことを伝統構法の家は教えてくれる。

●地元の木を使うことの意味
 我が家の構造材に使われている杉の大半は、水俣の山間部で林業を営む吉井さんのところから来たものだ。地元で育てられた木がそこで使われるという当たり前が、ここでもなされている。ところが、こうした昔ながらの慣習がいまや崩れつつある。海外から輸入される安い木材が、地産地消という本来ならばエネルギーやコストのかからない物の循環の仕組みをひっくり返す。少しでも安い木材を求めて商社は世界中を駆け回り、乱伐を繰り返し、それによって現地と日本の山が荒廃してしまうのだ。
 地元の木で建てられた家に住むということは、それだけで地球規模での環境破壊を食い止めることにつながる。そして、我が家であれば吉井さんの木に囲まれて生活を送ること、つまり関係性のなかで生かされていることを感じながら生活するということになる。

●消費社会の矛盾
 我が家の台所には、メーカー製のシステムキッチンではなく、木とステンレスでできた、地元の大工さんの手によるものが据えられている。木と陶器からなる洗面化粧台もそうである。したがって、メーカーの都合で廃盤になり、部品が調達できずにまるごと買い替えなければならないといったことにはならない。そして、もし不具合や使い勝手の悪いところがでてきたら、すぐに大工さんが来て修理してくれるはずだ。
 メーカーが売り出す物の多くは、買い替えを前提として作られる。部品の保存期間はだいたい5年から8年だし、毎年のように行われるモデルチェンジが私たちの購買意欲を刺激する。買う必要のないものまで買わされてしまうのである。
3.11後の世界を生きざるをえない私たちに、そんな無駄なことはできないはずだ。既製品ではないこの家のものたちが、そのことを教えてくれる。

●家とともに「老いる」暮らし
我が家が完成してからもうすぐ一年半、床の色も人の脂でだいぶ深みを増してきた。十数年前に古川氏の手によってリフォームされた家に住む友人宅の床は、すでに黒光りしており、我が家と同じ職人さんの手による手漉きの和紙が貼られたふすまは、落ち着いた味わい深い色へと変化している。うちもああいうふうになっていくのだと思うと、今から楽しみである。
大手住宅メーカーが手掛ける家では、こうした楽しみは生まれない。床は合板で作られ、ふすまがあったとしても薬品処理された紙が貼られているだけだ。したがって、新築時が美しさのピークで、時が経つにつれて傷が付いたりすすけたりと劣化していくものと捉えられる。そして数十年経つと、取り壊されるかリフォームされて売りに出されるのだろう。
木をふんだんに使った伝統構法の家はその逆で、年数を経るほどに味わいが出てくる。しかも、もともと節のある木が使われているので、多少の傷やシミは気にならない。むしろ気を使わずに暮らせるから楽である。どんなにあがこうとも、家も人もいずれ老いていく。その老いを楽しむというあり方を、この家は教えてくれている。

●伝統構法の家に住む
遠い昔から受け継がれ、これからも伝承されるであろう伝統構法という技が私たちにその姿を見せてくれるのは、ほんの一瞬のことである。しかもそれは、家という形を通してその一端を垣間見せるに過ぎない。それでも家は残り、私たちは去る。だとすれば、せめて何がしかの「指紋」をそこに残してみたいと思う。


 
以上は予告編である。詳しく中身を知りたい人は購入して読んでみよう。
池田理知子:『シロアリと生きる――よそものが出会った水俣』(ナカニシヤ出版)税別2000円
1958年鹿児島生まれ。1995年、オクラホマ大学コミュニケーション学部卒業。現在、国際基督教大学教授。
   
 
建築ジャーナル 2014年7月号掲
 

   
   
 
68
 省エネ法義務化は真の省エネになるのか。VOL.1そもそも省エネ法とは。
   
 

2012年2~4月号に省エネ法について書いた。当時、関心度は非常に低かった。最近、2020年に省エネ法義務化が話題になり関心は高まったものの、国が理不尽はことをするはずがないとか、国民から選ばれた国会議員が600人もいるので阻止するだろうと思っている人が結構いるようだ。
法律は普通、国民のためになるように施行されるものだが、近年は社会問題解決一時しのぎのために法律ができる。これまでのシックハウス法、瑕疵担保履行法、構造基準の厳格化が制定された経緯をかえりみると、制定時は建築関係者は騒ぐが1年過ぎると沈静化する。省エネ法はどうなるだろうか。2020年に義務化される話をどれくらい理解しているだろうか。省エネ法も伝統構法の観点から問題点を5回シリーズで書いてみる。

質問
まず、みなさんにいくつかの質問をしてみる。
Q1:鹿児島の南の奄美大島の住宅に天井200_、壁と床100_の断熱材をいれることになる。本当だと思うか。
Q2:寺の本堂にも省エネ法の規制がかかる。本当だと思うか。
Q3:アイススケートリンクも省エネ法の規制がかかる。本当だと思うか。
Q4:こたつでの採暖や扇風機での採涼は認定しない。囲炉裏の生活は法律で禁止する。本当だと思うか。
Q5:無双窓は沖縄以外では使えなくなる。本当だと思うか。
5つの答えはすべて本当だ。嘘だと思う人は5回シリーズで書くので読んで学習して欲しい。

省エネ基準義務化の流れ
省エネ基準の義務化は、2009年に鳩山元首相が「2020年までにCO2を1990年比25%削減」と国際公約したことからスタートする。1999年(平成11年)に次世代省エネ基準が設けられ、住宅の断熱・気密化がすすめられてきた。2011年までには長期優良住宅等の補助金やエコポイント政策により次世代省エネ基準の適合割合が新築住宅の5〜6割と伸び、昨年10月に平成25年省エネ基準が施行され、2020年までに全住宅に対しこれが義務化されようとしている。施行スケジュールは(【低炭素社会に向けた住まいと住まい方の推進に関する工程表】で検索)のとおりである。長期優良住宅仕様のブランド化住宅は100万円の補助金があるから採用されているのであり、補助金がなくなれば採用率は落ちる。20年前のバリアフリー融資を思い出してほしい。20~30万円の融資がもらえるからと新婚夫婦も採用し5割に達した。現在は必要な人だけの1~2割だろう。補助金が無くなれば長期優良住宅仕様も1~2割に落ちるだろう。
平成25年省エネ基準の主な変更点は、@地域区分の細分化、A外皮の省エネ性能(以下、外皮性能)の見直し、B一次エネルギーの消費量である。
A外皮性能の見直しについては1999年の次世代省エネ基準とほぼ同じであり、あらたにB一次エネルギー消費量規制が加わっている。
外被性能の問題点:温暖地には厳しい外被性能の基準
 外皮性能とは家全体の外皮(床・壁・窓・天井など)の熱貫流率のことで、UA値(外皮平均熱貫流率)で示される。UA値は外皮それぞれのU値(熱貫流率)の総和平均値である。土壁はU値4、土壁の板張りはU値2、断熱材を入れたらU値1、ガラスはU値6.4、無双窓はU値6である。表1に示したとおり、平成25年省エネ基準は家全体の外皮性能のUA値を0.87以下(新潟以南鹿児島まで)としているが、この基準は温暖地においてはかなり厳しい数値ではないだろうか。また、縁側などのバッファゾーンは考慮されていないことも問題である。
地域区分は8つに増えたが
1999年の次世代省エネ基準では地域区分は6つであったが、平成25年省エネ基準では8つに増えた(参考1)。にもかかわらず、要求されるUA値は東北から鹿児島までほぼ同じである(参考2)。日本は欧州を包括するほど縦に長い国であり、6つでは充足できないから8つに分けたのに、基準はそのままとははなはだ理解に苦しむ。つまり、5地域の新潟と7地域の奄美大島(鹿児島)が同じ外皮性能UA値0.87を要求されるのである。(Q1の理由がここにある)
地域区分1:北海道
地域区分2:北海道
地域区分3:青森、岩手、秋田
地域区分4::宮城、山形、福島、栃木、新潟の北、長野
地域区分5.6:その他全部
地域区分7:宮崎、鹿児島、熊本の南
地域区分8:沖縄
【参考1】

地域区分に応じた外皮平均熱貫流率(UA値)は基準値以下であることが求められる

 
地域区分
1
2
3
4
5
6
7
8
基準値[W/(m2・K)]
0.46
0.46
0.56
0.75
0.87
0.87
0.87
-
  【参考2】

暖房度日(暖房する日×℃)*で見てみよう(参考3)。4地域の長野と7地域の鹿児島では気候がまったく違うので、暖房度日は当然3倍もの差である。暖房費用も3倍違うだろう。だったら断熱の仕様も3倍ぐらいと思ったら大間違いで、僅か1.2倍の差しかない。理由を聞いたら、旧基準との差異がないようにしたためと言う返事だった。建築基準法だって時代と共に変化するから基準は変わるのに、「旧基準との差異がないように」は先輩先生方へのオモンバカリだろう。

 
地域区分
主な都市
UA値
暖房度日
暖房費用
4
長野
0.75
2805℃日
約8万円
5
新潟
0.87
2016℃日
約5万円
6
東京
0.87
1750℃日
約3.5万円
7
鹿児島
0.87
979℃日
約2.5万円
【参考3】
  断熱工事費の費用対効果が疑問
消費者にとって建築費増は大問題である。環境省試算で「新省エネ基準(1992年)から次世代省エネ基準(1999年)への断熱化には新築で坪3〜4万円の費用がかかり、国民の納得が不可欠となる」とある。35坪の家で120万円のコストアップとなるが、費用対効果はあるのだろうか。
資料は少し違うが使用実積値で比較してみよう。家庭用エネルギー用途別消費原単位の比較である。(【中央環境審議会(第81回)地球環境部会 民生部門のエネルギー消費動向と温暖化対策】で検索)の暖房消費エネルギーだけを見て欲しい。北海道では暖房費用に年間20万円(33GJ)、東北では16万円(24GJ)、北陸では8万円(18GJ)、九州では2.5万円(7GJ)を使っているとみてよい。九州と東北では6倍のエネルギー消費量の差があり、九州と北陸では3倍の差なのに、外皮性能の基準はUA値で0.75対0.87と僅差である。
エネルギー消費量削減のために、初期費用120万円UPの建築コストは、北海道や東北のような暖房費が高い地域は別として、熊本南、鹿児島のような2.5万円の地域では費用対効果が少なく、消費者の理解は得られにくい。省エネ法の目的は「省エネルギー」のためではなく、成長戦略の一環で、無駄金を使わせ誰かが得をする政策なのだ。

*暖房度日:
D18-18日平均気温が18℃を下回る日を暖房日とし、1日の平均気温と18℃の差を毎日足していった値。大体のエネルギー消費の目安となる。

{以下次号の予定だがページは??}
ノンエナジーベネフィットのおかしさ
家の性能をあげたら省エネになるかという研究は以前からなされていたが、ほとんどがNONという回答だった。品確法の温熱性能との整合性のためにやらねばならないという義務だろう。「成果は出ない」とわかっているので、布石を打っておく必要がある。それがノンエナジーベネフィットである。住宅の性能をアップすればエネルギー量削減ではない別の利益が生まれるという。英語で言うのでなんとなく理解してしまうが、私の訳では「無効果利益」「別件逮捕」「裏技利用詐欺」だが。暖房すれば病気にかかりにくく、医療費が低減でき、費用対効果はあるという理屈である。風が吹けば桶屋が儲かるという論理展開に似ている。暖房機器メーカーや断熱材メーカーが使う「ヒートショック論」もこれと同じである。「交通事故死は年間4600人なのに、ヒートショックが原因での死亡者は1万7000人にのぼる。浴室まで断熱工事が必要だ」という論である。2008年の厚生労働省調査では、家庭内の総死亡者が1万3240人なので、そのうち家庭の浴槽で溺死する人が年間3000〜4000人である。消防のデータでは死亡原因までは分からないのに、すべてをヒートショックが原因としているようだ。そもそもヒートショックによる死亡者数が家庭内の総死亡者数を超えているのがおかしい。頭の数ではなく、指の数を数えたのだろう。
   
 
建築ジャーナル 2014年8月号掲
 

   
   
 
69
 省エネ法義務化は真の省エネになるのか。Vol.2:1次エネルギー消費量。
   
 

縁側は、外部側のガラス戸と居室の障子との二重構造で、夏の暑さと冬の寒さに対抗できるというのが昔からの考えである。省エネ法の外壁性能は家の一番外側だけしか計算に入れないので、縁側は正しく評価されない。縁側は普通単板ガラスを採用するので開口部のU値(熱貫流率)は6.5と目指す0.87には遥かに及ばない。単板ガラスの縁側にまでペアガラスを入れさせようとする建材メーカーの魂胆かもしれない。また、ガラス戸と障子の縁側空間は無駄だという温熱専門家がいるが、そういう専門家に限って、冬のことしか考えなくてよいドイツの家づくりを崇めまくる。内でもない外でもない日本独特の緩衝空間である縁側は温熱性能のためだけに存在するのではない。夕涼み、日向ぼっこ、地域とのコミュニケ―ション、一夜干し等の日本の生活に追随した装置である。
日本の住まいの玄関は引き戸である。引き戸は圧倒的に人気がある。引き戸のレール部はどうしても隙間ができる。ガラスの玄関戸のU値も6.5と甚だ性能は悪い。隙間にパッキンを入れても良いが土足部の耐久性は5~6年だ。そもそも家の性能は居室で評価すべきだが、玄関や縁側まで基準にいれることがおかしいのだ。改善点は後号に譲るとして、外皮性能の基準と別に1次エネルギー消費量の基準がある。建売業者を対象に存在した事業主判断基準をバージョンアップして登場した基準が1次エネルギー消費量である。

一次エネルギー消費量とは

平成25年省エネ基準では、外皮の断熱性能だけでなく、暖冷房や給湯などの設備機器も含めた建物全体の省エネルギー性能を評価する基準として「一次エネルギー消費量」が追加された。一次エネルギー消費量とは、暖房+冷房+換気+給湯+照明+家電のエネルギー消費量の総和である。(資料1)一次エネルギー消費量の基準は、家の広さで決められる。主な居室×A+主でない居室×B+その他の部屋×C=「基準一次エネルギー消費量」を決める。120uぐらいの家で大体80GJぐらいが基準一次エネルギー消費量である。すなわち、これが目標値である。次に机上で、設計図や設備図を見て暖房、冷房、換気、給湯、照明、家電の1次エネルギー消費量を算定するのが「設計1次エネルギー消費量」である。
実際の「一次エネルギー消費量」は、支払ったガス代、電気代、灯油代で計算すれば正確に算定できるが、設計時点ではわからないので、設計時に想定するのである。「設計一次エネルギー消費量」と実際の使用した一次エネルギー消費量」が近似値であれば問題ないが、そこには経産省の魂胆が仕込まれている。

暖冷房1次エネルギー消費量

 
  • 25年度省エネ基準では、冬は室温20℃以上になるように暖房機器を使った場合に消費するエネルギー量である。しかし、体感温度には室温だけでなく湿度と風速も影響する(資料2)。同じ体感温度でエアコンなどの空気暖房と輻射暖房を比較すると、輻射暖房の方は風が起きないので低温でも体感温度はエアコンと同じとなる。更に、湿度が高いと体感温度は高くなるので、暖房するより加湿する方が省エネだという人もいる。伝統的構法の家なら木や土壁などの放湿作用により室内湿度が高くなるので有利である。データは少ないが伝統構法の家で冬快適な室温は何度かというアンケートを取ったら16~18℃だった。室温20℃以上というのはどう考えてもエアコン暖房での基準である。基準にするなら最低に近くの16℃~18℃にすべきだろう。世界は貧困に苦しんでいるのに、私たち日本人がぬくぬくと快適温度20℃を基準としてよいのだろうか。
  • 新築時に採用した機器により、その家が使うとされるエネルギー使用量がきまる。もし、新築時暖房機器を入れない場合はどうなるかといえば、性能の悪い暖房エアコンを設置した数値を採用することになる。
  • 暖房の省エネの王様は局所暖房である「こたつ」だろう。こたつでは室温は上がらないので、評価対象外となり、性能の悪いエアコンを入れたことになる。概ね18GJぐらいを使ったことにされる。
  • 床暖房は部屋全体を暖めるのではなく、接触面に肌が触れれば暖かく感じるので、頭寒足熱を期待し全館暖房を目的としていない。測定基準が、高さ1.2mで室温20℃なので、床暖房で室温20℃にするにはかなりのエネルギー消費量となる。UA値1の家で床暖房を採用すると50GJも使ったことにされてしまう。
  • 熱容量が大きいと蓄熱効果がある。蓄熱は計算が難しいので計算にはいれない。また蓄熱のためには初期のエネルギーを使うので利点ではないとのことで、蓄熱効果は除外される。
  • 日射取得は暖房エネルギー消費量にプラスに働く。日射取得は軒の出が短いと有利な計算式である。「省エネ住宅は軒の出を短くせよ」と言うことになる。
  • 軒が長いと直射日光が家の中に入りにくいので、夏の日射遮蔽効果で冷房エネルギー消費量には有利だが、暖房エネルギーに比べて冷房エネルギーは極小であり評価は低い。
  • 冷房エネルギー消費量は、夏季室温を28℃以下にするためのエアコンによるエネルギー消費量である。冷房機器はエアコン以外にないので、風通しや扇風機や緑化などの納涼対策はカウントされない。冷房機器なしの場合は性能の悪いエアコンを設置した場合のエネルギー使用量をカウントされる。大体5GJである。
    冷房の省エネの王様はなんといっても扇風機である。消費電力は40Wと世間ではエアコンの1/20と推奨するが、温熱学の世界では無視する。扇風機は室の空気をかき混ぜるだけで室温が下がらないからだそうだ。「窓を開けること」は計算できないので想定外だ。
    扇風機設置は性能のわるいエアコンを設置したことにされる。冤罪に近い。
 

給湯1次エネルギー消費量

 
  • 給湯配管が13mmと小さいと評価は高い。
  • エコジョーズは1割省エネだが評価はもっと高い。
  • シャワーのクリックタイプに評価点があるが、必ずしも省エネとは思えない。最近のカランは手元の操作がしやすのでクリックの恩恵はあまり感じない。
  • 浴槽とシャワー一体カランが断然省エネと思うが、メーカーのユニットバスでは主流ではないから評価はない。
  • なんといっても浴槽の容量が小さい方が省エネに決まっている。L-1400よりL-1200が湯量は少ないし、L-1200でも足が伸ばせ、広さは充分である。しかし、世の中のユニットバスはL-1400が主流なので、これまたl-1200にしてもカウントはない。
  電気1次エネルギー消費量
 
  • 「主たる居室」「その他の居室」「非居室」に1灯でも白熱灯があれば全部を白熱灯使用とみなされ、5GJも使ったことにされてしまう。
  • 東北大学大学院環境科学研究科が発行した「先取りしたい2030年のくらし」では「10分以内の点灯に蛍光灯は不向き」と警告している。居室でない部屋つまり納戸やトイレは、点灯時間は10分以内が多いので蛍光灯にしないが良い。居室以外で蛍光灯を薦めるのは適切ではない。(資料3)
 
  資料1
室温
湿度
風速
 
体感温度
20℃
60%
0.5m/s
エアコンの風
17.4℃
17℃
60%
0m/s
 
17.8℃
16℃
70%
0m/s
 
17.4℃
・「ケイサン」ソフトより


資料3
東北大学大学院環境科学研究科が発行した「先取りしたい2030年のくらし」
   
 
建築ジャーナル 2014年9月号掲
 

   
   
 
70
 省エネ法義務化は真の省エネになるのか。 VOL3富裕層に優しいエネルギー消費量基準。
   
 

家電1次エネルギー消費量
住宅のエネルギー消費量は暖房、冷房、給湯、厨房、照明・家電グループに分類できる。資料1をみると住宅のエネルギー消費量は年を増すごとに「エコ」の掛け声に反比例して増え続けている。内訳をみると暖房は増えておらず、冷房や厨房は少々、照明・家電グループが急激に増えている。照明は増えていると思えないので家電が一番だろう。本気で省エネを目指すのであれば、増えた家電エネルギー消費量を削減するのが効果的である。しかし、省エネ法では、家電の1次エネルギー消費量は21GJと一定化し、計算しなくてよいことになっている。計測しにく自立循環型いからというのが理由であるようだが真意ではない。事実、自立循環型住宅の計算式やエコ診断には家電の消費量は入っている。省エネ法の元締めは経産省である。真の省エネはエネルギーを使わないことである。ゆえに家電に規制をかけると家電が売れなくなるからだ。「エコロジー」と「エコノミー」を両立しようとする経産省の思惑は、暖冷房、給湯、照明に規制をかければエコ商品は売れるが、家電への規制は売れなくなるという算段である。1.5倍に増え続ける家電の1次エネルギー消費量は、ノ−カウントの21GJと固定され、規制をかけれない仕組みである。
増え続けた家電の理由は次のようなものが考えられる。

<オート洗浄・オート開閉蓋ウォシュレット>

裕福な日本の裕福機器の代表がウォシュレットである。新築個人住宅での普及率は90%を超える。その贅沢性を否定しないまでもセンサー付きのオート洗浄やオート開閉蓋は過剰すぎる。

<食洗機、食器乾燥機>

食器を洗うのにエネルギーはたくさんいらないが、電気で乾燥させるには相当なエネルギーが必要だ。放っておけば乾くものをヒーターを使って食器を乾かすのである。ヒーターの熱量で部屋は暖かくなるので、さらにエアコンが稼働する。

<50インチ以上の大型テレビ>

エコのためではなく家電メーカー救済のための家電エコポイント制度が平成21年に実施され、税金のばら撒きが行われた。50インチだと2万円、32インチだと8千円のエコポイントプレゼントだった。それが契機となって家電量販店には50インチのテレビが主流となった。当然、電気の消費量は増えて当たり前。

<大型冷蔵庫>

冷蔵庫も同様だ。それまで300〜400Lが主流だったが、いつのまにか500Lが主流となった。700Lまである。ほとんどの家庭は15分以内にスーパーがあり、2〜3日に1度は買い物に行ける。300Lの冷蔵庫で充分なのだが、安い時に買いだめするアメリカ型を真似る。冷蔵庫が大きいから、スイカを丸ごと冷やすし、特売のレタスを5玉も野菜室に入れる。スーパーでは採りたてがよいと朝採りを選んで購入し、わが家で5〜6日も冷蔵庫で保存するのだ。震災を経験し、1週間分の備蓄を考えてのことだろうか。電気が止まれば、冷蔵庫も止まるのに。あるいは冷蔵庫のカタログも原因かもしれない。カタログの写真では食材が揃い、いかにも料理の腕が上がりそうな気分になる。また、性能が上がり300Lも500Lもエネルギー消費量はあまり変わらないと表示してあるが、これは間違いだ。大型冷蔵庫の計測で、冷やす中身の量が同じ場合にエネルギー消費量が同じで、詰め込むものが多ければ当然、エネルギー消費量は多くなる。

<温水式洗濯機、冷暖房エアコン付洗濯乾燥機>

温水式にすれば洗濯時間が短くなり効率があがる利点はあるかもしれないが、洗濯機にエアコンが付いているとはあきれてしまう製品だ。
家電量販店にいけば「エコ」「エコ」の垂れ幕が下がっている。ほとんどがエコ商品だ。省エネ家電製品の多量設置は、ダイエット食品も腹いっぱい食べれば肥満になるのと同じだ。

富裕層優遇の基準値

超高気密・高断熱の家はエアコン1台で暖冷房が可能というので、全館暖冷房の方が省エネと錯覚してしまう。自立循環型住宅の計算法を見てみよう(資料2)。全館連続暖冷房の場合、性能があがるとエネルギー消費量は少なくなる。部分間欠暖冷房の場合もそうである。しかし、良く見よう。レベル4(次世代省エネ基準)の全館連続暖冷房とレベルゼロ(断熱材なし)の部分間欠暖冷房と比較してみると、断熱材なしの家がエネルギー消費量は少ないのである。断熱材をいれよというキャンペーンは正論なのかと疑いたくなる。全館連続暖冷房と部分間欠暖冷房は、新基準の「基準1次エネルギー消費量」ではどのくらいの違いかをシュミレーションしてみよう。「基準エネルギー消費量」は「主な居室」「その他の居室」の面積で決まるので、一般的な120uの家では80GJ程度となる。ところが、全館連続暖冷房では1.5倍の122GJに基準が上がるのである。不公平ではないだろうか。これは一覧表には明示されておらず、プログラムに入力してみないと表に出てこないため普通の人の目には触れない。都合が悪いものは分かりにくくしているのかと疑ってしまう。この優遇措置は、ベンツなら最高速度150Kmで走行してよいという基準にしているようなものだ。
全館暖冷房の家はエアコン1台ですむのなら、基準を上げる必要もなく「基準1次エネルギー消費量」は80GJでよいではないだろうか。もう一つ別の説明をしよう。昔の「事業主判断基準」(資料3)を見よう。1a地域は全館連続暖冷房と部分間欠暖冷房の家の「基準エネルギー消費」は125.2GJ(家電を除く。3種換気)とほぼ同じで、公平である。しかし、Wb(新6)地域をみると、全館連続暖冷房の場合は90.2GJで、部分間欠暖冷房の場合は54.2Gl(共に家電を除く)である。どうしてこのようなことが起こるのかというと、寒い地域には縁側はなく、緩衝空間としての玄関もない(風除室はある)「非居室」が少ないからだ。家の造り様が違うのに、一つの基準で全部を規制しようとするからこのような不公平がおきるのだ。

経産省・国土交通省VS環境省

扇風機やこたつの生活の人には厳しく、全館暖冷房の生活の人には優しい「省エネ法」は、経産省・国土交通省がつくり、「エコ診断」事業は26年度から環境省が担当する。「冬の暖房は20℃以上、夏の冷房は28℃以下に」と省庁間の摺合せはなされているように思えるが、環境省は「エアコンより扇風機を」と常識的判断をしている。経産省は「扇風機の家は性能の悪いエアコンを付けたのと同じ」と非常識な判断をする。
省庁が別々だと、国民指導も別々に行われることになる。指導する方は違いを力説すると思うが、指導される方は目的が同じなら、指導も同じにすべきと言いたい。「エコ診断」と「省エネ法」はこれから矛盾が露呈するだろう。家電量販店に、これから「国土交通省推薦エアコン」と「環境省推薦扇風機」と二つの垂れ幕が下がるだろう。『窓を閉めてのエアコン』、『窓を開けての扇風機』のどちらをあなたは選びますか。


資料1:住環境計画研究所「家庭用エネルギー統計年報」


資料2  「自立循環型住宅への設計ガイドライン」より


資料3   事業主判断基準の基準エネルギー消費量より

   
 
建築ジャーナル 2014年10月号掲
 

   
   
 
71
 省エネ法義務化は真の省エネになるのか(伝統構法の家の良さ)
   
 

国が推進する『和の住まいのすすめ』
国は2013(平成25)年10月に、冊子『和の住まいのすすめ』(写真)を発行した。その主旨は次のとおりだ。
「我が国の伝統的な住まいには、瓦、土壁、縁側、続き聞、畳、襖をはじめ地域の気候・風土・文化に根ざした空間・意匠、構法・材料などの住まいづくりの知恵が息づいていますが、近年はこうした伝統的な住まいづくりとともに、そこから生み出された暮らしの文化も失われつつあります。このような状況の下、和の住まいや住文化の良さの再認識、伝統技能の継承と育成、伝統産業の振興・活性化等を図っていくことがますます重要となっており、和の住まい推進関係省庁連絡会議(文化庁、農林水産省、林野庁、経済産業省、国土交通省、観光庁により構成)を組織し、冊子『和の住まいのすすめ』のとりまとめを行った……(以下略>」
2020年の東京オリンピックへ向けて和のデザインをアピールしたい思惑もあると察するが、6省庁がすすめる「和の住まい」とそのうちの3省(経済産葉貧、環境省、国±交通省)がすすめる省エネ法との間には矛盾が生じている。

「和のすまい」の特徴
日本の国土は南北に長く、亜熱帯の沖縄から亜寒帯の北海道までと気候はさまざまである。それに反映して地方ごとに独自の文化を生み、伝統的な家屋のつくり方にも特色がある。長い歴史のなかで醸成された仕組みは、その時代時代で淘汰と進化を繰り返して今日の伝統的構法の家がある。
土壁は断熱性能がないからと椰喩されたりするが、見方を変えれば優れた建材である。構造体であり、外壁・内壁仕上げであり、蓄熱体でもある。さらに化石エネルギーも埋蔵資源も使わず、地元の材料と職人でつくり、用が終わっても環境に悪影響を与えない。環境面からみても、理想の建材ではなかろうか。
伝統的構法の家は特別一つの機能が優れているわけではない。長年の歴史・文牝のなかで、環境と共生し、地域の雇用を生み、住み継いでいくことを前提として耐久性、修理の工夫が盛り込まれて、総合的に意義があるのである。ただし、夏を主体として考えている要素が多く、冬対策に不足することは否めないが、総合バランスが優れておりで補完しあっている要素も多い。一つの要素ではなく、総合的な判断が必要である。
■耐久性、維持管理、構造
◇修繕する部分をあらかじめ想定している。部品交換で対処できる部分とそうでない部分を長い歴史のなかで習得し、長寿命のシステムが確立している。
◇歴史が長く、劣化対策の手法が整備されている。
◇木材は有機物であるが、風通しがよければ防腐剤を使わなくてもかなり長持ちする。
◇自然劣化は避けられないものとして考え、維持管理、部材交換を重視した東洋的思想である。材料劣化は防水性などで克服できるという西洋思想とは異なる。(中村正夫の説による)
◇伝統的構法は石油製品がなかったころの工法なので、安くて便利な石油製品は使わない。ビニールや接着剤など石油製品の寿命は30年である。木材をビニールで包むと木材が腐りやすくなる。伝統的構法は長持ちの知恵が満載である。
◇深い軒、高い床、十分な屋根勾配、コーキングに頼らない雨仕舞で耐久性を確保。
◇仕口・継手の工法は昔から変わらないオープンシステムである。地域を越え、時代を越えて修繕が可能である。多少の差はあるが、全国共通の技術である。
◇真壁は溝造体の劣化状溌を確認しやすい。
◇高床は床下の状況を確認しやすい。
◇部材断面を大きく使い、交換を前提としたディテールである。
◇仕口・継手は、金物や接着剤などで接合しない。部材交換を前提とした工法である。
■温熱環境
◇深い軒や引き戸で風通しを良くし、エアコンに頼らない生活が可能。
◇置き屋根、越屋根、無双窓などの工夫がある。
◇外気温との極度な温度差をつけない。
◇土間や土壁は蓄熱性能がある。夏は蓄冷性能でひんやり感がある。
◇空気暖冷房に頼らない。条件を付加すれば、輻射熱による採暖は気持ちが良い,
◇緩衝空間(縁側、玄関、押し入れ)を設け、主な居室だけ温熱環境を良くする。
◇深い軒は、夏の直射日光を遮断し、室内温度の上昇を防ぐ。冬は太陽の高度が低いため、目差しは十分取り込める。
◇三和土、土壁、藁、紙の吸湿効果があり、梅雨時でも快適な住まいとなる。
■風景、街並み
◇構造的合理性が機能美を生んでいる。
◇統一された材とわずかな形の差が美しい街並みを形成している。
◇日本がこれから観光を重要政策にするのなら、伝統的構法を絶やしてはいけない。
■地域、山
◇伝銃的構法の使用材は国産材が当たり前で、他工法と比べ、木材の使用量は倍である。
木材の需要が増えれば、国家予算(税金)を使って山の木を切ることが少なくなる。
◇資源を木材と考えれば目本は資源大国だ。木材は日本全国に散らばって存在する。近くの山の木での家づくりは省エネである。
■LCCM(ライフサイクルコスト分折)的考えとゴミ問題
◇木、土、紙、石、竹、藁などが主材料なので廃棄エネルギーが少ない。また、運搬エネルギーも少ない。
◇生産時エネルギーで最も大きいのが基礎コンクリートである。伝統的構法の告示が出来上がれば、基礎石仕様で、コンクリート・鉄筋なしの建築も可能である。そうすれば、生産時エネルギー消費量は激減する。
◇石膏ボードは1枚290円である。処分時のコストは1枚600円相当である。家電のリサイクル法と同じく生産時に費用負担を課し、1枚890円にすべきである。そうしたら石膏ボードでなくてスギ板を使う人が増える。そうなれば山も潤うし、産廃の量も減る。
◇長寿命なので、大量生産、大量廃棄から脱却できる。
◇環境負荷の少ない建材なので、次世代にゴミのつけを回さない。
◇恒久品と消耗部品を使い分け・本体の長持ちの工夫をしてきた。たとえば、障子紙や畳表である。
■職人、雇用
◇雇用は日本の一番の社会問題である。手間がかかるので職人の仕事量が多くなり、雇用が生まれる。
◇近場にメンテナンスする職人がいる。
◇瓦、左官、大工、畳、表具、飾金物、塗師、と少しの技術の違いはあるが、ほぼ全国共通の技術が継承されている。絶やしてはいけない。
■健康、自律神経、気分、愛着
◇シックハウス対策を24時間換気に頼ったのは間違いではiなかろうか。換気は大事であるが、なにも機械換気ではなく、人間が開閉してもよいではないだろうか。
◇快適すぎる環境は自律神経の障害を起こす。室温が冬は20℃、夏は28℃以下の環境基準は、老人には良いが、育ちざかりの子どもにはある程度のストレスは必要だ。老人専用の施設では平成25年省エネ基準でよいが、子育て世代の住宅は、16℃程変の基準でよいではないか。
◇伝統的構法には、数値化できない五感に響くものがある。風鈴の音色を聞けば体感温度はわずかに下がり、浴衣姿やスダレを眺めるだけでもわずかに下がるだろう。
◇伝統的構法は確かに冬季の温熱性能は弱い。見慣れた和小屋組、真壁、床の間の空間のたたずまいに居ると、16℃程度の室温でも良いのではないだろうか。

   
 
建築ジャーナル 2014年11月号掲
 

   
   
 
72
 大改造!!劇的ビフォーアフターの収録顛末
   
 

「大改造!!劇的ビフォーアフター」が民家再生や古い物を大事にすることを一般市民に幅広く伝えた功績は大きい。しかし一方で、「やらせだ」と思っている入も多いのではないか。11月2目に放送された「お客様が一番の家」に出演した範囲で収録の顛末を語る。
  まず相談者であるAさん(建て主)がABC放送局に書類を送り申込むことから始まる。局は申請を受諾すると、建築地と同じ熊本県内在住の建築士探しをする。そこで白羽の矢が私に立った。建築士の審査の方法は、局のプロデューサーであるN氏が弊社まで来て、まずAさん宅の現状と要望書を見せた。75年前に建てられた石場建ての平屋の家に、38年前に、お神楽式(※1)に2階を増築したものだった。N氏から解決策を尋ねられた私は、具体的な設計手法ではなく基本的な設計思想を語った。「新建材を使わないこと」「長持ちすることを優先すること」「自然の力を引き出すこと」「職人の手仕事を表現すること」などである。N氏はそれをビデオで撮影し、局に持ち帰り、局内で適任調査が行われたようだ。それはAさんに見せられることはなく、私の採用が決定された。
  3月に初めてAさん宅を訪問した。建築の要望は書面で事前に拝見していたが、改めてAさんの注文を聞いた。40数年、旅館業をやっていて3年前にやめたこと。旅館をやめた今、70歳代の夫婦二人には広すぎ、住みやすくしたいこと。費用は息子さん(Kさん)が親孝行のために出すこと。離れの客室を壊すには忍びないので、予算が余れば息子さんの趣味部屋に使用したいということだった。現状は陽の当たらない場所が居間で、離れのボイラー小屋の中に風呂があり、段下がりの台所は危なく、番組特有の不便さを絵に描いたような生活であった。聞き取りは漏れがないよう、考えて記入してもらえるようアンケート用紙を10枚用意し、郵送してもらうようにした。
  主に母屋は構造体まで手をつける「再生工事」、離れは構造には手をつけない内装だけの「リフォーム工事」を行うことにした。「再生工事」は厳密な調査が必要である。翌目、大工2名、左官、建具屋、瓦屋、板金屋、電i気屋、水道屋を同行し、一斉調査・計測をおこなった。築後75年住宅は少し地盤が沈下していた。同時に地盤調査も行ったが、弱い地盤だった。べた基礎補強が一般的だが、重くなりすぎるので、基礎石をコンクリートで補強する程度が良いと判断した。
  いよいよ工事が始まると、局とのプランの打ち合わせが始まる。建て主への提示の前にディレクター(O氏)のチェックが入る。建て主は高齢でもあるので、2階建てを平屋に減築したコンパクトプランを提示することでO氏と合意し、建て主への第1回目プラン提示をした。しかし、健康なうちは2階も使いたいからと要望され、1回目の提案プランは没になった。それから局との過酷なプランのやり取りがはじまった。風通しと構造を重んじる私とカメラ目線を重んじるO氏との見解が一致せず、合意したのは13回目のプランであった。綿密な打ち合わせの効果があってか建て主への提示は2回目にしてすんなりパスした。
  実施設計の期間は少なく、弊祉スタッフ4名全員がA邸の設計にかかった。工事中の打ち合わせができないことから、棚の位置からすべてを図面で表現するために図面の枚数は100枚を超えた。工事が始まると東京から来た正副ディレクター二人(O氏を含む)は、近くのアパートに住み、盆休みもなく、ドキュメンタリードラマのように6ヶ月間張り付いての撮影だった。500時間撮影をして、それを1.5時間に縮めるので最後までどんな番組になるのかまったくわからなかった。
  番組の中で、ゲストに推理してもらうテーマになる撮影や特に強調するシーンを用意しなければならない。畳表製作現場、藁床製作現場、天草陶石採石場、古材バンク取材、毎年行っている灼熱セミナーの建て主参加、制震ダンパー製作、軒先の風圧実験、格子網戸実験、鉋屑断熱材づくり、照明器具製作、看板作製、瓦屋根の説明など12件提案した。しかし、提案テーマが放送されたのはそのうち5件であった。
  建物が完成し、インテリアの専門家が来た。Aさんの所有物に、新しく小物や食器や衣類や装飾品を追加購入し飾り付けをしたので見違えるようになった。
  10月8日、Aさん一家に初公開し、撮影は終了した。21日に編集と私のチェックとゲストコメントの収録が完了し、11月2日に放送となった。番組の製作費がいくらかは誰もが知りたいところだ。私だけにこっそり教えてくれと頼んだが駄目だった。楽しい1年だった。

みんなが思っている疑問に答える
■掲示建築費はほんとうか。工務店はどうやって決めるのか。スポンサーから協賛はあるのか
解体工事、消費税を含む工事の契約金額を表示した。関係協力者や材料メーカーの資材提供などがあり安く感じる場合もあるだろう。
工務店は私が指名した。放送広告のスポンサーは14社あるが、番紐で使用すれば協賛はあるだろう。私は、協賛依頼はしなかった。
■所さんやゲストは事前にVTRを見ているのか
簡単な台本は事前に渡されている。江口ともみさんの質問は台本に書いてあり、モデル回答を4〜5例用意してあった。しかし、所さんの進め方に乗ってしまい、ゲストの岩下さんも、剛力さんもほとんどアドリブ回答だった。岩下さんが伝統構法を「柳に風」と表現したのにはびっくりした。台本には全く書いてなかった。
■建て主が出来上がリシーンを初めて見るのはほんとうか。やらせではないのか。
局はAさんが初めてわが家を見る「なんということでしょう」という感動シーンにすべてを賭けている。そのため、建て主には現場途中を見せないし、現場は囲いで覆い、常駐二人が厳しく見張っている。よって、完成現場を初めて見せるシーンは事実である。「やらせ」と思っている人が多いと思うが決してそうではない。素人が演技で涙を出せるものではない。少しオーバーな表現があるが、局から指示があるわけでもない。感情が豊かな人を人選していることは否めないが。
Aさんが建物を見てどんな驚きを見せたかは編集後にしか見ることはできない。私は少し後に家に入るが、「思った通り」と言われるのか「イメージと違う」と失望されるのか、天下分け目のシーンである。局も私以上に心配しただろうと思う。なぜなら、建築物は手直しすればよいが、人の感情は顔に出る。1回限りの撮影で撮り直しなどできないのだ。
■建て主との打ち合わせは、しないのか。
建て主との接触はディレクターを通して行う。だからといってお任せスタイルではない。ティレクターが建て主と私の間に入り、逐一説明する。使用者が完成するまで現場を見られないのは、住民と公共工事の関係と同じだ。普通、現場立ち合いは、自分の説明不足を補うためにも行う。それができないので、逆に慎重にならざるをえない。その方が結果的に出来はよくなるかもしれないと思う。
※1:お神楽式…平屋の佳宅に2階を増築するようなとき、外周に通し柱を建て2階建てにする構造のこと

 

   
 
建築ジャーナル 2014年12月号掲
 

   
   
 
73
 省エネ法義務化は真の省エネになるのか(伝統工法をなくさないための提案)
   
 

昨年8月号か11月号までは、省エネ法が伝統的構法の家には障害となり、「和のすまい」との矛盾が生じることを提示してきた。それではどのようにすれば解決するのかの提案をする。

「外皮性能」への提案
A案:リスクトレードオフ
南米のペルーで、上水道の塩素が人間の体に悪い影響を及ぼすという理由から、水道の塩素混入を止めてしまった。そうしたら、コレラが発生し、2万人の死亡者が出た。あるリスクを回避させようとしたら別の大きなリスクを生むことをリスクトレードオフという。省エネ法も同様なことが起きる。暖房エネルギー消費量の削減を目的に外皮性能を上げようとしたら、日本の「和のすまい」の良さがなくなってしまう。なんのための性能アップかわかちない。求める性能と失われそうなものをトレードオフしようという考えを提案したい。先月号で掲げた環境循環、景観、地域、健康、歴史性に点数をつける。例えば、景観は0.2、ゴミ問題は0.3、山問題は0.1、雇用問題は0.1、生産時エネルギーは0.3相当として、外皮性能の義務化UA値0.87に加算できるようにする。理科と国語の問題を足すようなものだと批判がありそうだが、CASBEE(キャスビー)と同じような評価法だ。
B案:例外3を地方行政庁に任せるという方法
省エネ法には特例で例外3の規定がある。条件は「地域の気候風土を考慮した建物」で「所管行政庁が認めたもの」とあり、地方分権の絶好のチャンスである。「認めたもの」の指針をつくってくれと地方行政は国にお願いするのではなく、地域独自の基準をつくるようにすればよい。
C案:部分間欠暖冷房の家は、旧・新省エネ基準相当でよい
自立循環型住宅のエネルギーコスト表をみると部分間欠暖冷房の家は外皮性能をあげたところで暖房エネルギー削減の効果は低い。というのも、もともと消費エネルギーが小さいからだ。外皮性能の規制をかけるとしても6(旧W)地域においてはQ値4.3やQ値5.3の家でも消費エネルギーは大差ない。Q値をUA値換算にして1.5〜1.8が適当ではないだろうか。
D案:UA値計算法を伝統的住宅に限り別の計算法をつくる。

外皮性能は全館暖冷房が基本である。部分暖冷房の場合は、納戸や縁側や車庫の外皮性能は高くなくてよいので、「主な居室」「その他の居室」「その他」と区分して、それに見合う外皮性能を計算する。
A:「主たる居室」室温を20℃にキープする熱損失2.7w/uK
B:「その他の居室」室温を18℃にキープする熱損失4.2w/uK
C:「その他」室温を16℃にキープする熱損失5.3w/uK
サンプルプランにあてはめると基準の外皮性能はUA値が1.5〜2.0となる。そうすれば無双窓やジャロジーや引違戸は「その他」の部屋につけることが可能となる。「和のすまい」の要素も救われる。

「一次工ネルギー消費量」への提案
1次エネルギー消費量は建売住宅を基本にした「事業主判断基準」をベースにつくられているので、多様な日本の住まいに適合させるには無理がある。とりあえず次に掲げるものの修正をしてほしい。
また、熱損失の計算には外皮性能を表す熱損失量(U)を入れなければならない。「例外3」を適用した建物のUA値は1.5〜2.0となるので、1次エネルギー消費量の計算の熱損失量はU値0.87×外皮面積として計算するのが妥当である。
A案:暖房1次エネルギー消費量
◇暖房器具は細かく分類されている。その中でもエアコンの部分は、専門家が見ないと区別がつかないほど緻密である。ヒートポンプ誘導法に思えて仕方がない。家電暖房機器は大雑把な区分がよいと思う。当然、コタツも暖房器具の分類に入れるべきだ。敷き布団、掛け布団の状況でエネルギー差があるから数値化できないと専門家は言う。数値化が難しいから省エネ優良品を排除するのはおかしい。私たちは数値化のために暖房しているのではない。
◇薪ストーブの暖房エネルギー消費量はゼロとすべきは当然であろう。しかし、多くの人が薪ストーブを利用すれば日本の山の木がなくなると思っているが山の木はあり余っている。
◇空気暖房と輻射暖房は基準を分けるべきだ。6地域での暖房エネルキー消費量は12〜15GJである。床暖房を選択すると、地上1.2mの位置で室温20℃を目標に計測するから40〜50GJになる。床暖房の場合は室温を20℃まで上げなくてよいのに、測定基準を一定にして公平にしているからだ。人間の体感温度を基本に考えてほしいものだ。基準づくりが目的になってしまっている。
B案:冷房1次エネルギー消費量を見直す
「窓を閉めてエアコン」もよいが、「窓を開けて扇風機」もよいではないか。「家庭エコ診断」では扇風機を薦める。エアコンも扇風機も同じ家電量販店で売っているし、機器の長持ち具合も同じなので、扇風機を排除するものではない。計算では扇風機設置の場台、40Wしか使わないのに800W相当を使ったことにされるのは、無実なのに有罪にされる冤罪に似ている。扇風機や風通しの場含は、冷房エネルギー消費量をゼロとすべき。チェックの方法はエアコン用コンセントがないことにすれば簡単だ。
エアコンコンセントを付けて「暖房用エアコンは使いますが冷房用エアコンは使いません」という姑息な例はあるかもしれないが、それぐらいは許容してもよいではないだろうか。
C案:電気1次エネルギー消費量を見直す
◇照明エネルギー消費量において、居室で1つでも白熱灯があれば全て白熱灯を使ったことになり4GJも増える。プログラムで「全て、蛍光灯を使用する場合」から「主に蛍光灯を使用する場合」にかえるべきだ。トイレや納戸などは点灯しても10分以内には消灯するので、白熱灯でもエネルギー消費量は増えない。
◇照明エネルギー消費量は「蛍光灯にライトコントロールを掛ける」や「蛍光灯にセンサーライト設置」の項目があるが、まれな事例だから必要ない。
D案:給湯1次エネルギー消費量を見直す
エネルギー消費量の中で給湯のエネルギー消費量が多いのに項目が少なすぎる。次の項目の追加を望む。
◇「浴槽の外に断熱材」は既製品だけでなく現場造作の浴槽にも採用の余地をいれる。
◇「浴槽の湯量」で決める。250L以下、300L以下、300L以上と3種類に分ける。
◇「シャワーと浴槽水栓」が同一か分離タイブかの区別をする。
◇「給湯箇所が4ヶ所」までか以上かを区別する。シャワーと浴槽カランを分離すれば湯量は増えるし、洗濯にまで湯を使う人の消費量は多い。
◇2世帯住宅の場台は、給湯エネルギー消費量は倍増だ。基準エネルギーと設計エネルギーは共に数値を1.5倍にあげる。
E案:換気1次エネルギー消費量を見直す
シックハウス法で、床・壁・天井に面状建材を使わなければ24時間換気扇は不要であるから、換気エネルギー使用量はゼロとなる。約4GJの削減が可能で、伝統購法の場合は有利となる。

何が目的の法律なのか
省エネ法は、経済活性化のための省エネ機器販売促進法でもないし、快楽住宅応援法でもない。そもそも省エネが目的なら「外皮性能基準」は中止して「1次エネルギー消費量基準」だけにすべきだ。その基準も生活者の実状にあわせた基準にすべきである。
温暖地・蒸暑地において、暖房エネルギー消費量削減の費用対効果は少ない。以上の提案が考慮されれば、伝統的構法の家でも「省エネ法」は受け入れられるだろう。

   
   
 
建築ジャーナル 2015年1月号掲
 

   
   
 
74
 省エネ法義務化は真の省エネになるのか(補足)
   
 

改正省エネ法の問題点と対抗手段を5回シリーズで書いたが、いくつか言葉足らずの分や補足があるので追加する。

省エネ法がエネルギー消費量を拡大させるかも
読者には建築士会会員も多いと思う。そこで、士会機関誌「建築士2014年10月号」51ページを見てほしい。5月15日公開フォラム「伝統的木造住宅と省エネルギー」の内容が載っている。その中に、建築学会会長吉野博氏の発言がある。「断熱するとエネルギーが増えてしまうことがある。もともと暖房エネルギー消費が低い中で断熱改修をする。高断熱住宅に移ると、かえって暖房時間が長い、部屋の温度が高いということで増えてしまう。それはおかしい」と。ブラックジョークみたいな話である。省エネ法がエネルギー消費量を拡大させてしまうのではないかと警告しているのである。

冷房方法と外皮性能
一般的な外壁の仕上げ材であるサイディングやモルタルに100mmの断熱材を入れれば外皮性能のU値は0.5である。開口部のペアガラスのU値は4.6なので、壁と窓では10倍の開きがある。家の性能を上げるには窓を小さく、または少なくすればよいことになる。夏季も小さい窓の方がエアコンの効きはよいと環境専門家は言う。しかし、エアコンを使わない場合は、室温より風通しや日射遮蔽を重んじるので壁の外皮性能はあまり関係がない。夏の温熱対策は輻広い評価方法にしなければならない。

景観の醜悪化
基準値が決まれば、基準値ぎりぎりの家が多くなる。開口部が少ないと性能(UA値)は良くなるし、軒の出が短くなると目射取得量は増える。つまり、窓が小さく、軒の出が短い家が性能が良くなることになる。安くて性能が良いとくれば、豆腐みたいな家が増えるのは目に見えてくる。日本の風景が様変わりする。

伝統構法と変形性能
変形性能の大きい建物は気密化に問題がある。家が完成すれば防水紙は見えなくなる。変形性能を考慮した伝統構法は、震度5で建物は4センチ傾く。施工時はマニュアル通りにしていても震度5の地震を1回でも受けると面状の防水紙は切れる。そうすると気密性能は落ちる。防水紙と伝統的構法は相性が悪い。

土壁大壁の問題点
土壁真壁はよいが雨水侵入防止のために外側に板を張る場合がある。板を張るから大壁と認識されるかもしれない。壁倍率1.5を確保するには土壁の厚さは70mm以上必要となり、空スペースは15mm程度となる。左官作業は中央を凸に塗るので空きスペースは10mmの場合もある。
「土壁真壁は伝統だから認めよう。しかし、板を貼れば大壁になり、空スペースができるから断熱材を入れるべきだ」という意見がある。土壁は水をたっぷり含んでいるので吸湿しないグラスウールなどの断熱材はカビの発生源にもなりかねない。使用にはかなりの注意が必要だ。土壁真壁の外に板を貼っただけでUA値は3.23から2.21へと上がるが、土壁板貼りにメクジラたてて真壁ではないから断熱材を入れよというほどのものではない。
「土壁の外壁は適用外で構わないが、床・天井は基準性能を満足させるべきだ」という意見もある。床・天井に自然素材で断熱施工をしたとしてもUA値は2.86とさほど向上するものでもない。外壁板貼りとさほど変わらないのである。


適正温度と外皮性能
3月15日公開フォラム「伝統的木造住宅と省エネルギー」において、篠節子氏は22例のアンケートから調査して、住人が快適と感じる室温は16〜18℃だったと報告している。
「自立循環型住宅ガイドライン」(参考2)を見てほしい。外気温12℃の場合、レベル4(旧基準Q値2.7)とは室温20℃をキープできる性能の家の説明だ。別の見方をすれば、快適性は18℃でよい人はレベル3(室温18℃)の性能でよいし、17℃を快適と思う人はレベル2(室温17℃)の性能でもよいことになる。


費用対効果
村上周三氏は「民生用エネルギー消費と消費者の行動パターン2007」の報告において、暖房費用には年聞2〜3万円しか使っていないので、住宅の性能を上げても省エネにならないと言っている。
つまり、外皮性能をあげて省エネをはかるのは、費用対効果が薄いのだ。参考3を見ると年間エネルギー消費量を削減するのに何が一番効果的か分かる。25年省エネ基準は暖房に特化しすぎている。

実地検証をして補正すべきだ
基準値設定のために、暖房機器ごとのシミュレーションは数多くなされているが、生活スタイルのシミュレーションはなされていない。例えば2世帯の場合、浴室2カ所、台所2カ所となり家電も2倍となるが、実生活とかけ離れた消費量となっている。
設計1次エネルギー消費量と実質エネルギー消費量を近づけたデータを示してから、設計と基準を論じるべきだ。これから環境省のエコ診断が一般化する。住まい手は、電気量、ガス量、灯抽量で消費量を簡単に求めることができるようになる。それでも、国土交通省は「設計エネルギー消費量や基準エネルギー消費量は、実態ではなくあくまで基準値である」と言い出すだろう。実態とかけ離れては納得できるものではない。

エネルギー消費量削減
真にエネルギーの削滅をしようと思えば環境省の「エコ診断」と手を組み、地域区分6、7の地域では家電エネルギー消費量、給湯エネルギー消費量削減を一番に考えられるべきである。暖房エネルギー消費量削減を主眼においている「25年基準の省エネ法」は将来、成果があがらず批判の的となり「悪法」の烙印が押されるだろう。そのころにはもう関係した担当者はいない。

外国の例を参考にするのはお門違い
そもそも欧州の暖房エネルギー消費量は年間20万円を超える。新築は少なく、ほとんどが改築である。改築が中心なので新築は建設時に生産エネルギー消費量が大きいので厳しい。もし欧州基準の物まねをするのであれば、建設時生産エネルギーも考慮した基準とすべきである。日本列島は欧州全土を覆ってしまうほど緯度差があり、省エネの方法は北海道と鹿児島では根本的に異なる。同じ基準で数値補正するだけでは限界がある。欧州の基準は北海道には合っても、暖房エネルギー消費量の少ない九州には合わない。

法律になじむのか
理想値や融資基準値を法律で規制するものではない。法律は生命の危機がある場合は必要だ。寒さで命を落とすおそれがある欧州・北海道では法律が必要かもしれないが、温暖地・蒸暑地には適正でない。エアコンの設置までも法律で決めるのは尋常ではない。
守らない守れない法律は山ほどある。省エネ法もそうならないようにしなければならない。

   
   
 
建築ジャーナル 2015年2月号掲
 

   
   
 
75
 省エネ法義務化は真の省エネになるのか
(「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方について」のパブリックコメント)
   
 

法律や告示をつくるとき、国民からも幅広く意見を聞くパブリックコメント(以下パブコメ)という制度がある。昔は、国の官僚たちが地方行政庁を訪れて地方の意見を聞いていた。東京からわざわざ地方に訪ねてきて、意見を聞くとなると、酒が伴う。国の官を地方の官が接待する官官接待はけしからんと社会問題になった。下戸な入たちが反対したのだろうか、国の官僚たちの地方行脚は廃止となり、地方の意見は直接国民から聞こうということになった。それがパブコメだ。国土交通省だけでも、年間200件ぐらい出されるが、ほとんどコメントは集まっていない。官官意見交換からパブコメ制度に代わってから様子がおかしくなってきているようだ。北に行けば熱燗、南に行けば冷酒なのに、地域の区別がつかなくなって全国一律化に拍車がかかっているように思えてならない。
 特に省エネ法はそうだ。省エネ法の骨子案である、今回の「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方について」も地域差無視の典型のようだ。
 今回の省エネ法のパブコメの告示日は2014年12月18日で、意見の受付締切日は2015年1月6日と超特急だった。普通のパブコメの募集期問は30日あるが、今回は、年末の正月連休を差し引くと実質の営業日は8日間と驚くほど短期間であった。あまり意見を聞きたくない意図があったか無かったかは知らないが、それにもかかわらず、結果は210人から310件ものコメントが出された。約2週間後、パプコメはグルービングされ「見解・対応等」が公開された。これらの「見解・対応等」に「見解」をしてみる。

「骨子案」
建築物の省エネルギー性能を確保する際には、新築時に外皮・設備等に関し必要な対応を講じることが効果的・効率的である。…建築物を新築する際に省エネ基準に適合させることを求め、省エネルギー性能の確保を図る方句で検討を行う。

家電などの規制
「パブコメ」
家電等のエネルギー消費が伸びているのでそちらを規制すべき。
「見解・対応等」
機械設備に関するトップランナー制度等により対応すべき事項と考えております。
■「見解・対応等」に「見解」してみる
トップランナー制度は機器類の効率化向上を目的にしているもので、エアコンや車や冷蔵庫やテレビの効率化は当然のことである。住宅でのエアコンやボイラーは、暖冷房エネルギー・給湯エネルギーである。パブコメはテレビの大型化、冷蔵庫の大型化、自動掃除機、食器乾燥機などの必要以上の家電製品の増大を規制すべきと言っているのに、機器の効率化で対応とはトンチンカンな回答だ。増え続けた住宅のエネルギー消費量の原因は家電製品なのに、家電メーカーに効率の良い製品をとんどん開発させ、消費者に買い替えさせることで経済成長を促そうという魂胆だ。50インチのテレビや700Lの冷蔵庫は決して省エネにならない。

住まいの評価
「パブコメ」
エネルギーを使わない住まい方を評価すべき
・冷暖房設備を設けない場合の評価を認めるべき
・住まい方でエネルギー消費量は変わるので設計段階での規制はなじまない
・世帯ごとのエネルギー消費量など暮らし方で評価すべき
「見解・対応等」
長期間に渡り存続し、使用者・使用方法等の変更が生じることの多い建築物におけるエネルギー消費量の削減に向けては、標準的な使用条件下で一定の省エネルギー性能を満たすストックの形成を推進する必要があり、当初の利用者が予定している特殊な使用方法を前提に省エネルギー性能の劣った構造・設備とすることを許容することは不適切と考えております。
■「見解・対応等」に「見解」してみる
窓を閉めてエアコンを使うではなく、窓を開けて扇風機を使うなどなるべくエネルギーを使わない住まい方を問うているのに、使用方法が変わるかもしれないので、エアコン使用という一律な条件下にすべきという見解である。また、また扇風機を廻すというのは特殊な扱いにされ、省エネ性能に劣った構造・設備であると決めつけてある。その結果、不適切という見解である。
全館暖冷房だけが正義のような見解で、庶民の生活を軽んじているように思える。

地域による気候風土の違いについて
「パブコメ」
高気密・高断熱住宅を好まない暮らし方を認めるべき
・伝統的構法のみならず、地方の住宅の多様性を尊重し、戸建て住宅については義務化すべきではない
温暖地域では暖冷房基準だけでなく、採暖・採涼の基準をつくるべき
・外皮規制によるエネルギー削減効果と規制によるコストアップや失われる価値を比較検討すべき
・一般的構法であっても、地域の気候風土への対応に関する工夫を凝らしているものに対しては評価できる仕組みを設けるべき
「見解・対応等」
ご指摘を踏まえ、今後、伝統的構法の建築物など地域として継承・保全する必要性が高いと認められる建築物の継承を可能とする仕組みを検討することとしています。
■「見解・対応等」に「見解」してみる
伝統的構法については「地域の気候風土に対応した伝統的構法の建築物などは外皮規制を適用外」があるので、伝統的構法でない地域の多様性を尊重した戸建て住宅について聞いているのに見解はない。暖冷房ではなく、採暖・採涼の評価法を採用すべきといっているのに、これに対しても見解はない。規制により100万円ぐらいの建築費アップになり費用対効果がないことや、縁側がつくれなくなる日本建築の価値の喪失については言及かない。

伝統構法の扱い
「パブコメ」
伝統的構法の扱い検討について工程表に記載すべき
「見解・対応等」
ご指摘を踏まえ、工程表の中に「伝統的構法の扱い等の検討」を追加します。
■「見解・対応等」に見解してみる
ほとんどの事項が、〈原文を維持〉なのに対し、これは唯一の〈一部修正〉である。

薪ストーブなどの評価
「パブコメ」
薪ストーブなどの評価検討をすべき
「見解・対応等」
ご指摘を踏まえ「新しい技術・材料等の性能の評価に際しても、専門性を有する民間機関の活用を通じ、技術開発成果等の活用の円滑化を図る必要がある。」と追記し、想定される評価方法の方向性について記述します。
■「見解・対応等」に「見解」してみる
薪ストーブは「新しい技術・材料」ではない。昔からある暖房機器である。評価が難しいから最初は入っていなかったのだろう。

「和の住まい」との対立
「パブコメ」
・国土交通省も参加しておしすすめている「和のすまい」と対立するものが多い。義務化すれば日本から「和のすまい」が無くなる。「和のすまい」を守るために「伝統的構法の扱い」に限らず、外皮の規制強化を図るべきではない。エネルギー消費量削減だけの規制にすべき。
・新しい規制ができると、偽装防止対策の団体が新たにできる。そして、天下り先がまた増える。
「見解・対応等」
なし

省エネ法の骨子案が決まり、義務化が始まる。エコとエコノミーは両立するという考えで、賛同者も結構多い。しかし、縁側がつくれないといえば賛同者も疑問に思うだろう。次号は「縁側」

   
   
 
建築ジャーナル 2015年3月号掲
 

   
   
 
76
 省エネ法義務化は真の省エネになるのか (縁側)
   
 

回転寿司屋に行けば「エンガワ」が100円という廉価で大量に回っている。ヒラメやカレイは回転台にさほど乗ってないのに、どうしてエンガワだけがたくさんあるのだろうか。そのほかの部位はどこへ行ったのだろうかという疑問は残るが、それは今回のテーマではない。縁側の『縁』という字は「エン」とか「フチ」とか読むが、どちらも同じ意味である。「ヒラメのフチガワ」と言ってもおかしくはない。額縁を例にあげると絵画とバックの壁の境界にあるものをさす。額縁には幅が必要で、アルミパネルに見られる細くて線に近いものは額縁とはいわないだろう。絵でもない壁でもない中間領域みたいなものだ。「縁談」とか「人の縁」といえば自分という人間と他人という入間を柔らかくつなぐものであろう。建築でいえば家の内部でもなく外部でもない、家の内と外をつなぐ緩衝空間となる。一方で使い方を勘案すると、家の内部でもあり外部でもあるという見方もできる。禅問答の世界である。

構造からみた縁側
伝統構法の建築には上屋と下屋があり、下屋は上屋を支えるつっかえ棒みたいな役目をしている。例えば、上屋は5寸柱で梁は梁間方向、桁方向にしっかり組まれ、足固めもあるのに、下屋の柱は4寸か3.5寸程度で、差し掛けの梁下に2間ごとにあるだけで足固め材はない。基礎も基礎石の上に乗っかっているだけである。このように下屋は、地震時に上屋を守るために柔軟に揺れてエネルギーを吸収し、先に壊れてくれるのだ。トカゲのしっぽみたいな役目である。 (参考1)
 しかし、現在の建築基準法では上屋も下屋も区別がなく、同じ扱いになる。下屋にも土台や梁や基礎が必要となり、上屋と下屋の構造的区別がつかなくなってしまった。そうなると建築費用も同じようにかかり、コストが高いとなると縁側も部屋にしてしまおうと縁側がだんだんと消えてなくなってしまった。
 ところがこうなると、従来の縁側のある家の耐震診断において構造的問題が発生している。耐震診断の基準にも主屋、下屋の区別がないために、下屋扱いになるであろう縁側にも、雨戸の戸袋の壁に耐力壁補強をする例が少なくない。壁倍率4倍の補強をいれて、構造バランスが良いという判定綜果の耐震診断を見たことがある。いかがなものか。


温熱性能の縁側
寒い地方には玄関に風除室を設けてある。外部環境を一度風除室で受け止め内部へつながる。同じく縁側も、寒い外気を一度縁側で受け止め、それから内部へとつなげている。例えば外気が10℃の場合、縁側が15℃となり室内が20℃となる。省エネ基準がいう外皮は外壁の熱損失量なので外気10℃と室内20℃の関係だけで、縁側は考慮されない。日本の住まい方では縁側という緩衝空間は非常に重要だが、それは評価しないで外部のサッシにペアガラスをいれよという。サッシだけが防寒装置とみるのは、産業界優遇事業なのかと疑いたくなる。縁側や障子の効果とは無関係にサッシ単独の性能が高くなっていくと、付属品が増え、特にペアアラスは重くなり、ますます窓を開けなくなるという悪循環に焔ってしまう。縁側がなくなってしまう理由でもある。

採涼の縁測
夏、直射日光が当たればアスファルトやコンクリートの表面温皮は50℃を越える。外気温が33℃の場合、軒が長く縁側があると室内は31℃である。しかし、軒がないと外気温は33℃でも直射日光が床面を暖め輻射熱が加わり、室内の表面温度は40℃近くになる。
家の外は常に風が吹いている。0.5m/sの風で体感温度は2℃も下がる。縁側に座り込み、風鈴の音色を聞きながら、スイカでも食べる風景こそ「ザ・日本の夏」である。おもてなしニッポンから「縁側」は切っても切れないのだ。

合理化住宅
最近、つくり手側からの台理化が進んでいる。総二階、小さい窓、疵なしか短い軒の家のオンパレードである。家の間取り上も、床の間がなくなり、縁側もなくなった。建築建材もサイディングとビニールクロスを標準仕様と聞かされ、住み手は疑問に思うことなく言われるがままにつくり手から提供されている。コストは安くなるが、寿命が短くなれば合理化とは言えない。
 軒が深い縁側は、風雨から壁を守り、温熱要素の緩衝空間であり、主屋を守る大事な耐震装置であるゆえ家の寿命が長くなり、寿命/コストが高ければ合理化住宅である。さらに日向ぼっこや半戸外作業場が付いてくるというおまけもある。

縁の種類
外部であり内部である縁側は日向ぼっこをしたり、近所の人との応接だったり、干し野菜置場だったり、作業場だったりとその曖昧さゆえに非常に便利で多用途な空間である。昔は勉強部屋と化した時代もあった。

 もうひとつ忘れてはならないのが、掃出し窓の外に付けただけの縁側だ。いわゆる「濡れ縁」という。月見台、ウッドデッキ、縁台と用途に合わせて呼称は違うが、雨に直接あたるので耐久性はあまりない。大昔は下屋の外ラインに雨戸があり主屋のラインに障子戸が立てられた。その場合の縁側は廊下的な役割を担い、それこそ温熱要素としての緩衝空問の役目を果たしていた。木製のガラス戸が登場してからは、雨戸のラインにガラス戸が設置され、縁側の使い方がもっと内向的に変わってきた。木製ガラス戸からアルミサッシに替わると実際の開口部は半分以下となり、完全内部化された。さらにサッシの内側にカーテンが設置されると縁側のいい面はまったく生かされなくなり、物置と化す家が多くなった。(参考2)

このとき、参考3のように雨戸が障子のラインにあるものを基本に、ガラス戸・網戸が障子のラインにあれば様相は変わったと思う。本来の縁側の使い方ではないだろうか。


これからの居場所
人口は滅ってくる。しかし、都会は相変わらずより便利により近くにと限りない密集化に歯止めがかからない。少し都会から離れた建築地では敷地に余裕が出てくるので、縁側が復活するかもしれない。筆者は3年前まで「熊本県立大学」で非常勤講師をしていた。授業の内容に感化されていない初回の授業で、アンケートを5年間採った。まず、衣、食、住で和・洋のどちらを好むかという質問をする。衣は洋好み95%に対して和5%で納得できる。食は健康志向からか和好み60%に対して洋好み40%でなんとなく納得できる。しかし住はなんと和好み70%に対して洋好み30%で、圧倒的に和好みなのだ。5年間ともほぼ同じ結果である。和のどこが一番好みかと問えば『縁側』だった。家に縁側がある学生は10%もない。どこでそう感じたかと問えば、祖父母の家と答える。構造面、温熱面で問題点が解決すれば、将来必ず縁側は復活すると希望を感じた。
 次回は費用対効果について。

   
 
建築ジャーナル 2015年4月号掲
 

   
   
 
77
 建物価格と坪単価
   
 

一昔前、車の表示価格はバラバラたった。エアコンやラジオがオプションなのか標準装備なのかは車種やメーカーで異なっていので、価格の比較が困難だったのだ。
  現在では、ステレオは標準装備で各メーカーの仕様は統 一化されているので価格の比較がしやすい。それにひきかえ、あいかわらず住宅業界の価格は非常に分かりづらい。わざと分かりにくくしているようにしか思えない。

標準仕様について
価格を表示する際は、家の大きさと仕様で異なるため、仕様を固定化したものを標準仕様という。標準とは普通「平均的なもの」を意味する。しかし、住宅業界ではちょっと意味が違う。一般的な住宅の内装の壁仕上げの標準仕様といえば「ビニールクロス」である。しかし、一般的にビニールクロスより安い仕上げはない。悲しいかな住宅業界では、標準仕様とは最低仕様を意味するのだ。外壁仕上げも同様に、標準仕様はサイディングである。サイディングより安い仕上げはない。タイル調、吹き付け調、石目調、木目調と選択はあるが価格はほぼ同じで、本物でないことでは一致している。つまるところ、外装でも標準仕様とは最低仕様のことにほかならない。

標準価格について
標準価格についてはさらにひどい。車業界に置き換えれば「標準装備としてタイヤは付いていますが、ハンドルは好みがあるのでオプションにしています。エアコンやステレオはもちろん別途費用です」というようなものに近いものがある。住宅業界でいう主なオプションとは「網戸、屋外給排水、出窓、照明器具、屋外立水栓、散水栓、ベランダ、テラス、水道引き込み、TVアンテナ、エアコン専用コンセント、ネット引き込み、ウォシュレット、ガス工事、厨房セット、下駄箱、カーテンレール、障子、照明器具、付庇、地盤補強、地盤調査」である。価格に含まれるべき工事が多すぎる。
  こういったメーカーほど、「システムキッチンとペアガラスは標準装備です」と声高にうたう。なかには、仮設工事までオプションにしている会社もある。昔は網戸、給湯ボイラーまでも除外している会社があった。さらにひどいのは、柱の大きさは135×135とテレビコマーシャルでうたっていたのに、土台と梁は105幅である。柱に土台と梁の幅を135に合わせれば追加工事となる仕組みである。最近はあまりの酷さに自粛したみたいだが。住宅業界の表示価格はまったくあてにならない。

工事面積と坪単価
昔から工事価格を面積で除した坪単価がよく使われる。工事範囲も曖昧だが、それよりも建物の面積がもっと曖昧だ。建築確認上の延面積では、開放的なベランダでも面積に算入するし、軒の出が長いと軒内までも面積に算入させられる場合がある。逆に太陽光発電用の部屋は、4方が壁に囲まれていても面積には含まないという変な法律なのである。
 建物の面積は、登記簿用の延床面積が一番公平であると思うが、建築関係者は複雑さが好きなようだ。大きく見せたいなら、吹き抜けやロフト、ペランダ、軒下費積を計算に入れる。特にマンションではそれが慣例になっていて、造語で占有面積と表現している。占有面積25坪2,500万円という表現であるが、実際の延床面積は18坪という具合である。延面積、工事面積、占有面積、建築面積、延床面積とすべて数値が異なるのである。坪単価を安く表現したければ分母を大きくすればよい。大きい数値になる面積を採用すれば坪単価が安く表現できるのは言うまでもない。坪単価表現も藪の中である。「坪単価26.5万円」と表示している会社の平均坪単価が50万円を超えているが、社長は「わが社は安く提供しているので、施主さまが追加工事を多くなされる」ともっともらしいことを言う。

耐用年数
コンタクトレンズには1日使用品と1週間使用品と無期限使用品がある。当然1日使用品が一番低価格だが、使用日数で割れば一番割高になるので、1日使用品が安いとは言えない。住宅業界では耐用年数で割る習慣がないので、ことが複雑になる。軒の長い100年以上耐久性のある昔の家も、サイディングとビニールクロスの短命な現代の家も総金額でしか比較しない。コンタクトレンズの1日使用品と無期限使用品を比べるようなものだ。もちろん何も知らない消費者にとっては、総金額は安い方が魅力的に見える。1日使用品が安いように見えるのだ。ヨーロッパは時間軸を念頭において物事を考える。石畳、家具、処分までを考える原発などがそのいい例であろう(ドイツが原発を止めたのは環境問題ではない。処分コストを勘案すると高コストだからた)。日本は耐久性や将来のことはあまり考えない。
 そもそも、住宅では、住宅品確法が耐用年数表示をさらに分かりにくくしている。
 家の傷み共合は白蟻被害や地震・大風による被害がなければ渥根材、壁材の仕様で決まるだろう。過去100年もった家になぜ耐久性があるのかは、屋根の軒の長さに比例するといっても過言ではない。しかし住宅品確法での耐用年数では、この常識と判断基準がまったく違う。住宅品確法の基準で最高レベル3は
1、外気通気工法かつ柱4寸以上または薬剤注入材
2、土台は檜または薬剤注入材
3、洗面所の床はビニールコーティングした材料を使用。無垢材は使えない。
4、床下の防湿、換気
5、小屋裏の換気
 の以上であり、これを「構造が90年もつ程度の対策が行われているもの」と国がお墨付きを与え、長期優良住宅やフラット35Sの認定基準になっている。現在、実例として日本で100年耐久を証明する家は伝統的構法の家よりほかにないのだが、その耐久性要素というものが住宅品確法の基準にはない。耐久性に一番重要な屋根の耐久性は問わず、ハウスメーカーの標準仕様のカラーベストでもよいのである。材料メーカーは90年耐久と言っていないのに、その建材を使用すれば90年耐久の家になるのは不思議だ。もちろん軒の長さも認定基準にはない。住宅品確法の基準を決めている学者さんが、屋根の材料と軒の出が一番重要な要素であることを知らないわけがない。建築界に毒されているからだろうか。

耐用年数を考慮した金額提示を願う
建物は長く使用する。維持管理費用やランニングコストを考えて、建築費は目先ではなく、耐用年数で割って比較しなればならない。
千年住宅を呼称したハウスメーカーもいたが、さすがに数年で引っ込めた。自分でもあまりにひどいと思ったのだろう。
一般消費者にも言いたい。価格を比較するなら分母に耐用年数を考慮してもらいたいのだ。総2階で軒をなくし、不要な2階責積を増やす手法は日本の住宅事情と街並みをいびつにしている最たる原因だ。瑕疵担保履行法でも10年が目安なので、10年耐久の防水シート、コーキングが採用され、軒の出で耐久性を上げることは眼中にない。
そこで大体の目安を30年で区切り、30年で耐久性が終焉する石油製品を使った住宅と60年以上の耐久性があり、軒の出もある無垢材使用の家では耐久性に少なくとも2倍の開きがあるのだ。そこで、総建築工事費用÷述べ面積×耐用年数の表示ができれば車業界と同じような比較ができるのだが、住宅業界は変わらない。ゆえに一般消費者が賢い消費者にならねばならない。

   
 
建築ジャーナル 2015年5月号掲
 

   
   
 
78
 木の家のメンテナンス
   
 

浴室の壁・天井の板
世の中の諮室が、掃除が楽という理由でユニットバスが多くなってきた。本来日本人は、温泉旅館のような風呂や露天風呂を好むはずだ。確かに、壁の表面をビニールコーティングしたユニットバスは、カビが付着したら取りやすい。カビ胞子が黒色して沈着したものがカビである。カビキラーなどの薬剤を散布すると黒色が消えるので、カビは除去されたと思っている人は多いが、色素がなくなっただけでカビ胞子は残っていてまた生えてくる。カビ菌を完全に除去するにはアルコールがよい。
ここで注目したいのは、カビが付着して黒変してから除去するか、胞子状態のうちに対処するかだ。

後者の場合、霧吹きでエタノールを壁天井に吹き付ける。ただし仕上げ材は木でないとエタノールの浸透効果がない。エタノールは薬局で1瓶1,000円程度で販売している。純度は85%だ。密室で散布すると酔っぱらった気分になるので、中毒にならないように注意しなければならない。3週間に1回程度の散布でカビ発生の予防は可能である。しかも、カビは室温20℃以上かつ湿度75%以上でないと増殖しないので、4月〜11月の期間だけでよい。
カビの事前予防ができる木の壁の浴室と、カビを発生させてから除去しやすいユニットバスとどちらがよいだろうか。





檜風呂は桶と思うべし

手桶を10年使えれば長持ちしたと言える。少々の劣化も風合いである。檜風呂はポリバスなどの浴槽と同じに考えず、手桶と思えばよい。ポリバスと思うから耐久性がないと言うのだ。しかし、ポリバスにない魅力は満載だ。保温性もあり、なんといってもお湯が柔らかく感じられ、肌触りも良い。75cm×100cmの桶を毎日便って10年もったと思えば充分ではないだろうか。檜風呂といっても、材質はいろいろである。普通サワラやヒバが多く、高野マキや神代ヒノキを使えぱ2倍の20年は長持ちする。価格もちょうど2倍であるが。

洗面所の床
浴室と洗面所の間にマットが敷いてあるお宅は多い。湯上りにマットで足を拭いたら、足の水分を吸収してくれる。しかし、3人も拭こうものならマットは飽和状態となり、床まで浸透して床板にカビが生えてしまう。その解消法として珪藻土マットなるものがある。厚さは2cmもある。2cmないと吸湿性の効果がないことを物語っている。

蛇足になるが、一般に珪藻土を壁に塗る場合、2mm程度の厚さしかない。2mmではほとんど吸湿効果はないと言っていいのではないだろうか。珪藻土敷きマットは1万円である。問題は費用対効来である。洗面マット代りに2cm厚のスギ板の床材を敷くことを薦める。これを「床板マット」と命名しよう。2cm程度の床板の端材は現場に多量に出る。適当な幅に切断して、浴室の出入口に置くだけでよい。ただし、綺麗なうちは床と同化して、つまずく危険があるが、だんだんと黒ずんでくるので大丈夫。汚れたら天日に干し、腐食したら、バーベキューの薪にすればよい。


トイレの敷物

洋式トイレの場合は小便の跳ね返りは解消されない。水面に泡を浮かべて跳ね返り防止をする機器も出現したが、陶器でないのでおススメしない。
床の掃除対策として専用タイルがあるが3万円もする。ちょっと高すぎる。トイレマットは耳の部分が15cm程度で短すぎる。近頃ロングサイズなるものが売っているが、熊本のホームセンターやニトリには売っていなかった。唯一ハンズマン1軒だけにロングサイズがあった。耳が40cmと長い。こちらのロングサイズを購入されたが良いと思う。









杉板の床

床材には傷が付きにくいナラやチークなどの堅木を使う例がある。外国ではほとんどが、土足の生活なので靴で傷がつかない堅木が多い。しかし、日本は世界にまれな素足文化である。素足だったらスギなどの柔らかい床材のほうがよい。人の素足では傷付かないが、物を落としたときに床材が凹んでしまうことが多い。凹んだら出せばよいが、少しテクニックが必要だ。そのテクニックを紹介しよう。スギ板の凹んだ部分に水を垂らして針で2〜3カ所に小さく穴を開ける。その上にタオルを被せてアイロンをかけるのだ。すると、穴も消え元のスギ床に戻る。ただし、削り取られて凹んだ傷は戻らない。
 次に変色のクレームもある。台所などでアルカリ系の洗剤や重層を床に落とすと黒変する。杉材の赤身のタンニン成分に反応するのだ。ハイターなどで脱色すると、床が真っ白になってしまうのでよくない。酢や酸っぱいミカンの汁を垂らすとよい。アルカリ反応で黒色は元の色に戻る。

外部の漆喰の黒変
漆喰は強アルカリである。横雨が外部の杉の木に当たり、その汁が垂れて漆喰に当たればアルカリ反応を起こし、黒くシミになる。あわてて酸などで中和しない方がよい。酸を使えば漆喰を傷めてしまうからだ。対処法は何もしないことだ。3週間放置しておけば完全に消えてしまうのであわてなくてもよい。






漆喰壁の補修

クロスは汚れが付いてもふき取れる利点があるという。そもそも、クロスとは布のことであるが、本物のクロスのことを布クロスと言わなければならない。日本で、布は偽物に席を奪われてしまいビニ一ルクロスがクロスなのである。もともと目本の家の壁仕上げは漆喰が主流であった。きれい好きの日本人の奥さん方は、壁がふき取れる利点があるとクロスを好み、壁材の主流となった。漆喰壁は汚れが付きやすいと嫌う人がいるが、電気のスイッチプレートの操作時に、壁に直接手を触れないように訓練してもらいたいものだ。漆喰壁は吸湿性が高い利点があるが、汚れも付着しやすい。しかし漆喰に汚れが付着しても浸透性の汚れでなければプラスチック消しゴムで消すことができる。浸透性の汚れであれば、ハイターやカビキラーがよい。漆喰は真っ白なので塩素の脱色作用を利用するのだ。コーヒーを漆喰にひっかけてしまったことがあったが、カビキラー5回吹き付けで完全に消えた。最後にどうしても消えない場合は、120番の目のサンドペーパーで削りとればよい。

   
 
建築ジャーナル 2015年6月号掲
 

   
   
 
79
 2030年に向けてのエネルギー消費量削減
   
 

政府は4月30日、2030年までに日本が排出する温室効果ガスを2013年比で26%削減する目標を発表した。2013年は福島の原発事故後、化石燃料による発電の比率が高くなり、温室効果ガスの排出量が特に多くなっている年を基準にしているので、この26%は低い目標値だという見解もある。
 削減のための対策は、産業界には非常に甘い。自販機やコンビニは野放しで、新幹線の5倍ものエネルギーが要るリニアモーターカー開発にストップをかけない。民生に対しては、エネルギー消費量削減のために「国民はエネルギー消費を控えなさい」とは言わず、「我慢は良くない。エコ商品を購入したり、エコ工事を行ってエネルギー消費量削減を図りなさい」である。
 とにもかくにも、2020年に義務化することに向けて着々と進んでいる。規制のための省エネ法はエコ商品販売とエコ工事を目的にした経済活性化法に思えてならない。2013年、国は平成11年省エネ基準の適合率は60%と審議会で公表していたが、住宅省エネルギー技術施工技術者講習テキストでは中小工務店の適合率は2割と記述している。中小工務店は全建築の半分を占めるので計算が合わないが、そんなことはどうでもよい。
 最近、省エネ規制の目的が環境専門家の間で様相が変わっている。主旨は次のような内容だ。「欧州と比べて日本のエネルギー消費量は少ない。それは日本人が我慢して暮らしているからだ。2020年に平成25年省エネ基準を義務化してもエネルギー消費量は大幅には減らないだろう。まずは、日本人の住まいの住環境性能を上げ、我慢の暮らしから解放させるのが先で、その後で規制をかけ、ステップアップしなければエネルギー消費量の削減にはならいない」と、義務化してもエネルギー消費量は減らないと先手を打っている。さらに「ノンエナジーベネフィット」というエネルギー削減には関係ない効果を掲げている。
 今や、社会問題のトップは医療費である。25年省エネ基準を義務化してもエネルギー消費量の削減にはならないが、国民の快適な暮らしが営まれれば病気が減り、医療費が下がるというとんでもない論理展開である。省エネを考え、2030年を見据えればもっと住宅の高性能アップをすべきとも訴える。HEAT20G2(坂本雄三氏委員長)構想もその一つである。外被性能にUA値0.46を要求するのである。宇宙船並みの仕様である(200〜-300mm断熱材とトリプルサッシ)。そのような仕様の家をつくるためのエネルギーはどうするのだろうか。製造のために地下資源や石油製晶を相当量使用するという落とし穴があることを忘れてはならない。温室効果ガス削減を御旗に、建築資材消費拡大を促し、日本の経済を一時的に活性化することが目的だろう。経済産業省主導だとこうなるのだ。

真の省エネ対策
世界的に温室効果ガスの削減を考えるなら真の省エネを考えなければならない。日本は敷地面積当たりのエネルギー消費量は、世界一だろう。衛星から地球を見た映像を見ると日本が一番明るい。それなのに、日本の省エネは乾いた雑巾を絞るようなものだという人がいるが信じられない。真に省エネを考えるなら次の削減方法がある。
@ 電柱の数ほどある自販機を撤去すること。冷蔵庫を屋外におくようなものだ。欧米にはない。
A コンビニは初心に戻って7時開店、23時閉店の営業時間にすること。欧米並みに。
B 空港の照明は、震災直後9割消してあった。外国並みだった。瑛在はもとに戻っている。9割消すこと。
Cネオンサインを赤々と照らすのは香港と日本だ。これこそネオンのない欧州を真似て、看板照明やネオンを減らすべきだ。
Dリニアモーターカーは新幹線の5倍ものエネルギーが必要。リニアモーターは中止すべき。新幹線でよいではないか。狭い日本そんなに急いでどこに行く。
Eコンパクトシティの励行。逆に田舎暮らしも貴重だ。
F2世帯住宅の推進。テラスハウスを励行し、街中に戸建て住宅を建てにくくする。
Gマイカーのガソリン代も多い。マイカーでの都市の乗り入れ禁止や一入乗り禁止にすべきだ。車産業にあまりに気を使いすぎ。
Hマンションやアパートの廊下灯は明るすぎた。深夜まで点灯している。街灯並みの明るさに規制すべきだ。あるいは高い料金にすべきだ。
I誘導灯は昼も点いている。検査のために点灯しているのだろうか。自動点灯にすべきだ。ホームセンターに売っている安いセンサーライトでさえ自動点灯装置は付いている。
J住宅のIHヒーターの禁止。ガスの3倍くらいのエネルギーを消費する。
K柱宅のエコキュートの禁止。電気でお湯を沸かすのもガスよりエネルギーを消費する。
L700L冷蔵庫の発売禁止。いれたことを忘れて1カ月間ビールを冷やし続ける場合もあるだろう。冷やすのは飲む直前だけでよい。
M増え続ける家電製品の大幅削減をはかる。
産業界に気を使い、大きな削減項目には手をつけず、ちまちました項目を国民に強いる。エコ商品を買わせ、エコ工事を促すのだ。

副作用T 工務店の動き
30年前、厳寒の北海道で高断熱化がすすみ、結露によるカビが発生して社会問題となり、官民挙げて対策を考えて実行した。おかげで末端の小さな工務店まで結露対策は行き届いている。では、温暖地(5,6,7,8地域)ではどうだろうか。融資がもらえるからと、へたに厚い断熱材を入れると結露が発生する危険性がある。高温多湿地域では、湿度が高いので、わずかな温度差で結露が発生する。極寒などの必要に迫られての断熱工事ではないので、施工側は真剣に考えない。大工人口40万人のうち、2O万人の大工を対象に特安千円講習会を用意しているが、半分の期間を経過しても受講大工は3%程度だ。5年間の予定期間での受講者は5%程度にしかならないだろう。受講者に感想を聞いてみた。まったく理解していないのが実情のようだ。結露防止工事は、建築基華法ではないので義務とは思っていない。このまま、高断熱の家を遂行するなら、施エ
ミス(手抜きではない)の連発で30年前の北海道みたいにカビだらけの家になり、社会問題となることは明自だ。

副作用U 風景の醜悪化
日本から日本の家がなくなっている。軒が短く、窓が小さい家は廉価住宅だったが、最近は違う。軒が短く、窓が小さい家は高性能と表現して販売している。25年省エネ基準のモデル計算式をみてみよう。標準プランは開口率10%の場合、窓はペアガラスにしなければ25年省エネ基準は満足しないが、窓を小さくして開口率7%にすればシングルガラスで達成できる。さらに、軒を短かくすれば日射取得量が多くなり、暖房性能が高くなるという計算だ。結果、窓が小さく軒が短い家の方が高性能住宅となるのである。環境専門家は「窓を小さくすることを推奨したのではない。窓の性能を上げること」を勧めているというが、世の中は思うようには動かない。背後にアルミサッシ業界の魂胆が見え隠れしてしょうがない。日本の住宅業界はモラルが低いと環境専門家はいうが、外国とは違う。熾烈な競争業界で住宅販売の専門員を置いている。売り上げトップが優績社員と崇める会社と、基準を満足した家が高性能住宅という社会がタグを組む。産業構造の中に取りこまれ、景気対策の道具にされてしまい、残るのは醜悪な日本の街並みだ。

  来月の話は、「エコ商品で費用対効果があるのは太陽熱温水器」

   
 
建築ジャーナル 2015年7月号掲
 

   
   
 
80
 太陽熱温水器のすすめ
   
 

原子力発電の発電原価は、事故処理などの費用を含めても、発電原価は8円/kwhとほかの発電原価より安いと国は発表したが、どんな計算をしたのだろうか。日本は福島原発事故により甚大な被害と反省があるから、今後の事故率は減ると思われるので、損金を少なく見積もっての8円/kwhだと言っている。これでは、殺人を犯した犯罪者は服役の経験と反省があるので、信用できるという論理がまかり通るではないだろうか。
 事故当時は原発批判で、太陽光発電設置へ切り替えるべきだとの意見が多数だった。38円/kwhの高額で買い取り、22円/kwhで販売する。動力の場合は更に安く11円/kwhの安値である。中古車でいえば、下取り価格38万円、再販価格11万円と大損の仕組みである。しかし、電気の場台は、差額損金を電力会社負担でもなければ国負担でもない、国民全員で負担するという仕組みをつくっているのだ。そのことを知る人は少ない。電気代の請求明細書を見れば「再エネ賦課金」という欄がある。何のことか分からない。難しい言葉は理解できず、煙に巻かれてしまっている。例えば、わが事務所の今月の「再エネ賦課金」は470円だった(資斜1)。この「再エネ賦課金」は昨年の2倍になっており、雪だるま式に累積して増えていく。470円は10年先、20年先には2,000〜-3,000円になっていくことは明らかだ。消費者が「再エネ賦課金」の意味に気が付き、社会問題になってから騒いでも遅い。そのことを決めた人たちは雲の上に行ってしまっているから。電力会社は、数年後に批判の矛先が自分たちにくることは分かっているので、近年、太陽光発電の高額買い取りにストップをかけ始めた。
 38円の高額買い取りを得したと思うのは間述いである。国民全員が太陽光発電を設置したら、数年後には、儲けた分と周額の5,000円相当の「再エネ賦課金」が請求されるという仕組みで、タコの足食いと同じである。太陽光発電や蓄電池などの省エネ機器の費用対効果は低い。税金補填で効果ありとするのは、孫に払わせるだけのことで、費用対効果があるとは言えない。

太陽光より太陽熱
省エネ機器のうち唯一、費用対効果があるのは太陽熱温水器だ。九州において、年間消費エネルギー代は、暖房費用2万円、冷房費用1万円、給湯費用6万円と圧倒的に給湯費用が高い。給湯費用にメスを入れた方が効果は高いのだが、経済産業省の省エネの思惑は違う方向を向いている。大企業がつくっていないからだろうか。その太陽熱温水器販売に詐欺まがいの事件があった。50年前、朝日ソーラーという会社が大分にあった。熊本の亀田産業という小さな会社に太陽熱温水器をつくらせ、朝日ソーラーは販売に徹した。会社は社員に高いノルマを課し、夜討ち朝駆けの強引な販売で高収益をあげ、経済界は○○社長をスターとまつりあげてもてはやした。しかし、強引な訪問販売とクレームが殺到しブラック企業と烙印を押されて、売り上げは急降下していった。今ではエコ会社と自称し、太陽光発電装置を販売している。
 当時、朝日ソーラーの強引な販売で、九州の田舎の家の屋根には沢山の朝日ソーラーの太陽熱温水器が設置された。しかし、度重なる台風の襲来でそのほとんどが落ちた。原価償却前に破損した家は悲惨な状態であった。どこにも文句を言えず設置損だった。

床置きのメリット
屋根に乗せる揚合は取付番線が必要だ。瓦屋根の場合は番線を軒先に付けるので、風にあおられ、軒先瓦が破損する。台風被害は太陽熱温水器本体だけでなく、瓦の被害も受ける。それで、専用の金物をつくり、瓦の隙間に差し込んで番線を留めるようにした(写真1)。金具が見えないので見栄えは少し良い。







 屋根の上では太陽熱温水器が落ちる可能性もあるし、見栄えも悪いので床置きを考えた(写真2)。太陽光発電の場合は、床に置けばパネルが日陰になることが多くなる。一部でも日陰になると、その列全部が機能停止するが、太陽熱温水器の場合は、パネルの日照面の面積比例であるので、太陽光発電ほどの効率悪化にはならない。太陽光発電の受光効率は10〜15%に対して太陽熱温器は50%なので、少々効率が悪くてもよいと思う。
 屋根の上に設置した場合、水の落差は5mだ。シャワーの高さはFL(フロアライン)より1mの高さなので、水の落差は4m。水圧は0.4kg/uしかなくシャワーには使えない。シャワーの水圧は1kg/uは必要だ。シャワーの水圧を高めるためには加圧ポンプが必要になる。どの道加圧ポンプが必要だったら太陽熱温水器は床に置き、加圧ポンプで水圧をかけ、お湯をボイラーに入れる。

 春や秋で、お湯が30℃ぐらいまでしか湧き上がっていなくても、ボイラーで30℃のお湯から42℃に加熱する。水道水20℃から42℃まで加熱するより温水器の30℃から42℃に上げる方が省エネルギーとなるのだ。春や秋でも太陽の熱の恩恵を受けることになる。しかし、冬期には、太陽熱温水器のタンクの水温が、逆に水道水の水温より低い場合があるので、3方弁を付けて上水道から直接ボイラーにいくように切り替える。
 さらによいことは、床置きの場合はメンテナンスがやりやすい。10年も経つと本体よりも寒暖の差で、パイプなどの付属品は傷みやすい。屋根の上の作業になると、簡単な工事でも費用は高くなるが、床置きならガラス面に枯葉やゴミの付着の除去が簡単で自分でもできる利点がある。

木製架台をデザインする
敷地が広い場合はよいが、2m×2mの1坪の広さでも太陽熱温器に敷地を奪われるのはもったいないという場合は、浄化槽の上や架台を車庫と兼ねるとよい。車庫の屋根は車全部を覆わなくても、朝の出勤時の車のフロントガラスの霜対策だけで良いので、2m×2m分だけを太陽熱温水器の屋根とした(写真3)。架台は杉の赤味だけでつくっている。それでも雨晒しでは6〜8年の耐久性しかないので、あとは建主が防腐塗料を毎年塗ることにしている。防腐塗料は有色の方が劣化は少ないが、はみ出したり床に落ちたとき汚くなることを考えると、劣化速度は早いが無色の塗料がよい。



西向きに設置してよい

南に向けて設置するほうが受熱効果が高いのは当然だ。しかし、場所的に南に置けない場合や隣家の影になる場合は西でもよいと思う。南面に向けて最高に熱があがるのは14時〜15時だ。太陽熱温水器は魔法瓶みたいな仕組みにはなっていないので、入浴時間までには水温は下がる。西向きの場合は受熱効果は悪いが最高温度になるのは16時〜17時である。南向きの場合より湯冷め低下は少ないことになる。
敷地が狭くても小さい機器を付けた方がよいかという事例がある。わが家に70Lの温水器を設置してみた。浴槽の湯量は200Lだ。太陽熱温水器の湯温が60℃で上水道水温25℃の場合は70Lの温水器でも十分となる(写真4)。夏季の単純シャワー利用の場合は、湯量が少なくてすむので特によい。






 次回はプレカットの功罪について。

   
 
建築ジャーナル 2015年8月号掲
 

   
   
 
81
 プレカットの功罪
   
 

木造の軸組で、木と木を接合するとき、直角方向に接合するものを仕口、長手方向に接合するものを継手という。その仕口・継手をコンピュータで制御された機械によって加工するのがプレカットだ。機械は設計図と連動していて、家1棟分の構造材加工は数時間で終えてしまう。プレカットは合理性が高く、工期も早く、普及は9割を越える。しかし、コンピュータには限界があり、追掛大栓継や金輪継など複雑な接合はできず、蟻継など簡単な接合しかできない。すると金物が必要となる。さらに、合理化が進み金物補強工法というよりは金物主体工法となっている。木材の断面欠損が少ないと喜ぶが、木と金物は相性が悪く、熱橋が発生し結露する。そして、金物は精度が高いので、木材との接合において木材にも高い精度を要求されるのだ。木材の寸法精度の要求が高くなり、供給システムにも速度が要求され、木材業界はプレカットの普及とともに振り回されている。

大工の手加工の仕組みと木材の精度
イカはスルメになると縮む。大根も干し大根にすれば縮む。同じ有機物の木材だって同じことだ。日本の木材は水分が多いので、縮み具合も大きくなる。その縮み具合には法則がある。木材の繊維方向は5%の縮み、繊維と直行方向は3%、長手方向は1%である。日本の大工はこのことを頭にいれて手加工する。加工する前に墨付けという作業を行う。木の縮みを予想し、曲がった木は曲り面を上にし、柱の末と元を目視で確認し、梁の腹と背を区別し、接合部の節を避けて加工するのが大工仕事の醍醐味だ。

 プレカットの機械は木材の癖が読めないし、融通が利かない。指図した通り、先着順で淡々と作業を進めるだけ。そうなれば、真っ直ぐで、反りがなく、完全乾燥で、断面寸法の精度が高い木材が優良品として扱われる。箱に入らないからと真っ直ぐな商品しか受け付けないスーパーで売られているキュウリの原理だ。自然の木材は風雨に耐え抜いて成長するため木の癖である反りや当てが少なからずある。反った材は、上反りにして太鼓梁として使う。太鼓梁に適切な木材はプレカットの機械に入らないという理由で流通に乗らず、チップに加工されるしかない。反りはJASでは欠品扱いだ。太鼓梁は強度があるのに『JAS規格に当てはまらないので粗悪品』とみるのは大きな間違いである。(写真1)


大工も機械道具を使う。その延長がプレカットで同じものではないのか、という意見

それはまったく違う。丸鋸、電気かんな、角ノミと最近の道具は発達した。電気機械であっても道具は、木材を知り尽しくした大工の頭の中の僕(しもべ)として使われ、手の延長線にある。曲がり方向や縮み方向を予想しながら1本1本合わせていき、節や欠けがあれば避けるという人間にしかできない調整を行う。そのとき、接合部は木のクッション性を利用してわずかにずらす(写真2)。

 プレカット工法では、機械が頭脳で人間が僕となる。その後の組み立ては大工が行うが、間違いは大工が補正するから成り立っている。しかし、大工がいなくなって、組み立て工だけでプレカット材を扱うと間違いの修正ができなくなり、問題が出てくる。どういう問題が浮上するか説明しよう。
 人間は間違える生き物だ。大人だって小学6年生の算数のテストでも100点は取れない。ちょいミスがあり良くて99点だろう。建築の場合、その1点が命取りになる。墨付けをした大工は原理原則を体で覚えているので、ちょいミスの1点を見つけるのは早い。
しかし、組み立て工が99点しか取れない場台、1点のミスは瑕疵担保履行法の検査があるから安心とはいかない。算数のテスト解答を眺めただけで、1点の間違いを探せるわけがない。検査システムで防こうとすれば車の検査みたいに5段階の検査がいるのだ。





プレカットはコストパフォーマンスが高く付くのか

そうはいっても、プレカットを採用したほうが建築コストは安くなると思う人は多い。プレカット加工費が坪7,000円と安価なのは、プレカット機械や人工乾燥窯導入費用に税金の補助金があるからだ。負債大国日本はこれから先、税金のばらまきはなくなる。現在のプレカット機械の寿命が尽きたころ、機械購入に9割補助や5割補助の制度はない。今でさえ機械償却費に追われているのに機械購入費が正規の値段になったらプレカット費用は坪14,000円となる。するとプレカットの利点がなくなり、墨付け手刻みの手加工に戻ろうとしてもその時には大工はいない。
 大工がいなくなれば、縁側がつくれない、玄関引違もつくれない。床の間もない。座敷もない。日本の家がなくなってしまう。なくなってから気がついても遅い。技術は一度なくなれば復活はできない。

将来のこと
プレカットでも、加工は大工仕事の延長線に立脚している。原理原則を理解できる大工が管理しているからこそ可能なのだ。現場で間違いを見つけ、手直しをしている。技術を持った大工がいなくなったらプレカットそのものが危機的状態になる。そのときは検査制度を厳しくすればよいと思うのは間違いだ。図面の検査ばかり行っている検査員は現場の間違いを見抜けない。墨付け大工を育ててこなかったツケが10〜20年後に来ることは想像に難くない。大工がいなくなるとプレカット加工もすたれ、加工機械が不要で金物だけで組み立てる2×4工法が普及してプレカットは要らなくなる。

プレカット業界はどうすべきか
プレカットは木材屋や機械屋が売り込んで普及したのではない。工務店が手間を省くために採用し『わが社だけがプレカットを採用しており、簡単に組立てができ、利益をあげることができる』と試みた。しかし、多くの工務店がプレカットを採用する現在では差別化にはならない。大工手間を下げた分、プレカット機械の減価償却費に追われている。

 ハウスメーカーといえど、和室の座敷は腕の良い大工に頼る。その大工はハウスメーカーが育てあげた大工ではない。昔ながらの手加工で木造住宅をつくってきた大工を引き抜いて雇用しているのである。手放す地元工務店が悪いといえばそうだが、他人のフンドシで相撲を取っているようなものではないだろうか。一人前の大工になるには時間がかかる。教育期間は地元工務店が負担し、一人前になってから僅かな賃金差で引き抜かれたらたまったものではない。教育期間の費用をハウスメーカーは地元工務店に払うべきではないだろうか。
 プレカット占有率が9割にも達しているのは危機的状況だ。来年の作付用の種まで食べてしまうような愚かなことをしないことだ。せめて墨付け大工のシェアは3割ぐらい残しておくべき。そうすれば、プレカット工法と伝統的構法の家は共存できる。

   
 
建築ジャーナル 2015年9月号掲
 

   
   
 
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 バイオクマテックデザイン
   
 

 環境共生住宅をそのまま説明すれば地球環境と共生した家という意味で分かりやすいが、他に、世間には分かりにくい横文字の表現がたくさんある。エコハウス、グリーンハウス、エコファースト住宅、スマートハウス、エコウィンハウス、ゼロエネ、ゼロカーボン、エコプロダクト、カーボンオフセットハウス、サステイナブルハウス、と何が何だかわからない。一際目にとまるものがもう一つあった。バイオクライマティックデザインである。胡散臭いと思いつつ内容を調べてみた。環境系の学者さんたちの集まりで「その地域の自然に合致し、地球環境を維持できる、人間に快適にかつ喜びを与える建築デザイン」と定義している。工学系の先生方が文学的な「喜びを与える」と定義しているのでなかなかおもしろいと思った。環境系の学者さんたちは高気密・高断熱愛好家で、夏でも窓を閉め切りゲージとにらめっこして、断熱メーカーの応援ばかりしていると思っていたが、そうでもない人もいるみたいだ。その舌を噛みそうなバイオクライマティックデザインの研究会に似合いそうにない私は、地元の建築士として本日参加している。

「地球環境を維持できる建築デザイン」
 地球環境を維持できる建築デザインとはどういうことだろうか。「石油やウランはいずれなくなる。木、土、竹、藁を資源と考えれば日本は資源大国だ。」という意味ならすばらしいのだ。最近は設備盛りだくさんの「ダイエット食品(エコ商品)を腹いっぱい食べて痩せましょう(省エネ)」的なエコハウスが多い。
 断熱・気密の目的のために石油製品をたくさん使う仕様になっていないかをチェックしなければばらない。バイオクライマティックデザインのために石油製品を多量に使うなら本末転倒だ。石油製品は10年〜20年で硬化する。木造住宅の構造は地震や台風対策として、損傷限界を1/120に設定している。つまり、震度5ぐらいの地震を受ければ壁の頭部が25_(1/120)斜めに動くことになる。すると硬化した石油製品は壁の動きに追随できずクラックが発生する。石油製品の気密シートは、10〜20年経過して、震度5以上の地震を受けると使いものにならなくなると思ってよい。日本は地震の無いフランスやドイツと同じ考えではいけないのだ。
 石油製品を使わずに、どの程度の温熱性能なら確保できるだろうか。人の感覚や湿度や輻射や風を考慮にいれれば、Q値4.2ぐらいでよいと思う。そうしたら地球環境と共存した建築が見いだせる。地球温暖化防止策のための性能は、我が社が一番という企業間競争が多量の地下資源を使った建築行為に走り、逆走の競争をしているように思えてならない。
 日本はアルミの宝庫である。ボーキサイトは無いがアルミの埋蔵量は世界一と聞く。アルミは、路上生活者の生活基盤となり回収率は非常に高い。90%以上リサイクルしているので、アルミは日本ではもう地下資源ではなく無限資源かもしれない。ところがアルミサッシュメーカーは樹脂窓に切り替えはじめている。使用時の僅かな性能向上は生産時や処分時に多大なエネルギー消費をしていないだろうか。北海道以外ではペアガラスのアルミサッシュでよいではないか。
 ドイツやフランスに遅れていて日本は窓の後進国というが、熊本の緯度はリビアである。リビアにおいて樹脂高性能窓が売れるはずがない。限りない快適性を要求するのではなく、ほどほどの性能で良ければ、高すぎる断熱性能や、高すぎる気密も要らなくなり、24時間換気扇も要らない。Q値4.2程度であれば、ほとんど廻していない24時間換気扇も要らない(気密住宅には必要)、縁側があり、日向ぼっこが出来る程度の緩やかな性能のほうが喜びを与える建築デザインで、これこそバイオクライマティックデザインではないだろうか

Low-Eガラスと水銀

 Low-Eガラスは普通の窓ガラスであるペアガラスと比べて15%ほど断熱性能が上がる。これがLow-Eガラスを推奨する理由である。現在、Low-Eガラスの出荷量は増え続けていると聞く。Low-Eとは、Low Emissivity(低放射)の略で、複層ガラスのうち、その内面部に特殊な金属膜を設けたものをいう。問題は処分時である。ガラス面に薄く塗布した重金属は簡単に剥がせないので、埋め立て処分か燃焼処分となる。そのとき、普通ガラスとLow-Eガラスの区別はつかない。核廃棄物用のような頑強な処分場をつくるとは思えないので、いずれその重金属は地下に浸透し海に流れ出るか、空中放出になるだろう。水俣のチッソ株式会社は水銀垂れ流しで水俣病を発生させた。その他にも日本はカドミウムでイタイイタイ病を経験した。銅やPCBによる公害も経験した。重金属はごくわずかでも生物に異変を起こす恐ろしいものだという事は誰でも知っている。
 Low-Eガラスの出荷量を見ると50年後、いやもっと早い時期に必ず問題となると予想する。アスベスト問題と同じで経済に逆行する問題は、わかっていても緊急性を要するものでなければ、国は次世代に先送りする。Low-Eガラスや厚い断熱材の使用で、暖房エネルギー消費量の削減はわずかにできるかもしれないが、生産時エネルギーの増大や処分時の社会問題に、今目を向け対処をしないと、今の利益の数十倍か数百倍の代償を負担しなければならない。固定化されたアスベストは世界一日本に存在する。重金属は食物連鎖だけでなく、胎児を通じて次世代へと続く。放射能、水銀を含む重金属は、各項目は許容値以下であっても複合化すれば、足し算なのか掛け算なのか分からない。海に捨てて薄めて安全という理論は、クジラの水銀残留から考えて現在ではありえない。発生時に対策を打つのがベストである。

「その地域の自然に合致し」
 地域を語れば寒い時期もある。鹿児島や熊本でも寒い日はある。奄美大島だって雪は降る。Q値4.2では対応できない日が1年のうち30日あるとしよう。その日は石油ストーブを焚けばよい。灯油を4缶使っても18×4×36=3GJのエネルギー消費量だ。地下資源を使っているとお叱りを受けそうだが、電気で回す24時間換気扇のエネルギー消費量は4GJ・年とあまり変わらない。
最近、夏が長くなったと感じる。最高気温25℃以上が夏日、30℃以上が真夏日、35度以上を猛暑日という。各地の夏日、真夏日、猛暑日を調べてみた。

表1
2011
 
2012
    2013    
夏日
真夏
猛暑
夏日
真夏 猛暑 夏日 真夏 猛暑
東京
113
61
4
122
66
6
135
58
12
熊谷
129
75
26
132
77
32
142
70
23
熊本
144
82
7
154
76
11
157
100
15
鹿児島
153
79
1
157
71
1
164
98
28
宮崎
136
68
0
141
63
1
141
74
21
那覇
202
105
0
195
83
0
191
119
0


 熊本は6地域なのに鹿児島より、那覇よりも暑い地域だ。1年の半分近くが夏である熊本では「夏を旨とした家づくり」がよいではないか。グローバル化され、情報は日本全土平均的に流れる。そこでは地域性を考えない情報が多い。最近は、ヒートショック論が日本中を駆け巡る。心臓疾患で国民の医療費が倍になり、更に浴槽での死亡者は交通事故死の3倍の14000人/年になっているという。断熱建材メーカーは、この情報を盛んに販促に使う。浴室での年間死亡者数をA教授は14000人と言うし、B教授は4000人と言う。熊本では滑って転んだ人も含めて年間30人だから、日本全国では4000人ぐらいと思うが、どちらが正しいのだろうか。

   
 
建築ジャーナル 2015年10月号掲
 

   
   
 
83
 バイオクマテックデザイン 2
   
 

「その地域の自然に合致し」  
  25年省エネ基準の仕様規定では、開口率が7%以下ならシングルガラスでよいとしている。開口率が小さい方が有利となると、窓は小さくなり、通風ではなくエアコンで部屋を冷やすことになる。「家のつくりようは冬を旨にすべし」を主張する学者さんがいるが、このことは「地域の自然に合致」したことになるのだろうか。
  エアコンの設置台数は10年で倍に増えているそうだ。エアコンは室内を冷やしているが、反対に屋外を暖房している。すると外気温があがり、更にエアコンの台数が増えることになる。冷房は暖房と比べエネルギー消費量は少ないというが、120uの家を常時連続冷房すれば、基準1次エネルギー消費量は20GJである。平均暖房1次エネルギー消費量の12GJと比較にならないほどのエネルギー消費量である。常時連続運転は避けるべきである。
  窓を開けて室温30℃を越えても快適に過ごす術は日本にはたくさんある。しかし、腰屋根、無双窓等は「計算ができない」、「条件が多様である」、「指導が難しい」という理由で、温度だけを基準にした方法だけが規制値となる。
  無料ソフトの「ケイサン」に室温、湿度、風速を入れて体感温度を求めてみた。土壁の家など吸湿性のある家は30℃でも、冷房した27℃と同じ体感温度になる。扇風機を使って2m/Sの風に当たれば室温32℃でも同じ体感温度だ(表2)。表1の真夏日80日間だけはエアコンをいれる。計算上の冷房1次エネルギー消費量は80日×0.8KW×0.5(COP)×5H×9.8=1.6GJ/年でよいことになる。
  縁側をつくり掃出し窓があれば開口率10%をはるかに越える。開口率をあげ、窓を開け放し、縁側で花火ができる家こそが、バイオクライマティックデザインに通じる喜びを与える建築デザインではないだろうか。縁側が25年省エネ基準の外皮性能には適合しないことを義務化推進派の人はご存じだろうか。エネルギー消費量の規制は理解でき、賛同できる項目はたくさんあるが、外皮性能の規制を義務化は失うものが大きすぎる。  

表2
室温
湿度
風速
体感温度 
27℃
70%
0m/S
26℃
28℃
60%
0m/S
26℃
29℃
60%
0.2m/S
26℃
30℃
60%
0.5m/S
26.4℃
31℃
60%
2m/S
26.3℃
32℃
50%
2m/S
26.5℃

地球環境を維持できる建築材料:土壁
 日本は資源が無いから地下資源の輸入を減らすためにと鹿児島の川内原発を再稼働した。資源は石油とウランだけと考えるからこうなるのだ。25年省エネ基準の設計1次エネルギー消費量の算定プログラムから見えるのは、「窓を小さくしてCOPの高いエアコンで暖房、冷房が良い」との指南である。石油やウランの資源に頼らず、木材、土、藁、竹などの地上資源をもっと活用すべきではないだろうか。
 土壁には断熱性能がないという人は多い。土壁の家は壁からの隙間風が多く、冬は氷の家に住んでいるようなものと決めつける。断熱性能は熱伝導率で表すが、土壁の熱伝導率は0.69w/m・Kで、断熱材の代表であるグラスウールの熱伝導率0.05 w/m・Kの14倍となる。つまりグラスウール50_相当を確保するのに土壁だと760_の厚さが必要となり現実的ではない。ところが土壁には蓄熱性能がある。断熱性能は材料の比重に反比例するが、蓄熱性能は重さに比例するとおおむね思ってよい。断熱性能と蓄熱性能の双方を持ち合わせている建材を望むが、軽くて重い材料となり、引力が存在する地球上には存在しない。
 断熱性能とは温まった空気の熱を逃がさないことで、気密とセットで考えなければならない。毛皮のコートが断熱性能でコートのボタンがしっかり締まっていることが気密性能だ。コートの下に温かい石焼芋用の石をかかえこんでいれば、石が蓄熱し、保温効果は持続するので、気密性はほどほどで良い。それなら高気密にして換気扇で換気するより、薄い毛皮のコートにして蓄熱性能を利用してほどほどの気密で自然な換気をするほうが健康的だ。
蓄熱性能についてもう少し詳しく述べる。蓄熱式暖房の代表は薪ストーブだ。薪を燃やして、安定するまで1.5時間かかるが、火を消しても温度が元に戻るまでに1.5時間かかる。その仕組みを利用しようというのである。つまり冷めるまでに時間がかかるのでフル運転しなくても、薪が消えかかってから燃やせば、燃料は半分ですむという理屈である。ゆえに蓄熱暖房の薪ストーブと蓄熱性能が高い土壁は相性が良いとなる。
 日本人は、輻射熱には関心がなく、室温の高い低いで、喜んだり、悲しんだりする。空気暖房をして暖まった空気を少しでも逃さまいと気密する。気密化すると、空気中のCO2濃度が高くなり、24時間換気扇が必要となる。
蓄熱を利用した輻射暖房の場合、室温は高くなくてよいので外気温との差は少なく、高気密性能を必要としないだろう。輻射暖房の場合、人の体感温度は室温と発熱体・床・壁・天井の平均表面温度を足して2で割った温度となる。室温が17℃でも薪ストーブと周辺の床・壁・天井の表面温度が23℃であれば平均体感温度は20℃となり暖かく感じる。室温が低ければ隙間風も少ない。夏は30℃で快適に、冬は17℃で快適な住まいづくりが良いと思う。
夏の土壁
 朝方は気温が低い。7時ぐらいが放射冷却現象で最低気温となる。この下がった温度を保持することを蓄冷という。土間ともなれば、地とつながっているので、そう簡単には暑くはならない。室温が33℃となっても土間は30℃と2〜3℃低い。逆に、蓄熱体である土間に冬対策で直射日光を当てるような設計をして、夏季に西日も含めて直射日光を土間に当てると最悪になる。表面温度が40〜50℃に上がってしまう。短い軒でパッシブといって縁側の床を蓄熱体(トロンボウォール)した例が数少なくある。 
 すだれが良いというが九州ではスダレ程度では防除できない。スダレの隙間から直射日光は3割通過し、室内の床の表面温度を上げてしまうのだ。特に西日の斜め照射に気を付けなければならない。
軒の出は1.5m以上は必要となる。暖冷房1次エネルギー消費量計算において、イータ値(冬季)は、軒の出を1.5mも出すと日射熱取得量が少なくなり、設計暖房エネルギー消費量がドーンと上がる結果になる。軒を長くし、窓を開け、風を通し扇風機での生活は、性能の悪いエアコンを使ったことにされ5GLのエネルギーを使ったことにされてしまう。使っていないのに使ったことにされるので冤罪の気分だ。
 日が当たらない土間の部屋が昔はあった。それは味噌部屋である。今でいうパントリーだ。ひんやりしていて他の部屋より2〜3℃室温は低い。家の中全てを均一にしようと思わず、午前中は居間で、日中は味噌部屋に引っ込み、夕方は縁側へと、猫みたいに時間ごとに居場所を変えるのも、エネルギーをあまり使わない生活方法だ。
もっと土を利用すればよいのだ。土は日本国土がある限り存在する。絶対枯渇しない。なんといっても処分法に困らない。土壁は再利用して又壁に使っても良いし、処分する場合は庭に廃棄すればよい。ゴミ処分がこれからの社会問題になる。生産、雇用、移動エネルギー、梱包費、蓄熱、処分、資源のことを考えると土壁は総合的に優等生なのだ。
真の省エネを
 日本の国土は南北に長く、亜熱帯の沖縄から亜寒帯の北海道までと気候はさまざまである。それを反映して地方ごとに独自の文化を生み、伝統的な家屋のつくり方も地方に特色がある。
義務化にするのなら省エネ法は根本から変えるべきだ。外被性能に頼った規制は甚だバランスが悪い。暖房エネルギー消費量の実態差は九州と北陸では3~5倍あるのに規制値は1.5倍の差しかない。温暖地では費用対効果が薄く迷惑な話だ。規制する側から考えての基準があまりに多すぎて現実的でない。
真に省エネを考えるのなら、外皮性能を規制するより、急速に増え続ける家庭電化のエネルギー消費量を規制すべきである。
 学者や国土交通省は「ライフスタイルの範疇」「経産省管轄」と逃げるが、増えた分を減らすのが道理である。自動開閉するトイレの蓋、家族は減っているのに大型化する冷蔵庫、部屋は狭いのに大型TVなど、省エネと逆行している家庭電化には手をふれない。

   
 
建築ジャーナル 2015年11月号掲
 

   
   
 
84
 UA値略式算出法
   
 

 伝統的木造住宅と省エネ法の関係を問題視して、日本建築士会連合会、日本建築家協会、日本建築学会、東京建築士会、木の建築フォラムの5団体で、京都で「夏を旨とした地域型住宅の省エネルギーを探る」(仮題)と題してフォラムが2016年1月17日に開かれる。京都には温熱環境だけでは語れない住文化がある。まさに技術論だけでは省エネ法は市民の理解は得られないだろう。京都大学大学院の高田光雄教授は言う。「京都の冬の町家は確かに寒い。何とかしたい。しかし、暖房設備に依存するだけでなく、デリケートな自然の変化、季節感を感じとることができる幸せにも目を向けるべきです。」更に、「異なる価値観との共存はまさに社会の問題、まちの問題です。」と加えている。 京都フォラムは、木材資源や自然素材の循環利用を図り、伝統的で開放的な生活様式を継承するために温暖地型省エネルギーモデルの糸口が掴めないかを模索するための公開フォラムである。高気密・高断熱住宅はあってもよいが、義務化することがその地域で妥当だろうか。25年省エネ基準の本来の目的を深堀りして、真の省エネを目指すべきだろう。1次エネルギー消費量も規制は理解するにしても、外皮性能規制は地方によって効果のあるなしの違いがある。特に地域住宅に及ぼす影響は大きい。 京都フォラムのなかで私の出番がある。内容は外皮性能を10分で計算しようという試みである。普通、講習会ではモデルプランが提示され、説明に従って進んでいって、最後はOKとなる。誘因なので当然な回答でありOUTになるものを提示するはずがない。では、普通の地域住宅はどれくらいの外皮性能だろうか。「夏を旨とした地域型住宅」のモデルプランが必要だが、公平に選ぶのは難しいので、24年度事業:伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験検討委員会の間取りを選んだ(図1)。10分で計算するためのあらかじめ建物の外皮面積は出しておく。(表5) 次に、計算には断熱材の性能が必要で、まずよく使われる断熱材の種類をリストアップした。種類が多いので熱伝導率の差でグループ分けをする。

表1
グループ
熱伝導率
断熱材の種類
A
0.05
グラスウール10K
B
0.045
グラスウール16K
C
0.04
グラスウール20K、セルロースファイバー、フォレストボード、ポりスチレン、ウール、ウッドファイバー
D
0.033
グラスウール24K
E
0.034
吹き付けウレタンフォーム
F
0.022
フェノールフォーム、ウレタンフォーム

次に、熱貫流率から厚みを考慮して熱貫流率(U値)を求める。空気層や下地の仕様など複雑に影響するが、簡略式のために無視する。

表2−1
(天井)
厚さ
U値
厚さ
U値
厚さ
U値
Aグループ
200mm
0.23
100mm
0.42
50mm
0.72
Bグループ
200mm
0.21
100mm
0.38
50mm
0.67
Cグループ
100mm
0.32
50mm
0.61
30mm
0.88
Eグループ
 
 
50mm
0.54
30mm
0.79

・天井の材料は問わない
・屋根断熱仕様である。断熱材の直上に板がありその上に空気層があり、天井仕上げは板仕上げ又はPB下地吹き付け・クロス貼りである。
・天井断熱で仕様の場合はU値は0.05ぐらい悪くなる。

表2−2
(壁)
厚さ
U値
厚さ
U値
厚さ
U値
Aグループ
100mm
0.43
50mm
0.75
 
 
Bグループ
100mm
0.39
50mm
0.70
50mm
0.67
Cグループ
60mm
0.55
50mm
0.64
30mm
0.93
Eグループ
60mm
0.48
50mm
0.56
30mm
0.83

・外壁仕上げや通気層の有無は結果に微小鹿影響しないので無視する。
・内装壁仕上げは板壁、PB下地吹き付け、PB下地クロスである。

表2−3
(床)
床板
厚さ
U値
厚さ
U値
厚さ
U値
Aグループ
15mm
100mm
0.41
50mm

0.70

 
 
Bグループ
15mm
100mm
0.38
50mm
0.65
 
 
Cグループ
15mm
60mm
0.52
 
 
30mm
0.85
Aグループ
30mm
100mm
0.39
50mm
0.66
 
 
Bグループ
30mm
100mm
0.36
50mm
0.60
 
 
Cグループ
30mm
60mm
0.49
 
 
30mm
0.78
Cグループ
 
 
 
 
30mm
0.61

・石場建ての場合は0.03悪くなる


開口部が一番外皮計算に影響するので、少し面倒な計算を行う。まず、開口部(窓の仕様)から熱貫流率(U値)を選択する。窓枠がアルミか木製かは区別しない。

表3
窓の仕様
U値
シングルガラス
6.51
シングルガラス+内障子
4.76
シングルガラス+雨戸
5.23
ペアガラス
4.65
ペアガラス+内障子
3.60
ペアガラス+雨戸
3.92
ガラス玄関戸
6.51
板玄関戸
2.50
ガラス+板の玄関戸
4.50

次に、図1プランの開口部の面積は表4に算出しているので表3のU値を入れて計算すること。

表4
開口部
面積u
U値
面積×U値
1階南掃出窓
12.7
 
 
1階中窓
14.1
 
 
1階小窓
3.6
 
 
1階玄関戸
3.1
 
 
2階中窓
15.3
 
 
2階小窓
4.8
 
  
合計
(53.6)
 
 

面積×U値の総計を総開口面積(53.6u)で割った数値が図1プランの開口部U値となる。
いよいよ最後の計算だが、いくつかの注意がある。
・玄関などの土間床は床に含まず総外皮面積には土間床は含んでいるので、天井・壁・床面積が外皮総面積となならない。
・土間は床面積ではなく、基礎の立ち上がりの外周部の長さで検証する。複雑になるので固定数字を入れている。
・木材のU値は0.8だ。0.8近辺では熱橋を考慮しても全体に影響しない。この略算式では熱橋は考慮していないが、U値が悪い場合は熱橋を考慮すると性能はあがる。例えば土壁真壁の場合、910oに柱1本がある場合は、(0.79×3.98+0,12×0.8)÷0.91=3.56となり、U値3.96→3.56となる。


表5
 
面積
単位
U値
係数
面積×U値×係数
壁面積
140.4
u
  
1
 
天井面積
91.1
u
 
1
 
床面積
79.49
u
 
0.7
 
開口面積
53.58
u
 
1
 
基礎外周
1.8
m
1.8
1
 
基礎内周
5.46
m
1.8
0.7
 
合計
 
 
 
 
 

総外皮面積367.89u     延べ面積123u
面積×U値×係数の総計を総外皮面積367.89uで割った数値がUA値だ。
いくつになっただろうか。5地域の家ではUA値0.87をクリアーした例は多いと思うが、6地域7地域の家では少ないと思う。UA値0.87に達するように断熱材や窓を入れ替えてみて自分仕様を見直してみよう。温暖地の皆さん、義務化になれば新潟と同じレベルの規制がかけられることを認識してほしい。

図1



   
 
建築ジャーナル 2015年11月号掲
 

   
   
 
85
 ジュール、ワット、カロリーの話
   
 

 省エネ法においてエネルギー消費量の計算でジュールが採用されているが一般ではあまり馴染がない。熱量の表示にはジュール、ワット、カロリーがあり、ワットとカロリーはなんとなくわかる気がする。時間軸の有無の違いはあるが、基本は同じ意味だがどうして3種類もあるのか分からないが、食べ物はカロリー、電化製品はワット、そしてエネルギー関係ではジュールが使われる。
 以下、ワット(W)、カロリー(cal)、ジュール(J)と表示する。熱量のうち、電気消費量のWは料金に換算できるので理解が早い。1000Wの電気器具を1時間使えば1KWHとなる。28円/KWHなのでお金に換算すると、1000W器具を1時間消費すれば28円となる、同じことだが、100Wを10時間使うと28円となる。
JとWの関係は、1Wを1秒使えば1Jである。1000Wのヒーターを1時間使えば1KWHなので、J換算すれば60分×60秒となり、3,600,000J=3,600KJ=3.6MJ(メガジュール)となる。つまり、1KWH=3.6MJで、逆数は1MJ=0.287KWHだ。

食べ物はでエネルギーを考える。
 1gの水を1℃上げるのに必要なエネルギー量が1 calである。よって1000tの30℃の水を100℃に上げるには、1000×70=70,000 cal=70K必要となる。CalとJとの関係は、1calは4.2 Jなので70Kcalは294KJである。後述するが石油1tで36.7KJの発熱量なので、294/36.7=8tの石油の熱量70Kcalと同じとなる。1000tの水は8tの石油でお湯が沸かせるとなる。
 1日の食事の摂取量が2,000Kcalとすれば4人家族で2000×4=8000Kcalとなる。Jに換算すれば8000×4.2=33600KJ=33.6MJなる、1日中家に居て、うんこ以外は室内に熱量として発散するとするので、8000Kcal=33.6MJのヒーターを使用したことと同じ熱量となる。
 1次暖房エネルギー消費量計算で、4ヶ月間を人間ヒーターが暖房の役割を果たしたとすれば4ヶ月×30日×33.6(MJ)=4GJとなる。冬季の4ヶ月なので4GJ/年と考えてよい。
 よく太って油ぎった人がいると部屋が暑苦しいというがそれは違う。高カロリーの食べ物を沢山食べる人がいたら部屋が温まるのだ。スポーツをやっている中学生の方が発熱は高いかもしれない。粗大ごみとして役立たずとして扱われている旦那も部屋にいるだけで1500KCalの食事をすれば、0.6GJ/年の暖房器具の役割を果たしたことになる。トウモロコシから燃料をとらずとも、大根やキャベツからも熱量は取れる。

照明器具の発熱量
 次に照明器具で考えてみよう。100Wの電球を4ヶを4ヶ月間使用すれば、4×100×4×24×30×3600=4147MJ=4.1GJ/年となる。
先ほどの人間4人の食事で発熱するカロリーは3GJ/年だった。100W電球4灯で発熱する熱量は4.1GJがほぼ同じなので、人間一人と100W電球が同じと言える。

ここで疑問
 白熱灯より蛍光灯が省エネという理由で世の中の照明器具がほとんど蛍光灯に替わってしまっている。25年省エネ基準の照明1次エネルギー消費量の計算式で、白熱灯を蛍光灯に替えれば4GJダウンになる。しかし良く考えてみよう。白熱灯を蛍光灯やLEDに変更して省エネしたつもりが、照明器具による発熱がなくなるので、暖房を追加するだろう。照明で4GJ減らしても、暖房で4GJ増やせば省エネにはならない。このことは冬の状態のことであり、夏季、確かに照明器具は暑苦しい。照明器具の球を、冬は白熱球、夏は蛍光灯にいれかえば、賢いエネルギー削減方法といえるだろう。
 安部首相は11月26日に電気のエネルギー消費量削減のために白熱灯の禁止令を出したが、暖房エネルギーは増えることを安部首相に誰も教えないのだろうか。

省エネ法はどうしてGJを採用するのか
 省エネ法は不慣れなJを使うが、どうして慣れているcalやWを使わないかといえばエネルギーには1次と2次があるからだ。電気の場合、原料はウランや石油や石炭などが種々あり、電気1Jを生産するためには1次エネルギー2.7Jが必要である。電気のWとJの関係において、1次エネルギー換算では1KWH=9.76MJであり、2次エネルギ換算では1KWH=3.6MJとなる。省エネの観点からすれば1次エネルギー換算が妥当である。

費用について
 灯油は27年11月時点で62円/Lである。1Lの灯油を燃やすエネルギーは36.7MJである。よって、1GJ当たりの灯油のコストは1722円であり、電気は28円/KWHなので1GJ当たり2870円となる。このように電気は高額なエネルギー源である。石油ストーブより電気ストーブが、ガスレンジよりHIヒーターが、コストが安いということはない。

薪ストーブの選び方
 薪スト―ブは家全体を暖める。UA値1.5W/u・Kの家の場合外皮面崎が300u、とすれば、450W/Kとなる。外気温5℃、室内を15℃に確保するには(15−5)×450=4500Wとなる。しかし、この数値にロスは含まれていないし、室温の平均値であり、空気を混ぜる必要性も考慮していないので、1.5倍を考えれば6750Wとなる。
 薪ストーブは空気暖房ではないので、温度ムラがある。薪ストーブの面した場所は20℃で背中は5℃で、室内にたき火を焚いている状態だ。高気密・高暖熱にしたら、温度ムラや熱損失がすくなくなるのは事実であるが、適度の温度ムラも否定するのではなく楽しいものではないだろうか。薪次第でコントロールできないのが薪ストーブ愛好家が引き寄せられる魅力だ。薪ストーブを選ぶとき、大型が暖房能力があると思いがちだが、薪を燃やさないと暖房能力は上がらない。薪ストーブは大は小を兼ねない。ある程度の温度上昇がないと完全燃焼しないので、フル運転になければならない。大型ストーブにチョロチョロ燃やすと本体にも悪影響がある。36坪の家の場合、階段や間仕切り壁があり所詮全館暖房は無理な場合が多いので、7000Wもあれば充分である。大きすぎないことが重要である。

冷房を見てみよう
 外気温33℃室内を28℃にするとき、UA値1.51.5W/u・K、外皮面積300uの場合、(33−28)×1.5×300=2250Wとなる。ロスを1.5倍としても3300Wとなる。日本の家のエアコンの設置数は平均2.5台だそうだ。高効率エアコンのCOPを3とすれば、3300×3×2.5=24750Wの能力を設置していることになる。まずそんなに使っている家は少ない。エコポイントで高性能のエアコンを買わせて過剰設置ではないだろうか。効率が良くても使わなければ費用対効果は少ない。
 それより、窓を閉めてエアコンより、窓を開けて扇風機の生活を選ぼう。





地域区分5.6.7の外皮性能が同じ0.87という理由。(全館暖房の場合)
 
全館暖房、120uの家の場合、外皮面積306u
5地域の基準暖房1次エネルギー消費量  55.2GJ × 287   15842KWH
6地域の基準暖房1次エネルギー消費量  37.1GJ × 287   10648KWH
7地域の基準暖房1次エネルギー消費量  19.1GJ × 287   5481KWH
要求される外皮性能が同じ0.87なので
5地域の場合  (2016℃日)
温度差15℃(外気温5℃―室内20℃)24時間 5.5か月
306×0.87×15×24時間×5.5ヶ月(165日)=15800KWH
となる。
6地域の場合(1750℃日)
温度差13℃(外気温7℃―室内20℃)24時間 4.5か月
306×0.87×13×24時間×4.5ヶ月(135日)=11213KWH
7 地域の場合(1000℃日)
温度差11℃(外気温9℃―室内20℃)24時間 2.8か月
306×0.87×11×24時間×2.8ヶ月(80日)=5622KWH
となる。
**合理的に思えるが、7に近い6地域、7地域において、全館連続暖房はありえない。 もう少しエネルギー消費量は多い。ある意味で、7地域においては、基準値8.3GJが厳しいように思える。

延べ面積120.08uの家  主たる居室29.81u その他の居室51.34u 基準1次暖房エネルギー消費量は

 
地域区分5
地域区分6
地域区分7
全館暖房
55.2GJ
37.1GJ 
19.9GJ 
部分間欠暖房
21.6GJ
15.4GJ 
8.3GJ 

何とも理解しがたい理由 6地域では15.4GLだが、7地域に同じUA値0.87を当てはめれば、8GLとなるから7地域にも0.87を強要するという何とも理解しがたい数義の遊びである。5地域の新潟と7地域の鹿児島は窓の開口率は違う。愛知産業大学の宇野が開口率を調べたデータがある。 UA値は開口率の大きさに非常に影響する。UA値0.87を規制すると、新潟ではペアガラスなのに、鹿児島ではトリプルガラスというなんとも奇妙なことになる。


   
 
建築ジャーナル 2015年12月号掲
 

   
   
 
86
 グリーン化住宅
   
 

 グリーン化事業が始まった。緑をたくさん植えた住宅に補助金を出すのかと思ったら違っていた。高気密・高断熱仕様の住宅にして、エアコンで暖冷房する方が省エネになるので100万円も補助金を出すという事業だった。緑とはあまり関係なかった。 地域性 九州に籠りっきりの私であるが、久しぶりに関西に行ったら、九州で見かける店舗がずらりと関西にもあるのだ。店舗に地域性はなくなってしまった。車窓からみる住宅もまた同じ外観で地域の違いは感じられない。全国規模のハウスメーカーの住宅なら、全国同じでも仕方がないが、地域性をうたっている地方の住宅会社の建物の外観が、九州も関西も同じなのだ。外壁材やアルミサッシュを作っている会社は離散集合を繰り返し、巨大化し数社が独占しているので種類が少なく、同じ外装材、同じデザインのアルミサッシュになっているのだろう。地域の工務店が全国同じものを作り、同じ街並みを形成しているこのことをグローバル化というのだろうか。住宅の作りようは、気候風土の違いで地域性の象徴だったのに。しかし、そんな風景の中でも少し違う物があった。それは樹木だ。九州の樹木は照葉樹で、クスやカシが多く、夏も冬も濃い緑の葉っぱを見る。関西の木の葉っぱは薄く弱々しい。樹木が唯一地域性を演出してくれていたのだ。

宮脇昭氏の話。
  10年前、世界で一番たくさん木を植えた男、宮脇昭氏のNHK講座があり、おもしろくて聞いていた。ちょうどその時、熊本のイオンに宮脇氏の指導で苗木を植えるイベントがあった。ものすごく簡単な植樹で枝の選定や追肥や防虫薬剤散布も全く要らないとのことだった。そのコツは、その地に潜在する樹種を混ぜて植えることだった。素人が植えるのだから半分は枯れると思っていたが、現在全ての木が青々と繁っている。簡単に植えて、手入れもしないのに育つのは不思議と思ったが、人間の力を借りないと育たないものは自然の樹木ではないという宮脇氏の発言に納得した。なるほど、肥料をやらねば育たない、除虫をしなければ生きられないことの方が非常識だろう。当時イオンの楽屋に行って、植えた樹種の1覧表を宮脇氏から表を頂いた。(表1)  あまり見えない方がよい


写真1 現在のイオンの樹木

生垣と塀
 エアコンは家の室内を冷やすが、冷やした温度分だけ屋外機で外気温を温めている。屋外は熱くなるのでその外気を取り込めば更に強力なエアコンの設置が必要となる。外部のアスファルトやコンクリートの直射日光の照り返しの熱はすごい。その表面温度は50〜60℃にもなっている。しかし草木は直射日光が当たるところでも33℃前後である。庭の草取りが大変だからとコンクリート打ちやアスファルトを要望する人が多い。しかしそれが地表温度を高くし、ヒートアイランドの最大の原因となる。車庫までもコンクリート打ちのするので、アメリカより日本はコンクリート使用量が多いことからもわかる。グリーン化事業により高気密・高断熱仕様にするより、緑をたくさん植たほうがグリーン化住宅ではないだろうか。低い苗木でも、3年もすれば立派な生垣ができる。(写真2,3)


写真2

写真3(3年後)

虫対策と目隠し効果
 タデ食う虫も好き好きというように、木の種類によって虫の種類も違う。蝶は柑橘類の葉が好きだが、蝶の種類により柑橘類の好みも違う。神様は、虫と葉っぱの関係をバランスよく行きわたるように調整しているように思える。
生垣を混植にしよう。そうすると、虫食いの被害は少ない。木を混植すれば種類により成長の度合いも違うので背丈はバラバラに育つ。きちんとした剪定は必要ないので雑木林のようになり剪定の心配も要らない。
 樹木の葉は光合成が有効に働くために、前列の葉と後列の葉が重ならないように生えてくる。光は直進するので、目透かし状態の間を埋めるようにして葉っぱは出てくる。それで目が詰まり、生垣が目隠し状態になるのは植物の自然現象だ。光の直進方向は詰まっているが、葉の前後は開いている。風はその間を縫うように通過する。こんなに便利でお金がかからない装置はない。(写真4)
写真4

草に付いて
 玉名にある10年ほど前に設計した「レストラン品川」の庭をみてほしい。(写真5)200坪以上の広さがあり草取りも大変だ。虫対策なんて取る暇はない。そこで芝刈り機で中央部の刈りやすい部分だけを2割程度を刈るのだ。なんとそれだけで全体を手入れしているように見える。草に水を撒く人はいない。草は適当に地下から水分を吸い上げて地表を冷やしてくれる自然の冷却装置(ラジエーター)である。300万円もかけて地下熱を利用したクールチューブなどを採用するより、草の力を借りた安上がりな装置が庭に生えている草を利用しよう。
写真5

枯葉対策
 森の都熊本である。30年前、当時の細川知事は緑3倍運動を始めた。緑が多くなると枯葉も多くなるのは当たり前だ。自ずと行政にクレームが集まる。こんな時だけ、行政は住民の意見を良く聞き対応が早い。街路樹である銀杏の木は手足をそぎおとされた状態だ。(写真6)子どもたちは銀杏の木は枝がなく、幹がぼこぼこしている木として学ぶだろう。
常緑樹といえども葉は必ず落ちる。木の緑の良さを享受しようと思えば、同時に枯葉の処理も伴う。自然界では、枯葉は落ちて翌年の発芽の肥料になるのだ。枯葉を除くと肥料がなくなり、人の手で追肥が必要となる。落ち葉が落ちた姿が絵にならないだろうかと考えたのが日本の庭の石だと勝手に思った。写真7を見てほしい、枯葉の中に庭石や踏み石があれば、それだけで風情がある。枯葉も絵になるのだ。


写真6

写真7
   
 
建築ジャーナル 2016年1月号掲
 

   
   
 
87
 仏事と建築
   
 

・初詣と地鎮祭
  日本人は無宗教と思っている人が多いが、決してそうではない。私たちは、キリスト教徒が教会に行くように、年に一度と数は少ないが、神社やお寺に行く。正月は3社参りとまとめてお参りするので、1年に3回だと、4ヶ月に1回ミサに行くクリスチャンと同じことになる。神社には八幡神社、稲荷神社、天満宮と種類があるがお構いなしだ。正月の3社参りにお寺もその一つに加える人もいる。年の瀬に、除夜の鐘を聞きに行き、年越し蕎麦を振る舞うお寺があるので、蕎麦を食べに行って、そのまま年を越し、神社に向かうのだ。欧米の宗教人から見たらなんと節操がないように見えるだろう。1日の内に、イスラムのモスクに行き、カトリックとプロテスタントの教会に礼拝にいくようなものだ。しかし、このごちゃまぜ信仰には利点がある。日本は神の国であり、やよろず(八百万)の神様がいて、1年は50万時間しかなく、800万神に対応できないのでまとめてお参りするのだ。アラーやキリスト様が一人二人増えたからとてあまり気にしない。よって宗教上の戦いはないのだ。800万神も居たら、神様の考え方が少し違うことぐらいは重要ではない。では、日本人の宗教度が浅いかといえばそうでもない。欧米では神様への願いは「私の息子だけを守ってください。他に人は何人死んでも構いません、」と唱える。しかし、日本では罰当たりやタタリが無い無病息災を願う。家を建てるとき7割の人が地鎮祭を行くのは、タタリの予防策だ。欧米がプラス志向なら日本はマイナス志向による行動だろう。

・棺桶
  仏教には派閥がある。13宗派もある。昔は宗派間の争いはあったようだが最近は少ない。我が町川尻地域にも12のお寺がある。今年の2月に、お寺の息子たち4人が宗派を超え「お寺フェスタ」というイベントを計画している。彼らから木製の棺桶をつくってくれと要請があった。入桶体験を来場者にさせたいとのことだったので了承した。もちろん国産、手造りである。木製の場合、接合部は釘で留めるが、火葬場から出てきたとき遺骨とともに釘が残るのはあまり良くない。骨壺に釘が入っていてはさまにならないので、棺桶の接合部は、燃えて無くなる竹釘を使用することにした。棺桶の販売価格は興味があるところだ。予約制にして、本人からの予約であれば2割引きの6万円にした(写真1)。私たちの販路拡大につながるかもしれないと期待する。お寺の息子たち4人の努力で100人近くのひとが入棺体験をした。かなり好評だった(写真2 2月7日  )。火葬場の都合で棺桶には規制がある。横幅60p高さ55p長さ2mである。お相撲さんはこの寸法より大きい。そんな場合どうするのだろうかと要らぬ心配もしてみたくなる。

・木造のお墓
  熊本港に陸揚げされる量で一番多いのが飼料で、その次が石だそうだ。日本の墓石のほとんどは中国からの輸入品だ。食べ物は国産にこだわり、住宅も国産木材にこだわって生きてきたのに、死後は中国の家に住むことはないだろう。死後も国産の住まいに住みたければ木造でお墓をつくるのが良い。石造だって長持ちするものではない。接着材で止めてあったり、コケが生えたりでメンテナンスは必要だ。メンテナンスは必要なのは、石造も木造も同じではないか。法隆寺は1300年も持ったのは修繕を繰り返しているからだ。木は水が入り乾かないから腐るのだ。水切りを良くしコンクリートと接する部分には銅板を敷けば耐久性はぐっと上がる。次に注意したのが、杉の赤味指定だ。赤味は非常に腐りにくい。扉は奮発して1枚板にした。屋根は急こう配のガルバニュム鋼板なので、雨漏れの心配はないだろう。(図1)鉄板の放射冷却による結露で野地板の腐れが少し心配するくらいだ。それでも40年は大丈夫とみている。40年後、古川家は滅亡しているかもしれないことの方が心配だ。耐久性を考え高床コンクリート基礎にした。上の木部が200sに対し基礎の重さが600sと重いのでひっくり返ることはまずない。屋根を大きく被せ、軒を低く抑えているので、外壁の木も濡れることがなく、40年間は大改修しなくてもよいとみている。 石造だらけの墓地の中に木造の墓がポツンと1つ棟ある風景はどんなものだろうか。今年の暮れに完成予定だ。
 
・ 仏壇
  近年は家が狭くなり、床の間の中に仏壇を置いている家は多い。なんとなくミスマッチである。小さな仏壇なら、床の間の一部としてデザインしてみた。古材で枠をつくり、古建具の仏壇だ。古材を利用すると仏壇らしく見える。小さな位牌とおりんが入る程度の小ささなら床の間の中にあっても違和感はない。写真3、写真4 次に、床の間の横の押入れに仏壇を入れる例である。1間の押入れを半分潰して、半分に仏壇を入れるケースである。襖を閉じれば、全部が隠れてしまい中に仏壇があるようには見えない。奥行半間の場合は、微妙な寸法を追いかければ教机も入ってしまう。ただし、一つの空間の中に?????縛??布団と仏壇が同居していることになるので、布団が線香臭くなるので注意が必要だ。写真5


写真1

写真2

図1


写真3

写真4

写真5

   
 
建築ジャーナル 2016年2月号掲
 

   
   
 
88
 安藤先生の記事
   
 

2020年に省エネ基準が全建築に適合義務化の方向に進んでいる。これに対し木造住宅の設計・施工・研究にかかわる各分野でさまざまな議論が始まっている。
 それが日本全国くまなく全ての住宅に適用されると予想を超える大きな問題となる。耐久性を損なう心配はないのか、地域的多様性が失われる恐れはないのか、居住者の経済的負担はどうするのか。このままでは、真壁の土壁造りや土蔵造りなどの伝統木造も、高い外皮性能が求められるかもしれないと。そうしたら、日本の開放的な住まい方の文化が失われてしまう。このような課題にについて、広い立場から議論を深め、伝統的木造住宅と省エネルギーに関しての問題点を明らかにする主旨で、「京都の夏を旨とした住まいにならい、地域型住宅の省エネルギーを探る」というフォラムが、今年1月17日に京都で開催された。建築関係6団体の共同主催で11名の登壇者で議論がなされた。
 その中で特に問題点を抽出した2例を紹介しよう。
フォーラムの模様

「オフセトッ法「」キャップ法」
まず、東京建築士会会長の中村勉氏の話は次の通りだ。
 国は「2050年までにCO2 80%削減」という目標を掲げた。伝統的建築はこれから築いていくべき低炭素社会の価値観に通ずるものがある。伝統的なものだから守らなければならないというのでなく、特徴は長寿命の考え方だ。建物は「変化しない」ことを前提にするのでなく、「維持管理や修繕がしやすく」つくることだ。伝統的建築は長い歴史のなかで完成されたシステムである。目的は省エネであり、建物が長寿命であることが究極の省エネだ。地域の技術や資源を大切に使い、地域の生活文化に合った暮らしで一次消費エネルギーを低く抑えるような住まいは「地域型住宅」として位置づけたい。外皮性能を適用除外にする例外3が考えられているが、今の基準が義務化されるとなると、困ったことになる。「森を守る」「職人の育成」「廃棄物が少ない」など、外皮性能を越える省エネにつながる環境的な価値がいろいろある。そういった利点で外皮性能が足りない分を補う「オフセット法」や、一次消費エネルギーをこれだけに抑えると約束し、実際の使用一次消費エネルギー量で評価をする「キャップ法」といった制度設計もあってもよいではないか、と語った。

夏と冬を住み分ける
次に木の建築フォラム理事長の安藤邦廣氏の話を紹介しよう。
 東アジアの集落や民家の多様な居住様式の中に、省エネルギーの知恵を探る知恵はたくさんあるという話だ。「建築物省エネ法」は中部ヨーロッパや北欧の寒さ対策を基準にしたものをモデルにしている。北海道並みの基準を、温暖地を含めた日本全体を対象にするのはおかしい。閉鎖型の「冬の家」と開放型の「夏の家」を住み分ける知恵は各地にある。まず日本よりも寒い樺太のスメンクル族の例。土を掘り下げた縦穴を掘り下げ、穴の周囲にぐるりと石を積んだ煙道を設け、煮炊きする排熱をその煙道に通すこと
で石をあたためた輻射熱で暖をとる「冬の家」と、凍土が融ける短い夏の間に住む丸太小屋やテントの「夏の家」とを使い分けて生活している。
 次に朝鮮の暮らし方は、冬は、オンドルで部分暖房。
夏は、風通しよく暮らす。日本より寒さが厳しい韓国では、「マル」と呼ばれる開放的で風通しのいい部屋や「テマル」という縁側を夏の居場所として、窓の小さい密閉した部屋に床暖房をしこんだ「オンドル房」を冬の居場所として、季節によって使い分ける。夏は開放的に広々と、風通しよく暮らし、冬は小さなスペースで暖かく部分暖房をしている。これは、今の私たちの暮らしに通じるものがある。
 次に日本の例をあげる。アイヌのチセは笹葺きの分厚い壁に囲まれた閉鎖型の家の土間で囲炉裏を焚いて暖をとる。東北の民家では、座敷は高床にしたとしても、冬は、土間床に囲炉裏をつくり分厚い藁のムシロを敷いて居間にしていた。南方の九州宮崎では、縁側のある開放的な座敷棟と、かまどと囲炉裏を備えて壁で囲われた釜屋棟とを分棟した家がある。夏向きの家と冬向きの家を住み分けている。沖縄は、冬のことは考えないでよいから、開放的な家で、通風を図っていると。

最後の結論として
家まるごと外皮性能を重視した「寒冷地型閉鎖系モデル」と日本の長い歴史の中から生まれた「温暖地型解放系モデル」だ。冬も開放という意味ではない。そのことを「寒冷地型閉鎖系モデル」の人たちは間違えて批判する。「温暖地型解放系モデル」は外壁全体を断熱するのではない、住宅の一部を断熱して囲う。その囲われた部分だけを暖房するのだ。建具を開閉することで、冬は小さく暮らし、夏は広く暮らす住いとなる。長い軒や庇があり、夏は日射遮蔽するが、冬は日差しを取り入れる。

 「夏と冬を住み分ける」知恵や「冬は小さく夏は広く暮ら す」知恵が部分的暖房となり、暖房区域が限定的になり実効性のある省エネルギーだ。と締めくくった。
 今までは、「寒冷地型閉鎖系モデル」と「温暖地型解放系モデル」の住宅の勝負では、「温暖地型解放系モデル」は冬寒いと劣性の連続だった。ヒートショックで交通事故死の3倍の死者がいると怪しいデータに翻弄され、温暖な7地域にも軒のない窓の小さい「寒冷地型閉鎖系モデル」が増え続けている。図1は安藤先生から、承諾をいただいて挿絵の掲載をする。今まで、高断熱・高気密愛好家から冬対策が無いと批判されてきたが、この絵を利用すると「冬は小さく、夏は広く」の説明が付きやすい。グローバル化の時代に、イギリスやドイツにだけ目を向けるべきではない、気候が似ている東アジアから学ぶことの方が合理性があるように思えてならない。



図1 宮崎の旧黒木家: 温暖地宮崎でも分棟にして 夏と冬を住み分けている (提供:安藤邦廣氏)の

寒冷地型閉鎖系モデル
全室断熱気密
全室恒常暖冷房

温暖地型開放系モデル
部分断熱
部分間欠暖冷房

   
 
建築ジャーナル 2016年3月号掲
 

   
   
 
89
 胡散臭いエネルギー政策
   
 

ZEHをゼロ・エネルギー・ハウスと呼ぶ。高気密・高断熱仕様にして、高性能サッシュを付け、太陽光発電や蓄電池を装備し、高性能エアコンと高性能換気扇設備と制御機構などを組み合わせ、住宅の年間の1次エネルギー消費量が正味ゼロを目指す住宅のことである。

「エネルギーゼロは簡単なのだ」
熊本での一般家庭の年間エネルギー消費にかかる費用は暖房2万円、冷房1万円、給湯6万円、電気1万円、
家電6万円の合計16万円ぐらいである。家の性能はほどほどでも、太陽熱温水器と太陽光発電を屋根に乗せれば、エネルギー料金支払金ゼロは達成可能だ。メンテナンス費用を無視し、中国製の製品を購入すれば費用対効果があり、投資金は取り戻せる。年間エネルギー消費量が20万円を超える家でも大型の太陽光発電を乗せればゼロエネルギー住宅となる。しかし、これは「ZEH」ではない。

「ZEH」の定義
経済産業省資源エネルギー庁のZEHは高性能建築・設備機器をフル装備した住宅をいうのである。2020年までに、標準的な新築住宅に採用し、2030年には50 %の普及を目指している。設備機器をたくさん設置することを目的化しているような住宅である。「健康になるために健康食品を腹いっぱい食べましょう」と同じ思考だ。その「ZEH」採用者には多額の補助金をくれる。約130万円の補助金をくれるので、新築着工頭数を70万戸として、50 %の普及となれば700,000戸×1/2×1,300,000円=455,000,000,000円
となり、4千5百億円だ。北朝鮮の国家予算と同じ金額だ。北朝鮮をM&Aで買収すれば、核問題や拉致問題は簡単に解決する。「ZEH」への補助金より北朝鮮対策につぎ込んだほうが日本国民にとっては良策ではないだろうか。

「ZEH」の普及
過去の住宅産業のコピーを思い出してほしい。シックハウスが問題になれば、「健康住宅、が登場し、阪神大震災の後は「骨太住宅」、COP3のあとは「環境共生住宅」、福島事故のあとは、「エコハウス」が出現した。麻疹みたいなもので出てはすぐ消える。今回の「ZEH」は国主導で行われている。確かに国主導だった「住宅金融公庫仕様」は住宅の品質を上げるに効果はあったと思う。補助金ではなく、低金利政策だった。低金利は回り回り考えれば原資は日銀なので、国家予算が減ることはなかった。今回のZEH政策は補助金なので大判振る舞いの支出である。「ZEH」の普及の75 %はハウスメーカーが占めている。
住宅業界の強者たちだ。強者であれば自力で普及させればよいではないだろうか。国は膨大な補助金を住宅業界強者に提供することになる。強者を助け、弱者をいじめる制度で、税金の使い道では正道ではない。高性能住宅は高気密・高断熱・不燃化に重点を置いているために、高性能石油製品、不燃建材、サイディング、不燃クロスなどで構成されている。処分時どうするのだろうか。日本はゴミのことは全く考えない。江戸時代のごみ処理文化の名残りは、日本の政策には全くない。

電力自由化
電力小売り全面自由化が4月1日から始まる。今まで、九州では発電は九州電力、送電も九州電力で、九州電力が電力を独占していたが、発電所事業と送電事業が分離されることになる。九州電力以外で、電力をつくっている会社は、規模は小さいが数多くある。熊本では「チッソ」が大きな水力発電所を持っていることが知られている。直接、チッソが小売り販売店になれると思っているが、今のところ販売店として名前はあがっていない。(表1)。家庭は小売り先の会社と契約をする。電力はこれまでと同じく九州電力の送電線を通して届くし、小売り先の会社が倒産しても、九州電力が肩代わりするように取り決められているので、電気が止まることはないと力説する。小売り先の会社に契約変更する場合、電気メーターを切り替えるだけだ。
 新規参入の電気小売り会社は全国で200社近くあり、熊本でも20社近くが新規参入している。その中に発電所をもっていそうな会社は見当らない。原発の電源が嫌で地熱発電や風力発電が好きだったらその会社を選べばよいと思っていた。もしチッソが小売り会社になれば、100%水力発電による電力ということになる。
 熊本の20社のうち、みやまスマートエネルギーは新電力であるが、そのほかはほとんどが九州電力から電力を購入し再販売するみたいだ。机が一つあり、請求書を書いて利益を得る会社ではないだろうか。ベンチャーとかの言葉を聞くとよい会社のように思えるが、九州電力と消費者の間にペーパーカンパニーがもう1社入るだけだ。各社とも安くなるというキャンペーンを張っている。20社の中の一つの西部ガスは確かに九州電力が発電所で使う天然ガスの既得権を持っているので安くなる理由は分かるが、アンペアとボルトの違いさえ分からない旅行会社が4 %割引きできるのはなぜだろう。九州電力から電力を購入し、九州電力の送電線を使用し、使用量を払うのに、どうして安くなるのか仕組みが分からない。大量に購入して小売りする昔の問屋的仕組みだったら九州電力がその仕組みをやればよいことではないか。九州電力が独占して暴利を得ていたとは思えない。原発と縁を切りたい人が少々高くても仕方がないという考えで電力小売り自由化に賛成したのに、マネーゲームの1つのよう見えて仕方がない。なにか胡散臭い理由がありそうだ。
 その中で異色なものがある。行政が電力小売りをおこなうのだ。地熱発電が盛んな熊本県小国町が電力小売りに算入する。7月に設立し、11月から販売を始める。町内3000世帯をまかなうという。現在の九州電力の電気代より安くなると試算している。発電場所が近くて、送電線の距離も短くなり、電力の地産地消である。非常によいことだ。
 電気は便利だ。しかし発電に危険を伴うことを私たちは知った。原発の電力が安いというトリックは、処分費は計算できないから、含めないという手前勝手な原価計算法がばれてしまった。便利さと危険はセットだ。どこから電気が来ていて、危険度と自然破壊の程度を知るチャンスである。受付カウンターの割引率に目を奪われず、真のエネルギーの出所を考えよう。

表1 熊本の新規参入の電力小売り業者と九州電力との価格比較表
小売業者
割引率(600円/月)
西部ガス
5.8%
HIS(HTBエナジー)
4.3%
ナンワエナジー
4.2%
イーレックス・スパーク・マーケティング
3.4%
ジュピターテレコム
3.7%
丸紅新電力
1.5%
みやまスマートエネルギー
0.5%
KDDI
0.03%
出典│価格.com 電気料金プランシミュレーション
   
 
建築ジャーナル 2016年4月号掲
 

   
   
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